横須賀鎮守府の提督執務室の黒電話が鳴った。
顔を見合わせる、那智と足柄。
通常、提督執務室にかかってくる直通電話は、たいてい
海軍本部
からだ。
それ以外の外線は、電信室で取り継がれる。
電信室からの取り継ぎが無いということは、海軍本部からの直通電話ということだ。
しかし…
なぜ、今、海軍本部からの直通電話がかかってくるのか…?
「とりあえず、私が出よう…。」
と、電話に出る那智。
「私は横須賀鎮守府の桃田提督の秘書艦の那智です。」
《那智姉さん?
俺ッス★
良太郎ッス★〉
なんと、電話をかけてきたのは良太郎だった。
「ご子息!!
ここの直通コードを知っているからと、気安くかけてこないでください!!」
と、良太郎を諌める那智。
《それどころじゃないんですよ、那智姉さん★
海原市でガンプラが暴れまわっている
んスよぉっ★〉
「何をバカな…
…って、ご子息…
今、何と言った?」
と訊く那智。
《だから
海原市でガンプラが暴れまわっている
んスよぉ〜★
父上はぁ〜?〉
「ご子息!!
そのガンプラは
殺人ガンプラ
という、恐ろしい敵だ!!
今、お1人ですか?」
《いや…
友達もいる…。〉
「なら、友人達を連れて、安全な場所に避難を!!」
《えぇ?
いや…その…
みんな戦ってて…。〉
「戦ってって…
危険だ!!
今すぐ、そんな危険なことをやめさせて、至急、安全な場所へ!!」
と叫ぶ那智。
そこに、葬儀を終え桃田と深海が執務室に帰ってきた。
「誰からの電話だ?」
と訊く桃田。
「大変です!!
海原市に殺人ガンプラが現れました!!
現在、提督のご子息が交戦中のようです。」
と答える那智。
「何だと!?」
桃田は、那智から電話の受話器をひったくるように取る。
「良太郎!!
良太郎なのか!?」
《ち…父上ぇ〜☆〉
「殺人ガンプラと戦っているだと!?
今すぐ、そんな危険なことはやめて、安全な場所に退避しろ!!」
《そんなこと言われても、みんな戦っているのに、オレ1人だけ逃げるわけには…
うわっ、このっ!!〉
銃声が聞こえた。
「良太郎…何をしているんだ?」
《オレの
くそっ!!
こっち来んな!!〉
再び、銃声が聞こえた。
「良太郎…
今、お前、1人なのか?」
《いんや。
香坂先輩や
よ。〉
「何ッ!?」
秋雨と梅雨葉の名を聞いて、目を見開く深海。
「桃田、俺は海原に戻るッ!!
ヘリを出してくれッ!!」
「えっ?
あ…あぁ…。」
執務室から飛び出す深海。
「提督。
こちらからも兵を出しましょう。
ガンプラを相手にするのなら、空母の艦載機が有効かと。」
と進言する那智。
「そうしてくれ。」
と答える桃田。
すかさず、足柄が館内放送で千歳と千代田を呼ぶ。
桃田は、良太郎との電話に戻る。
「良太郎。
信じられんかもしれんが、今、お前が戦っているのは殺人ガンプラという、恐ろしい兵器だ。
お前も提督の子なら、お前が率先して市民を避難誘導するんだ。」
《無理ッスよぉ★
もう、まわりはGN-Xだらけで、避難誘導どころじゃないッスよぉ★〉
「何、GN-X?
バイアランじゃないのか?」
桃田は、少し考え込み
「わかった、良太郎。
とにかく、身の安全を確保しつつ、友達達だけでも避難誘導するんだ。」
と良太郎に言って、電話を切った。
桃田が電話を切ったのと同時に、千歳と千代田が執務室に来た。
「どうしたんですか、提督?」
と訊く千歳。
「千歳、千代田。
2人とも、今すぐ出撃してくれ!!
海原市に殺人ガンプラが現れた!!」
と言う桃田。
「えっ?
もしかして、私達の艦載機で、殺人ガンプラとやらをやっつけるんですか?」
と訊く千歳。
「そうだ!!
これは実戦だ!!
烈風一一型の使用を許可する!!」
と桃田に言われ、千代田と顔を見合わせる千歳。
「了解!!
