ある日のこと。
快晴で、太陽はすでに天高く登っている。
午前休をもらった私と、リーノ、アーニャ、ランタンは、一緒に昼食をとっていた。
私の部屋に集まり、テレビをつけて、のんびりサンドイッチを食べる。
種類はカツサンドやたまごサンド、フルーツサンドだ。
そうして午後の仕事に備えていた。
そんなとき、ニュースが飛び込んできた。
それは、大変なニュースだった。
ワドルディが販売された、というものだ。
私は“やべー回が来てしまった。”と、気が遠くなるようだった。
だが、本当に気が遠くなり、テーブルに突っ伏してしまったのはリーノだった。
私たちは慌てて、リーノに駆け寄る。
「リーノ、大丈夫か?」
「カノ、どうしましょう。陛下が、ああ、こんなこと……」
リーノは酷くショックを受けたようで、泣き出してしまった。
大事な人がとんでもないことをしたのだ。そのショックは計り知れない。
私にとっても陛下は大切な人だ。だけど、陛下がそういうことをすると、理解しているから、あまりショックは受けていない。
冷静に、この状況を考えていた。
「リーノ、泣くほど辛いなら、私たちの気持ちを陛下に伝えるべきだ」
「どうやって?今から陛下のいる食堂まで突撃しに行くの?」
ランタンの言葉に「違う」と返した。
「それは、リーノが疲弊している今は、良い手ではないと思う。もっと簡単な方法がある」
「それはなんでしょうか?」
アーニャの言葉に笑みを返した。
「ストライキさ」
一番、冷静だった私が手紙をしたためた。
内容は“ワドルディたちの件が解決するまで、城には戻りません。それではお元気で。”と、短い文章だ。
手紙をワドルドゥ隊長に渡して、荷物を持って、城を飛び出す。
本当は、リーノ、アーニャ、ランタンの三人に、恋人たちと話す時間をあげたい。けれどこういうことは、速い方が良い。
妹たちは急ぎ、村へ向かった。
――私だけは、別の場所に向かう。
――――――
私はカブーの谷で寝泊まりすることにしたのだ。
村には私が泊まれる家がないからな……。
私よりもずっと大きなカブーは、知的……なんだっけ?話すし、考える。しかし食事はせず、排泄もしない。
不思議な存在で、星の戦士のシェルターだった気がする……。うん、多分。
シェルターらしく、カブーの中は空洞である。天井があり雨風がしのげる。
降りる階段があり、下にはちょっとした台座と、体を休めることができるスペースがあった。
そこに四日分の衣類、せっけん、風呂用の大きめの桶、多めのお金、寝袋、ランタンと燃料に、積んでいた本を数冊。さらにキャンプ道具をいくつか、持ち込む。
食料は無しだ。自給自足すればいいし、いざとなれば、レストランで食べる。
私は、久しぶりの外泊に、ちょっとだけワクワクしていた。
リーノのことは、アーニャとランタンがいてくれるから、大丈夫だ。メタナイト卿も側にいてくれるだろう。
陛下のことは心配だが、エスカルゴン殿がいてくれる。こちらも大丈夫だろう。
「……というわけで、カブー。しばらく泊まらせてくれ」
「構わない。好きにするといい」
「ありがとう」
まずは夕飯のために魚を釣ろう。道中で、朝に食べる果物を探そう。
明日は朝一番に、川に仕掛ける罠を作ろう。
山菜や果物、きのみを探しに行ってもいいし、夜は本を読んで、会えない寂しさを紛らわせたい。
――――――
翌日。
朝は、昨晩のうちに採取しておいた果物を食べる。
皮は、魔法で乾燥させて、近くの土に混ぜた。乾燥した皮は、良い肥料になるからな。
日が高いうちに風呂に入ろうか。
そう考えて、私は着替えと桶とせっけんを持って、カブーの中から出た。
「カノープス!!」
陛下に見つかった。
私は慌てて荷物を置いて、陛下に駆け寄り、膝をつく。
「おはようございます」
「のんきに挨拶をしとる場合ではないぞゾイ!見るゾイ!」
陛下は後ろから何かを取り出した。
――ワドルディだ。よく見れば、陛下の後ろには何人ものワドルディが付き従っている。ワドルドゥ隊長もリーノも、フームにブンにカービィすらいた。
みんな、陛下と私を見ていた。
「ずいぶん大所帯ですね」
「誰のせいだと思っとる!?」
ことの発端は陛下では?と、思ったが言わない。
代わりに謝罪した。
「すみません」
「わかれば良いゾイ」
陛下はくたびれた様子でそう仰った。そうして、その場にへたり込む。
「ようやく、見つけたゾイ……。疲れたゾイ」
「水でも出しましょうか?」
「なんでもいいゾイ」
「コップをお持ちしますので、少々お待ちください」
私はカブーの中に戻り、洗っておいたコップを手にとった。
それを持って陛下の元まで戻る。
陛下の前で、魔法で水を出し、コップに注いだ。
「どうぞ」
「うむ……ゴクゴク……ぷはあ!生き返るゾイ!」
「それは良かったです」
「うむ。――帰るゾイ」
陛下は一度こちらを見て、目がバッチリ合うと、ふいっと顔を背けられた。
私は言った。
「先にお戻りください」
「うむ、一緒に……何!?」
「荷物を片付けてから城に戻りますので、陛下は先に……」
「はよう片付けてくるゾイ!!」
「は!ただいま!」
私は急いで、またカブーの中に戻り、広げた荷物を片付ける。
五分ほどで、荷物を抱えて陛下の元に戻った。
すると陛下は満足そうに頷く。それから兵士たちを連れて、歩き出す。
その後ろ姿は、お疲れの様子だった。
「カノ」
「リーノ」
リーノが隣を歩く。
昨日、泣いていた彼女は、今はニコニコと笑っている。
私はそのことが、たいへん嬉しかった。
「陛下ね、一晩でワドルディたちに、帰ってきてもらったんですよ」
「一晩で?それは、すごいな」
数日はかかると思っていた事件の幕引きだが……どうして早まったんだ?ストライキが効いたのか?
リーノは上機嫌で言葉を連ねる。
「カノにね、早く帰ってきてほしかったらしいわ」
「そう、か」
「ふふ。照れてる?」
「さ、さあな」
本当のことを言うには、人の目がありすぎる。
私は頬を赤くしながらも、リーノの言葉に曖昧に返事をした。