カノープスの終生   作:紅絹の木

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三人が来て

 

 よく晴れた日だった。

 メーム様のご懐妊祝いとして、祭りが開催された。

 村では屋台が出ているだろう。楽しそうだ。

 

 私は陛下に付き合ってゴルフをしているので、祭りには行けていない。

 まあ、城の戦士として陛下を護衛するのが仕事ではある。ただ今回の祭りは、リーノが手伝っているから顔を出したいんだよね。

 

 玉座の間には陛下、エスカルゴン殿、数人のワドルディ、そして私がいる。

 ゴルフをプレイしているのは陛下と、私だ。

 

 陛下が勝っている場面で、リーノが入ってきた。

 話を聞けば、三人組の戦士がやって来たらしい。

 ……この時点でやって来る戦士たちって、やっぱりあの三人組かな?

 

 考える私をおいて、リーノは陛下たちに話し出す。

 

「以前だした、戦士募集の噂を聞いて、プププランドへ来たようです」

「カノープスが言い出した、あの募集でゲスか?カノープス、お前が何とかするでゲスよ」

「私一人ではお金にならないので、陛下たちのお力をお借りしとうございます」

「金になるのかゾイ?」

 

 陛下とエスカルゴン殿が、頭をグルンと回してこちらを見た。私は笑みを浮かべて言った。

 

「私と彼らを戦わせるのです」

「えっ!?危ないわ!」

「模擬戦さ。大丈夫だよ。リーノ」

「それなら第一部はワドルディたちと、勝ったら第二部としてカノープスと戦わせるでゲス!日時をずらして、チケットを分ければ、第一部と第二部を合わせてチケット代がガッポリでゲス!」

「名案だゾイ!」

 

 ウハウハと踊る陛下に対して、傅く。

 

「なんゾイ?」

「彼ら……三人組の戦士の力が申し分なければ、どうか、城で雇ってあげてください。――お願いします」

 

 最後は両手を組んで、ニコッと笑う。

 陛下はどうしてか、このお願いに弱いのだ。

 

「ぐ、ぐむ〜」

「ダメでゲスよ!もうカノープスがいるんだから、その他なんていらないでゲショ!」

「他の城では、戦士といっても様々な役割に振り分けられているのだとか。……つまり、多くの戦士を持つのもまた、優れた大王の特徴かと」

「たしかに……良し!カノープスの言う通りにするゾイ!」

「ええ〜!?」

「ありがとうございます。陛下」

「もう!陛下はカノープスに甘いんでゲスよ!」

「う、うるさいゾイ!」

 

 かくして、メタナイト卿たちの試練は決まった。

 

 

 

 

 

 次の日。朝。

 デデデコロシアムにて、試練は行われた。

 

 結果を言うと、一戦目のワドルディ百人切りは簡単にクリアされた。

 三人の戦士たちはそれぞれ余力を残して、勝利を喜んでいる。

 

 そこに陛下が待ったをかけた。

 

「まだ喜ぶのは早いゾイ。こちらには秘密兵器がおる!いでよ、カノープス!」

「はい。陛下」

 

 陛下がおられる貴賓席からジャンプし、舞台に軽やかに飛び降りる。

 フルプレートアーマーなのに、重さを感じさせないその曲芸に、客席から歓声が上がった。

 

「カノープス様!素敵〜!」

「カノープスや、頑張れ〜」

 

 主に年下の女性から“様付け”で呼ばれ、私が村に来た当初から知っている人達は、気楽に声をかけてくれる。

 彼らの声に手を振って応える。そしてメタナイト卿たちの近くへ歩み寄った。

 

「で、でかい……」

 

 ブレイドナイトが呟く。

 私はふっとため息をついた。

 

「高身長だと言ってくれ。……初めまして、私はカノープス。この城の戦士です。陛下は、あなた方の力が申し分なければ、城で雇うと決められました。次は私と試合をしてもらいます」

「なんだと?」

「では、今の試合は一体何だったのだ?」

「テストですね。――最終試合に進める程の力を持っているか、確かめる為の」

 

