無事にワープを終えたハルバード。
すぐに決戦が始まるワケではなくて、ナイトメア大要塞から少し手前で止まり、それから速度を落として目的の場所に飛んでいく。
到着までの間、私たちは、ソードナイトとブレイドナイトに連れられて、艦内を散策しに行った。
ダコーニョ軍曹のしごきに付き合おうと思ったが、そこで大切なことを思い出す。
「あ、陛下」
それにエスカルゴン殿。確か、この戦艦に乗っているハズだ。
……いくら最終決戦に向けて緊張していたとはいえ、好きな人のこと忘れるか??
私は自分に引いた。
とにかくだ。すぐにメタナイト卿に報告した方が良いと思い、私はトレーニング部屋から抜け出した。
ブリッジにて、メタナイト卿に「陛下たちが、この戦艦に乗っているかもしれない」と、話す。
メタナイト卿はすぐに艦内放送で、みんなに陛下たちを探すよう伝えた。
陛下たちは、すぐに見つかった。
お腹が減ったのだろう。
キッチンに潜り込んでいるところを、カワサキさんが見つけれくれたのだ。
キッチン内にて。みんなに囲まれる陛下に一歩近づき、声をかける。
「陛下、それにエスカルゴン殿。ご無事で何よりです」
「うむ。腹が減ったゾイ。レトルトで良い。よこすゾイ」
「……そうしたいのは山々なのですが」
横に立つメタナイト卿を見る。
メタナイト卿は一歩前へ出て、ハッキリ仰った。
「申し訳ないが、もうすぐ決戦だ。陛下たちには大人しくしていてもらう。カノープス、頼む」
「わかりました。陛下、抱っこしましょう」
「ぐぬぬ」
そうして陛下たちは、牢へ入れられた。
無理もない。今までの事を考えれば、仕方ないのだ。
後で毛布やらテーブルやら……色々差し入れしよう。
薄暗い牢の外側から、私は陛下に言った。
「ナイトメアを倒すまでの辛抱ですからね」
「……カノープスは」
「はい」
「ワシ以外の命令をきくのかゾイ」
「——今だけは、そうです」
陛下は一瞬、傷ついた顔をした。
だから私は、誰が原因なのか伝えた。
「ナイトメアを倒せれば、また、いつもの日常に戻りますからね」
「……フン!」
そっぽ向かれた。
寂しいけれど、今はそれでいいと思う。
ちなみに陛下たちが所持していた爆弾は、戦艦の外、宇宙にポイっと捨てられた。
——————
それから落ち着いたかと思ったのだが、ナイトメアからの刺客が送られてきた。
機械でできた兵器、ヘビーロブスターだ。
直ちに私とカービィ、フームとブンが出撃し、氷系の攻撃で相手の動きを鈍らせる。
リーノに氷の力を渡した後、研鑽を積んだ私と、アイスをコピーしたアイスカービィ。
二人がかりで、ヘビーロブスターを凍らせる。
そして私の怪力で、相手を真っ二つに裂いた。
そんなに硬くないな。
私たちの勝利である。
戦艦は無事で、そのまま宇宙を進んだ。
——そして、ナイトメア大要塞である。
みんながその大きさに息を呑む中で、賑やかにブリッジで騒ぐ二人がいる。
牢から出された陛下とエスカルゴン殿だ。
見えないところで悪さされるよりも、目の届くところにいてもらった方がいい。
私がメタナイト卿に、そう進言したのだ。
彼らは持っていた通信機……今で言うケータイでカスタマーサービスと連絡をとってしまった。
「今からそっちに行く!首を長くしておくが良いゾイ!」
「それを言うなら、首を洗っておけ……でゲショ?」
「どっちでも良いゾイ!」
こうしてカスタマーサービスに、戦艦の位置がバレてしまい、開戦となった。
敵から、無数のエネルギー弾を受ける。
戦艦は周囲にバリアを張り、敵からの攻撃から身を守りつつ、要塞の懐に潜る。
攻撃は一旦止んだ。
しかし、今度はデスタライアーがたくさん要塞から出てきて、また攻撃を受ける。
——ここで私がブチ切れた。
どこからか吹く風に背中を押されて、魔法を練り上げる。
「陛下に仇なす者は、倒す」
「カノープス?待て!どこへ行く」
