メタナイト卿たちが無事に城の仲間になった訳で。
さあ歓迎会を開こう、と陛下に進言したら断られた。
プンスカ!怒りながら「歓迎会なんぞせん!したければ、勝手にするゾイ!」とそっぽむかれてしまったのだ。
「何をあんなに怒っていたんだ?」
「そりゃあ、カノが倒されちゃったんだもの。陛下だって、気分が悪くなるわ」
「そういうものか」
晴れ。朝の洗濯場にて。リーノの仕事を手伝う。
洗濯ものをリーノから受け取って、それをどんどん干していく。
陛下とは仲良しだと思っていたが……そうか。私が倒されたのが悔しかったのかな。
口元が緩む。
「陛下におもわれて嬉しいよ」
リーノがちょっと驚いた顔をした。
私は気づかず、言葉を続けた。
「陛下と私の間には、ちゃんと友情があったんだな」
「そ、そうね……」
ガクリと肩を落とすリーノ。
どうしたのか聞けば、なんでもないと返された。
――――――
さて、問題の歓迎会だが。
やっぱり村で行うか。元の話でも、村で三人の歓迎会をしていたしな……。
私はリーノに相談し、リーノはアーニャとランタンを巻き込んだ。
そして四人で、まずはレン村長とハナさんのところに行く。歓迎会をしたいと言えば、笑顔で承諾してくれた。
そして、私たちが抜け落ちていた事に気づいてくれたのだ。
ハナさんが言った。
「ところで、もうケガの具合はいいのかしら?」
リーノが笑顔で言う。
「この通り、カノープスは元気ですわ」
「あ……そうではなくて、三人の戦士たちの事よ」
「え、あ!まだ、安静にしなくてはいけないようですわ!」
「そうなの?じゃ、歓迎会は戦士さんたちが治ってからにしましょうね」
確かにその通りだ。
うっかりしていた。
――――――
「具合はどうだ?」
リーノと二人で、ソードナイトとブレイドナイトの部屋を訪ねた。
持って来た果物の詰め合わせを見せると、メタナイト卿は私たちを部屋の中に入れてくれた。
ソードナイトもブレイドナイトも、体に包帯を巻いてうつ伏せで寝ている。背中を強く打ったからだな。私のせいだな。
「果物を持って来た。何か、食べるか?」
メタナイト卿が従者二人とアイコンタクトをとる。
そして頷いた。
「もらおう」
「わかった。リーノ、赤りんごを切ってくれ。私は青リンゴを切る」
「わかったわ」
リーノは果物ナイフを取り出して、切る。皮付き赤りんごのできあがり。
私は右手の人差し指にアレ――多分、魔力――を込めて、ナイフのようにスッと果実を切る。
メタナイト卿が声を荒げた。
「!?そなた、魔法が使えたのか!」
「これは魔法なのか?」
「知らないで使っていたのか……」
少々の呆れを含み、魔法について教えてくれた。
魔法とは、魔力を持つものが鍛錬をした果てに使えるものである。
魔力を持つ者はごく少数で、魔法を扱える者はさらに数が減る。
いまだ解明には至らず、メタナイト卿も触り程度しか知らない……らしい。
「魔法は自由だと、かつての仲間が言っていた。己が想像した事ができる。だが、イメージが具体的でなければならない」
「具体的……」
それならば、何とかなるかもしれない。
マンガやゲームを嗜んでいた経験が役に立つな。
「――試してみよう」
私は六つに切った青リンゴを皿に乗せて、リーノに預けた。
そして、青リンゴを切った右手の指先で、左手の人差し指を軽く切った。――赤い筋ができる。
「カノ!」
「ごめん。でもすぐに治すから」
左手を包み込むように、魔力を込める。じっと見つめて集中した。
想像する。傷がふさがって治る様を。
「ホイミ」
一番、慣れ親しんだ回復魔法を言葉にした。
傷ついた指先でほのかに光が舞い、赤い筋はスーッとふさがり、治る。
成功だ。
「できた」
喜んでリーノに指先を見せると、彼女はびっくりして固まっている。
「カノ……あなた…………」
「うん?」
「すごいわ……」
私はニコッと笑い、照れた。
頬を掻き、メタナイト卿に提案する。
「どうだろう?ケガが治せるなら、従者お二人も治せると思うのだが」
「――ああ。頼もう」
「はい」
私はソードナイトとブレイドナイトにホイミをかけた。
変化はすぐにあらわれる。
「痛みが……」
「引いたようだな……」
二人とも体を起こして、腕をグルグルと回したりストレッチする。
私は首を傾げた。
ホイミとは、初級回復呪文だ。回復量はそれほど大きくない。なのに、何故寝込んでいた人が起き上がれるほど、回復できたのか。
……元々治りかけだったのか?
「どうしたのた?」
「いや、何でもない。とにかく痛みが引いて良かった」
「ああ。感謝する」
メタナイト卿の言葉を受けて、私は頷いた。
リーノの方に顔を向ける。
「これで、歓迎会ができるな」
「そうね。あの……村で皆様の歓迎会を開こうと思いますの。参加していただけますか?」
リーノの願いに、メタナイト卿は応えてくれた。
「わかった。参加する」
「じゃあ、明日にでもまた村におりて……」
「リーノ。歓迎会の準備よりも、先にヤブイ先生をよんであげないか?医師の許可があった方がいいだろう?」
リーノはハッとする。そして同意してくれた。
「それもそうね」
「メタナイト卿も、それでいいか?」
「異論はない」
私は立ち上がる。
「では、私が呼んでくる」
「一緒に行きましょうか?」
「リーノは午後から仕事だろう?私は、まあ、融通がきくからな。誰かに何か聞かれたら、陛下の為に果物を買いに行っていると伝えてくれ」
「わかったわ」
「じゃあな」
扉を開けて、私は部屋を出た。
さて、わたくしもお暇しましょうか。
メタナイト卿、ソードナイトさん、ブレイドナイトさわの顔を見回して言う。
「お皿が空きましたね。洗いますわ」
「こちらでやっておこう」
「ですが……」
「そのぐらいはやらせてくれ」
「そう……ですか?では、お願いしますね」
立ち上がったわたくしを引きとめたのは、青い戦士でした。
「待て」
「はい?何でしょうか」
「――あの者……カノープスについて教えて欲しい」
わたくしはすぐに頭を横に振りました。
「それならば、本人に聞いた方がいいですわ。カノは、なんというか、自分の噂話があまり好きではありませんから……。直接聞けば、ちゃんと答えてくれますよ?」
「……わかった。本人に聞こう」
「それから、カノープスの事は“彼女“とお呼びください」
一瞬、空白がうまれた。
「あら、知りませんでしたか?カノープスは女性ですよ?」
ソードナイトさんとブレイドナイトさんは困惑したのか、互いに窺い合う。
メタナイト卿は考え込んでいるのか空中を見つめて、それから言った。
「――彼女は強いな」
「ええ。自慢のお姉ちゃんです」
私はニコッと笑ってみせた。
ブレイドナイトさんが動揺した声を漏らす。
「姉?」
「はい。ずっと二人で寄り添って生きてきました。カノープスが姉で、わたくしが妹ですわ」
「だから、あなたに特別優しいのか」
「ふふ、本当の姉妹のようでしょう?」
三人が同意してくれます。
「ああ。仲が良いのだな」