カノープスの終生   作:紅絹の木

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魔獣生徒

 

 城の洗濯場、昼下がり。

 二回目の洗濯物をワドルディたちと干しているときだった。

 リーノが走って来た。

 

「カノ、聞いてちょうだい!陛下が、また学校を創ってくださるの!」

「おお!良かったな、リーノ」

「ええ!これで子供たちは、雨の日だって勉強ができますわ」

 

 リーノの瞳はキラキラと輝いている。私は、興奮した様子のリーノにもう一度「良かったな」と声をかける。

 妹はニコニコと笑った。

 

 さて、二回目の学校回か……ということは、不良たちがやって来るのか。

 リーノは強い。イタズラにだって負けたりしないが、念の為に学校に行くときは同行したい。

 私は、洗濯物を干す手伝いをしてくれるリーノに礼を言って、それから質問した。

 

「ありがとう。それで……リーノは、学校でどんな手伝いをするんだ?」

「わたくしは給食を作るの。ああ、今から待ちきれません」

「子供たちの喜ぶ顔、早く見たいな」

「ええ、本当に!」

「料理は一人で?良かったら私も同行したいな」

 

 リーノは花が咲くように、満開の笑みを見せてくれた。

 

「カノも手伝ってくれるの?ありがとう!助かるわ!」

「可愛い妹が頑張っているんだ、力になりたいよ。それとアーニャとランタンも誘うか?」

「カノが来てくれるなら、アーニャとランタンには陛下たちのお食事を任せようと思うの」

「それがいいかもな」

 

 水分を含んだ重いシーツを軽々と持ち上げて、私は物干し竿にかけた。

 ――リーノはそんな私を見つめて、ボソリと呟く。

 

「本当は……カノの方がいいかもしれない。でも……陛下ばっかり構うのは、妬けちゃうもの」

「うん?リーノ、呼んだか?」

「そうじゃないわ……ねえ、カノは私がメタナイト卿とばかり一緒にいたら、妬いてくれる?」

「そうだな。邪魔をするつもりはないが、私はリーノが大好きだから。構ってほしくなるよ」

「良かった!……ねえ、私も同じよ」

「そうか。じゃあ、たまには一緒に出かけよう」

「ええ!」

 

 リーノは安心したように、表情を緩ませた。

 そんな妹の頭を、セットが崩れないように、私は撫でた。

 リーノがくすぐったそうに笑う。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 学校は、原作通り進んでいく。

 陛下は、学校の全てをフームに任せた。

 彼女はさっそく、理想の学校を目指す。

 

 子供たちは無償で学校に通い、学ぶことができる。

 先生役は村人たちの中から選ばれた。

 

 素晴らしい学校が始まるはずだった。

 

 

 

 学校が再開してから二日目の昼。

 給食は今日から始まる。

 

 私とリーノ、それに兵士五人は、朝から学校で給食を作っていた。

 生徒たちと先生たち、加えて自分たちの分を作るのだから、結構大変だったよ。食材を大量に調理しないといけないからな。

 万が一のことを考えて、ワドルディ数人を城から借りてきて正解だった。

 なんとか時間内に調理を終えて、給食のカレーライスを教室に運ぶ。

 教室に入ると、まずブンが声を上げた。

 

「この匂い……カレーだ!」

「わあい!リーノのカレー、私好きよ!」

「ぼくも!」

「おれも!」

 

 続けてハニー、イロー、ホッヘが喜びの声を上げてくれる。

 教室は瞬く間に熱気に包まれた。

 そこに、リーノが静かにするよう伝える。

 

「お静かに!前の列の方から順番に呼びますので、他の方は着席したままお待ちください。では、まず一列目の方たちから」

 

 生徒たちは大人しく、行儀良く、順番を守った。

 そして最後に、不良と思われる生徒たちが三人、カレーライスを大人しく受け取る。

 

 ん?何か変だな。

 不良と思わしき生徒たちは、終始私を気にしているようだった。

 しかし、リーノのカレーライスを食べる頃には、食事に夢中になっていた。

 ……まあ、何事もないならそれでいいか。

 

