カノープスの終生   作:紅絹の木

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ペンギー

 

 

 今日は、昼前から寒かった。

 朝は「暑い」と、みんなが話していたのに。

 なぜだか気温は低くなり、夕方には赤トンボが飛び、夜には雪が降ってきた。

 

 村の方でも、城の方でも、冬支度で走り回ることになった。

 滅多に出さない冬物を取り出して、夕飯は鍋にして、風呂ではヒートショックが起きないように温度差に気をつけて。

 やっと夜になって落ち着いた。

 

 今日は、私の部屋に集合して女子会をする日だ。

 リーノ、アーニャ、ランタンと私で集まって眠れば、夜の寒さもしのげるだろう。

 そう思っていたんだがな……。

 

 陛下のお部屋にて。

 部屋の主はお風呂に入っており、不在だ。私とメイドである三人だけが部屋にいた。

 そこで仕事をしていたのだ。出してきた冬服を、朝にはすぐに着替えられるように整えたり、就寝前に読み聞かせる本をベッドの枕元に置いたり、アロマを焚いたり、部屋を暖かくしたり、ベッドに布団乾燥機をかけて暖かくしたり。

 やることが多い。

 

 だが、そんな忙しい夜も終わりだ。

 私は三人に、声を弾ませて話しかけた。

 

「今日の女子会、楽しみだよ。でも今日は疲れただろう?すぐに寝るか?それとも少し話すか?」

「カノ……そのことなんだけど……」

「どうした?」

 

 冬服をハンガーに通し、壁にかけておく。それが終わってから、言い淀むリーノの方を向いた。

 リーノは申し訳なさそうな顔をしていた。

 これはもしや……。

 

「直前になってしまって申し訳ないのだけど、女子会の日にちをずらしたいの」

 

 やっぱり。

 私はちょっとだけ唇を尖らせた。顔を隠す兜では、見えないだろうけれど。

 

「それはいいが……理由を聞きたい」

「あのね、メタナイト卿が一緒にいたいって仰ったの」

 

 リーノの頬が赤く染まった。それに、表情が緩まり笑顔になった。

 綺麗だな、と私は心から思った。

 メタナイト卿は、いや恋人というものは、相手をこうも美しく変えるようだ。

 まるで恋は魔法だな。

 ――自分も、少しは魔法にかかっているだろうか?そうだといいな。

 

 私は尖らせた唇を元に戻す。

 作業を終わらせて、私たちを見守っているアーニャとランタンも、多分リーノと同じだ。

 だから、二人の方も見た。

 

「二人も恋人に“会いたい”と、言われたのか?」

 

 そう声をかければ、二人もおずおずと話だす。

 

「実はそうなの。だから、その……」

「普段は、あまりお願いを口にしてくれない人だから、できたら叶えてあげたいです」

「そうか……じゃあ、日にちをずらそう。妹のように可愛い三人の、そんな笑顔を見たら、応援したいからな」

「ごめんなさい。カノ、埋め合わせは必ずしますね」

「じゃあ、次の女子会は絶対に延期しない……これでどうかな?」

 

 リーノたちは力強く頷いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 仕事が済んだので、リーノたちは先に帰っていった。

 それぞれの自室で、恋人たちと会うらしい。仲良きことは素晴らしきかな。

 

 陛下の部屋に置かれた、私用のソファ……シンプルで薄いけれど座り心地は良い……に座り、陛下がお風呂から上がるのを待つ。

 前は入浴の手伝いもしていたが、今は避けられるようになった。

 嫌われているわけではないのは確かだが、理由がわからない。

 まあ、付き合っていない好いた相手の入浴の手伝いなんて、目のやり場に困るから遠慮させてもらうけどね。

 

 お風呂場で、物音が聞こえる。

 やがて部屋とお風呂場を繋ぐ扉が開いた。

 

「今、上がったゾイ」

 

 陛下だ。バスローブに身を包み、牛乳瓶を片手に出てきた。牛乳瓶の中身はフルーツジュースだ。

 部屋は十分、暖かいので陛下はバスローブ一枚でも平気そうである。

 私はソファから立ち上がる。そして陛下の方へ歩み寄った。

 

「就寝の準備は整っております」

「うむ。まだ眠らん。飲みながら続きを聞くゾイ」

「かしこまりました」

 