 私の言葉を聞いて、何か言いたそうだった。

 けれど、それはエスカルゴン殿のマイク放送によって、邪魔される。

 

「ハーイ!皆様、聞いていた通り!三日後に、またここで試合を行うでゲス!今度は謎の三人組とカノープスの対決!見逃したら損でゲスよ!チケットはデデデコロシアムの出入口にて販売中。期間限定、なくなり次第終了でゲスよ!」

 

 客席が慌ただしくなる。

 

「たいへん!買わなきゃ!」

「こりゃ見逃せないぞ!」

 

 走り出す村人たちに向かって、私は声を張り上げる。

 

「落ち着いて!!」

 

 びくりと観客たちは止まった。

 

「大丈夫!!チケットは充分に用意されています!慌てないで!ワドルディたちの指示に従ってください!」

 

 いつの間にか現れた試合に参加しなかったワドルディたちが、観客たちを誘導し始める。

 観客たちは落ち着いて、進んだ。

 

 私はほっと肩から力を抜く。

 

「カノ」

「リーノか」

 

 リーノが隣に来ていた。

 彼女に笑みを向ける。けれど、今は顔すらも覆う兜のせいで、良く見えやしないだろう。

 片膝を折って彼女に視線を合わせた。

 

「皆を落ち着かせてくれて、ありがとう。あなたの言葉がなければ、混雑が起きていたわ。ケガ人や迷子が出ていたかもしれない。お礼を言わせてちょうだい」

「大した事はしていないよ。君が悲しむと思ってね。だから、村人たちに声をかけたにすぎない」

「ふふ。相変わらず、わたくしの事が好きね」

「ああ。まあな」

 

 妹のように可愛い彼女の為だ。頑張るよ、そりゃあね。

 

 エスカルゴン殿は「また始まった」と言わんばかりに、やれやれと首を振る。

 私とリーノの事を知らない三戦士たちは、驚いているようだった。

 

 それは無視して、私はリーノに話しかける。

 

「それで?リーノは、これからまた彼らを客室に案内するのか?」

「ええ。そうよ」

「わかった。私は陛下と共に下がる。用があれば呼んでくれ」

「ありがとう。その時はお願いね」

 

 私はリーノから離れ、助走をつけて貴賓席へジャンプした。

 やっぱり軽やかにそこへ降り立ち、陛下の前で片膝をつく。

 

「陛下、戻りました」

「うむ。行くゾイ」

「はっ」

 

 陛下の後に続き歩く。

 さらに私の後ろにはワドルディが数人続いた。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 メタナイト卿たちと模擬戦をするまでの数日は、準備運動についやす。

 全力を出せば、彼らとて無事では済まないだろう。……決して舐めている訳じゃないよ?

 

 ただね、ワンパンで地面にクレーターを作れる程になれたんだもの。対人戦において、それも模擬戦だったら気をつけちゃうよ。

 

 朝は準備運動、昼からはリーノの仕事の手伝い、夜は入念にストレッチをこなす。

 日が進む毎に、メタナイト卿たちとの模擬戦が楽しみになってきた。

 

 彼らは私に勝てるかな?私は彼らに勝てるかな?

 そして模擬戦の前の夜、ある事を思い出した。

 

 

 

 ――ナイトメア。

 

 

 魔獣を忘れていた訳じゃない。

 だけど平和な村で暮らす中で、戦いなんて遠いものになっていた。

 

 自室。特注のベッドの上でゴロリと体を転がす。

 

 私がメタナイト卿たちを城に迎えようとしたのは、メタナイト卿がリーノの未来の恋人だからだ。

 ――どちらかと言えば妹の未来の恋人候補よりも、ナイトメアを倒す重要人物という役割の方が、大事なのに。

 

 すっかり抜け落ちてしまっていた。

 

「……明日の模擬戦、メタナイト卿たちには頑張ってもらわなきゃ」

 

 その為にはどうしたら良いだろう?

 

 

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