カノープスの終生   作:紅絹の木

64 / 65
はっぴーえんど

 

 

 

 無事にワープを終えたハルバード。

 すぐに決戦が始まるワケではなくて、ナイトメア大要塞から少し手前で止まり、それから速度を落として目的の場所に飛んでいく。

 

 到着までの間、私たちは、ソードナイトとブレイドナイトに連れられて、艦内を散策しに行った。

 ダコーニョ軍曹のしごきに付き合おうと思ったが、そこで大切なことを思い出す。

 

「あ、陛下」

 

 それにエスカルゴン殿。確か、この戦艦に乗っているハズだ。

 ……いくら最終決戦に向けて緊張していたとはいえ、好きな人のこと忘れるか??

 私は自分に引いた。

 

 とにかくだ。すぐにメタナイト卿に報告した方が良いと思い、私はトレーニング部屋から抜け出した。

 ブリッジにて、メタナイト卿に「陛下たちが、この戦艦に乗っているかもしれない」と、話す。

 メタナイト卿はすぐに艦内放送で、みんなに陛下たちを探すよう伝えた。

 

 陛下たちは、すぐに見つかった。

 

 お腹が減ったのだろう。

 キッチンに潜り込んでいるところを、カワサキさんが見つけれくれたのだ。

 

 

 

 キッチン内にて。みんなに囲まれる陛下に一歩近づき、声をかける。

 

「陛下、それにエスカルゴン殿。ご無事で何よりです」

「うむ。腹が減ったゾイ。レトルトで良い。よこすゾイ」

「……そうしたいのは山々なのですが」

 

 横に立つメタナイト卿を見る。

 メタナイト卿は一歩前へ出て、ハッキリ仰った。

 

「申し訳ないが、もうすぐ決戦だ。陛下たちには大人しくしていてもらう。カノープス、頼む」

「わかりました。陛下、抱っこしましょう」

「ぐぬぬ」

 

 そうして陛下たちは、牢へ入れられた。

 無理もない。今までの事を考えれば、仕方ないのだ。

 後で毛布やらテーブルやら……色々差し入れしよう。

 薄暗い牢の外側から、私は陛下に言った。

 

「ナイトメアを倒すまでの辛抱ですからね」

「……カノープスは」

「はい」

「ワシ以外の命令をきくのかゾイ」

「——今だけは、そうです」

 

 陛下は一瞬、傷ついた顔をした。

 だから私は、誰が原因なのか伝えた。

 

「ナイトメアを倒せれば、また、いつもの日常に戻りますからね」

「……フン!」

 

 そっぽ向かれた。

 寂しいけれど、今はそれでいいと思う。

 ちなみに陛下たちが所持していた爆弾は、戦艦の外、宇宙にポイっと捨てられた。

 

 

 

 ——————

 

 

 

 

 それから落ち着いたかと思ったのだが、ナイトメアからの刺客が送られてきた。

 

 機械でできた兵器、ヘビーロブスターだ。

 直ちに私とカービィ、フームとブンが出撃し、氷系の攻撃で相手の動きを鈍らせる。

 

 リーノに氷の力を渡した後、研鑽を積んだ私と、アイスをコピーしたアイスカービィ。

 

 二人がかりで、ヘビーロブスターを凍らせる。

 そして私の怪力で、相手を真っ二つに裂いた。

 そんなに硬くないな。

 

 私たちの勝利である。

 戦艦は無事で、そのまま宇宙を進んだ。

 

 

 

 

 ——そして、ナイトメア大要塞である。

 みんながその大きさに息を呑む中で、賑やかにブリッジで騒ぐ二人がいる。

 牢から出された陛下とエスカルゴン殿だ。

 

 見えないところで悪さされるよりも、目の届くところにいてもらった方がいい。

 私がメタナイト卿に、そう進言したのだ。

 

 彼らは持っていた通信機……今で言うケータイでカスタマーサービスと連絡をとってしまった。

 

「今からそっちに行く!首を長くしておくが良いゾイ!」

「それを言うなら、首を洗っておけ……でゲショ?」

「どっちでも良いゾイ!」

 

 こうしてカスタマーサービスに、戦艦の位置がバレてしまい、開戦となった。

 

 敵から、無数のエネルギー弾を受ける。

 戦艦は周囲にバリアを張り、敵からの攻撃から身を守りつつ、要塞の懐に潜る。

 

 攻撃は一旦止んだ。

 しかし、今度はデスタライアーがたくさん要塞から出てきて、また攻撃を受ける。

 

 ——ここで私がブチ切れた。

 

