四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
エリカ視点→レオ視点→幹比古視点と変わります!
真昼の指示で起き上がった女性…恋路が、得物であろう大型ナイフを持って私の前に立つ。
のんびりした雰囲気と異なり、体格はかなり仕上がっている。
身長も成人男性の平均ぐらいはあるんじゃないだろうか。
パワーの面では、確実に上とみて良いだろう。
肝心なのは、どんな魔法をどの程度使いこなしているのか。
私も模擬刀を構えて対峙する。
「それでは……始め」
真昼の宣言とともに、恋路の姿が消えた。
咄嗟に模擬刀を振るうと、左に手応え。
一瞬陽炎が見えた次の瞬間には、私はその場を離れていた。
「あれ……いない…」
呆然としている恋路。
そのナイフからは陽炎が立ち上る。
そしてまた動き出すが……今度は見えた。
自己加速術式の亜種だろうか。普通の術式と違って移動先はわからないものの、十分に速い。
その上あの熱波のようなものも、たぶん触れたらやけどぐらいはするだろう。
……それだけわかれば十分。
視界から外れるように動き回り、視線が切れた瞬間に切り込む。
それを危なげなくナイフで受けた恋路。私が助走を付けて突っ込んだのに身じろぎ一つしない。
まるで壁に突っ込んだような衝撃だけど、それを横にすり抜けることで流して、さらにお腹を素早く蹴って距離を取る。
「うぐっ……へへへ、いいね…」
にやり、と笑う恋路が再度加速する。
その切れ目、動作が停止し次の動作に入る直前を狙って足を切り払う。
倒れはしなかったものの、踏み止まるために完全に動きが止まった。
そのタイミングで、慣性をキャンセルして切り返した模擬刀をピタリと首筋に当てた。
「私の勝ちね」
「……負けちゃった」
呆然としている恋路。
その肌は紅潮していて、よく見ると目も充血していた。
それも、しばらくすると波が引くように消えていったけれど。
「それがあんたの自己加速魔法ってこと?」
「え? うん。神経電圧の直接操作と、代謝の向上で早く動けるんだ。熱が出るのが欠点だけど、それは外に捨てればいいし」
その言葉に思い出して靴を見ると、室内用のソフトシューズが一部溶けてしまっていた。
魔法のマルチタスクはすごいけど、動きの速さに対して技がついてきてない。
ただ単に素人の振るう剣が早くなっただけだ。
「あんたはまず基本的な剣技を覚えなさい。素質自体はあるんだから」
「…そう? ありがとう」
「それじゃあまず素振りを…」
「その前におやつ食べていい?」
「は? おやつ?」
いきなり変なことを言い出したので軽く睨むと、私から目を離さないようにしながらもゆっくり壁際のバッグに近づいていた。
「代謝を上げて早く動くから、お腹空いてて…」
「……そんな技を最初から使うんじゃないわよ」
真昼が護衛として不合格、と判断するのがよくわかった。
これは性格的な問題が大きいわね…
そうしておやつを食べ始めた恋路に、ようやく起きた女性…衣白といってたっけ? が怒りながら絡んできた。
「貴女、あっさり負けて恥ずかしくないこと⁉︎」
「ん。だって強かったし…」
「いいですこと? そこで私の戦いを見ていなさい! 真の強者がどういう戦い方をするのかを見せてあげますわ!」
こくこく、と頷く恋路をふん! と一瞥して私の前に立つ衣白。
まだレオは殴り合ってるし、幹比古も詰めの段階で終わってない。
真昼に目配せすると、自由にやってと投げやりな視線を向けられたのでお望み通り勝手にやることにする。
「それじゃあそっちのタイミングで始めていいわよ」
「余裕があるのは今のうちだけですわ!」
衣白は私と同じ模擬刀を使って、恋路よりは遅い速度で迫ってくる。
それを避けようとして、
もう一歩大きく避けると、スレスレを刀が通っていく音がした。
……へえ、こっちの娘はまた違った手でおもしろいじゃない、
「幻術? 大口叩いたわりには狡い手を使うじゃない」
「勝てば良いのです!」
しばらく打ち合っているとなんとなくわかってきた。
彼女は恋路と同じ高速代謝を要所で使うことで戦闘時間を延ばしつつ、幻術で間合いを誤認させている。
恋路よりは頭が良い戦い方だし、接近戦ではなかなか厄介なのは確か。
けど、相手が悪かったわね。
そういうのがあんたよりもっと得意なのが、ウチにはいるのよ!
