準備から数日後。
日が暮れて、村には濃い夜が訪れる。
きもだめしが始まった。
きもだめしの会場は、村から少し離れた場所だ。
草原から森へ、森を抜けると墓地がある。そんな場所を選んだ。
運命は物語と同じ筋書きをたどる。
木造の建物……暗くてよく見えない。そこに陛下、エスカルゴン殿、フームとブンにカービィ、さらにメタナイト卿が入る。
私は、外から建物を見張っていた。メタナイト卿に頼まれたのだ。
もしも魔獣が外から来た時は対処してほしいと……。
アニメと同じように、建物は燃えた。
フーム、ブン、カービィ、メタナイト卿は出てこれたが、陛下とエスカルゴン殿がまだだ。
私は、走り出した。
そして拳、腕、それらをおおう小手を魔法で包み込む。おおきく振りかぶって、ドアをぶん殴った。
大きな音が鳴った。
無事にドアは大破し、こちらを驚きの様子で見る陛下と目が合った。
私は言った。
「さあ、帰りましょう」
陛下とエスカルゴン殿を抱えて、平屋から離れる。
平屋は大きな音を立て続け、燃え、崩れていった。
朝日が昇る頃には、平屋は完全に沈黙した。
それを見届けてから、私たち一行は城へと帰還する。
城の橋を渡っていると、リーノがこちらに走ってきた。アーニャとランタンも一緒だ。
みんなが無事であることを手を叩いて喜び、さっそく陛下のためにと風呂を沸かしに行った。
私の腕から降りたエスカルゴン殿が、お疲れのご様子で言う。
「私も風呂に入ってくるでゲス。アーニャ、ランタン。何か軽い食事を頼むでゲスよ」
「かしこまりました」
「すぐにご用意いたします」
エスカルゴン殿は、フラフラと歩いて行かれた。
陛下も降りられるかなと、顔を窺う。
……私に抱きついたまま、離れない。
息の仕方と筋肉の緊張具合から察するに、起きているはずだが?
まあ、いいか。
私は陛下を抱え直す。
「陛下を送ってくるよ。まだ眠いようだし……ではな」
「あ、うん。おやすみなさい」
「おやすみー」
「ぽーよ!」
子供たちと挨拶を交わし、その場から離れる。
……メタナイト卿は気づいていたみたい。だけど、何も言わないでくれた。
私は陛下のお部屋まで、ゆっくりと、静かに歩いた。
――――――
リーノとアーニャ、ランタンが、大臣家に遊びに行っている日。
昼間に、私は陛下といた。
陛下はお気に入りのベランダで、日光浴しつつ魔獣のカタログ本を見るのだ。
私は、陛下に飲み物を用意しつつ、日光浴に参加していた。そして、手元の本に目をやる。
そろそろ飲み物が無くなりそうだ。……それに今日は日差しが強い。パラソルがいるだろう。
「陛下、パラソルとお茶の準備をしてきます」
「ワドルディにやらせれば良いゾイ」
陛下は手元にある小さな鐘を、リリリリと鳴らした。
近くにいたワドルディに、命令を下す。
「飲み物と日差しを遮るパラソルを持ってくるゾイ」
ワドルディは一つ頷いて、走っていった。
陛下は再び、視線を魔獣カタログ本へと戻す。
私も、読書を再開した。
……
…………
………………
来ないな。
「あら、陛下。それにカノも。こんにちは」
本をパタリと閉じたところで、リーノとメタナイト卿がベランダに来た。ちょうど、ベランダの前の廊下を通りかかったらしい。
「こんにちは。リーノ、それにメタナイト卿。こちらは日光浴中だ」
「そうですの。でも……飲み物が見当たらないわ」
「一時間ほど前にワドルディに頼んだが、持ってきてくれないんだ」
「かくなる上はクビだゾイ!」
「まあまあ陛下。私が持ってきますから」
私は立ち上がる。
リーノがゆるりと手を挙げた。
「わたくしも行きましょうか?」
「いや、いいよ。デートの邪魔をする気はないからね。それじゃお二人さん、また」
答えを聞く前に早足で厨房に向かう。
厨房には誰もいなかった。ワドルディどこに行ったんだろうね?
カートに、適当に飲み物を乗せてベランダへ移動する。次はパラソルだけど……どこにあるんだ?
