はじめての転移?
子供の頃に二次創作に出会って、好きになった。
学生の頃に自分でも書くようになった。
社会人になっても、二次創作にどっぷりハマっている。
書くことは楽しい。
考えることは楽しい。
もう書く前の自分には戻れなかった。
そして、今日。
読んでいたある作品が、完結した。
楽しませてもらった。
私は感想を書くのは得意ではないから、スタンプを押して気持ちを伝える。ハートのスタンプを押した後に、スマホの画面を消した。
そしてベッドに潜り込んだ。
時刻は深夜だ。部屋の明かりをリモコンで消して、リモコンをスマホの隣に置いたら、目をつむる。
いつか、私も完結させてみたい。書き上げてみたい。
それは淡い夢だった。
――――――
私は寝ている時、夢の中で夢を見ていると自覚できる。そういう時はさっさと起きれるのだが、その日は中々夢から覚めなかった。
しょうがないから、夢の続きをみる。
悪夢ではない。
水の中でもない。
私は草原の上に立っていた。
夜空で、オーロラが美しい。
いくつもの流れ星が落ちていく。
良い夢だ。だから、楽しむ事にした。
散歩が好きなので、少し草原を歩く。何も感じない。夢の中だから当然だろう。
世界は無音だった。そりゃそうか。夢だものね。
ただ、煌めき常に変化するオーロラと、瞬きの如く輝く流れ星のセットを静かに楽しむ。
――歩いても、歩いても景色が変わらない。
ちょっと怖くなってきたので、神様に頼る事にした。
流れ星に向かって、願う。
どこかへ、行ってみたい。
まるで、転移するみたいに。
そうなると、読み書きに困らないようにするべきだろう。
私は勉強ができる方ではないので、これは願っておきたい。
どこに行っても困らないように、ある程度の強さは欲しい。
だから、強くなれる才能を願った。
努力すればするほど、強くなれるのは魅力的だ。人からぱっと授けられた力よりは、身について使いこなせるだろう。
そうして、やっとまぶたが重くなる。
よかった。どうやら夢から覚めるようだ。
私は素直に目を閉じて、そして開ける。
――――――
――家?
目の前に木造の平屋があった。
奥に夕日が見える。
周りは木々に囲まれ、土と木の香りがする。
足裏は土と接触していた。土がむき出しで、石がくい込んでちょっと痛い。
「え、ここどこ」
思わず声に出してしまった。
パジャマ姿で、靴ははいておらず、香りがして、夕日は眩しくて。
声が出せた。
まるで現実じゃないか。
背筋がヒヤリとする中で、声をかけられる。
「あなた……誰?」
子供の声。多分女の子。
私は声の方へ振り向いた。
――人間じゃない。
頭はある。顔もある。髪もある。首は無い。胴があって、腕、手がある。足はあるけど人間の形をしていない。身長は低い。
恐れはなかった。それよりも誰かに会えた安堵があった。
「人間……?」
「!――わかるの?」
「あ!えと……」
「わ、私、夢から覚めたらここにいて……それで……」
「?」
「…………あれ?」
よく思い出せない。
何で?何で??
嫌な予感がハッキリと現実に変わり、恐ろしさで涙があふれた。
がくりと膝から崩れ落ち、顔を両手でおおう。
何かがおかしい。
だけど、よくわからなかった。
恥も外聞もなく泣いていた。少女の事すら忘れて、困っていた。
「……どうしたの?」
「わからない。家も、私の事も……」
「――名前もわからないの?」
「名前……」
それはわかる。
「……カノープス」
「カノ?」
「カノープス……私とずっと一緒だった名前」
本名じゃないけれど、それが名前だ。
私の、名前だ。