暖かな日、爽やかな風、時々雲が流れる晴れた日。
大臣一家に誘われて、カービィに、私とリーノとレッド、それにらアーニャとランタンが、原っぱに集まる。
大きなレジャーシート二枚を敷いて並べる。
ピクニックなので、みんなが食べられるものを用意した。
その中にフルーツサンドもあって、ジューシーですごくおいしいんだ。
レッドは、最近のお気に入りであるバナナを潰したものを、黙々と一生懸命食べている。
ブンが、カツサンドを食べつつ言った。
「なあ、レッドはまだメタナイト卿のこと呼ばないの?」
その言葉に、二人の子供を育てているパーム様は、にこやかに言った。
「そのうち呼ぶようになるさ」
「そのうちって、いつ?」
メーム様が穏やかに笑う。
「そのうちは、そのうちよ」
「うーん……」
ブンは納得したような、していないような感じだ。
私やリーノ、アーニャにランタン、大臣夫婦はその様子に微笑む。
そこに車の音が聞こえてきた。
和やかな場に相応しくないそれは、陛下とエスカルゴン殿が乗ってきた車のものだ。
フームが立ち上がり、陛下たちをキツく見る。
私はするりと立ち上がり、フームたちよりも前に立った。
フームはちらりと私を見て笑みを浮かべ、改めて陛下を真剣な顔で見上げる。
「デデデ!カービィに何の用?」
「用があるのはお前の方ゾイ」
「――え?」
「お待ちください。陛下!」
車の側面からアームが伸びる。
が、フームを捕まえる前で止まった。
私は伸びたアームを掴み、それを持ったまま、ゆっくりと陛下の方へ近づく。
そして二メートル先で止まり、片膝をついた。
「陛下、これは一体、何事でしょうか?」
「お前には関係ないゾイ!アームを離すゾイ」
「できません。……ここで質問してくだされば、簡単に答えが出るかもしれませんよ?」
「……そうかゾイ?では、聞こう!フーム、ワープスターをどこへ隠した?」
誰もが呆れた。
そんなこと、教えたりしないからだ。
だが――。
「え?ワープスターなら、カブーの中じゃん」
「!?ブン!」
フームの静止する声は、遅かった。
「へ?……あ!!」
ブンは慌てて、自分の口を塞ぐ。
やっぱりこうなったか。
私はそっとアームから手を離す。
アームは勢いよく車の側面に戻った。
陛下とエスカルゴン殿の笑いが止まらない。
「デーッヘッヘッヘッ!」
「良いこと聞いちゃったもんねーでゲス!」
「カノープス、よう進言した!すぐに兵士を集めて、カブーのところへ行くゾイ!!」
「アイアイサー!」
二人を乗せた車は、城に帰っていく。
私たちは大きく息を吐いた。
特にフームの息は大きい。
ブンがフームに近寄る。
「ねーちゃん、ごめん!」
「口が軽いのね」
「すぐにカブーの谷に行こう!」
「その必要はないわ」
「なんで?」
フームはジロリと、ブンを見た。
「カブーはあなたより、ずっと口が堅いわ」
「はい……」
そこにリーノが声をかける。
「あの、カブーならば話す心配はないと思います。ですが、もしも陛下が爆弾を使ったら、ひとたまりもないと思うのです」
そこに私は付け足す。
「メタナイト卿を呼んでこよう。知恵を貸してくれるハズだ」
フームは目をキリリとあげた。
「決まりね!ブン、カービィ!すぐに城へ行くわよ」
「うん!」
「ぽよ!」
子供たちは、城へ走り出す。
私は魔法の小鳥を作り出し、メタナイト卿へ伝言を送った。
内容はフームたちと合流してください……で良いだろう。
小鳥は軽やかに、空高く飛んでいく。
「ねえ、私たちはどうするの?」
「なんだか、波乱の予感……ですよね」
ランタンとアーニャが言った。
私は振り向いて、みんなに言った。
「魔獣が来るかもしれない。ここより、城の方が安全だと思う。城へ向かおう」
みんなが頷いてくれた。
私たちは、すぐに広げた荷物を片付けて、背負う。
レッドは私が抱っこした。
そして、みんなで草原を駆ける。
城の橋を進んだ先の広場で、メタナイト卿と無事に合流できたフームたちに会った。
メタナイト卿は言った。
「なにやらイヤな予感がする。地下へ急ぐのだ。――カノープス。リーノとレッドを頼む」
「任せてください」
ふ、と。太陽が陰る。
見上げれば、城を覆えてしまいそうなほど、大きな円盤型の宇宙船が空に浮かんでいた。
誰もが、あれは何だと、疑問符を浮かべて。
「いかん!カノープス!」
メタナイト卿の言葉で、我にかえる。
私はすぐに周囲にバリアを展開した。
瞬く間に、宇宙船から光弾が降って来る!