 どこからか吹く風に背中を押されて、魔法を練り上げる。

 

「陛下に仇なす者は、倒す」

「カノープス?待て!どこへ行く」

「外に出て全てを破壊します。私の事は気にしないで。必ず生き残りますから」

 

 フームたちの静止の声すらも払いのけ、私は戦艦から外へ出た。

 

 やってみれば簡単だった。

 魔法の翼を生やし、魔法の膜で自らを覆い、中の空気がなくなるまでと決めて、宇宙を飛ぶ。

 

 この要塞からのエネルギー弾と、デスタライアーの光弾を、ひらりひらりとかわして。

 戦艦から離れてから、呪文を唱える。

 最初なのだ、派手に行こう。

 

「ギガデイン」

 

 周りを覆う膜から、神の怒りが生じた。

 轟音を撒き散らし、辺りの敵という敵に雷撃が刺さる。

 ——陛下の敵が減った。

 

 それだけが重要な事だった。

 

 

 

 今度はライデインの連発で目立ち、敵機を減らしていた頃。

 やがてデスタライアーの中から三機、同士撃ちを始めた。

 私は、その三機の中の一つに乗り込む。

 

 たくさんの二頭身の戦士たちが働く中で、見知った顔であるシリカを見つけた。

 全ての魔法を解除してシリカに近寄る。

 

「シリカ!」

「カノープス!あなた、無茶し過ぎよ!メタナイト卿から聞いた!私たちがバックアップするから、暴れて!」

「わかった。だが意思疎通はできた方がいいだろ?通信機くれないか?」

「誰か!通信機を持ってきて!」

 

 シリカがそう叫ぶと、フードを被った一人の戦士が、すぐに通信機を持ってきてくれた。

 

「ここに」

「ありがとう。カノープス」

「ああ、感謝する」

 

 耳につけるヘッドホンみたいな、ちょっと大きめの通信機だ。

 それを装備して、また飛ぶ。

 

「じゃあ、行ってくる。息を整えに、また来るから」

「わかったわ。気をつけて!」

「ああ、そっちもな」

 

 私は魔法の膜を再びまとい、光弾の発射口から飛び出した。

 

 

 

 雷撃から火球、火球から氷結、氷結から闇の力を練り上げて、敵にぶつける。

 魔法の大盤振る舞いだ。

 出し惜しみなく、これまで修行してきた魔法を連発する。

 

 その時、知的な男性の声が、ヘッドホンから聞こえてきた。

 

『カノープス殿!私はオーサー卿。引き上げましょう!まもなく、メタナイト卿たちも脱出する!』

「大要塞を爆破するの?」

『なぜそれを……?その通りです。早く我々のデスタライアーの中へ!』

「わかった」

 

 私は、シリカがいるデスタライアーの中へ帰った。

 シリカは、私を見るなり壁をさして言った。

 

「カノープスは休んでて!」

「お言葉に甘えるぞ」

 

 壁際に行き、腰を下ろす。

 そこでようやく、自分が肩で息をしていたのだとわかった。

 

 ああ、疲れたなあ。

 陛下、みんな、無事かなあ。

 

 

 

 

 ——————

 

 

 

 

 

 シリカたちのデスタライアーが、ナイトメア大要塞を離れた後。

 ナイトメア大要塞は爆発した。

 

 凄まじいエネルギーの衝撃が、私たちのデスタライアーをガタガタと揺らした。

 それでも無事に、三機は一番近い星へと進む。

 

 ——落ち着いた頃に、また風が吹いた。

 

 私はふらりと立ち上がる。

 一番近くにいた、女性の戦士が声をかけてきた。

 

「どうしました?お腹でも空きましたか?」

「城へ帰る」

「——は?」

 

 私は風に誘われるまま、両手を前へ突き出し、ゆっくり渦巻くように回した。

 

 ああ、プププランドの景色が見える。

 私は渦の中へ飛び込んだ!

 

 

 

 …………

 ………………

 

 

 

「あら?カノープスはどこ?」

「……う、渦の中へ飛び込みました」

「え?」

 

 

 

 …………

 ………………

 

 

 

 

 城の上空、朝日を受けつつ、魔法の翼を生やして飛ぶ。

 もう慣れたものだ。我ながら習得がはやい。

 

 そうして朝日を見るみんなの後ろに降り立った。

 

「みんなー」

 

 疲れて、間延びした声を出してしまった。

 それを聞いて、リーノがまず振り返り、それから顔をくちゃくちゃにした。

 

「お姉ちゃん!」

「ん、ただいま」

「遅い!!」

 

 リーノはレッドを抱っこしたまま、私の腕の中へ。

 私は体を屈めて、二人を優しく抱きしめた。

 

 そこに陛下も、アーニャにランタン、三戦士、エスカルゴン殿、大臣一家、共に戦艦に乗った村人たちが集まってくれた。

 

 みんなが無事で、生きていて、笑っている。

 よかった!

