まずはリーノが、デデデ大王に近づく。
大王の前で恭しく傅く。私も遅れて片膝をついた。
リーノは祈るように、両手を胸の前で組む。そして、厳かに言った。
「偉大なる至高の御方、どうか貴方様にお仕えできる栄誉を私たちにお与えください」
「いだいなるしこう……なに?」
「立派で素敵な陛下の下で、見習いメイドとして働きたいです。どうか雇ってください!」
「わしが立派で素敵……だっはっはっは!気に入ったゾイ!お前を雇ってやるゾイ!!」
「はあ!?ちょっと、まだ子供でゲスよ!??後ろにいたってはエイリアンでゲス!」
ビッ!とエスカルゴンに指される。
それに対してリーノが反論してくれた。
「失礼ながら。私は家事全般こなせます。必ずお役に立ちます!あと、カノープスはエイリアンじゃなくて、人間という種族です!」
「ええ~?本当でゲショウね?嘘言っていたらハリセンボンでゲスよ!」
「嘘じゃありませんよ、エスカルゴン殿。リーノは本当に家事全般できます。カノープスにいたっては、その、我々も知らない部分がありますが、いい人ですよ」
「……村長がそう言うんなら、まぁ、子供はいいでゲショ。使えなかったら追い出すから、気張るでゲスよ!!!」
「はい!!!ありがとうございます!」
「んで?お前は何ができるゾイ?」
一斉に、目を向けられる。
私は頭を伏せたまま、緊張で渇く口を無理やり動かす。
「力があります。なので、メイドよりも戦士として雇っていただければと思います」
「えっ」
リーノの小さな驚きは無視されて、話は進む。
「兵士ならもう充分におる」
「これ以上の戦力はいらないでゲスな」
ケラケラ笑い出すデデデ大王とエスカルゴンに、村人たちはお互いの顔を窺い合う。
代表として、レン村長が言った。
「あの……陛下。カノープスの力は想像以上ですぞ」
「なに?」
「見てもらった方が早いですよね」
私はやっと立ち上がる。
膝についた土を軽く払う。そして立ち上がると、少し下にデデデ大王の顔が見えた。やっぱり顔が近いと見やすくていいな。
森に移動した。
標準的な大きさの木を引っこ抜く。そして竹を割るように、木を割った。
バキバキバキ!
割って二つになった木を、地面に放った。
大きな音が鳴る。
デデデ大王たちは口をあんぐりと大きく開けていた。
私は、彼らに向けて腰を九十度に折り、お願いする。
「雇ってください」
「デハハハハハ!こりゃすごいゾイ!」
「すごいってもんじゃないでゲスよ……ヤバいでゲスよ……」
「よし!お前も雇ってやる!存分に働くが良いゾイ」
「!ありがとうございます!デデデ大王……いえ、陛下。ご期待にそえられるよう、尽力します」
こうして私は戦士として、リーノは見習いメイドとして雇われた。
その日の帰り道。
手を繋いで私たちは家に帰る。
「ねえ、カノープス」
「なに?」
「戦士は、危ないよ」
リーノを見れば、俯いて道を見ていた。
私はちょっと頬をかいて、それから膝を折った。リーノと顔が良く見えるように、高さを合わせる。
リーノが目を合わせてくれた。
「心配をかけてごめんね。私は力持ちだから、メイドよ
り戦士の方がいいと思ったの」
「そりゃあ、適性を考えればそうかもしれないけれど……でも……」
「大丈夫!戦う事なんてないよ!こんなに平和な村で何がおきるのさ」
「…………」
リーノは黙ってしまった。
そういえば、この頃のリーノって原作知識があるんだよね。途中からあやふやになっちゃってた設定だけど、未来の事を考えているのかな。
私は笑顔で言った。
「もしも、戦う事になったらさ、リーノと逃げるよ」
「――いい考えだわ」
やっとリーノが笑顔を取り戻す。
私たちは小指を絡めた。
「指切りげんまん……」
「嘘ついたら……えーと……」
「針千本じゃないの?」
「それは痛いから、うーん……破ったらデコピン一回ね!」
「わかった。……指切った」
「指切った!」
ニコニコと微笑むリーノの横顔を見て、私は立ち上がる。
並んで歩く短い影と、長い影を見て思った。
――いつか、リーノは私じゃない誰かとこうして歩くのだろう。
無性に寂しくなる。
だけど、同時に楽しみでもあった。
――――――
ワドルディ総出で城を造る。
それは一週間ほどで完成した。
もしかして、寝ずに作業したのかな?