ヒュルル!という音。
ドカン!ドカン!バリアにぶつかり、爆発する音。
驚いたレッドが泣き出した。
私はレッドをリーノに預け、メタナイト卿に向き直る。
「敵の狙いは……」
「おそらくカービィだ」
「ならば、戦ってもらうしか……」
「それしかあるまい」
私とメタナイト卿は、カービィの方を振り返る。
フームはカービィの前に立つ。
「それじゃ敵の誘いに乗れってこと!?」
「時には……な」
「…………」
フームはカービィを見た。
カービィもフームを見た。そして頷く。
フームは一度目を閉じて、開ける。
「カービィ……お願い」
「ぽよ!」
「来て!ワープスター!」
空の彼方から……正しくはカブーの谷の方角からワープスターが飛んできた。
カービィはワープスターが見えて、バリアから飛び出す。
ワープスターに飛び乗ろうとした!けれど、光弾の数が凄まじく、邪魔をされて飛び乗れない。
「いかんな」
「援護に行きましょう」
メタナイト卿の言葉に、私は提案する。
青い戦士は頷いた。
「そうしよう。……あちらにソードとブレイドも来ている。援護は我々がするから、カノープスは皆を守れ」
「わかりました。気をつけて」
「行ってくる」
メタナイト卿はリーノとレッドを見て、言葉を交わさずバリアから出た。
同時に、向かい側からソードナイトとブレイドナイトが飛び出す。
カービィに向かってくる光弾を、三人がはじいた!
チャンスだ。
フームが叫ぶ。
「今よ!カービィ!」
「ぽよ!」
やっとワープスターに飛び乗れた!
ワープスターに乗ったカービィは、ぐんぐん上昇する。
光弾を見事にかわし、光弾が発射される口から、敵の宇宙船の中へ入った!
それを見届けた、三戦士がバリアの中へ入る。
三戦士が無事だったことに、リーノ、アーニャ、ランタンが心から安堵していた。
光弾が降り注ぐ一分後……。
宇宙船が爆発した!
宇宙船は破片となり、バラバラと地上に落ちる。
「イェーイ!カービィがやったわ!」
「やっぱり、すげえぜ!」
歓声をいち早く上げるのは、フームとブンだ。
やがてカービィもワープスターに乗って降りてきた。
我々の勝利だ!
…………
………………
破片が落ちてこなくなり、安全になったところで、私はバリアを解いた。
そしてみんなに言う。
「メタナイト卿、カービィ、フームとブンは、急ぎカブーの谷へ向かってくれ。今回の襲撃について、カブーなら何か知っているかもしれない」
フームが頷く。
「確かにそうね。みんな、行きましょう」
そこにメタナイト卿が、待ったをかける。
「待て。カノープス、共に来てくれ」
「なぜです?」
首を傾げれば、メタナイト卿は「簡単だ」と言った。
「一回目の襲撃は退けた。次は、もっと多くの敵が来てもおかしくはない。その時、戦力が欲しい。それに……」
「それに、なんでしょう?」
「今回の襲撃、カービィだけではなく、そなたも狙ったように見える」
まさか、と思った。
けれど頭を振る。
「私、厄介な能力持ちですものね」
「うむ。万能型は、敵からすれば直ちに倒したくなるもの。ここに残った方が、皆が危険かもしれん」
私はしばし悩んだ。
そしてリーノとレッドを、アーニャとランタンを見る。
離れたくない。が、危険が及ぶぐらいなら……!
