ロサスの失楽園 ――マグニフィコに息子が居た世界線――   作:(休止中)サン少佐

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第2節『ヒメネス枢機卿の異端審問』

 …誰かが叫んでいる。

 

 

 

 

 王子は、藁製のベット*1で目を覚ました。

 

視界も耳もぼんやりしているが、外から声が聞こえる。

 

チクチクとした藁特有の痛みを抱えながら、王子は窓際に向った。

 

「―――傾聴せよ!傾聴せよ!

我はアラゴン=カタルーニャ連合王国、ヒメネス枢機卿より特命を受けし者である!我の言葉に傾聴せよ!」

 

広場にて、スペインの審問官が何やら叫んでいる。

ヒメネス枢機卿の異端審問は、一部では暴君と言われる程である。

彼等はこの地に何を齎すのか…。

 

「この地に魔女が現れた!

かの女は一国を滅ぼし、此処イベリアへ向かっている!」

 

"一国を滅ぼした魔女"

 

今回の異端審問、王子には、政治犯か何かを追いかけている風に聞こえた。

 

…しかし次の瞬間、王子は、己の耳を疑う様な言を聴く。

 

「ヒメネス枢機卿は、ロサスを滅ぼしたユダヤの魔女を見つけた者に、多大なる報酬を払うと約束している!」

 

 今、審問官は確かに言った。

王子の目は、今にも飛び出さんとばかりに驚愕に包まれ、

王子の口と足は、共に結託して、審問官を問い詰めようと動き出している。

 

「ユダヤの魔女が…ロサスを滅ぼしただと…?!」

 

ユダヤ人を悪と捉えた訳では無い。ロサスが滅んだと言う事が信じられぬのだ。

 

"まさか、父の身に何かあったのか?!"

 

ロサスの国防は、父の魔法と、その外交力によって成り立っている。

父の身に何かがあった、それ以外にロサスを滅ぼせる事象は無い。

 

 「審問官殿!その事についてお聞かせ願いたい!」

そう言って、剣に描かれた家紋を見せつけた。

「私はロサス王室の者です。お願い申し上げます!」

「…待て、それはロサス王家の家紋か?」

審問官はロサスの家紋を知らなかった。

しかし眼前の人物は、王室の者と言いながら、自信満々に紋章を見せて来た。

これは只事では無いと直感した審問官。

「…貴殿が本当にロサス王家の者と言うのであれば…。」

 

彼は、ロサスで一体何が起きたか、話し始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 昔々、ある所に、王国があった。

王国は万人を受け入れ、来るものを拒まなかった。

ローマ(教皇庁)から魔王と呼ばれ、国民からは偉大な王と呼ばれた、ロサスの国王は、

国民から捧げられた願いを、自身の魔法で叶え、魔法により国を作り、魔法により周辺諸国から国を守っていた。

 

 先日、旧都バルセロナの船乗りから伝えられた一報は、世界中に駆け巡った。

 

「ロサス国民は王に反旗を翻し、王国は一夜で滅んだ。」

 

と、言うのだ。

 

「ロサス国民が反旗を翻す…?有り得ない…。国民は王の魔法で生きていたのに…」

王子は言う。

 

「それが…」

 

国民は"ある女"の"魔法"によって扇動され、国王は王位を追われたと言うのだ。

 

一報を聞いたヒメネス枢機卿は、直ぐにその女を魔女と認定し、ロサスはユダヤの地であった事から、その魔女を"ユダヤの魔女"と呼称し、指名手配した。

 

一報を聞いたローマ教皇は、魔女の扇動魔法を警戒し、まずロサス王の破門を解いた。今までロサス国王を魔王と呼んでいた教皇庁も、"理想郷ロサスを一夜で滅ぼした魔女"と、"ユダヤの魔女"を名指しで指名手配した。

 

「スペイン王国はロサスへの船を禁じた。

魔女と、魔女に洗脳された国民は、国を滅ぼしかねん。」

 

 

 

 

そこまで話を聞いた王子だったが、彼の脳には、ある疑問が残り続けていた。

 

彼が一番気になっている疑問である。

 

 

「…王は?ロサス王は何処におられる?」

 

 

…その疑問に、審問官は暫時黙った。

 

 

 

実際、審問官もそこまでは知らなかった。

 

いや、未だ王の生死は不明なのだ。

 

「…申し訳ないが、分らない。」

 

 

 

 

 

 

 

そこで王子は、ある事を思い出した。

「…ユダヤの魔女…と言ったか?」

 

 

…ユダヤ人?

 

…女?

 

 

 

 

昨夜の馬泥棒…彼女は自身をユダヤ人と言った。

 

 

之で合点がいく。彼女があそこまで警戒していたのは、彼女が"ユダヤの魔女"であったのだ。

 

…私は魔女に、「ロサスへ向かい給え」と助言した。

 

 

 

 

 

王子は決心した。

 

ロサス王…即ち、己の父の生死を確かめる為。

 

そしてあの魔女を見つけ、事の真相を確かめる為。

 

 

 

"…私はロサスへ帰還する。誰にも止められない。"

 

 

 

 

 王子はロサスに向った。故郷ロサスが、未だ健在である事を祈りながら。

 

*1
(この時代、平民は藁を敷いた屋根付きベットで寝ていた。一方、貴族と王族は、フカフカの屋根付きベットで就寝し、執務もベットで行い、その一日の殆どをベットで過ごした。)




…誰かウィッシュを地上波放送してくれませんか?
私、今までの16年の人生の中で、一度も映画館行った事無いんですよ…。
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