 カレーライスは、生徒たちに大好評だ。

 明日も同じものがいい!そう言ってくれる生徒もいたぞ。

 

 

 

 

 

 それは夕方のニュース番組で流れてきた。

 フームが体罰教師だと報道する内容だった。

 ああ……ホーリーナイトメア社から送られてきた生徒三人にやられたか……と、私は思った。

 結果、フームは学校から追い出される。

 

 まあ、タダで転ばないのがフームだ。

 

 ニュースを見て、夕食を食べ終わったころ。

 私の部屋に、メタナイト卿とリーノ、フームが訪ねてきた。

 メタナイト卿は仮面でわからないが、リーノとフームは若干緊張した面持ちで、落ち着かない。

 なんだろう?

 

 とりあえず部屋の中に招いて、紅茶を出した。

 フームは紅茶を飲む前に、さっそく本題に入る。

 

「単刀直入に言うわ。私の特訓に付き合ってちょうだい」

「……私は、教えるのは下手だぞ?」

 

 それにフームとは力量差があり過ぎる。危険ではないか?

 次にリーノが言った。

 

「問題ありませんわ。指導はメタナイト卿がしてくださいますから」

「ああ、メタナイト卿が見てくれるのか。ならば、大丈夫か」

 

 私もメタナイト卿に指導をしてもらった身だ。彼のおかげで、多少戦えるようになった。

 私はにこやかに言った。

 

「私で良ければ、手伝うよ」

 

 リーノとフームは、ようやく笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 

 フームの特訓は、その日の夜から始まった。

 リーノは、雪玉をフームに投げて回避の特訓。

 そして氷のアスレチックを造り、フームの体力向上を狙う。

 私は、フームと鬼ごっこをした。フームはひたすら回避と走り回ることで、俊敏さと軽やかな身のこなし、体力をつけていく。

 

 フームは、めきめきと力を身につけていった。

 そして二週間後、彼女は学校へ戻る。

 

 

 

 フームが学校へ戻った朝、私とリーノは城から学校を見守っていた。

 リーノは、自信に満ちた調子で言った。

 

「フーム様なら、きっと大丈夫ですわ」

「ああ、私もそう思う」

 

 フームなら、不良たちに勝つだろう。

 そして教室の平和を取り戻す。

 

 しばらく学校を見守っていると、少し大きな影が校舎で暴れているのが、なんとなく見えた。

 遠目からだったが、あれは……魔獣だろうか?

 カービィが戦ってくれるとはいえ、フームたちが心配だな。

 

「リーノ、学校へ急ぐぞ」

「ええ!カノープス、お願い」

 

 リーノも異変に気づいたようだ。

 私は、リーノを横に抱える。

 そして空中に光の道を作り出し、その上を走った。

 

 

 

 

 学校付近の上空に到着する。

 降りようとしたが、ちょうど生徒たちが学校から走って出てきた。

 嫌な予感がしたので、私も生徒たちが逃げる方へ走った。

 

 直後、魔獣と思わしき何かが上空から学校に落ちてきて――爆発した!

 学校は燃えたのだ。

 

 私は、燃える学校を呆然と見る生徒たちの近くに降りる。

 草原に着地したと同時に、リーノをそっと降ろす。

 リーノは私に礼を言うと、生徒たちの方へ走り寄った。

 フームがいち早く気づいた。

 

「リーノ!カノープス!」

「フーム様!みなさん……ご無事でよかった!」

 

 リーノとフームが手を合わせる。互いの無事を確かめ合っているようだ。

 私も、他の子供たちを怖がらせないように、ゆっくり近づく。

 

「全員無事か?」

「カノープス!おう、みんなちゃんと避難できているぜ」

「それは良かった」

 

 ブンがそういうなら、そうなんだろう。

 とにかく、生徒たちにケガがなくてよかったよ。

 

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 また青空学校に戻った。

 先生はフーム、生徒たちはブンとカービィにホッヘ、イローとハニーだ。

 いつものメンバーだな。

 

 彼らに差し入れをするべく、お菓子とジュースを持って、私とリーノは草原を歩く。

 

 今、ハニーたちはのびのびと勉強している。

 学校は、またいつか建てればいいさ。

 

 

 

 

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