……城に住むのが怖くなってきた。
それでも引越しする準備は止めない。
リーノと二人で準備をして、時々アーニャとランタンに手伝ってもらう。
本当に必要な物だけを集めて、荷車に乗せた。……荷物の数は、少ない方だと思う。
家具は持っていかない。
城の方には、新品の家具を用意しているからだ。
家具はそのまま揃っているのに、写真などを片付けた家はとっても殺風景で。なんとも寂しくなった。
私よりも、きっとリーノの方が何倍も寂しいだろう。
「カノ、準備できた?」
それでも、リーノはそんな顔を見せない。
ちょっと元気がなさそうに見えるくらいで、あとは普段通りだ。
だから、私も普段通りを装う。
「できたよ。じゃあ、新婚さんを招こうか」
「うん!」
この家の新しい住人を、外から招く。
以前から、リーノや私に親切にしてくれた新婚さんだ。晴れて今日から親と離れ、この家で二人暮らし始める。
二人は何度も「ありがとう」「大事に使うわ」と言葉にしてくれた。
リーノは何度も頷く。
家を渡す事は、彼女が決めた事だから。
考えぬいて決めた事だから、私は賛同する。
そして、城へ出発した。
途中、アーニャとランタンが合流してくれる。そして私が引っ張る荷車から、荷物を持って運んでくれた。
城には夕方前に到着した。
青空が茜色へと変わる姿はなんとも美しい。
景色に感動していると、その隣でリーノたちがポケットから何かを取り出した。
貝の、可愛らしいストラップだ。
「私たちは、ずっと親友よ!」
「また明日ね!」
「約束ですよ!」
指切りげんまんをする子供たちに、ほっこりする。
目を細めて見ていると、三人がこちらを向いた。リーノが、もう一つ貝のストラップをポケットから取り出し、渡してくる。
私の手の上で、貝がキラリと光った。
「それは、カノープスの分よ」
「いいの……?三人の友情の証でしょう?」
「カノープスは特別よ!」
「私たちの特別なお友達です!」
私は胸が熱くなった。
「ありがとう」
「?カノ、泣いているの」
「大人になるとね、みんな泣き虫になるんだよ」
「ふーん?」
子供達は不思議そうだ。
いつか、彼女達が大人になる時、その時も私と仲良くしてくれたら嬉しいな。
――――――
それから、色々あった。
リーノの推薦でパームさんが大臣になり、そしてリーノのメイド教育が始まった。
私は城の戦士として恥ずかしくないように、トレーニングを始めた。剣の扱い方なんてわからないから、目にたまたま入った鉄パイプを使う。鉄パイプはいいゾ〜。ゾンビにも有効だからね!
城の戦士になったからには、魔獣が来たら戦わないといけないだろう。少なくとも、リーノと逃げる力は必要になる。
……念とか、魔法とか、気とか、使えたら便利だよね!
異世界来れたんだもの!ソードビームがあるくらいだし、魔法があるでしょ!
私は荒野へ出かけた。
荒野にて。
まずは目を凝らす。
……なんか、手にまとわりつく光が見えて。もしかして魔力?それとも生命力?なんて考えて。
おっかなびっくりしつつ、拳に光を集中させて、大地を殴った。
浅めのクレーターができた。
自分を中心にできたソレは、誰かに知られたらヤバそうだった。とりあえす陛下と閣下には黙っとこ。
便宜上、アレと呼んでおく。だって魔法かオーラかわからないからね。
とにかくアレの練習をこっそりしつつ、ワドルドゥ隊長率いるワドルディたちに模擬戦を願っては、負けたり勝ったり。
一年後には、私が勝ち続けるようになったので、模擬戦はなくなった。
アレを使わないで模擬戦をしていた。自力で勝てるようになって嬉しい。
たまに陛下のお相手をする。
本を読んであげたり、遊び相手になったり、村人達が困る行動を止めたり。
大変だけど、陛下との遊びは刺激的で楽しかったりする。
やがてメーム様がご懐妊されて。
忘れていたけれど、あの三人がやって来る。
リーノの原作知識について。
書いておいた方がいいかなと思ったので、ここに書かせていただきます。
リーノの原作知識は、前世の魂が持っていました。
しかし、事件のせいで魂はいなくなりました。
なんとか記憶(原作知識)だけは残るようにしましたが、突然魂が一つ分なくなったのです。
リーノは混乱します。そして、しばらく原作知識を思い出せなくなります。
しかし、周りの人々のおかげで落ち着きを取り戻します。
失った魂の事は忘れてしまったけれど、原作知識の事は少しだけ思い出せるようになりました。
リーノの原作知識については、こんな感じです。
この原作知識が、カノープスの終生ではどうなるのか、よかったらご覧下さい。