ロサスの失楽園 ――マグニフィコに息子が居た世界線――   作:(休止中)サン少佐

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第6節『忠誠の騎士』

 昔々、ある所に、男が居た。

 

 ロサスには人間の騎士は居なかった。国防はロサス王が担っていたからだ。

 

しかし男は、王に、"騎士になりたい"と言う願い(ウィッシュ)を捧げた。

 

 

 

 

 …暫くして、王は男の願いを叶えた。

ロサス唯一の、人間の騎士。

 

しかし王は、叶える見返りに、男に仲間を裏切る様に命じた。

 

 

と言うのも、男は、ロサスに反旗を翻した、あの魔女の仲間であったのだ。

 

 

男…いや、騎士は、魔女を裏切った。

 

 

 

 …彼は、夢が叶った幸福感で、半ば洗脳状態にあったのだ。

その後、魔女によって正気に戻された。

(それが正気だったか、それとも洗脳されたのかは分からない。)

 

 

 マグニフィコ王の失脚直前、騎士は魔女と和解した。

しかし…それでも騎士は、自らを責め続けた。

 

 

 魔女が旅に出ると言った時、騎士はその誘いを断った。

 

 

これ以上、魔女を裏切る事が耐えられなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 崩壊していくロサスを見ながら、日の出は必ずやって来る。そう信じていた。

 

 

 

 

 

 

 「スペイン海軍の哨戒を潜り抜けて来たのか?」

騎士は、王子に単純な疑問を投げかけた。

暫くロサスに入港する船を見ていなかった騎士は、港から人が来る(など)、数か月ぶりで、

眼前の者が新参者だと直感したのだ。

「…そうだ。」

王子は答えた。

「…まあ良い、ロサス王国へようこそ。此処は万人を受け入れる―――」

「―――理想郷、か?」

「……そうだ。」

騎士は、一瞬だが、嫌そうな顔をした。

 

 …先程まで騒いでいた木々は、まるで自身が夢を見ていたかの様に、静かだった。

「…ロサスに来た事は?」

「勿論。…私はロサスの出だ。」

 

王子は、騎士が敵か味方かを、見定めようとしていた。

 

騎剣の鞘に描かれたロサス王室の家紋を、騎士の前に見せる。

 

「…分るか。」

 

その紋章は、騎士の盾に描かれたものと同じだった。

 

「…失礼、この国で騎士を?」

 

「…私はロサス王マグニフィコ王の息子で、ロサス王家の第2王子。

即ち、ロサス王国の正当なる王位継承者だ。」

 

騎士は目を見開いた。

 

 

…しかし跪く気配は無い。

 

「その盾の紋章。ロサス王室に仕える騎士だろう。」

「…私は女王陛下に仕える騎士です。」

「母上に仕えておるのか?」

 

騎士は、再び黙った。

 

「…何故黙る。」

 

「殿下、貴方は…。」

 

 

 

「ロサスの、敵です。」

 

 

 

…王子の短剣の先、騎士が居る。

 

 

「殿下はロサスの真実を知らない…あの"()()()()"は、人々の願い(ウィッシュ)を…!

願い(ウィッシュ)を奪っていたのですよ…!?」

 

 

 …しかし王子は、別の意味で驚いた。

 

国防を担う騎士とは言え、何故それを知っているのか、と。

 

「…それは大事な事だ。人々が持ってはならぬ願い(ウィッシュ)もある。

理想論で国は治まらない。」

「まさか殿下も…貴方まで…。

殿下!お目覚め下さい!貴方様は悪しき王に操られているのです!」

 

「悪しき王だと…!?

 

…父が如何に多忙だったか…貴様に分るか…!?

 

父は日々悩んでいた!父は"()()"国民の願い(ウィッシュ)に悩み…!

 

冷酷に選別する自分を責めていた…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むかしむかし、あるところに、ひとびとをみちびく王がいた。

 

王は魔法をつかって、だんあつされたひとびとをしたがえ、国をつくり、

 

ひとびとの願い(ウィッシュ)をかなえた。

 

でもそのなかには、かなえてはいけない、あぶない願い(ウィッシュ)や、

 

わすれたほうが、そのひとのためになる願い(ウィッシュ)もあった。

 

 

 

 

…独りの王は、それらの願いを貯め込み、自らに封じ込んだ。

王は静かに狂っていた。

 

 

 

 

「父は冷酷では無い!

 

父は悪しき王でも無い!

 

貴様は…貴様は父への誠意と感謝を忘れたのか!?」

 

「…悪しき王に洗脳された殿下を…

女王陛下と謁見させる訳には行きません!」

 

騎士は剣を抜いた。

 

その言葉は本心か、忠誠によるものか。

 

 「…手加減しないぞ。」

 

王子の一言に、騎士は剣を振りかぶって突進した。

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、王子の短剣から放たれた閃光が、騎士の身体を貫く。

 

「あ…あぁぁあああ…―――。」

 

容赦の無い魔法攻撃は、

"防御魔法"や"願いに関わる魔法"を得意とした、父や兄と、対を成す物だった。

 

 

 

『『人殺し…!人殺し…!』』

 

 木々が騒めき、蠢く。

 

 

不気味さの中…道の奥で、あの星が黄金に光っている。

 

 

 王子は星を追いかけ、走った。

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