「外に出て全てを破壊します。私の事は気にしないで。必ず生き残りますから」
フームたちの静止の声すらも払いのけ、私は戦艦から外へ出た。
やってみれば簡単だった。
魔法の翼を生やし、魔法の膜で自らを覆い、中の空気がなくなるまでと決めて、宇宙を飛ぶ。
この要塞からのエネルギー弾と、デスタライアーの光弾を、ひらりひらりとかわして。
戦艦から離れてから、呪文を唱える。
最初なのだ、派手に行こう。
「ギガデイン」
周りを覆う膜から、神の怒りが生じた。
轟音を撒き散らし、辺りの敵という敵に雷撃が刺さる。
——陛下の敵が減った。
それだけが重要な事だった。
今度はライデインの連発で目立ち、敵機を減らしていた頃。
やがてデスタライアーの中から三機、同士撃ちを始めた。
私は、その三機の中の一つに乗り込む。
たくさんの二頭身の戦士たちが働く中で、見知った顔であるシリカを見つけた。
全ての魔法を解除してシリカに近寄る。
「シリカ!」
「カノープス!あなた、無茶し過ぎよ!メタナイト卿から聞いた!私たちがバックアップするから、暴れて!」
「わかった。だが意思疎通はできた方がいいだろ?通信機くれないか?」
「誰か!通信機を持ってきて!」
シリカがそう叫ぶと、フードを被った一人の戦士が、すぐに通信機を持ってきてくれた。
「ここに」
「ありがとう。カノープス」
「ああ、感謝する」
耳につけるヘッドホンみたいな、ちょっと大きめの通信機だ。
それを装備して、また飛ぶ。
「じゃあ、行ってくる。息を整えに、また来るから」
「わかったわ。気をつけて!」
「ああ、そっちもな」
私は魔法の膜を再びまとい、光弾の発射口から飛び出した。
雷撃から火球、火球から氷結、氷結から闇の力を練り上げて、敵にぶつける。
魔法の大盤振る舞いだ。
出し惜しみなく、これまで修行してきた魔法を連発する。
その時、知的な男性の声が、ヘッドホンから聞こえてきた。
『カノープス殿!私はオーサー卿。引き上げましょう!まもなく、メタナイト卿たちも脱出する!』
「大要塞を爆破するの?」
『なぜそれを……?その通りです。早く我々のデスタライアーの中へ!』
「わかった」
私は、シリカがいるデスタライアーの中へ帰った。
シリカは、私を見るなり壁をさして言った。
「カノープスは休んでて!」
「お言葉に甘えるぞ」
壁際に行き、腰を下ろす。
そこでようやく、自分が肩で息をしていたのだとわかった。
ああ、疲れたなあ。
陛下、みんな、無事かなあ。
——————
シリカたちのデスタライアーが、ナイトメア大要塞を離れた後。
ナイトメア大要塞は爆発した。
凄まじいエネルギーの衝撃が、私たちのデスタライアーをガタガタと揺らした。
それでも無事に、三機は一番近い星へと進む。
——落ち着いた頃に、また風が吹いた。
私はふらりと立ち上がる。
一番近くにいた、女性の戦士が声をかけてきた。
「どうしました?お腹でも空きましたか?」
「城へ帰る」
「——は?」
私は風に誘われるまま、両手を前へ突き出し、ゆっくり渦巻くように回した。
ああ、プププランドの景色が見える。
私は渦の中へ飛び込んだ!
…………
………………
「あら?カノープスはどこ?」
「……う、渦の中へ飛び込みました」
「え?」
…………
………………
城の上空、朝日を受けつつ、魔法の翼を生やして飛ぶ。
もう慣れたものだ。我ながら習得がはやい。
そうして朝日を見るみんなの後ろに降り立った。
「みんなー」
疲れて、間延びした声を出してしまった。
それを聞いて、リーノがまず振り返り、それから顔をくちゃくちゃにした。
「お姉ちゃん!」
「ん、ただいま」
「遅い!!」
リーノはレッドを抱っこしたまま、私の腕の中へ。
私は体を屈めて、二人を優しく抱きしめた。
そこに陛下も、アーニャにランタン、三戦士、エスカルゴン殿、大臣一家、共に戦艦に乗った村人たちが集まってくれた。
みんなが無事で、生きていて、笑っている。
よかった!