 陛下は、一人用のソファに座った。その間にも、ゆっくりとフルーツジュースを飲む。

 私は、ベッドに置いた数冊の本の中から一冊を手に取った。

 一人の少年が、友人や仲間と共に、魔法学校で不思議な事件に挑む物語。そのシリーズ二作目が、この本だ。

 その本の表紙には、カービィによく似たキャラクターが描かれていた。

 

 途中まで読んでいる本はこれだけなので、迷わず手に取ることができた。

 陛下の一人用ソファの向かいに、私用のソファが置かれている。小さなテーブルを挟んで、向かい合うように。

 私が座ると、陛下は言った。

 

「そろそろ兜を取るゾイ」

「ああ、そうですね」

 

 今は仕事の時間というより、こう、陛下とのまったりした時間なのだ。

 兜はいらないだろう。なので脱ぐ。兜は、私の隣に置いた。

 

「ふう……」

 

 圧迫感から解放されて心地よい。

 じっと見られている視線を感じたので、そちらを見返す。

 ばちっと目が合った。鼓動が速くなる。

 

「あの、何か?」

「カノープスは、そっちの方がいいゾイ」

「そっち……兜を脱いだ方ですね。ずっと顔が見えるようにしましょうか?」

「いや。それはせんでいい」

「かしこまりました。では、このままで……。本、読みますね」

「うむ」

 

 それからは、穏やかな時間が流れた。

 陛下は私の朗読に耳を澄ませて、じっくりとフルーツジュースを味わう。

 その姿の、なんと優雅なことか。

 

 キラキラと光って見える陛下に、胸が高鳴る。

 本を楽しむこの時間を、私は愛していた。

 陛下も同じ気持ちだといいな。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 翌朝。

 冬の朝は寒すぎる。

 忘れていた空気の冷たさに、体が震えて止まらない。

 

 なので、魔法で部屋中を温めた。

 ミニ太陽を作ったのだ。

 柔らかな光の玉を空中に浮かべ、周囲を温められるよう熱を含ませる。

 

 時間が経てば冷たい空気は温まり、この部屋だけは春のように爽やかだ。うん、いい感じ。

 そしてミニ太陽に、私を追尾するよう念じる。

 ミニ太陽は、寝室から出る私の後ろを追ってきた。

 成功である。

 

 

 

 朝食を食べて支度を済ませる。

 それから着用するのは、冬用の装備だ。

 耳まで隠れるフェイクファーの帽子に、手袋はいつものを。服は薄くも保温性のある物を重ねて、革鎧を着て、最後にマントを羽織る。

 もちろん、鉄パイプも忘れない。

 

 

 

 準備ができて一番に向かった先は、陛下のお部屋だ。

 廊下は、ミニ太陽があっても冷たい風が吹いて寒いので、扉をノックしたらサッと中に入らせてもらう。

 冷気が入る前に扉を閉めた。

 

「陛下、おはようございます。カノープスです」

「ん……まだ眠いゾイ」

 

 天蓋付きベッドの中から声が聞こえた。

 やっぱり、部屋が温かくならないとダメか。

 

「ミニ太陽よ。部屋の中央へ、空気を温めろ」

 

 光の玉はゆらりと飛んで、部屋の中央の天井に移動した。そこで輝いている。

 ……わずかに部屋の温度が上がったような気がした。

 私は満足し、次にとりかかる。

 

 

 

 部屋も十分に温まり、陛下がそろそろ支度を済ませる……そんなときだった。

 

「おはようございます。陛下、食事の準備が整いました……。あら、カノが陛下の支度を整えてくれたのね。ありがとう」

「リーノ、おはよう。ああ、早く起きたのでな」

 

 互いに挨拶を交わす。

 うん。リーノの調子は良さそうだ。

 朝方は特に冷え込んでいたので、風邪をひいてやしないか心配したのだ。

 私は胸を撫で下ろす。

 

「今朝は酷く寒かった。けれど体調は良さそうで安心したよ」

「エアコンをつけて、部屋を温めておいたから大丈夫だったわ。……初めて見る魔法ね」

 

 部屋の中央で今も輝いているミニ太陽を、リーノは眩しそうに見上げた。

 

「これか?ミニ太陽だ」

 

 簡単に説明すると、リーノががくりと肩を落とす。

 

「もっといい名前があるはずだわ。例えば……」

「例えば?」

「――太陽の息子、とか」

 

