四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
次の日。
旗見先輩に発表資料の草稿を渡して練習をお願いして、私は久しぶりにみんなと一緒に帰っていた。
なお今日も護衛は甜奈なので、先輩は遠夜と二人で練習できるね!
みんなで集まったので、またいつもの喫茶店に寄り道。
今日達也が論文コンペのメンバーに名目上は護衛ということで加わったらしく、その話をみんなで聞くためだ。
「達也、論文コンペのメンバーに選ばれたんだって?」
「護衛だけどな。どうやらサブの上級生と市原先輩が風紀委員にかけあったらしい」
「この時期から呼ばれるのはきちんとメンバーとして頼りにしているということですよ。正式な護衛はまだ決まってないのですから」
「お、さすが初の学校非推薦参加者ね。達也くんすごいじゃない」
「そういえば、真昼さんも市原先輩のも論文の詳細を聞いてませんでしたが、どんなテーマなんですか?」
美月が気になった様子なので、まずは達也の方に言ってもらう。
そっちの方がわかりやすいしね。
「市原先輩の論文テーマは『重力制御魔法式熱核融合炉の技術的問題点とその解決策について』だ」
「……ずいぶん壮大なテーマだね。それって『加重系魔法の三大難問』の一つじゃなかったっけ」
幹比古が難しそうな顔で唸る。
このテーマ、わかりやすく難問でかつ見栄えがいいテーマだから市原先輩はすごいよね。
きちんと解決策も用意しているし。たとえその後に上位互換が出たとしても、このテーマに挑んで道があることを示したのは大きいと思う。
「達也さんが呼ばれたのですから、てっきりCADプログラミングに関する論文だと思っていました」
「うん、私もそう思った」
「あたしもそっちの論文なら、啓先輩もいるし優勝間違いなしの論文になると思うけど」
「その点で言うと真昼の方が近いだろうな」
「真昼さんのテーマですか?」
「私の論文テーマは『別系統魔法の相互互換性による多工程魔法の工程省略および系統統一の理論的統括とその応用』です」
「何を言ってるのかさっぱりだぜ…」
レオが早々に音を上げたが、他の人も大体頭の上に「?」を浮かべている。
達也ぐらいしか理解している人がいない。
「簡単にまとめると、魔法の中には同じ効果で別系統の魔法がありますよね? それらがどんな状況でどの魔法と互換性があるのかをまとめて、魔法の工程を削減したり同じ系統の魔法としてまとめてCADに収納できないか、という研究です」
「そうすると魔法が高速で発動できる……ということ?」
「そうですね。さらに特化型CADで使える魔法の系統が見た目上増えることにもなります」
「確かに達也くん向けっぽいテーマじゃない。なんでメンバーに入れなかったの?」
「この論文自体は研究所ですでに作成されたもので、どちらかというと本番で必要なのは多種多様な魔法を使えるテスターなんです。準備も研究所の人員を動員すればなんとかなりますから」
「あー、確かにね。それなら達也くんでなくてもいいのか」
「それにしてもすごい研究だね……基礎理論に近いけど、応用の幅が広そうだ」
「研究所が基礎理論中心ですからね。応用的なものを探すのが大変なんですよ」
本当にね。
来年はともかく再来年どうしよう…
その後は論文コンペの話題で終始盛り上がり、いつもより遅く帰ることになった。
…あ、そうだ。確かこの後だから言っておかないと。
「達也さん」
「なんだ」
「貴重な資料も使うのですから、身の回りには気をつけてくださいね。
「……そうだな、気をつけよう」
言いたいことは伝わったようで、すこし雰囲気が引き締まった。
そしてその夜。
『真昼、すまないが来てもらえるか』
「はい、わかりました」
達也からの連絡に、すぐ空間を繋いで向かう。
そこにはやたらとファンシーなエプロンを着た深雪が、ちょっと頬を染めながら達也にコーヒーを淹れていた。
……うん、ごめんね? いったん仕切り直しのために帰っても良いかな?
真面目な雰囲気のはずがすこし挫けたけど、がんばって真面目に話し始める。
「やはり襲撃されましたか」
「予測していたのか」
「FLTで何をしているかは『観る』までもありませんしね。レリックを一般人が護衛もつけずに持ち歩けばそのくらいはあると思っていました。一応伺いますが、怪我はしませんでしたか?」
「ああ。狙撃も注意していたから避けられた」
いやすごいね。
光学観測のみの狙撃を注意していれば避けられるって、『精霊の眼』凄すぎない?
私は時間加速使わないと無理だなぁ…
「それでなんだが、レリックは真昼の研究所で預かって欲しい」
「私のところでいいんですか? 解析も依頼されているのでは?」
「だから小百合さんにもFLTのラボに持っていくと言ってあるし、近くラボに持っていくフリはする。だが本体は真昼が管理するのが一番だと思っている。訓練のために定期的に研究所には行くから、その時に解析はすれば良い」
「そういうことでしたら、お預かりしますね」
達也からレリックを受け取る。
うん、魔法式保存の仕組みは大体把握しているけど、これの解析はまた新しいことがわかりそうだね。
「それで、今日俺を襲ってきた相手の正体は分かっているのか?」
「大体の見当はついていますが……今確認します。すこし待っていてください」
間違いなく大亜連合の特殊工作部隊の仕業だと思うけど、一応確認。
深雪からコーヒーをもらって一口飲んだ後、『精霊の眼』で情報を追跡する。
達也が襲われた時点まで遡り、襲撃者の過去にさらに遡る。
会った人物、行った場所、得た情報。
それらを一つ一つ辿って裏付けを得る。
……うん、やっぱり間違いないね。
情報の追跡を終了してコーヒーを飲もうとすると、すでにぬるいを通り越して冷めてしまっていた。
……そんなに長い時間かかったのかな。
「わかったか?」
「はい。やはり大亜連合の工作部隊で間違いないようです。今のところは威力偵察というか、斥候のようなものですが」
「大亜連合…」
「今のところは、ということは最終的な目的があるのか?」
「まだ不確実な可能性の一つ、という段階ですが、艦隊の動員計画もあるようです。工作部隊の進捗によって最終決定するようですね」
「本格的な侵攻の可能性があるのか…」
不安そうな深雪の頭を無意識に撫でながら、考え込む達也。
さっきから気にしないようにしてるけど、ノースリーブミニエプロンドレスみたいな服装で頬を赤らめてると、すごいいたたまれなくなるからやめて?
私、どういうテンションでこの場にいれば良いの?
だいたいさっき情報を遡った時に、達也の『自分だけのガラスケースの中に、こっそり飾っておきたい』発言も観てるからね?
「達也さんのやるべきことは変わりません。深雪と自身の安全をまずは第一に行動してください。工作員や戦争の可能性については警察や軍と協力して対応しますので、本家や軍から指示がないかぎりは積極的に行動する必要はありません。情報が必要な場合は、今日のように呼んでください。可能な限り応対します」
「わかった。情報提供感謝する」
まだ考え込んではいたけど、とりあえず達也の中では一区切りついたみたい。
その後、せっかくなので深雪の勉強をみながら課題を片付けていたらけっこう遅い時間になってしまって、溜まった研究所の仕事にため息が出たのは別のお話。
微妙に決まらない真昼さん。
実質裸エプロンみたいな状態の深雪さんを前に真面目な話なんてできるか!