私はバリアの玉を一つ作り、リーノの側に浮かべた。
「……バリアを置いて行く。地下厨房にいてくれ」
「カノ、私たちなら大丈夫よ。だから、頑張ってきて!」
励まされ、私は強く頷いた。
メタナイト卿を見る。
「行きましょう!」
「うむ。ソード、ブレイド、リーノたちを地下厨房へ」
「かしこまりました」
「すぐに向かいます」
そこにパーム様が声をかける。
「私たちも一緒に行ってもいいかね?」
リーノは笑顔を見せる。
「もちろんですわ。みんなで行きましょう!」
そうして、ソードナイトとブレイドナイトたちは、メイドたちとレッド、大臣夫婦を連れて、地下へ向かった。
メタナイト卿は、リーノとレッドの姿が離れたところで、言った。
「我々も行くぞ」
――――――
カブーの谷。
森を抜けたところに、岩の賢者はいた。
私の三倍はありそうな賢者は、星の戦士のシェルターらしい。
ここにいると思っていた陛下たちが、いなかった。
どこへ行ったのだろう?
私たちはカブーの前に立つ。
カブーは言った。穏やかな男性の声だった。
「メタナイト卿たち、よく来た。カブー、待っていた」
みんなが口を開く前に、私は聞いた。
「失礼。陛下たちはどうしたのだ?」
「デデデたち、カブーのところにいた。しかし、城が攻撃された事に気づいて、帰った」
「そうか、ありがとう。すれ違いになったのか」
元気ならばいい。
次はフームが言った。
「それで、どうして私たちを待っていたの?」
「カブー、仲間たちから報せを受けた。敵の手にエアライドマシンが渡った。カービィ、強くならないといけない」
「エアライドマシン?」
「なんだソレ?」
姉と弟の言葉に、メタナイト卿が答える。
「ワープスターのことだ。星の戦士たちが生まれたときから持っているもの、それがエアライドマシンだ」
私は言った。
「カービィの場合はワープスターか……。他はどんなものがある?」
「それを見せる。カブーの中に入る」
カブーの前で燃えていた火が消えた。
すると、奥に入口のような場所が見えた。
……入れないかも。
カービィ、フームとブン、メタナイト卿が入って……やはり私には小さい。
私は言った。
「出入りが難しいから、外で待つよ。敵が来たら知らせる」
「気をつけてね、カノープス」
「ああ、大丈夫だよ。フーム」
入口の外、再び灯された火から離れる。
座って空を見上げた。
敵はまだ来ない。
十分後に、メタナイト卿がこちらへ来た。
彼は言った。
「フームとカービィが眠った。夢の中で、エアライドマシンの戦い方を学ぶようだ」
「それもカブーの力ですか?」
「そうだ」
「すごい、ですね」
途方もない力だと思う。
さらにメタナイト卿は言った。
「朝まで時間がかかるやもしれん。いけるか?」
「問題ありません。体力には自信がありますから」
「頼もしいな。では、私は中に戻る。外は任せた」
「わかりました」
青い戦士は、再びカブーの内部へ戻っていく。
私はやっぱり空を見上げた。
子供たちは食事を抜いても大丈夫なのだろうか?
