如何にして人を辞め不死を愛するようになったか   作:不死を求める人

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誤字報告、感想のほどありがとうございます。

残酷な描写注意です。


レベル4

 

「……ううむ」

 

――ゼウスは、オラリオ中でも話題に上がっている【不明(アンノウン)】ごと、エリルの【恩恵】を更新する作業を終えていた。

 

 

 

エリル・デヴィッド

 

Lv.4

 

力:D 591 → B 747

耐久:C 685 → A 833

器用:E 410 → D 549

敏捷:E 488 → C 621

魔力:C 621 → B 794

 

治力:A

精癒:A

長命:E

狩人:G

生存:H

連撃:I

 

 

 

能力値の上昇は相変わらずのそれだった。だが、ゼウスを悩ませているのは――彼に新たなスキルが発現したことにある。それが……

 

 

 

永への研尋(エテルネル)

・発展アビリティ【長命】発現。

・研尋の丈により【長命】の下限上昇。

・【力】【耐久】【魔力】の能力値に超高補正。

 

 

 

発展アビリティ【長命】の発現。長命とは何かなんて考えるまでもない――恐らくは寿()()が伸びるといった類の効果を持つアビリティだろう。

 

どの程度まで伸びるかは現時点では分からない。だが、【恩恵】の格が上がれば上がるほどそれに比例して肉体の強度も上がっていき高レベルの者では年齢に似合わず若々しさを保つ者も珍しくない。

 

それは分かる――が、問題はこの【長命】という明らかに寿命そのものを伸ばすと思われるアビリティの発現にある。

 

大神であるゼウスとしては、正直に申すであれば不安要素が多い。

 

"死"を恐れるあまり、生に執着し身を破滅へと導いた人間は何人もいた。長年この世界にいるゼウスとてその事は分かっている。

 

しかし、エリルは――()()()()()()()()()()()()()()

 

誰しもが成し遂げることは不可能と言える、"不死"という域。ゼウスが知る限りの人間達の中でも……一番手が届きうる存在であることは認めざるを得なかった。

 

「……()()()()()()()

 

そう呟くゼウスの真意は、まだ誰にも分からない。

 

 

 

 

――【愚者】ごとフェルズは、最近気に掛かる者がいる。

 

それが――【不明(アンノウン)】という者。

 

不明(アンノウン)】。ここ数ヶ月その名を聞かなかった日はないぐらいに知名度が上がっているとも言える冒険者。

 

最後にレベル2に上がってから、()()()()()()()レベル4という第二級冒険者の中でも高い域まで駆け上がっていった。

 

また、レベル4に上がるきっかけとなったのがダンジョン内における"闇派閥"との戦い。

 

レベル3が数人に、レベル4が2人という多勢に無勢とも言える状況であるにもかかわらず勝利を収めたという話はこの頃最も噂されているぐらいだ。

 

……かつて()()()()()()()()()と、同じ所を目指している――そう見えてならない。

 

"不死"というものに、生を捧げてきたフェルズだからこそ【不明(アンノウン)】に自らと()()()()()()を感じた。

 

もちろん、よく似ているからといって【不明(アンノウン)】はフェルズ自身ではない。だが、もし彼が自らと同じ道を歩んでいるとしたら。

 

そう考えると、どうしても一度は顔を合わせ彼の人となりを知りたい――いや、知る必要がある。

 

そもそもの話、人間に限らず全ての生物には必ず"死"が訪れる。言い換えれば、"死"こそが生物を生物たる要因の一つと言ってもいいかもしれない。

 

だが、"不死"を追い求めたばかりにフェルズは人間としての肉体を失いスケルトンと言い換えてもおかしくはない容姿となった。結果的に言えば"不死"になれたと言ってもいいかもしれないが――あくまでも()()()()()()()()()()()ことで"不死"になったとも言える。

 

だからこそ、もし【不明(アンノウン)】が自らと同じ道を歩もうとしているのなら……そう考えての事であった。

 

