カノープスの終生   作:紅絹の木

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妖星ゲラス

 

 

 朝起きて気づいた。

 

「星が落ちてくる……」

 

 忘れてた。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 朝食を食べてから、リーノの部屋に行き合流する。部屋の中には、すでにフームたちが来ていた。

 私たちが部屋の中に入ると、フームは「あら?」と言った。

 

「アーニャとランタンは?一緒じゃないの?」

「いや?会っていないが……?」

 

 リーノが口を開く。

 

「アーニャとランタンには、陛下たちのお世話をお願いしています」

「そうだったのか」

「……カノープスたちも来たし、話を始めるぞ」

 

 子供たちはソファーに座らせる。その向かい側、二つある一人様ソファーに、それぞれリーノとメタナイト卿に座ってもらった。

 私とソードナイトとブレイドナイトはクッションを持ってきて、床に敷いたラグの上に座った。

 全員が座ったのを見てから、リーノは話し始める。

 

「では、わたくしが決めた事を話します。……陛下や閣下、そして村のみんなには、魔獣である事を内緒にします。ですが、氷の力については話そうと思いますの」

「――隠すことが難しいから?」

「その通りです。わたくしは、村や城が魔獣に襲われたら、この力を使ってみんなを守ります」

 

 私は思う。リーノらしいと。

 

「隠し通すことはできません。だから、先に話します」

「それはわかったけど、なんで魔獣になっちゃったことも言わないの?人を襲わないし、力も制御できてる。問題ないよね?」

 

 ブンがそう言う。

 リーノは両手を胸の前で重ねた。その表情は寂しそうだ。

 

「恐ろしいからですわ……。魔獣の件を村人たちに伝えて、受け入れられなかったらどうしようかと……。怖いのです。出て行けと言われることが……。わたくしは、村のみんなを信頼していないのですわ」

 

 泣き出しそうなリーノを見て、私は咄嗟に口にした。

 

「別にいいだろ。秘密が一つぐらいあったって。誰も困らせていないし……。みんな秘密の一つや二つ抱えてるものだろう?」

 

 フームは「それはそうだけど」と言う。

 続けて言葉を紡いだ。

 

「隠し通せるかしら……」

「隠し通す。見つかったら、魔獣の件は伝える」

「そうしたら、あなたの力――奇跡についても話さなくちゃいけないわ」

「かまわない」

 

 私はリーノを真っ直ぐ見つめた。

 

「リーノがこの地にいたいのならば、私はそれを手伝う」

「カノープス……ありがとう。私もあなたを守るわ」

「こっちこそ、ありがとう」

 

 空気は和やかなものへと変わる。

 私はゆったりとお茶を飲みつつ、さらに説明を聞いた。

 

 まずは陛下と閣下に、氷の力について話すこと。

 うまくいけば、自慢するために村人たちを集めるだろう。

 

「カノープスという前例がありますので、そんなに目立つことはないと思うのです」

「……私?」

「ええ、あなたですよ?」

 

 あー、この世界だとそうなるのか。

 じゃあ……。

 

「なあ、ソレ……魔法だが、私やメタナイト卿から教わってリーノができるようになった、という事にしないか?」

「そうですわね。その方が自然ですわ。どうでしょう。メタナイト卿」

「問題ないと思う」

「よし。じゃあ、具体的な設定を決めていこう」

 

 

 

 それから一時間ほど、話し合いをした。

 以下が決まる。

 

 リーノは以前から魔法について、私やメタナイト卿から話を聞いていたこと。これは事実だ。嘘をつかなくて良いので、楽だな。

 そしてリーノは一人で練習していた。結果、努力が実って魔法が使えるようになった。

 今は、魔法の制御訓練をしている最中である。

 

 こんなものだろう。

 話が決まったらさっそく、私たちは陛下たちを探しに行った。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 陛下たちに会った先は、元のお話と同じだ。

 リーノの新しい力を気に入って、村人たちに自慢しに行く。

 

 ……なぜ、まだ城にいたのか聞かれたときは、ちょっと焦った。その答えを用意していなかったから。

 リーノが咄嗟に「具合が悪くなってしまったため、旅行はやめて帰ってきた」と答えてくれた。――まあ、嘘ではないな。

 

 村人たちの受け入れもスムーズだった。

 広場にて、リーノが氷を操ってみせる。

 リーノが言った通り、私という前例があったから受け入れやすいようだ。

 

 後は、あらかじめ決めていた訳をみんなの前で話して、それで終わりのはずだった。

 私は小さな子供に呼び止められた。

 

「ねえねえ!ボクたちにも魔法、教えて!」

「え、うーん……難しいかな」

「なんでー」

 

