リーノ、アーニャ、ランタンと共に夕食を食べていた。
今日は私の部屋で、女子会を開いて絶えず笑い声を響かせた。
そんな楽しい一時に、異変は起きた。
窓の外が光った。
外に目をやれば、空から降ってきただろう光の玉が、森の方に落ちていく。
「なんだろう」
「イヤな予感がしますね……」
「アーニャとランタンは地下へ降りてくれ。その方が安全だ」
「カノープスとリーノは、どうするのですか?」
「いくら二人が特別だからって、無茶はダメよ……」
私は緩く微笑んだ。
「陛下をお守りするだけさ。なあ、リーノ」
「ええ。先日のこともありますし、力になりたいの」
「――止めても、決意は固いですよね」
「気をつけて。ただし、ケガはしないように」
私とリーノは力強く頷いた。
――――――
夕食後。
アーニャとランタンは地下に行ってもらい、私とリーノは城の橋に向かった。陛下に会うためだ。
数分待っていると、高級車が通る。陛下とエスカルゴン殿である。
高級車は私たちの前で停まった。
陛下とエスカルゴン殿は驚いた声を出した。
「なぜ、ここにカノープスとリーノがおるゾイ」
「もう暗いんだから、部屋に帰るでゲスよ」
「陛下たちのことが気になりまして……お二方はどちらに?」
「あの光が森に落ちた。調査してくるゾイ」
「――そうだ!カノープス、ついてきてくれでゲス!そうすれば安全……いって!!」
ガツン!と陛下のハンマーがエスカルゴン殿の後頭部に下ろされる。
「それはならんゾイ!」
「な、なんで……?」
「なぜもへったくれもない!カノープス、城を守れ!リーノ、帰ったらホットミルクを飲む!用意しておけい」
「はっ。かしこまりました」
「お二人の分、ご用意させていただきます」
「うむ」
車は発進した。
行き先は、陛下の言う通り森だ。
私たちは車が見えなくなった頃に、城の中へと入っていく。
「まずはミルクの残量を確認しようか」
「そうですわね。おかわりの分もあればいいんですけれど」
調査だけなら深追いはしないし……大丈夫だと思った。
結果、高級車はボロボロになりつつも、陛下たちは無事に帰ってきた。
大声でメタナイト卿たちを呼び、城を守るよう叫ぶ。
……このシーンを、私は知っている。なんの回だっけ?
「カノープス!カノープスはおるか!?」
呼ばれた。行かなきゃ。
陛下たちが見える廊下から、ひらりと外へ飛び出す。いつもの要領で魔法を地面に向かって噴射し、ゆっくりと地上に降り立つ。
そして駆け足で陛下のお側に寄った。……うん。見える箇所に大きなケガはしていないな。
「参上しました。陛下」
「側に仕えよ」
「かしこまりました。どちらに向かいますか?」
「ワシの部屋ゾイ」
「リーノは厨房でゲスか?」
「はい。合流するよう伝書鳩を飛ばしますね」
「は?伝書鳩?」
私はニヤリと笑った。
「お見せします」
両手を重ねて魔法を込める。
手の中で卵が孵化するように、光の玉から小鳥を作り出す。上に重ねていた手を離して、光る小鳥を陛下たちに見せた。
「おお」
「キレイでゲスな」
私は光る小鳥に声を吹き込む。
「リーノに伝えて。陛下とエスカルゴン殿と私は、陛下の部屋に向かう、と」
光る小鳥を空に掲げる。光る小鳥は舞い上がり、上階の厨房へと飛んでいく。
リーノ、アーニャ、ランタンと、攻撃以外の魔法の使い方を考えたのだ。何度も練習して、今のようにすぐに使えるようになった。
誰にでも使える訳ではないけれど、携帯がないこの村ではかなり便利だ。
飛び立った小鳥の後ろ姿を目で追いかける陛下たち。私は自慢したい気持ちを抑えつつ、「さあ、お部屋へ行きましょう」と言った。
陛下の自室に到着する。
すでに中にはリーノがいて、陛下とエスカルゴン殿に頭を下げた。
「陛下、閣下。よくぞご無事で……お怪我はありませんよね」
「問題ない。まったく!酷い目にあったゾイ」
陛下はリーノからホットミルクを受け取り、一口飲まれた。エスカルゴン殿も、同じように飲む。
私は片手をゆるく挙げて、お二人に聞いた。
「車がボロボロでしたね。攻撃されたのですか?」
「そうだゾイ!ミサイルを撃って来よった!あれはワシを狙う暗殺者ゾイ」
「いや、おそらく借金取り魔獣でゲス」
「暗殺者、借金取り……」
私はピーンと来た!
