昼から村へ出かけた。
天気は爽やかな晴れ模様。雲は何かを形作り流れていく。
今日は私、リーノにレッド、アーニャにランタンの五人で村へ買い物に出かける。
私はレッドを、抱っこ紐を使って前側で抱っこしていた。
「ほら、レッド。周りがよく見えるだろう?」
「あー!うー!」
「楽しそうだ。良かった」
ニコニコと笑い、声をあげる赤子。その様子に私たち大人は、つられてニコニコと笑う。
爽やかな風が流れていく中を、四人は歩いていく。
城から出て道に沿って進み、村の入り口に入るとおかしなことに気づいた。
「静かすぎるな」
「なんだかイヤな予感がします……」
「やだ!縁起でもないことを言わないで」
「でも、本当に変な感じです……」
「念の為だ。リーノ、悪いがレッドを預かってくれ」
「ええ、わかったわ」
レッドは揺られて気持ちよかったのか、今は夢の中だ。起こさないよう、ササッと私からリーノに移す。
そうして、私、リーノとレッド、アーニャとランタンが順番に歩き出す。
「この異変を知るためにも、一度カワサキの店に寄ろう。あそこならば、何かしら情報が入っているだろう」
「そうですね。このまま買い物を続けるより、良いと思います。二人も、それで良いでしょうか?」
「いいわよ。ちょっと疲れたし、なんだか怖いから、レストランに寄りましょ」
「賛成です。落ち着きたいので、行きましょう」
私は頷き、「離れるなよ」と言って緊張しつつ進む。
カワサキの店には、何事もなく無事に到着した。
店からは人の気配がしたので、誰かいるようだ。
私はガラスの引き戸を音を立てて、開けた。
――刺激臭が、鼻をくすぐる。なんだ?この体に悪そうでスパイシーなカレーの香りは……?
「入るぞ!カワサキ」
声を奥に届けると、返事があった。カワサキだ。
「今は手が離せないから、自由にあがって〜!」
「わかった!」
好きな席に、と言っても入って左側の奥のコーナー席に座る。
厨房からも近い席で、最大八人が座れるそこには、イスとソファが置かれていた。
ソファ側にリーノとレッド、それにアーニャとランタンが座る。私はいつでも動きやすいようにイス側に座った。
「厨房の様子を見てくる」
「いってらっしゃい」
カワサキがすぐに出てこなかったため、私は厨房に入る。
店主のいつもの後ろ姿が奥にあった。
「カワサキ、一体何を?」
「ふっふっふっ……これでうちは大儲けだよお!」
彼はカレーをお玉でぐるぐると回し、煮込んでいる。
見目は悪くないが、怪しい雰囲気があった。
「カノープス!みんなも!今日から追加する、うちの新メニュー食べてみてよ!」
「やめておく。それよりも、村がやけに静かだが、どうかしたのか?」
「それは知らないけれど……変だなあ。パワップDが売りに出されてから、村のみんなはすごく元気になったのに。静かだって?何があったんだろう」
「つまり、異常事態か。わかったありがとう。それと注文だ。いつものジュースを頼む」
「あいよ〜」
私は席に戻った。
三人が身を乗り出して、私の話に耳を傾ける。
ランタンが怪談を聞くような様子で、怖がりながら言った。
「どうだった?」
「カワサキの話では、パワップDが売りに出されてから、村は元気になった。だから今、村が静かなのは変だ……ということらしい」
「そうなの……陛下が夜中に変なエクササイズを放送していたのも」
「そのパワップDが原因でしょうか?」
「おそらく。元気になりすぎた反動で、今は元気がなくなったんじゃないか?」
「そうかもしれませんね。みんな、休んでいるのかも」
「じゃあ、今日は買い物できないわね。また明日にしましょう」
私たちは、カワサキの店で少し休憩してから、城に戻ることにした。
そのときだ。小さな地響きが聞こえてきて、私は立ち上がる。
「見てくる」
「カノ、気をつけて」
「ああ。無理そうなら逃げるよ」
「待って〜!オレも行くよ」
カワサキが奥から出てきた。
三人にジュースを配膳してから、私の側へ来た。
「厨房に缶詰だったから、外の空気を吸いたいんだよね」
「そうか、じゃあ一緒に行こう」
私とカワサキは、音の震源地へ走った。
音の震源地では、カービィと蛇のような大きな魔獣が戦っていた。
だが、やられっぱなしだ!敵の攻撃を受け続けている。
遠くにはフームとブンの姿も見えた。
そちらへ走り、交流する。
「どうした!なぜカービィは反撃しない?」
「カノープス!できないのよ!だってカービィは……」
「さっきパワダウンEを飲んじゃったから!」
姉弟の言葉に困惑する。
「パワップDではなくて、か?」
「元気をなくすドリンクよ!ああ、カービィ!――来たわ、ワープスターが!」
フームが空を指差す。ワープスターがこちらへ飛んできた!
そして敵に体当たり!カービィを助けて、空へ上がる。
「カノープス!何かないのかよ!」
「あなたの魔法を、カービィに吸い込みさせるのよ!そうすれば……!」
「元気がないままでは戦えないだろう。どこかにパワップDがあれば……!」
「――!ある!あるよ!今持ってくる!」
カワサキが店の方へ戻っていく。
私は愛用している鉄パイプを抜き取り、魔法を重ねがけする。
そして前へ出た!
「時間を稼ぐ!カービィは下がれ!」
「ぽ、ぽよ!」
「キシャー!!」
魔獣は威嚇してきた。
相手は大きく三メートルはあるだろう。頭、胴体、両腕、下半身は蛇の姿をしていた。
そして筋骨隆々だ!なんだ?筋トレでもしているのか?
睨み合いの末、敵は襲いかかってきた。その動きは速い。けれどヤミカゲほどじゃない。私は余裕を持って回避する。
一瞬、私を見失った魔獣の真上へ飛び上がり、脳天を思いっきり叩いた!
ガゴン!!
「き、きしゃ〜」
敵は頭を抑えて、フラフラと地面に手をつく。
「カワサキはまだか!」
「来たよー!あれ……これいる?」
「いる!カービィに、早く!」
「あいよー!カービィ、吸い込んでー!」
カービィはカワサキが持ってきた、あの特製カレーライスを吸い込んだ!
そして元気が爆発する!
まず魔獣に体当たりをかまして、魔獣の体が起き上がったところを狙い、尻尾を掴む。
そして陸上競技のハンマー投げのように、魔獣をぶん回して、空に向かって思いっきり投げた!
「キシャアアアアア!!」
魔獣は瞬く間に空の星となったのだ。
――――――
魔獣は倒された翌日。
村にはいつも以上の活気があった。
カービィが誤って壊してしまった建物の修理を、みんなで直しているのだ。
その中には、城から派遣されたワドルディたちの姿もいる。
彼らを指揮するのはワドルドゥ隊長と、さらにはエスカルゴン殿がいた。
陛下はというと……私の隣にいる。
一緒にお昼寝しているのだ。
陛下のお部屋にて。
パワダウンEを飲んだために、元気をなくされた陛下のお世話を頼まれた。
お世話するために、一緒にお昼寝する必要はあるのか?
陛下がご所望されたのだ。必要はある。
陛下の隣で横になるなんて、すごく緊張する。
けれど、室温はちょうど良くて陛下の穏やかな寝息も聞こえてきて。
私は結局、眠ってしまう。
陛下の香りが、いつもより近かった。