夏の風が気持ちいい。
洗ったばかりのシーツの間を流れていく。
「今日もよく乾いてくれそうだな」
最後のシーツを干して、洗濯カゴを持ち上げる。
すぐ側にいたリーノが、眩しそうに太陽を見上げた。直視はしていない。
「そうね……。いったん城の中に入って休憩にしましょ。水分補給しておいた方がいいわ」
「そうだな。レッドも飲もうな」
リーノに背負われて、楽しそうに声を上げている。
最近はつかまり立ちを覚えたので、転倒時に助けてくれる軽いクッションを、レッドに背負わせていた。後頭部と背中がクッションで覆われたリュックだ。そこにはレッドの好きな赤ちゃんようのお菓子を入れている。もちろん、軽い。
日に日に大きくなる姪っ子に、私は嬉しくなった。
「レッドはもうすぐ歩けるようになるのかな」
「ふふ!数日前からつかまり立ちを始めたのよ?」
「それでも、早く一緒に歩きたいよ」
「カノの身長なら、膝と腰を曲げて歩くことになるわ」
「構わない。いくらでも膝と腰を曲げるよ」
なんてことを話しながら、城の廊下を歩く。
そこでフームとフームに背負われたカービィ、ブンに出くわした。
「おはよう。もう村に行くのか?」
「いいえ。帰ってきたところよ」
「これから寝るのさ……ふわあ……」
覇気のない姉弟の声、よく見ればカービィはすやすやと寝ている。
私はひらめいた。
「――魔獣か?」
「当たり。デデデがまた、ね」
「今度はキュリオさんも巻き込んだんだ!」
話を聞いてみると……。
カービィが夜だけ襲われるようになり、先ほどまで魔獣と戦っていたらしい。
なんかあったなあ。そういう話。忘れていたぞ。
「カービィの技で倒したのか?」
「いや、朝日が弱点だったらしくてさ。日の光をあびたらやっつけられた」
「そうか。ともかく、無事で何よりだ」
「みなさま、今日はゆっくり休まれてくださいね」
「ええ、そうするわ」
「おやすみ〜」
フームとブン、寝ているカービィと離れる。
リーノは一つ頷いた。
「今日の陛下たちの夕食は素うどんですわ」
「そうか」
リーノは怒ったらしい。無理もない。村人も巻き込まれたのだから。
私は一つ、提案した。
「昼からでも、キュリオさんのところへ謝罪に行くか?」
「そうね。ちゃんと謝らなくちゃ……色々入ったお菓子の詰め合わせを、持っていこうかしら」
「いいな。キュリオさん、リーノが作ったお菓子は好きだから喜ぶよ」
「じゃあ、たくさん作っていきましょ」
何を作るのか。もう夏なので、日持ちするものを……。
なんてことを話しながら、私たちはアーニャとランタンと合流するのだった
――――――
それから数日後。
ププビレッジでは紫外線が話題になった。
村人たち、メーム様、パーム様まで昼夜逆転の生活をするようになる。
さらにはエアコン、紫外線対策の化粧品まで飛ぶように売れたらしい。
私には心当たりがあった。こちらから言ってみようかな。
中庭に干していたシーツを全て取りこんだところで、メタナイト卿、それにソードナイトとブレイドナイトが現れた。
妹たちの笑顔が咲く。
「メタナイト卿、みなさま!今日はお揃いでどうされたのでしょう?」
「ここで熱気球をつくりたいのだ」
ランタンが疑問を投げかける。
「気球を?またどうして?」
それに対してソードナイトが答えた。
「空の異変を確かめるためだ」
「――誰が乗るのですか」
アーニャの強張った声に、妹たちはバッと三戦士たちを見つめる。
行かないでくれ、そう目が語っていた。
「乗るのは私と……」
「オレたちだ!」
どうやらメタナイト卿、そして今現れたブン、フーム、カービィが気球に乗るらしい。
リーノが顔を伏せる。その姿を見て、私は手を挙げた。
「私も同行する」
全員がこちらに注目する。
フームがギョッとした。
「え!?カノープスも気球に乗るの?無理よ!今から設計図を書き直すことはできないわ!時間がないもの」
「そうじゃない。私は空に足場を作って歩けるのだ。だから、自分の足で空へ行く」
「カノ、危ないわ」
「リーノ、必ずみんなと無事に戻るためだ。大丈夫。ケガなんてしないし、メタナイト卿も、みんなも必ず守るよ」
「……うん」
しゃがんで、リーノとレッドを抱きしめる。
何度も「大丈夫だから」と言い聞かせた。
気球をつくる作業はワドルディたちに任せる。
あっという間に完成し、私たちは空へと上がった。
メタナイト卿たちは気球で、私は魔法陣で足場をつくって空へ駆け上がる。
空へ、雲へ近づくと、何やらおかしな光景が目に入る。
空中に穴があったのだ。
雲に覆われて気づかなかった。
メタナイト卿が言った。
「早すぎる……。なぜここまでオゾン層破壊が進んでいる?――そうか!」
「どうしたんですか?」
「最近、村中に設置されたエアコンが、オゾン層の破壊を進めているのだ!すぐに村に知らせて、エアコンを止めさせねば!」
「でしたら、私の小鳥でしらせましょう」
私は魔法の小鳥を作り出し、すぐに村へ向かわせた。
相手はサトさんだ。村の中心部に住むサトさんなら、この事件をすぐにみんなに知らせられる。
「これでいい」
私たちは、再び遠くからオゾン層に開いた穴を、注意深く見つめる。
その時、突然ビームが私たちを襲った!