ううん、今は我慢してもらうしかないけれど。
落ち着いたら、ゆっくり食べてもらいたいな。
しかし、一人で何時間も待つのは暇だな。
いや、警戒しているのだから、暇とは違うのだけれど。
どうしたものか。
そこにブンがやって来た。
一体どうしたのだろう。
ブンは私の隣に座った。
「どうした?中の居心地でも悪かったのか?」
「そうじゃないけど……おれ、ちゃんとカノープスと話したことないなーって思って。だって、いつもおれたちから、少し離れたところにいる気がするもん」
「ああ……そうかな?」
「そうだよ」
子供って鋭い。
まあ、いつかは気づかれると思っていたが。
ブンはさらに言う。
「話すようになったのは、カービィが来てからじゃないかな?」
「そうかもな」
「ねえ、聞かせてくれよ!カノープスは昔、どんな感じだったんだ?」
「ええ……普通だぞ?」
それから私たちは、長い時間を話した。
私が記憶喪失だったこと。
リーノが拾ってくれたこと。
昔から魔法が使えたこと。
陛下たちがやって来たあの日のこと。
ワドルディたちと模擬戦をしたこと。
メタナイト卿たちがやって来たときのこと。
彼らと模擬戦をしたこと。
無事に城に住めることになったこと。
メタナイト卿が、私の師になってくれたこと。
本当に、色んなことがあったなあ。
ブンは聞き上手で、様々なことを話してしまった。
そうこうしているうちに、ロロロとラララが飛んできた。
彼らの手にはバスケットがある。
彼らは言った。
「みんなー!ご飯持って来たよ!」
「ちゃんと、みんなの分あるからね」
助かる。これで寝ているフームはともかく、ブンが食べられる。
食事休憩をし、ブンはカブーの内部へ戻るかと思った。
しかし、続きをねだられたので、話してあげた。
夜になると、子供たちは眠りにつく。
限界だったのだろう。横になるとすぐに寝ていた。
私とメタナイト卿は、起きて警戒を続ける。
――――――
敵は、夜明けごろにやって来た。
メタナイト卿から教えてもらったのだが、あの円盤型の宇宙船の名前はデスタライアーというらしい。
デスタライアーは二機も、カブーの遥か上空に浮かぶ。
そして攻撃して来た。
前の攻撃よりも激しい。
私は、すぐにカブーごとバリアでおおい、光弾を防ぐ。
「ありがとう、カノープス」
カブーに礼を言われた。
私は言った。
「いいんだ。それよりも、フームたちは起きたのか?」
「今、起きた」
「そうか」
メタナイト卿、フームとブン、カービィ、ロロロとラララが、カブーの出入り口から出てきた。
私はフームに聞いた。
「カービィはどうだった?」
「バッチリよ!さあ、カービィ!強くなったあなたを、見せてあげて」
「ぽよよい!」
「来て!ワープスター!」
ワープスターはカブーの口から飛び出して、カービィの前に降りてくる。
そして、カービィはワープスターに乗って上昇した。
前の襲撃時よりも、軽やかに攻撃をかわす。
私は言った。
「私も行ってくる。一人で二機を相手にするのは、キツイだろうからな」
フームが不安そうに言った。
「あなた、飛べるの?」
「走ることはできるよ」
私は地上から上空の宇宙船に向かって、光の道を作り出す。
キラキラと輝くソレは、夜明けの太陽に照らされて、さらに美しい。
私は光の道を駆ける。
私にも光弾が降ってきた。
それを強化した鉄パイプで叩き、爆発させる。
私にダメージはない。ちなみに光の道も攻撃されるが、非常に頑丈らしくて、どこにもヒビは入らない。
あっという間に宇宙船に辿り着く。
光弾の発射口から中へ入る。
うん、アニメで見た通りだ。管があって、そこを光弾の元である玉が流れていく。
私はグッと魔法を体にためた。
数十秒後、解放する。
凄まじい衝撃波が、宇宙船を襲った!
あちこちで爆発が起こる!
私はすぐに自分にもバリアを張った。
そして急いで体を反転させ、カブーの方面へ走る。
後ろでどんどん爆発が大きくなって、破片がバラバラと地上に落ちた。
爆発に巻き込まれても光の道は壊れず、私が地上に降りる最後まで、その役目をまっとうしていた。
どうやら私が最後だったらしく、地上に足をつけると、子供たちが歓声を上げる。
ブンとフームだ。
「やったー!カノープスもデスタライアーをやっつけたぞ!」
「みんな、すごいわ!」
私は空を見上げた。
敵の宇宙船はもういないが、あちこちで煙が空に上がっている。
宇宙船の燃えた破片が落ちて、周囲の森が燃えているのだろう。これでは、帰り道が危険だ。
「喜んでいるところ悪いが、もうしばらくここに留まるぞ。森が燃えていて、帰るのは困難だ」
メタナイト卿が賛同してくれる。
「それがいいな。もう少しここにいよう」
「えー?カノープスの魔法でチョチョイと消火すればいいじゃん!」
ブンの言葉に私は頭をふる。
「ナイトメアに目をつけられても困る。しばし、我慢してくれ」
「そっか。わかった」
私たちは、もうしばらくカブーの谷にいた。
が、それも一時間ほどだった。
陛下率いる兵士たちが、消火活動を頑張ってくれたのだ。
陛下が迎えにきてくれて、私はようやく緊張を解いた。