如何にして人を辞め不死を愛するようになったか 作:不死を求める人
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そして、そこでは一人の冒険者と複数のヘルハウンドが対峙していた。
ヘルバウンド達の口から吹かれる火炎放射。それをまともに受けてしまった冒険者の皮膚はただれ落ちていく。
「ははっ」
――にも関わらず、冒険者は苦痛を口にするわけでもなくただ
「「!?」」
自爆特攻とも言える拳動の上、一体がやられた。それに改めて警戒を深めた残りのヘルバウンド達は火炎放射を止め噛みついていく。
冒険者の腕に嚙みついたと同時に、腕が取れる。火炎放射によりかなりの損傷を受けた腕を留めておけるほどの強度は保っておらず取れてしまう結果となった。
「はははっ」
にも拘わらず、ちっとも表情を変えず
スキルにより【力】の能力値に大幅な補正がかかっている故の所業である。
残っていた腕や、足にも噛み千切るほどの力で噛みついてきたヘルバウンドを前にして。
「ははは、はははっ!」
何処かしこも傷を負っていない部分がないほどの損傷を受けても尚、穏やかな笑顔を浮かべていた。
そしてもう片方の腕を噛み千切れんばかりのヘルバウンドにむけて
二体続いてやられた事を察知したヘルバウンド達は一旦距離を取っ――――た矢先に、そのままついてきた冒険者の持つ足により、一体が蹴り飛ばされた。
そういった状況の変化を受け、一体のヘルバウンドがもう一度攻撃を加えようと口を大きく開けると同時に冒険者に向かっていく。
――冒険者は、飛び掛かってくるヘルバウンドの開いた口に腕を突っ込みそのまま
無理やり魔石を取られたことにより、すぐさま灰と化す一体のヘルバウンド。
最初は複数いたヘルバウンドも、もう数える程度しか残っていない。
「……ああ、僕は
あらゆる要因が合わさり、満身創痍だったはずの冒険者はどこも傷が見当たらないほどに全快すると同時に――相変わらず穏やかな笑顔を浮かべていたのだった。
◇
――ファミリア内に、奇妙な男がいる。
それが、つい先程レベル2へランクアップを成したエリル・デヴィッドという男。
レベル2にランクアップした者らは決まって"神会"を通して二つ名が与えられる。こうして、あいつに与えられた二つ名は――【
その人となりを表す二つ名が多い中、"不明"という奇妙な二つ名を与えられたというのもあり、オラリオ中からあいつへの注目度は上がっている。
言われてみれば、確かにあいつは奇妙なやつだ。
同じファミリアに所属している同士顔を合わせたり話をした事はある上、それなりの付き合いはある――いや、
あいつは、"死"というものを非常に怖がっていた。仲間が死んだのを目にして、余程精神に来たらしくしばらくは部屋に引きこもっていた。
……冒険者をやる上、誰もが通る道だ。当然ながら冒険者とは"死"と隣り合わせなのだから。中には、ファミリアを抜けて普通の一般人として生きていく人達もたくさんいる。
だが、あいつは徐々に前を向いていって。少しずつだけどダンジョンにも潜れるようになって――ようやく1人行動が許された頃のことだった。
『おいッ、どうしたんだよ?』
あいつが、血まみれの姿で帰ってきた時だった――覚束ない様子で今にも倒れてしまいそうな足取りをするあいつを見かけて思わず大丈夫か、と声をかけて。
『……ッ』
そしてあいつを支えようとして、肩を持――……てなかった。
何故ならば、あいつは……
命がらがらでダンジョンから帰ってきたとは思えないぐらいに、あいつは嗤っていた。まるで全てを見切ったように、人間として大事なものが抜けたようにも見えた。
……そんな俺に反応もせずに、あいつはゼウスの所に行った。最初に持っていたあいつへの印象と全く異なったあいつに、俺は何の言葉も投げかけることができない。
――それ以来、会話らしい会話をした覚えがない。
……あいつに、一体何があったんだ?
血まみれの姿という事から、きっと死にかけたのだろうと思う。ならば、"死"を目の前にして耐えられなくなった?
いや、それにしてはあの
「――……どうしたんですか?」
「え?」
声をかけられ、気が付いたら
「あ……」
いけないな、せっかくのまたとない彼女とのデート中だというのに。彼女とは違うファミリアにいるから尚更。
――こちらを心配しているらしく彼女の表情に陰が差している。
今、考えても答えが出ない事をいつまでも考えている訳にはいかない。
「ごめん。ちょっと考え事してた」
メーテリアの声で"今"に戻った俺は、彼女にそう弁解することにしたのだった。
◇
……一方、ギルドでは人だかりが出来ていた。
人だかりが出来ている原因と思われる、大きな提示物がそこにあった。その提示物に書かれている事が事だけに、騒ぎを起こしている。
そこには――
【
所要期間 1ヶ月と24日
レベル3へのランクアップ。