「きゃっ⁉︎ なぜわかったのです⁉︎」
「視線が素直すぎんのよ」
「なっ! うぐぅっ‼︎」
視線の動きから本来の位置を捉える。
一振りで武器を、次で峰打ちすると驚愕と共に衣白は倒れた。
私が見破れたのは簡単だ。
幻術自体は自然なのに、その像で何を偽造すれば良いのかわかってない。
単純に位置だけ誤魔化したって、視線や身体の流れがそのままならそれは『不自然』でしかない。
そこがわかってない限り、どんな高度な幻術も『素人の小細工』に過ぎないのだ。
「衣白だって負けてんじゃん」
「うるさいですわ! っ…いた……つ、次こそは勝ちますわよ!」
「何度やっても今のままなら同じよ」
「お黙りなさい!」
その後、連続で三回切り伏せたところで体力が尽きて心が折れたようで、今度は卑屈になって泣き始めた。
私より歳上の女性が、子供のようにわんわんと号泣しながら。
それを適当にあしらいながら壁に転がした恋路は、エネルギー補給が済んだようでさっき言われた通りに素振りを始めていた。
……二人とも、まずは性格を直すところからかしらね…
「うぉりゃぁあー‼︎」
「はっはっは‼︎ こいつは楽しいぜ!」
試合開始後。
俺と詩納斗は武器も使わない殴り合いになっていた。
当然、お互いに魔法は使っている。
俺は硬化魔法、詩納斗は身体強化魔法と硬化魔法や振動系魔法。
ただこちらが同時に攻撃と防御の魔法を展開できないのに対して、相手は両方同時に発動して攻めてきている。
そのために俺の方が防戦に傾いてきていた。
「はっはっは! この程度か!」
「このヤロウ!」
挑発に応えたいが、相手の方が体格も素早さも上。
力はギリギリ互角だと思うが、それも接触型の加速魔法などで相手が上回っている。
別に負けても良い試合ではあるが、このまま負け続けというのも腹が立つ。
一か八か、賭けに出るしかないようだ。
硬化魔法を、腕のCADのみにかけて突撃する。
相手のパンチはスウェーで躱して、ボディに思いっきりストレートを打ち込む。
「うぉっ…⁉︎」
「チッ…!」
詩納斗は吹っ飛んだが、ダメージは入ってない。
障壁魔法ごと押しただけだ。
「驚いた。まさか障壁魔法を動かすなんてな」
「はっ、そうかよ。そっちこそずいぶんとタフだぜ」
「まだなんか隠してんだろ。出してみろよ」
知ってか知らずか、詩納斗が挑発する。
そっちがその気なら、やってやるぜ!
「後悔すんなよ!」
CADから『ジークフリード』の魔法を発動する。
その溢れる想子を見た詩納斗は、笑いながら殴りかかってくる。
それを片手で受け止めて、片手でカウンターを打ち出す。
障壁ごと詩納斗を吹き飛ばすと、そのまま追撃して壁際に追い込む。
そして後は拳撃のラッシュ!
障壁など構わず、相手の攻撃も無視してとにかく殴り続ける!
何枚も障壁が割れては再生し、詩納斗も殴り返す。
いつまでそれが続いたのか、気づくと体力の限界に近づいていた。
最後に一発、と思ったが、その拳は障壁に阻まれた。
負けちまったか……
そう思いながら、魔法が解除される感覚とともに床にへたり込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「くはっ……は、はは……」
…反撃が来ない。
気合いで身体を起こして目の前を見ると、詩納斗も壁によりかかって……いや、ゆっくりとずり落ちていた。
どうやら、お互い限界だったらしい。
……切り札まで使って、負けたりしたらかっこわる過ぎたからよかったぜ…
「よろしくお願いします」
「う、うん。よろしく」
僕の前で丁寧にお辞儀をしてくれた女の人。
名前は夏雲さんというらしい。
金髪ロングで僕と同じくらい身長がある、女性としては体格が良い方に入ると思う。
その人が開始の合図と共に、全身に電撃を纏わせて突っ込んできた!
「くっ⁉︎」
慌てて『綿帽子』の魔法を発動。
次に『金帷子』の魔法で電撃を受け流す。
それまで僕がいた場所に迷いなく打ち込まれるストレートと電撃。
余波を防ぐことに成功したので、今度はこちらから『鎌鼬』を発動する。
それを周辺の空気ごとプラズマ化することで消滅させた夏雲さんは、更に踏み込んで今度は僕がいる空間全体に電撃を放った。
まだ魔法が残っていたから防げたけど、凄まじい魔法力だ。
ここで『綿帽子』の効果が切れ、少し離れた位置に着地する。
「素晴らしいです、さすがお嬢様が見込んだお方」
蕩けるような笑顔でそう呟きながら、高電圧の雷撃を連発する彼女。
その雷撃に紛れて『雷童子』を放ってみるけど、周囲の電場に防がれてしまう。
なら、電撃を貫ける魔法を使えば良い。
五行の考えでいけば、雷は木行だから火行の相生か金行の相剋が良い。
残念ながら金属製で使えるものは手元にないので、使うのは炎。
『狐火』をいくつか放つと、電撃を喰らいながら進んでいく。
それを冷却魔法で消した夏雲さんだけど、電撃はなくなった。
いける!
もう一度『狐火』を放つと共に、『鎌鼬』を連続して打ち出す。
冷却魔法を継続して使用していた彼女は『狐火』は防げたものの、『鎌鼬』は防げずにダメージを負った。
このままではダメだと判断した彼女が電撃を再びまとって僕に突撃してくる。
それから避けるように数歩下がる。
「がっ⁉︎」
僕がいた位置を通った夏雲さんが、空中に縫い止められたように急停止する。
これは九校戦でも使った『金縛り』で、時間をかけて準備した分そう簡単には破れないだろう。
高電圧で無理矢理術式を焼き切ろうとしている夏雲さんに、『荒風法師』でトドメを刺して試合は終わった。
「ふ、ふふふふふふ。あははははは!」
「え、えっと……大丈夫かい? どこか変なところを打ったり…」
「あはははあははあはああああははははは‼︎ ………すみません、とても良い試合だったので興奮してしまいました。ご指導、ありがとうございました」
「え…あ、うん……」
狂ったように笑ったと思ったら、すん…と真顔になって一礼する彼女。
あまりの変わりように呆然としていたけれど、エリカに呼ばれて我に返った。
……まあ、うん。
真昼さんが外に出さないって言った理由、あの甜奈さんと遠夜さんがまともって言った理由がわかったかな…