だが――そう考えたとてまだ甘かったことを思い知らせられる羽目となってしまう。

 

ダンジョン内で、フェルズがまず目にしたのは――真っ赤に濡れた【不明(アンノウン)】だった。

 

「な……」

 

これには驚愕を覚えざるを得ない。明らかに致死量の出血量であるにも関わらず、モンスターとの()()()()()()()()()()()()()()()()

 

なんたる所業。なんたる狂気。

 

不明(アンノウン)】という神達が付けたにしては消極的な着想だとは思っていたが――これは、確かに……消極的にならざるを得ない。

 

身体のどこを見渡しても、赤でしかないほどに大量の出血。それも、心臓付近に穴が空いていたり片手がなかったり片足がなかったり目が潰れたり耳が取れていたり。

 

おまけには、()()()()()()()()()()()死ななきゃおかしいとも言える傷。

 

それでも尚、()()()()()()というのは――果たして人間と言えるのか?

 

呆然とした心で、ただ眺めるのみだったフェルズを後ろにしてモンスターを倒し切り、戦闘を終えた【不明(アンノウン)】。

 

そうしたら―――にゅる、とあらゆる所の傷から()()()()()()()()

 

そして、その肉魂はどんどん元の形へと再生していくように形成されたと思ったら、それぞれ眼球や耳、手、足、心臓、挙句の果てには脳といったものが何処からか現れたように再生していく。

 

ほんの数秒も経たない内に、エリルの全身は()()()()()()()

 

「――――それ、は……」

 

それほどの損傷を負っても尚、元通りに再生する。この言葉だけでも充分衝撃を含めるものとなるが、実際にこうして目にしたフェルズとしては衝撃を通り過ぎた何かでしかない。

 

それでこそ、思わず声が出てしまうほどに。

 

「……実際に見られたのは、貴方が初めてですね」

 

フェルズに気づいているのか、エリルはギリギリ聞こえる声量でそう呟いた。

 

「いかなる傷を受けても、僕は再生できる……いや。()()()()()()()()()()と言った方がしっくりきますかね」

 

そう口にしたエリルは苦笑いを浮かべる。それは、まるで親しい者に語りかけるような言動。

 

フェルズと【不明(アンノウン)】の間に面識はない。にも関わらずなぜ、【不明(アンノウン)】はそのような言動をするのか――それは、彼もまた同じモノをフェルズに感じていたからの他になかった。

 

……身体を再生するという所業の裏には、彼が発動している魔法の効果にある『不死』と『自動再生』がある。いかなる再生力があろうとも、人を人たらしめる本体である脳が一部でも損失したらどうしようも無い。

 

しかし、『不死』の効果により脳が損失しても肉体は()()()()()()

 

死という結果そのものを拒絶する『不死』により……生きている肉体が、一部を損失した頭含め全身を『自動再生』させるというものになっている。

 

その上、スキルにより補強された発展アビリティ【治力】も合わさってそれほど時間はかからずに再生を終えたのだった。

 

「いつか、"してもらっている"ではなく"する"という風に。当分はそれが僕のしたいことですね」

 

そう言って穏やかな笑顔を浮かべ、フェルズに宣言するような事をするエリル。

 

「……」

 

その笑顔と言葉の内容があまりにもちぐはぐすぎて、フェルズとしてもすぐに反応を返すことは出来なかった。

 

「――――そうか」

 

ふと、腑に落ちたフェルズは僅かに震えた声を小さく漏らして。

 

「君は、もう……」

 

不明(アンノウン)】は、既に……人間として、()()()()()()()()()を通り過ぎている。

 

改めてそう思い知らされたフェルズは、彼にこれ以上の言葉を持たなかった。

 

 

 

――この出来事の後、【不明(アンノウン)】がレベル5に昇格(ランクアップ)したとの話が出回ることとなるのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

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