カノープスの終生   作:紅絹の木

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スナックジャンキー

 

 

 陛下とは、毎日お会いしている。

 ただ、ここ最近はいつもと違っていた。

 

 私と出掛けてくださるが、いつもチップスを食べているのだ。

 そしてお菓子でお腹が満たされるため、食事を食べなくなってしまった。

 

 そして見事に太った。

 いや……巨大化した、と言う方が正しいだろう。

 通常の陛下の三倍はあるお姿になってしまったのだ。

 

 自分が不甲斐ない。陛下を止められなかった。

 そう思っていたのだが、リーノに泣かれてもチップスを手放さない陛下を見て、思い出した。

 これ、マッチョさん回じゃないのか?エクササイズの魔獣がデリバリーされて、みんなが踊るシーンがある回。

 ……踊りたくはないな。

 

「カノ、カノ。あなたからも何か言ってください。陛下を止めて」

「うん?ああ……そうだな」

 

 リーノ、アーニャとランタン。大臣一家、カービィ、エスカルゴン殿。そして陛下の視線が集まる。

 私はリーノの側に……陛下の前に膝をついた。そして、陛下の柔らかい手を両手で包む。

 

「陛下、これじゃ天体観測ができませんよ」

「うぐ……ワドルディたちがいれば、問題ないゾイ」

「二人きりでは、なくなりますね」

「!それは嫌ゾイ……」

 

 本当に嫌そうだった。――嬉しいな。自惚れてもいいだろうか。

 

「ワシはどうすればいいゾイ」

「まずは医者に診てもらいましょう。そこから解決の糸口が見えてくるはずです」

「うむ。兵士!ワシをヤブイのところへ連れていくゾイ!」

 

 陛下は分厚い板に乗せられて、五十名くらいのワドルディに運ばれていった。ワドルドゥ隊長とエスカルゴン殿も、一緒にヤブイ先生のところへ行く。

 リーノはまだ泣いていたけれど、陛下が痩せることに前向きになったためか、安心して笑みを見せてくれた。

 

「ありがとう。やっぱり陛下にはカノがいないといけませんね」

「陛下ったら、カノのことになるとやる気を出すのよね」

「やっぱり、アレですよね……」

 

 温かい視線がくすぐったい。

 

「アレとはなんだ?」

 

 ぐるりと、玉座の間に残ったメンバーを見回す。

 みんなが視線を逸らした。

 

「教えてくれないのか?」

「アレは、カノ自身が気づかないと意味がないのです。大丈夫。陛下をちゃんと見ていれば、いつか必ず気づきますわ」

「……そうか。わかった」

 

 教えないのではなく、教えられないのか。ならば仕方ないか……。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 部屋の片付けはするな、と陛下に言われてしまった。なので、一旦はそのままにして通常業務に戻る。

 陛下は三時間ほどで戻られた。

 変わり果てた陛下のお姿を見ると、やっぱりリーノは泣いてしまう。だからエスカルゴン殿に村に行って気分転換してくるように言われてしまった。

 

「カノープス、アーニャ、ランタンも!リーノについていくでゲスよ」

「かしこまりました。夕飯はカワサキさんの店で食べてきますね」

「はーい。行ってらっしゃいでゲス」

 

 よし。なんとか城から離れられたな。これでマッチョさんとは会わないし、踊らなくていいし、崩れゆく城から身を守ることができる。

 

 城から離れて、村への道を進む間も。リーノのすすり泣く音が止まない。

 心配になって声をかけた。

 

「リーノ、何がそんなに悲しいんだ?陛下なら、しぶといから大丈夫だぞ」

「そうだけど……でも健康的ではないから……あのままじゃ、本当にご病気になってしまうわ」

「怖いんだな」

「そうよ。ぐす……カノは怖くないの」

「大丈夫だって、信じているからな」

「すごいわ」

「楽観的なだけさ」

 

 話せば楽になったのだろう、少しだけリーノは落ち着いてきた。

 ショッピングに行こうと思っていたが、このままカワサキの店に寄ることにした。

 水分補給しないと、リーノが泣きすぎで脱水になるぞ。

 

 

 

 カワサキの店で、ジュースを飲んでまったりとする。とにかくリーノには休息が必要だったから。

 しかし、やがて振動を感じた。

 地震か?……いや、これって。

 

 店を出て、城の方を見る。――城がなくなっていた。

 すぐに店の中に戻る。

 

「リーノ、アーニャ、ランタン。城に戻るぞ」

「どうして?」

「城がなくなっている」

 

 私たちは勘定を素早く済ませて、城までの坂道を走った。

 橋は降ろされているから、崩れた城の様子がよくわかる。もう全部崩れていた。レンガの山だ。

 

「陛下!エスカルゴン殿!」

 

 お二人は、レンガの山からすぐに出てきて、こちらに走ってきた。

 そう走ってきたのだ。陛下はすっかり、いつものお体に戻っていた。

 

「逃げるゾーイ!」

「マイクカービィでゲス!耳がやられるでゲスよ!」

「……何も聞こえませんよ?」

 

 私がそう言うと、陛下は耳をすました。辺りは静かだった。

 陛下とエスカルゴン殿はその場にへなへなと座り込んでしまった。

 私はほっと息を吐く。

 

「お二人は無事だったな。あとは大臣一家とメタナイト卿たちだ」

「カービィに吸い込んでもらえば、いいですよね?」

「ああ。彼を探そう」

 

 カービィもすぐに見つかった。やはりピンク色は目立つな。

 彼に頼んでレンガを吸い込んでもらう。あっという間にレンガは全てなくなった。

 埋もれていたみんなは、大したケガもなく助け出せれた。

 

 

 それから、一週間。

 

 

 城が造られる間、私は陛下と過ごした。

 海へ行き、山へ行き、村へ遊びに行って、本を読み、共に天体観測をした。

 陛下が望んでくださったのだ。

 あまり城を造る手伝いはできなかった。だが、エスカルゴン殿に「陛下の相手をしてくれて助かる」と言われたので、これで良かったのだろう。

 

「カノープス!楽しいかゾイ?」

 

 川にて、みんなと食べるための魚釣りをしている最中。そう聞かれた。私は正直に答えた。

 

「はい。みんなにはちょっと悪いですけれど、とっても楽しいです」

「ぐふふ!そーか、そーか!」

 

 ちなみに、魚の数は私が一匹リードしている。

 それでも、陛下は楽しそうに釣りをされていた。

 それが、なんだかものすごく嬉しくて、自分が特別になった気がした。

 

 

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