ロサスの失楽園 ――マグニフィコに息子が居た世界線―― 作:(休止中)サン少佐
昔々、ある所に、男が居た。
ロサスには人間の騎士は居なかった。国防はロサス王が担っていたからだ。
しかし男は、王に、"騎士になりたい"と言う
…暫くして、王は男の願いを叶えた。
ロサス唯一の、人間の騎士。
しかし王は、叶える見返りに、男に仲間を裏切る様に命じた。
と言うのも、男は、ロサスに反旗を翻した、あの魔女の仲間であったのだ。
男…いや、騎士は、魔女を裏切った。
…彼は、夢が叶った幸福感で、半ば洗脳状態にあったのだ。
その後、魔女によって正気に戻された。
(それが正気だったか、それとも洗脳されたのかは分からない。)
マグニフィコ王の失脚直前、騎士は魔女と和解した。
しかし…それでも騎士は、自らを責め続けた。
魔女が旅に出ると言った時、騎士はその誘いを断った。
これ以上、魔女を裏切る事が耐えられなかったのだ。
崩壊していくロサスを見ながら、日の出は必ずやって来る。そう信じていた。
「スペイン海軍の哨戒を潜り抜けて来たのか?」
騎士は、王子に単純な疑問を投げかけた。
暫くロサスに入港する船を見ていなかった騎士は、港から人が来る
眼前の者が新参者だと直感したのだ。
「…そうだ。」
王子は答えた。
「…まあ良い、ロサス王国へようこそ。此処は万人を受け入れる―――」
「―――理想郷、か?」
「……そうだ。」
騎士は、一瞬だが、嫌そうな顔をした。
…先程まで騒いでいた木々は、まるで自身が夢を見ていたかの様に、静かだった。
「…ロサスに来た事は?」
「勿論。…私はロサスの出だ。」
王子は、騎士が敵か味方かを、見定めようとしていた。
騎剣の鞘に描かれたロサス王室の家紋を、騎士の前に見せる。
「…分るか。」
その紋章は、騎士の盾に描かれたものと同じだった。
「…失礼、この国で騎士を?」
「…私はロサス王マグニフィコ王の息子で、ロサス王家の第2王子。
即ち、ロサス王国の正当なる王位継承者だ。」
騎士は目を見開いた。
…しかし跪く気配は無い。
「その盾の紋章。ロサス王室に仕える騎士だろう。」
「…私は女王陛下に仕える騎士です。」
「母上に仕えておるのか?」
騎士は、再び黙った。
「…何故黙る。」
「殿下、貴方は…。」
「ロサスの、敵です。」
…王子の短剣の先、騎士が居る。
「殿下はロサスの真実を知らない…あの"
…しかし王子は、別の意味で驚いた。
国防を担う騎士とは言え、何故それを知っているのか、と。
「…それは大事な事だ。人々が持ってはならぬ
理想論で国は治まらない。」
「まさか殿下も…貴方まで…。
殿下!お目覚め下さい!貴方様は悪しき王に操られているのです!」
「悪しき王だと…!?
…父が如何に多忙だったか…貴様に分るか…!?
父は日々悩んでいた!父は"
冷酷に選別する自分を責めていた…!」
むかしむかし、あるところに、ひとびとをみちびく王がいた。
王は魔法をつかって、だんあつされたひとびとをしたがえ、国をつくり、
ひとびとの
でもそのなかには、かなえてはいけない、あぶない
わすれたほうが、そのひとのためになる
…独りの王は、それらの願いを貯め込み、自らに封じ込んだ。
王は静かに狂っていた。
「父は冷酷では無い!
父は悪しき王でも無い!
貴様は…貴様は父への誠意と感謝を忘れたのか!?」
「…悪しき王に洗脳された殿下を…
女王陛下と謁見させる訳には行きません!」
騎士は剣を抜いた。
その言葉は本心か、忠誠によるものか。
「…手加減しないぞ。」
王子の一言に、騎士は剣を振りかぶって突進した。
その瞬間、王子の短剣から放たれた閃光が、騎士の身体を貫く。
「あ…あぁぁあああ…―――。」
容赦の無い魔法攻撃は、
"防御魔法"や"願いに関わる魔法"を得意とした、父や兄と、対を成す物だった。
『『人殺し…!人殺し…!』』
木々が騒めき、蠢く。
不気味さの中…道の奥で、あの星が黄金に光っている。
王子は星を追いかけ、走った。