 長い戦いは終わったのだ。

 

「これでようやく行ける」

「?カノ、どうしたの」

 

 わからない。

 ——わかってるでしょう?

 

 風が吹く。強く強く、吹いている。

 誰かが言った。

 

「やだ……天気が荒れてきたわ。みんな、一度城の中へ」

「パーティしようぜ!パーティ!」

「はい!腕によりをかけて、食べたいものをなんでも作りますね!あ、カノは休んでていいからね……カノ?」

「もう行かなくちゃ」

 

 私はリーノとレッドから離れて、立ち上がり、まっすぐ進む。

 晴れやかな朝日の方へ進む。

 

「カノ?カノ、待って……」

「リーノ!ならん!」

「メタナイト卿、ですが」

「何かおかしい。カノープス、一体どうしたのだ」

 

 風が私の背中を押している。

 私は、リーノと出会ったときのことを思い出していた。

 

「ここへ来る前に願ったんです。一つ、どこかへ行くこと。一つ、読み書きができること。一つ、強くなれること」

「——なに?」

「その願いは叶った。これからも叶う……私が願ったから」

 

 薄雲の向こうに、それはいた。

 

 太陽のような眼。

 老若男女問わない千の手。

 朝日を背負うその姿。

 

 ——まさしく“神様”だ。

 

 行かなくちゃ。

 どうして?

 私がそう、願ったから。どこかへ行ってみたいから。

 もう叶ったでしょう?

 もっと会いたい人たちがいるから。

 

 私の“好き”は、たった一つじゃなかったから。

 

 魔法で階段を作り出し、その上を歩きだす。

 神様の手が伸びる。そうして優しく、私を包み込んでくれる。

 何重にも。

 

 遠くで「お姉ちゃん」と呼ばれた。

 もう懐かしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待つゾーイ!!」

 

 神様の手が、ぐわんと揺れる。外から攻撃されているのだ。

 誰か、わかった。

 

「へーか」

「何ゾイ!?一体何がおこっておる!カノープス、ちゃんと説明するゾイ!」

 

 言葉を紡ぐ間も、ハンマーは振り下ろされている。

 

 私は、私は。

 ——空から赤子の手が伸びる。

 私は咄嗟に、陛下に向けて腕を伸ばし、突き飛ばした。

 

「じゃま、しないでください」

「カノープス!」

 

 陛下は落ちていった。地面にぶつかる。すぐにエスカルゴン殿が駆けつけて、起こしていた。

 ああ、大丈夫だ。

 

 私は神様の手の中で、赤子のように寝転がる。

 

「いきましょう……」

 

 風が吹いた。

 

 周りが見慣れたプププランドの空から、移り変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間にか、私は草原の上に立っていた。

 夜空で、オーロラが美しい。

 いくつもの流れ星が落ちていく。

 

 いつか見た夢だ。

 ううん。

 

「現実だったんだ」

 

 足元の草の感触はない。

 靴を履いているから感じないとか、そういう問題ではなかった。

 

 空を見上げた。

 神様の気持ちが伝わってくる。

 

 ——完結おめでとう。お祝いしよう。

 

「……質問いいですか?」

 

 ——いいよ。

 

「私をどうして、あの世界に?」

 

 どうして、人様の二次創作の中へ、入り込んでしまったんだろう?

 全てを思い出した今、すごく不思議だった。

 

 ——きみが、好きだったから。

 ——きみが、望んだから。

 ——すべてはきみのために。

 

「そっか……」

 

 私が“こんな世界に行きたい”と、願ったからかあ。

 

「叶えてくれたんですね。ありがとうございます」

 

 ——いいよ。

 

「あの、私はこれからも別の世界へ行きますよね?お願いがあるんですが」

 

 ——なに?

 

「“これまで”を覚えていたいです。ずっとずっと、リーノやレッド、陛下やみんなのこと、覚えていたいです」

 

 ——いいよ。

 

 オーロラが降りてくる。

 目を閉じた私を包み、優しく“上書き”する。

 ああ、これが神の御技。

 

 これまでの私と混ざって、新しい私になる。

 見た目は変わらない、中身も変わっていない。

 “これまで”を、忘れない私になっただけ。

 

 ゆっくりと目を開ける。

 

「……次はどこですか?」

 

 神様の言う通りに。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。