 それを聞いて懐かしい気持ちになった。

 確か、某ゲームにそんな名前の敵が出てきたはず。

 あれは倒すのに苦労したなあ。

 そして私は微笑んだ。

 

「いいな。じゃあ、太陽の息子で。――決まりだ。覚えるように」

 

 太陽の息子は、一瞬だけ一際輝いてみせた。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 昼には、ペンギー族というペンギンの一族が、ププビレッジにやって来た。

 彼らは巨大な氷塊に住んで、広い海を旅しているようだ。

 そんな旅人たちをもてなすために、夜に村で雪祭りが開催された。

 

 屋台を楽しみ、電飾に照らされた氷像に見惚れ、異文化を触れる。

 子供にも大人にも、良い刺激的な夜だった。

 

 リーノ、アーニャ、ランタンに加えて私で、氷像を見て回る。

 メタナイト卿の氷像が、特に気合を入れて造られている……ように見えるのは、気のせいではないだろう。

 全てを見回して、あることに気づいた。

 陛下とエスカルゴン殿の氷像がないぞ。

 

「陛下と閣下の氷像がないわ……」

 

 リーノも気づいたようだ。私は提案する。

 

「帰ったら、ワドルディたちに造ってもらおう」

「それは名案だゾイ!」

 

 後ろから陛下とエスカルゴン殿が歩いて来た。

 陛下の手には、なぜかハンマーが握られている。

 

「陛下、なぜハンマーをお持ちなのですか?ここに壊すようなものなど、ないはずですが?」

 

 そう質問すると、エスカルゴン殿が「にひひ」と笑う。

 

「これは視線を独占した氷像を壊そうと――」

 

 ドカン!

 びっくりした。陛下がエスカルゴン殿を、ハンマーで殴ったのだ。

 

「いってーな!」

「余計なことを言うでないゾイ!……コホン。ワシの氷像ならば明日、見せてやるゾイ」

 

 自慢気に仰る陛下に対し、私とリーノは期待を寄せる。

 

「それは、さぞ立派な像になりますね」

「楽しみです。陛下」

「うむ。大いに期待するが良いゾイ!デハハハハハ!」

 

 ご機嫌な様子の陛下を見て、私もつい頬が緩んだ。

 

「ところでカノープスよ。屋台は巡ったか?」

「はい。リーノたちと一通り食べ歩きました」

「では、ワシを案内せい」

 

 その言葉に頷こうとして、リーノに手を引かれる。

 どうしたんだろう?リーノを窺うと、彼女はこちらを見て、にこりと笑うばかりだ。

 

「ごめんなさい。用事を思い出したの。陛下、すみませんがカノを連れて行きますね」

「なに?」

「失礼します。アーニャとランタンも来てください」

「わかったわ」

「ついて行きます」

「リーノ?失礼します。陛下」

 

 リーノが珍しく早歩きで城の方に向かうので、私も歩調を合わせて歩く。

 その間も手を握ったままだ。

 

 

 

 しばらくして村の外れ、人気がなくなった場所でリーノは立ち止まる。握った手も離れた。

 そこに、木の影からメタナイト卿が現れた。

 

「メタナイト卿」

「急ぎ城の地下へ。ソードとブレイドと合流しろ」

「かしこまりました。みんな、行きましょう」

「――わかった」

 

 ああ、ペンギーたちが動き出すのか。

 村のみんなも陛下たちも捕まるが、誰もケガをしなかったはず。

 まずはリーノたちを安全な場所に送ろう。

 

「三人とも、掴まってくれ」

 

 そうして私は両手を広げ、三人を抱えた。

 

 

 

 

 ――――――

 

  

 

 

 急ぎ城の地下へ身を隠す。

 どうやら城の地下厨房までは、ペンギーたちも追ってこないようだ。

 というか、まだ気がついていないのかも。

 

 地下厨房。三組の恋人たちが、食事会に使うこの部屋に集合した。

 三人の戦士と、三人のメイド、それに私が向き合って話し合う。

 といっても、メタナイト卿の指示通りに動くだけだが。

 

「――今回は、カノープスの力を借りたい」

「リーノたちが安全ならば、行きます」

「カノ!……メタナイト卿、その任務は安全なのですか?」

「城の牢屋に入ってもらうことになるだろう。が、危険はないはずだ」

「そうですか……。でしたら、わたくしは止めません。カノ、無茶しないでね」

 

 リーノは心配そうに私を見上げる。

 彼女の両手をそっと握り、安心させるように言う。

 