シリカの回だ。……ということは陛下たちは問題ないけれど、危険な魔獣がデリバリーされてしまうな。
倒すのに協力しよう。戦力は多い方がいい。それに……。
チラリとリーノを見る。
確か、彼女も戦場へ向かったはずだ。側にいなきゃ、守れない。
そっと、窓側に移動しておく。
窓に人影が見えたその時、私は氷で壁を作った。
一拍遅れて、窓ガラスが割れる音が部屋中に響く。
「きゃ!」
「ひえー!お助けえ!」
「なんゾイ!?カノープス!」
「三人とも逃げて!」
氷の壁が爆発して消し飛んだ。
煙が舞う向こうにいたのは女の子だ。
女の子は、私を見て驚いた様子を見せたが、すぐに銃を構えた。
「アイツでゲス!」
私は腕を捕まれ後ろに引かれた。
「逃げるが勝ちゾーイ!」
「陛下!」
陛下に引っ張られて、私とリーノは部屋から飛び出した。遅れてエスカルゴン殿も走って来る。
後ろで耳が痛いほどの爆発音が聞こえた。
私は陛下を左に抱え、リーノを右に抱えて走り出す。角を曲がったところで、エスカルゴン殿を待つ。
追いついたら、エスカルゴン殿は背中に乗ってもらい、また走り出した。
「玉座に向かうゾイ!」
「御意」
今日ほど鍛えておいてよかった、と思った日はない。
多少の余裕を持ちつつ、私は廊下を駆けていく。
後ろで爆発音は聞こえなかった。
玉座の間に到着したら、陛下はすぐにカスタマーサービスを呼び出したので、私とリーノは隠れた。
できるだけ、ホーリーナイトメア社の前に姿を出したくなかったからだ。
陛下から侵入者の特徴を聞いたカスタマーサービスは、すぐに魔獣を送ってきた。
陛下の三倍はありそうな大きな体の魔獣は、たいへん強そうだ。
魔獣は雄叫びを上げると、玉座の間の扉を壊して、そのままどこかへと走り去る。
『では、吉報を待ちましょう。ホホホホホ……』
そう言って、天井から出ていたモニターが仕舞われた。
私とリーノはその瞬間を狙って、魔獣の後を追いかける。
「どこに行くゾイ!」
「様子を見てきます!すぐに戻ります!」
リーノを抱えようとして、断られた。
「わたくしだって走ることぐらいできますわ!」
そう言って、床を凍らせてアイススケートのように滑りだす。
軽く走る私よりも速い。
二人で玉座の間の向かい側、ベランダから飛び降りる。
私は魔法を下に噴射して落下速度を減速させ、リーノは氷で巨大な滑り台を作り、地面に降りた。
リーノに遅れないよう走る速度をあげる。二人並んで、魔獣を追いかけた。
「魔獣がいる先に、カービィたちがいると思う!」
「ええ、わたくしも同じ考えですわ」
「戦闘が始まったら、とにかく様子を見るぞ」
「わかりました」
魔獣は森に入った。
ここからはスケートで上手く滑られない。私はリーノを抱えて、走り出した。
「すみません!」
「いいんだ。任せてくれ」
カブーの谷が近くなってきた。
そして、光の柱が夜空に向かってのびる。
「あれは……」
「急ぐぞ」
戦場は近い。
カブーの谷に到着して、すぐに岩陰に隠れた。リーノを降ろして、様子を伺う。
戦闘は始まっている。
魔獣にシリカが吹っ飛ばされ、ソードナイトとブレイドナイトでは歯が立たず、ソードカービィでも敵わない。
そこでシリカが宝剣に手を伸ばした。辺りは電撃と光に塗りつぶされる。
「受け取ってー!!!」
シリカはカービィの方へ剣を投げた!
私は魔獣の足に狙いを定めて、氷の槍を投げる。
魔獣は氷の槍を砕いた。
今度はリーノが魔獣の足元を凍らせる。
魔獣が一瞬体勢を崩した。
全ては五秒。それだけでよかった。
カービィは無事宝剣を掴み、凄まじいエネルギーのソードビームを魔獣に放つ。
――魔獣は切り裂かれた。
真っ二つになり崩れて、爆発した。
魔獣が復活しないことを確認してから、私たちはカービィたちと合流した。
全員無事だ。それぞれ多少怪我をしているので魔法で治しておく。
シリカが話しかけてきた。
「すごい。癒しの力が使える人を初めて見たわ」
「そうか?……カノープスだ。よろしく。さっき会ったな」
「あ、私はシリカ。お城を襲ってごめんなさい」
「城は大丈夫だ。壊され慣れているからな」
笑ってそういうと、シリカもつられて笑った。
冗談に聞こえたんだろう。本当だぞ?
――――――
シリカはすぐに宇宙船で帰って行った。
リーノは「お城を直すの、手伝っていただきたかったですわ」とぷりぷり怒っていたが、私はこれでよかったと思っている。
陛下なら法外な慰謝料というか、とにかくふっかけてくる。逃げた方がいいだろうな。
明朝、みんなで歩いて城に帰る。
城の橋の上で、大臣夫婦がフームとブンを迎え抱きしめた。お二人は、どうやら寝ずに待っていたらしい。
大臣一家と共に、部屋に帰っていくカービィと別れる。
「そうだ。アーニャとランタンならお城の地下に避難しているから、会いに行ってやってくれ」
それを聞いたソードナイトとブレイドナイトが、メタナイト卿を窺った。
メタナイト卿は「会いに行くといい」と穏やかな声で言うと、従者二人は喜んだ。
足取り軽く歩いていく二人の背を見つつ、残った二人に言う。
「リーノ。陛下への報告は私が済ませておくから、メタナイト卿と帰るといい」
「でも……朝食の準備があるでしょう?」
「私がやる。トーストにすれば準備に時間はかからないさ。……今はメタナイト卿と一緒に」
「わかったわ……ありがとう。カノ」
リーノたちとも別れて、私は一人で陛下がいる玉座の間に向かった。
シリカについては「追い返した」と報告する。
陛下は満足された。
「安心したら腹が減ってきた。今日はなんゾイ?」
「トーストです」
「ト……!?」
「夜ご飯は豪華にしますので、朝は簡単にします。さあ、厨房に行きましょう。できたての方が美味しいですからね」
陛下に手を差し出す。
陛下は渋々といった具合で、それでも頬を染めて、私の手を握った。