航空母艦千歳と千代田は、海原市救援のため出撃します!!」
と、桃田に敬礼する千歳と千代田。
その時、港湾部から通信が入った。
《航空母艦瑞鳳および海防艦鵜来、稲木から入港許可の申請が来ています。〉
(瑞鳳だと?
どこの所属だ?
だが、これはチャンスかも…?)
「入港を許可する。
補給が済み次第、瑞鳳にも出撃してもらう。」
と指示する桃田―。
◇
横須賀沖を進むのは、東京に貨物船を護衛してきた、深海の義姉の瑞鳳と、海防艦娘の鵜来、稲木だった。
横須賀鎮守府の港に入港した瑞鳳、鵜来、稲木は、艤装を装備した千歳と千代田に出迎えられた。
「どこの所属か知らないけど、補給が終わったら、私達と一緒に来てくれない?」
と千歳に言われた瑞鳳は
「りゅ…?」
と首を傾げた―。
◇
深海の邸宅―。
夕張が自室でくつろいでいたら、スマートフォンの着信音が鳴った。
「もしもし、提督?
どうしたの?」
《夕張!!
今すぐ、俺の艤装の準備をしてくれ!!
それと、大鳳にも出撃準備をするように言ってくれ!!〉
深海の切羽詰まった様子から、何かを悟った。
「了解!!
提督の艤装を準備します!!」
と、スマートフォンを切る夕張。
(ん?)
何気なく、テレビを観ると
海原市でガンプラが市民を襲っている
というニュースが流れていた…。
◇
リビングでテレビを観ていた
「あれはブラッドウイング…!!」
と叫ぶ
「ブラッドウイング?」
と、首を傾げる大鳳。
「未来のテロリストです。」
と言う
そこに、夕張が来た。
「大鳳さん!!
提督から出撃命令が来たわ!!」
「なぜ、私まで?」
と、首を傾げる大鳳。
「何だかわからないけど…
提督、けっこう焦ってるみたいだったよ。」
と言う夕張。
「僕達が行きます!!
秋雨さん達が心配です!!」
と言う
「僕が車を出すよ。」
と名乗り出る夜空。
「お願いします!!」
と、夜空と一緒に駆け出す
◇
夜空と
邸宅の上空に、1機のヘリコプターが飛来した。
「庭に着陸しますが、よろしいですか?」
と訊いてくるパイロットに
「その必要は無い!!」
と
ヘリコプターから飛び降りる深海…。
「ゑゑゑゑゑっ!?」
ヘリコプターから深海が飛び降りたのを見て、驚愕するパイロット…。
ヘリコプターから飛び降りた深海は、邸宅の屋根に落ちた。
そのまま、屋根を転がり、庭の草むらに落ちた。
落ちた時に、ちゃんと受け身をとっていたからか、深海はとくに怪我などは負っていなかった。
邸宅内に入ると、時雨と大鳳が待っていた。
「おかえり、深海。
今、凄い音がした
けど、何の音?」
と時雨が訊くが
「すまない!!
急いでいるんだ!!
大鳳、行くぞ!!」
と、深海は大鳳とともに地下の出撃ゲート跡に向かった―。
◇
出撃ゲート跡に来た深海は、夕張から艤装コマンダーを受け取った。
(いちいち叫ばなきゃならんのがな…★)
と思いつつも、右手に持った艤装コマンダーをかかげ
「抜錨ッ!!」
と叫ぶ深海。
すると、深海の体が光り輝き…
光が消えると…
深海の体には、艤装が装着されていた―!!
深海が艤装コマンダーを使って艤装を装着する時間は、わずか0.6ミリ秒にすぎない!!
では、もう一度見てみよう!!
深海が右手に持った艤装コマンダーにかかげて
「抜錨ッ!!」
と叫ぶことで、艤装コマンダー内部に圧縮縮小されて封入されている艤装が射出され、わずか0.6ミリ秒で、深海の体に艤装が装着されるのである―!!
同じく、艤装を装着した大鳳とともに、深海は出撃し…
…ようとしたら…
「待ってぇ〜。」
と、深海の母の空母水鬼が、艤装を着けた姿で出撃ゲート跡に降りてきた。
「何しに来たんだ、母さん?」
と訊く深海。
「何って、お母さんも出撃するのよ★」
と、なんだか、至極当然のように言う空母水鬼。
「たしかに、航空戦力は多い方がいい。
一緒に来てくれ。」
と深海に言われて、大喜びの空母水鬼。
こうして、深海、大鳳、空母水鬼は出撃した―。