長い戦いは終わったのだ。
「これでようやく行ける」
「?カノ、どうしたの」
わからない。
——わかってるでしょう?
風が吹く。強く強く、吹いている。
誰かが言った。
「やだ……天気が荒れてきたわ。みんな、一度城の中へ」
「パーティしようぜ!パーティ!」
「はい!腕によりをかけて、食べたいものをなんでも作りますね!あ、カノは休んでていいからね……カノ?」
「もう行かなくちゃ」
私はリーノとレッドから離れて、立ち上がり、まっすぐ進む。
晴れやかな朝日の方へ進む。
「カノ?カノ、待って……」
「リーノ!ならん!」
「メタナイト卿、ですが」
「何かおかしい。カノープス、一体どうしたのだ」
風が私の背中を押している。
私は、リーノと出会ったときのことを思い出していた。
「ここへ来る前に願ったんです。一つ、どこかへ行くこと。一つ、読み書きができること。一つ、強くなれること」
「——なに?」
「その願いは叶った。これからも叶う……私が願ったから」
薄雲の向こうに、それはいた。
太陽のような眼。
老若男女問わない千の手。
朝日を背負うその姿。
——まさしく“神様”だ。
行かなくちゃ。
どうして?
私がそう、願ったから。どこかへ行ってみたいから。
もう叶ったでしょう?
もっと会いたい人たちがいるから。
私の“好き”は、たった一つじゃなかったから。
魔法で階段を作り出し、その上を歩きだす。
神様の手が伸びる。そうして優しく、私を包み込んでくれる。
何重にも。
遠くで「お姉ちゃん」と呼ばれた。
もう懐かしかった。
「待つゾーイ!!」
神様の手が、ぐわんと揺れる。外から攻撃されているのだ。
誰か、わかった。
「へーか」
「何ゾイ!?一体何がおこっておる!カノープス、ちゃんと説明するゾイ!」
言葉を紡ぐ間も、ハンマーは振り下ろされている。
私は、私は。
——空から赤子の手が伸びる。
私は咄嗟に、陛下に向けて腕を伸ばし、突き飛ばした。
「じゃま、しないでください」
「カノープス!」
陛下は落ちていった。地面にぶつかる。すぐにエスカルゴン殿が駆けつけて、起こしていた。
ああ、大丈夫だ。
私は神様の手の中で、赤子のように寝転がる。
「いきましょう……」
風が吹いた。
周りが見慣れたプププランドの空から、移り変わる。
いつの間にか、私は草原の上に立っていた。
夜空で、オーロラが美しい。
いくつもの流れ星が落ちていく。
いつか見た夢だ。
ううん。
「現実だったんだ」
足元の草の感触はない。
靴を履いているから感じないとか、そういう問題ではなかった。
空を見上げた。
神様の気持ちが伝わってくる。
——完結おめでとう。お祝いしよう。
「……質問いいですか?」
——いいよ。
「私をどうして、あの世界に?」
どうして、人様の二次創作の中へ、入り込んでしまったんだろう?
全てを思い出した今、すごく不思議だった。
——きみが、好きだったから。
——きみが、望んだから。
——すべてはきみのために。
「そっか……」
私が“こんな世界に行きたい”と、願ったからかあ。
「叶えてくれたんですね。ありがとうございます」
——いいよ。
「あの、私はこれからも別の世界へ行きますよね?お願いがあるんですが」
——なに?
「“これまで”を覚えていたいです。ずっとずっと、リーノやレッド、陛下やみんなのこと、覚えていたいです」
——いいよ。
オーロラが降りてくる。
目を閉じた私を包み、優しく“上書き”する。
ああ、これが神の御技。
これまでの私と混ざって、新しい私になる。
見た目は変わらない、中身も変わっていない。
“これまで”を、忘れない私になっただけ。
ゆっくりと目を開ける。
「……次はどこですか?」
神様の言う通りに。