「危ない!」
私はとっさにバリアを張って気球を守る。ビームは弾かれた。
「ありがとう!」
「まだだ!フーム、みんな見ろ!」
破壊されたオゾン層の中心から、虹色の大蛇がゆらりと現れた。
魔獣だ!
相手はまたビームを撃ってきた!
「バリア!」
またビームは弾かれる。魔獣はこちらの様子をみていた。
私は言った。
「カービィ、今すぐ何かコピーしてくれ!フーム、ワープスターを!!」
「きて!ワープスター!」
フームはワープスターを呼んだ。
メタナイト卿とブン、カービィは気球の中でコピーできるものを探しはじめる。
私は魔獣の気をそらすため、動く。
まずは気球から離れた。思った通り、魔獣は気球ではなく私を気にしており、じっとこちらを注目している。
魔獣への弱点を探るため、順番に魔法を試すことにした。
メラ。
小さな火球が魔獣の体を貫くが、再生される。
ヒャド。
やっぱり貫くが、再生された。
敵のビーム攻撃!私はバリアで防ぐ。弾いたビームは気球に向かわないよう気をつけた。
魔獣は怒って体当たりしてきた。それすらもバリアで防ぎ、わざと効かなかったメラやヒャドを撃って、油断を誘う。
そういえば、今回の敵は原作だとどうやって倒したんだ?
再生が追いつかないほどの連続ダメージを与えれば、勝てるのか?
それなら、ボムカービィと連携してイオを唱えれば、勝てるかもしれん。
ときどき、メラとヒャドの大きさを変化させて、一生懸命戦っているように演技する。
そしてメタナイト卿たちに向かって大声を出した。
「聞いてくれ!こいつの体は再生する!連続でダメージを負わせないと勝てない!」
「どうすれば……!?」
フームとブン、カービィは動揺するが、メタナイト卿は気づいたようだ。
「カノープス!連続で爆破できるか?」
「できる!やるなら確実に倒すため、ボムカービィと連携したい!いけるか?」
そのとき、ちょうどよくワープスターが飛んできた。
カービィがワープスターに乗ってこちらに向かってくる。
私はイオを唱えた!光球が空中に現れる。それを爆発させず、カービィに吸い込んでもらう。
口の中に入ったタイミングで、爆発させた!
カービィの口の中でイオは弾け、ボムカービィに変身する。
「カービィ!魔獣に向かって、バクダンをたくさん投げろ!」
「ぽよ!」
魔獣は逃げようとした。私は阻止するべく、頭部に向かってメラを放つ。
思い通り、相手の動きが鈍った!
二十を超えるバクダンが魔獣に降り注ぎ――。
「そこだ!イオラ!」
多めに魔力を流し込み、辺り一面に派手な爆発を引き起こす。
魔獣をやっつけた!
「よし」
「ぽよーい!」
私とカービィがハイタッチしていると、メタナイト卿が呟いた。
「……カノープスだけでも勝てたのでは?」
さあ、どうでしょうね。
気球は草原に向かって降り、私は城に向かう。
気球を空に飛ばした中庭に、リーノとレッド、それにアーニャとランタンがいた。
陛下たちはいない。気球の方へ向かったのかもしれない。
中庭に降りる。
そしてまっすぐ妹たちの方へ歩いた。
みんな笑顔だった。リーノは泣いたのかな?ちょっと目が赤い。
「ただいま」
膝を曲げて、リーノたちの目線の高さに合わせる。
すぐに妹たちが抱きついてきた。
「おかえり!」
「心配しました!」
「無事でよかった!」
リーノ、アーニャ、ランタン、ついでに抱っこされたレッドがぎゅっと集まる。
私は丸ごと抱きしめた。