ロサスの失楽園 ――マグニフィコに息子が居た世界線―― 作:(休止中)サン少佐
…誰かが叫んでいる。
王子は、藁製のベット*1で目を覚ました。
視界も耳もぼんやりしているが、外から声が聞こえる。
チクチクとした藁特有の痛みを抱えながら、王子は窓際に向った。
「―――傾聴せよ!傾聴せよ!
我はアラゴン=カタルーニャ連合王国、ヒメネス枢機卿より特命を受けし者である!我の言葉に傾聴せよ!」
広場にて、スペインの審問官が何やら叫んでいる。
ヒメネス枢機卿の異端審問は、一部では暴君と言われる程である。
彼等はこの地に何を齎すのか…。
「この地に魔女が現れた!
かの女は一国を滅ぼし、此処イベリアへ向かっている!」
"一国を滅ぼした魔女"
今回の異端審問、王子には、政治犯か何かを追いかけている風に聞こえた。
…しかし次の瞬間、王子は、己の耳を疑う様な言を聴く。
「ヒメネス枢機卿は、ロサスを滅ぼしたユダヤの魔女を見つけた者に、多大なる報酬を払うと約束している!」
今、審問官は確かに言った。
王子の目は、今にも飛び出さんとばかりに驚愕に包まれ、
王子の口と足は、共に結託して、審問官を問い詰めようと動き出している。
「ユダヤの魔女が…ロサスを滅ぼしただと…?!」
ユダヤ人を悪と捉えた訳では無い。ロサスが滅んだと言う事が信じられぬのだ。
"まさか、父の身に何かあったのか?!"
ロサスの国防は、父の魔法と、その外交力によって成り立っている。
父の身に何かがあった、それ以外にロサスを滅ぼせる事象は無い。
「審問官殿!その事についてお聞かせ願いたい!」
そう言って、剣に描かれた家紋を見せつけた。
「私はロサス王室の者です。お願い申し上げます!」
「…待て、それはロサス王家の家紋か?」
審問官はロサスの家紋を知らなかった。
しかし眼前の人物は、王室の者と言いながら、自信満々に紋章を見せて来た。
これは只事では無いと直感した審問官。
「…貴殿が本当にロサス王家の者と言うのであれば…。」
彼は、ロサスで一体何が起きたか、話し始めた…。
昔々、ある所に、王国があった。
王国は万人を受け入れ、来るものを拒まなかった。
国民から捧げられた願いを、自身の魔法で叶え、魔法により国を作り、魔法により周辺諸国から国を守っていた。
先日、旧都バルセロナの船乗りから伝えられた一報は、世界中に駆け巡った。
「ロサス国民は王に反旗を翻し、王国は一夜で滅んだ。」
と、言うのだ。
「ロサス国民が反旗を翻す…?有り得ない…。国民は王の魔法で生きていたのに…」
王子は言う。
「それが…」
国民は"ある女"の"魔法"によって扇動され、国王は王位を追われたと言うのだ。
一報を聞いたヒメネス枢機卿は、直ぐにその女を魔女と認定し、ロサスはユダヤの地であった事から、その魔女を"ユダヤの魔女"と呼称し、指名手配した。
一報を聞いたローマ教皇は、魔女の扇動魔法を警戒し、まずロサス王の破門を解いた。今までロサス国王を魔王と呼んでいた教皇庁も、"理想郷ロサスを一夜で滅ぼした魔女"と、"ユダヤの魔女"を名指しで指名手配した。
「スペイン王国はロサスへの船を禁じた。
魔女と、魔女に洗脳された国民は、国を滅ぼしかねん。」
そこまで話を聞いた王子だったが、彼の脳には、ある疑問が残り続けていた。
彼が一番気になっている疑問である。
「…王は?ロサス王は何処におられる?」
…その疑問に、審問官は暫時黙った。
実際、審問官もそこまでは知らなかった。
いや、未だ王の生死は不明なのだ。
「…申し訳ないが、分らない。」
そこで王子は、ある事を思い出した。
「…ユダヤの魔女…と言ったか?」
…ユダヤ人?
…女?
昨夜の馬泥棒…彼女は自身をユダヤ人と言った。
之で合点がいく。彼女があそこまで警戒していたのは、彼女が"ユダヤの魔女"であったのだ。
…私は魔女に、「ロサスへ向かい給え」と助言した。
王子は決心した。
ロサス王…即ち、己の父の生死を確かめる為。
そしてあの魔女を見つけ、事の真相を確かめる為。
"…私はロサスへ帰還する。誰にも止められない。"
王子はロサスに向った。故郷ロサスが、未だ健在である事を祈りながら。
…誰かウィッシュを地上波放送してくれませんか?
私、今までの16年の人生の中で、一度も映画館行った事無いんですよ…。