「――パラソルはいいから、カノープスも日光浴すればいいゾイ」
「それではあなたが暑いでしょう……。そうだ。ミストをかけましょう」
「ミスト?」
「ええ」
私は「ミスト」の魔法を発動した。
両手から細かい水蒸気が湧き出る。それを陛下に向かってかけた。
陛下のお顔が、気持ちよさそうに緩む。
「おお、冷たいゾイ」
「必要な時はお声をかけてください。また、今のようにミストをかけますので」
「うむ」
陛下は満足そうに頷かれる。
これでワドルディが飲み物を持って来なかったことを、忘れてくれたらいいけど。
そんな都合のいい話はない。
――――――
ワドルドゥ隊長を含めた兵士たちが、城を去ることになった。
リストラだ。
ワドルディたちの代わりに、陛下はホーリーナイトメア社からホームヘルパーロボを購入された。
リーノが言うには、ホームヘルパーロボは細かい箇所まで掃除ができていないらしい。
大臣家を含め、メイド三人と私は、城の掃除や毎日たまる洗濯に明け暮れた。
やはり、城を維持するためにはワドルディたちの力が必要だ。
中庭で大臣家と洗濯物を干していると、陛下がやって来た。
私を見つけて嬉しそうに笑う。
「おお、こんな所にいたか!洗濯はいいから、ワシに付き合うゾイ」
「お断りします」
「なに!?」
普段ならばついていく。陛下のご機嫌とりも、重要な役だから。だが今はダメだ。
この城には余裕がない。
「ワドルディたちがいなくて、城中が大変なんです。遊んでいる暇はありません」
「ぐぬぬ……これは命令だゾイ!」
「陛下のためにやっています」
「……いつ終わるゾイ?」
不貞腐れつつも、待ってくれるようだ。
私はざっくりと考えた時間を告げた。
「夜ですかね」
「それじゃ遅いゾイ!!」
陛下はあっという間に、どこかへと走って行かれた。
私はその後ろ姿を、ちょっとだけ寂しい気持ちで見送る。
メーム様が話しかけてきた。
「よかったの?陛下の誘いを断って」
「今は仕方ありません。さあ、もう一息です。これが終わったら休憩しましょう。お茶をいれますよ」
「カノープスのいれてくれるお茶は美味いからな。楽しみだよ」
パーム大臣の言葉に、メーム様とロロロにラララが賛同してくれた。
美味しい緑茶が飲みたくて頑張ったのだが、他の人にも褒めてもらえる腕になって嬉しいな。
大臣家とお茶を飲んだ後。
私は体力自慢を活かして、城の掃除をする。リーノやアーニャ、ランタンが届かない天井近くを、はたいて回った。もちろん、埃を回収するのも忘れない。
その時だった。
突然、城中が揺れるほどの大きな音が聞こえてきた。
それから爆発音も聞こえる。……戦闘か?
私は外が見えるベランダへ走った。
ベランダから下を覗きこむと、ホームヘルパーロボらしき大きなロボが見えた。そいつが、ミサイルをあちこちに撃っている。ワドルディたちが戦っていた。
――陛下が巻き込まれている。
私は迷いなく飛び降りた。空中で魔法を練り、地面に噴射する。
魔法が当たった地面は凹み落下の勢いは弱まったので、私は安全に着地できた。
「カノープス!」
陛下が叫ぶ。
――頑張らなくちゃ、と思った。
私はサッと鉄パイプを抜き取り、魔法を込めた。
でっかい棍棒をイメージして……。
勢いよく走り出し、そのスピードを乗っけて大きなロボの横っ腹を殴った。
ズガン!!
大きなロボが数メートル先に吹っ飛ぶ。
最高!
そして私はすぐに陛下の横へ飛んだ。
ワドルディたちに叫ぶ。
「陛下を安全な場所へ運ぶ!ここは任せるぞ!」
有無を言わせず、陛下を抱えた。視界の端にうつる、離れた場所にいるリーノの所へと運ぶ。
そこにはメタナイト卿もいた。二人がいてくれたら、大丈夫だな。
「リーノ、それにメタナイト卿。陛下を頼む」
「いや、もう終わる。見ろ」
メタナイト卿が後ろを指した。
カービィが変身するところだった。
勝ったな。
ホームヘルパーロボはやられ、陛下のヘソクリは無事だった。
ワドルドゥ隊長を含め、ワドルディたちも城に戻ってくる。
めでたし、めでたし……だな!