 不満そうに子供が口を尖らせる。

 私は膝を曲げて、子供の視線にできるだけ合わせた。

 

「私が、魔法を教えてもらっている先生に“誰かに教えても良いよ”という許可をもらっていないからだ。だから、教えることはできない」

「そうなの?」

「そうなんだ。ごめんね」

「うー……リーノは?教えてくれるかな」

「リーノも難しいと思う。まだ、見習いレベルだし」

 

 氷の力……魔法の熟練度は、私の奇跡によってかなり上がっている。なので、リーノのイメージ通りに操れるだろう。

 あとは、操作に慣れてもらえば、すぐに見習いから半人前になれるはずだ。

 

 子供や、私たちの話を聞いて期待していた村人たちは、がっかりしたようで、肩を落としていた。

 

 みんなに、嘘をついてしまって申し訳ないな……。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 数日後。

 占い師メーベルが城に連れて行かれて、朝の占いコーナーを任された。

 占いはよく当たると評判になり、みんながメーベルを頼った。

 一躍、時の人となった彼女。だからこそ、だろうか。メーベルは村のみんなを連れて海岸へ行き、海を割った。

 ――その力の正体は、トルネードカービィだった。

 

 種明かしをされて、みんなが目を覚まして、それでめでたしになるはずだった。

 赤い星は、プププランドに近づいている。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 妖星ゲラスのせいで、プププランドは赤く染まっている。

 村人たちは城の中庭に避難させた。安全な場所なんてどこにもないだろう。

 それでも私たちは抵抗するしかないのだ。

 

 今、フームがあの星の軌道をそらすために計算をしている。

 私はというと、呼ばれるまで自室で待機していた。

 目を閉じて、体内を流れる魔法に集中する。

 

 私の魔法で、城からあの星を撃ったとする。

 ――ダメだ。魔法が届かない。

 より強力な魔法を使えば、いいのかもしれない。しかし、もしも星を破壊できてしまったら?この距離だと、星の破片がププビレッジに落ちてきて、村や城に当たる。

 良くて怪我人、最悪の場合は考えたくもない。

 

「怖い……な」

 

 窓の外の風は、強くなるばかりだった。

 

 

 

 リーノに呼ばれ、みんなで大砲の準備をした。

 そして、星に向かって発射した。

 大砲の弾は届かない。だけどカービィがワープスターに乗って、飛んできてくれた!

 

 カービィは大砲の弾を吸い込み、空高く舞い上がる。

 そして妖星ゲラスの近くまで飛んでいき、勢いよく弾を吐き出した!

 

 何度か、爆発音が聞こえて。

 星の軌道が変わる。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 城の中庭は、お祭り騒ぎだった。

 みんな無事に生き残れたのだ、どんちゃんと騒ぎたくなる気持ちもわかる。

 星に立ち向かったフームたちを村人たちは称え、笑い合い、最後に秘密を打ち明けて損をした!と、冗談を言い合うのだ。

 

 私は、城の避雷針に引っかかっていた陛下を回収して、手当をした。

 

 陛下の自室にて。

 遠くで、村人たちの笑い声が聞こえてくる。

 それは穏やかで、心地よい時間だった。

 

「フン!ここまで人民どもの声が聞こえてくるゾイ」

「今日は喜ばしい日ですからね。許してあげてください」

「フン!あーん……」

「どうぞ」

 

 ぱかり、と陛下が口を開けられるので、アイスをすくい、その中へ持っていく。

 パクリ。

 

「うむ。さすがリーノ。うまいゾイ」

「それは良かったです」

 

 今、陛下は大火傷を負っている。全身ぐるぐる包帯巻きだ。誰かが傍でお世話をする事になった。

 立候補したのは、私とリーノだ。

 リーノは食事を作りに、私は陛下の傍につく事にした。

 

「陛下、ケガが治ったら公園のセレモニーをして、食事会も開きましょう。そうしたら、楽しいですよ」

「うむ。大々的にやるゾイ。デハハハハ!いちち……」

「ご無理なさらず」

 

 ぴとり、と陛下のおでこに手を当てる。

 ……うーん、ちょっと熱いかな?

 

「熱があるかもしれませんね。今日のところは早めにお休みください」

「う……うむ」

 

 うん。陛下の顔も赤くなってきた。こりゃ風邪もひかれているな。

 

 アイスをゆっくり食べていただいた後、歯磨きやトイレを済ませてから、陛下はベッドに潜った。

 

「おやすみなさい。良い夢を」

「……おやすみ」

「また後で様子を見に来ますから、灯りは少しだけつけておきますね」

「わかったゾイ」

 

 出入り口の灯りだけつけて、私は部屋を後にした。

 顔はニコニコと緩んでいる。

 

 みんな、無事に生き残れて良かった。

 

 

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