「大丈夫だ。ちゃんとメタナイト卿の指示通りに動く」

 

 リーノは「約束よ」と言った。

 

 

 

 作戦はこうだ。

 いずれ来る反撃のときのために……カービィを援護するために、ペンギーたちの中に紛れ込む。

 ペンギーに変装するのはメタナイト卿。ソードナイトとブレイドナイトは、念のためにリーノたちの護衛。

 

 作戦を聞かされたリーノたち三人は、メタナイト卿が着る本物そっくりなペンギーの着ぐるみを、急ぎ作る。

 ペンギーに変装したメタナイト卿は、カノープスを捕まえたフリをして、ペンギーたちに差し出す。

 

 カノープスは城の戦士として目立っていた。

 そのカノープスを捕まえたペンギーとなれば、それなりの地位と自由を与えられるだろう。

 メタナイト卿はペンギーたちの情報を得るためにも、カノープスの協力が必要だった。

 

 カノープスとしても、掃除をさせられている陛下とエスカルゴン殿を助けるため、動く必要があった。

 

 

 

 

 ここは地下厨房から上がって、玉座の間。

 そこへメタナイト卿に連れてこられた。

 

 城にはあちこちにペンギーがいて、ワドルディたちが持っていた槍を装備している。

 道中のペンギーたちは私たちに驚き、そして私を連れて歩くペンギー(メタナイト卿)に、憧れの眼差しを送っていた。

 

 そして到着した玉座の間。その扉の前には、二体のペンギー族が守っていた。

 私たちに気づいた二体は驚き、慌てて玉座の間へと入っていく。

 なっていないな。そこは、まず私たちを待たせる。そして一体は族長に報せに行く。許可が出れば入室させる。そんな感じだろうに。

 

「入りますか?」

 

 こくり。

 

 徹底して声を発さないメタナイト卿に連れられて、私たちは玉座の間へ入った。

 なにも変わっていない、いつもの部屋。

 その玉座にはペンギー族の族長が座っている。

 

 ――そこは陛下の玉座だ。

 

 怒りが膨れ上がる。

 ペンギーたちのギョッとする顔が見えて――。

 

 べちん!

 

 足を叩かれた。それで正気に戻る。

 頭をブンブンと振って、気持ちを切り替えた。

 今は任務中だ。怒っている場合ではない。

 

 メタナイト卿に引っ張られ、私は部屋の中央まで歩く。

 中央で、どすんと音を立てて座った。

 いかにも、ここに無理やり連れてこられました……そんな風に見えるように。

 

 族長はごほん、と咳を一度した。

 それから余裕たっぷりに口の端を上げる。

 

「城の戦士を捕まえたか。よくやった」

 

 ペンギー(メタナイト卿)はビシッと敬礼を決める。

 それに対して満足そうに族長は笑みを深めた。

 

「無口な奴だ……。まあいい。お前には褒美をやらんとな。しかし、今は国を乗っ取っている最中だ。……門番に任命する。怪しい奴は……わかっているな?」

 

 ペンギー(メタナイト卿)はもう一度、敬礼を決めた。そして族長に対し恭しく頭を下げると、部屋から出ていく。

 

 私はというと、玉座の間に置かれた。

 なんでも、この国最強の戦士が捕まっている姿を見せつけて、城やみんなの戦意を削ぐため……らしい。

 最強はカービィだと思うが、今は黙っておこう。

 

 私は鎖に繋がれて、部屋の端に放置された。

 食事は朝になったら食べさせてくれるらしい。

 ……食事は全て生魚じゃないよな?

 

 

 

 

 とにかく、カービィとフームとブンたちが玉座の間まで乗り込んでくるはずだから、そのときを待つ。

 寝不足ではいけないので、しっかり寝ておいた。

 

 そして数時間後。

 カービィたちが乗り込んできた!

 それに対して族長は余裕の笑みを見せる。

 

「フン!こちらには、この国最強の戦士がいるのだぞ?あれが目に……あれ?」

「私がどうかしたか?」

 

 鎖を引きちぎり、部屋の端からカービィたちがいる場所へジャンプする。

 静かに着地すると、三人は笑顔で私を迎えてくれた。

 

「カノープス!やっぱり捕まったフリをしていたのね!」

「ちょっとビビったじゃんか!」

「ぽよ!」

「すまない。みんなを援護するために、こうして捕まっていたんだ」

 

 そして族長と対峙する。

 怒った族長は氷の息を吐いた。その氷の息をカービィは吸い込み、アイスカービィとなった!

 族長とアイスカービィの氷の息がぶつかる!

 ――互角だ。

 アイスカービィと同じ威力のブレスを吐けるとは、あの族長やるな。

 

 氷の息通しがぶつかり、辺りが白く染まった。

 私は天井に回避した。そして逃げるアイスカービを追っていく族長と、そんな二人をフームとブンが追っていく。

 さて、こちらは陛下を探すか。

 

 

 

 陛下は、玉座の間から近い廊下で、掃除していた。

 エスカルゴン殿も一緒だったので、二人まとめて後ろから抱え込み、天井へ避難する。

 

「失礼します」

「な、なんでゲスか!?離すでゲスよう!」

「落ち着けい!カノープスだゾイ!」

「へ?ありゃ……本当だ……。陛下、よくわかったでゲスね」

「ふん!このくらいは当然だゾイ!カノープス、よく来た!こんな所からさっさと逃げるゾイ!」

 

 私は頭を横に振った。

 

「逃げるのではなく戦いましょう。今、カービィがペンギー族の族長と戦っています。今こそチャンスです!城を、村を取り戻しましょう」

「どうするんだゾイ?」

「――雪を溶かして、相手の戦意を失くすとか?」

「――名案だゾイ!カノープス、ワシを玉座へ連れていけ!」

「御意」

 

 ちょうど、下の廊下ではアイスカービィと族長、その後を追っているフームとブンが走っていった。

 

 玉座へ急いで向かう。

 

 

 

 陛下たちを気遣う余裕はなかった。なので、お二人はかなりの揺れを我慢してもらった。

 

 玉座の側に二人を下ろす。

 陛下もエスカルゴン殿も、よろよろとなりながら玉座のスイッチを押す。私は二人から距離をとった。

 

 天井の一部が開いて、モニターが出てくる。

 モニターに表示されたのは、カスタマーサービスだ。

 

『陛下、ご機嫌麗しゅう。今日はどのようなご用件で?』

「何でもいいから……暑くなるやつ、持ってこい……ゾイ……うぷ」

『おやおや、調子が悪いご様子。さっさと済ませてしまいましょうか。どうぞこちらの商品をお受け取りください。ボルケーノ増強薬です。それではご自愛ください。おほほほほ……』

 

 そこでプツンと、画面は暗くなった。

 すぐにデリバリーシステムが動き出す。そして部屋の中央には赤いボーリング玉のような物が、デリバリーされた。

 

「カノープス!」

「はっ!」

 

 陛下に呼ばれ、何が言いたいのかわかった私は、ボルケーノ増強薬を持って走った!

 廊下に出ると、アイスカービィがワープスターに乗って空を飛んでいる姿を、見つけた。

 

「カービィ!これを受け取れ!」

「ぽよ!?」

「ボルケーノ増強薬だ!それを火山に投げ込むんだ!」

「ぽよよい!」

 

 ボルケーノ増強薬を、アイスカービィに向かって投げる。

 アイスカービィはそれを受け取り、あっという間に火山の方へ飛んでいく。

 

 ――やがて地響きが聞こえてきて、雪雲が晴れていく。

 

「ああ……いつもの青空だな」

 

 雪はどんどん溶けていった。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 ペンギー族たちは、カービィに敗れたその日に、また旅に出た。

 彼らのためにも、私たちは考えてエネルギーを使う必要がある。

 

 

 

 数日後のある日。

 陛下とエスカルゴン殿が、エアコンと扇風機をつけて暑い場所にいた。

 呆れた私とリーノは、エアコンと扇風機の電源プラグを抜く。

 そして何か言われる前に、氷を作って差し上げた。

 

「冷たい物が欲しいのでしたら、わたくし共がお持ちします。ですから……」

「エネルギーの無駄遣いは、ほどほどにお願い申し上げます」

 

 陛下は睨みつけるように、こちらを見上げた。

 

「ぐぬぬ……カノープス、横であおぐゾイ」

「かしこまりました」

 

 リーノが氷と、優しくて冷たい風を作り出す。

 私は、陛下の隣で団扇をあおいだ。

 陛下はちょっとだけ怒っている様子だったが、アーニャとランタンがかき氷のセットを持って来ると、その機嫌もすぐに良くなった。

 

 

 

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