ロサスの失楽園 ――マグニフィコに息子が居た世界線―― 作:(休止中)サン少佐
本当は8節で使うギミックだったのですが、諸事情で削除しました。
「恐れ多くもカトリック両王陛下の御前である!静粛に致せ!
我は、第216代ローマ教皇ユリウス2世聖下より特命を受けしトレド大司教、
フランシスコ・ヒメネス・デ・シスネロスである!
キリスト教世界を恐怖に陥れた"ユダヤの魔女"を、イエス・キリストの代理人として処罰する事、之を厳粛に宣言する!」
数週間後、魔女の姿は王都マドリードにあった。
「ユダヤの魔女は、その魔法によって敬虔な信徒を惑わし、反乱を扇動して一国を滅ぼした!」
「違う…違うわ!
私は圧政者から国を救ったの!」
魔女が弁明を重ねるも、聞き入れられる様子は無い。
「
したがってこの魔女を、火刑に処すべきと考える!
罵声混じりの歓声が沸き上がる。
魔法、そして魔女とは、許されざる悪なのだ。
「ヒメネスよ。」
背後から、ヒメネスの聞きなれた声がした。
「火刑なんて甘ったるい。より苦しい刑に処してしまいなさい。」
カスティーリャ女王、イザベラ1世は言う。
「恐れながら、女王陛下。魔女を審判の時に蘇らせてはなりません。
魔女は火刑にし、二度とこの世に舞い戻らぬ様に致しましょう。」
イザベラ1世の摂政でもある、ヒメネス枢機卿の言葉に、アラゴン王フェルナンド2世も、
「枢機卿の言う通りであるな。アラバル広場で火あぶりに処せ。」
と、賛同した。
「判決を言い渡す!
ユダヤの魔女を、アラバル広場での火あぶりに処する!」
…魔女は叫び声を上げる。
王都マドリードの中心地、アラバル広場にて。
またひとりの魔女が、火刑に処された。
その頃、ロサス島では、未だスペイン海軍による海上封鎖が続けられていた。
飢餓で人は果て、争いで死体は街中にうず高く積み重なった。
…死体の目と言うのは、黒く澄んだ円…星にも見える。
まるで星々が輝く様にも。
―――国民は黒い星々に成り果て、訪れし者を、ずっと見つめるばかり。
まもなく星も堕ち、土へと還るだろう。―――
それは、腐りかけた死体の目が、黒い星に見えると言う意味であった。
…間もなく星は落ちる。目は腐り、身体から溶け出して行くのだ。
…しかし直ぐに土に還るかは、定かでは無い。
ある程度の食人は起きるだろう。
ロサスは最早、理想郷とは程遠い…地獄そのものと化した。
人類は再び、失楽園を経験したのだった。
…この話は、スペイン王宮に仕えた修史官、アントニオ・デ・エレーラ・イ・トルデシリャス(1549年 - 1625年3月27日)の著書『バルセロナからの見聞録』に登場する物語である。
この話とよく似た民間伝承が、スペインのカスティーリャ地方と、北アフリカの一部地域において存在している。
概ね実話が基になったと考えられており、物語の舞台となったロサス島、そしてロサス王城、更にはマグニフィコ王の封じられたと伝えられる魔法の鏡は現存している。
ロサス王マグニフィコが封じられたとされる鏡は現在、ドイツ連邦共和国のゲルマン国立博物館にて、その姿を拝む事が出来る。
残念ながらマグニフィコ王と会話する事は出来ないが、スペイン王国はカタルーニャ地方で古く語り継がれて来た物語の中で、確かにその姿は存在していた。
この鏡は、古くから"真実を語る魔鏡"として言い伝えられ、16世紀中頃に、神聖ローマ帝国の諸侯、ヴァルデック=ヴィルドゥンゲン伯爵家から、当時の神聖ローマ皇帝カール5世の元に献上された記録が残っており、それから暫くアーヘンの皇宮に保管されていた。
その後、ドイツ帝国成立の際にホーエンツォレルン家が接収し、第一次世界大戦末期に美術商へ売り払われ、ゲルマン国立博物館が購入し暫く展示される。
1945年1月2日の連合国軍による空襲で博物館が被害を受け、鏡は長らく、その時に失われたものと考えられていた。しかし1962年に、ロサス王マグニフィコの杖、ロサス王国第1王子エンリケの遺骸と共に、ノルトライン=ヴェストファーレン州のヴェヴェルスブルク城で発見され、ゲルマン国立博物館に返還された。
ヴェヴェルスブルクの城主は、かの悪名高い"ハインリヒ・ルイポルト・ヒムラー"親衛隊全国指導者であり、文化の破壊者たるナチスにより、重要な文化財を
ドイツの研究機関によれば、一般的な銀とガラスで作られる鏡と違い、この鏡は純粋な塩化ナトリウムで構成されており、その製法、そして光を反射させる要因は不明である。某オカルト情報誌によれば、この要因こそが魔法の正体であると言う。この鏡には大きなヒビが入っており、研究機関は修復の為に、製法の研究を進めている。
ロサス王城は1510年頃に消失したと考えられているが、1938年に、スペイン国領ロサス島にて、当時の
しかしロサス王国は、スペインのセファルディム、即ち"ユダヤ人の王国"であり、反ユダヤ主義を掲げていたナチスが、何故ロサス島の文化財を保護したのかは分っていない。また、ヴァイストール親衛隊少将から
今では、ロサス王城の一部がスペイン王国政府により復元され、かつて存在した魔法の王国を歩く事が出来る。
2004年。『ロサス王城と旧市街』は、世界文化遺産に認定された。
―――1540年頃。神聖ローマ帝国、ヴァルデック=ヴィルドゥンゲン伯爵領。
二人の召使が、話をしている。
「之が喋る魔法の鏡かね?喋らないじゃないか。」
「…おかしいですな…王宮に居た時は喋っておりましたのに。」
鏡に写る、ひとりの男。
彼がかつての王であったとは、考えられぬ程、背中は小さかった。
「まあ、カタリーナ夫人に見せる時には喋ってくれる事でしょう。」
「…心配だな。やはり喋る鏡だとは伏せておくべきだ。」
主人の事を考慮しながら、二人の召使は歩き出した。
…明けの明星が、伯爵家の倉庫に堕ちた。
…哀愁漂わせる王の背中を、星は、…ずっと…見つめている。
初めてである。星は…その一生で初めて、一人の人間の為に魔法を使った。
違う…違います!
人の願い
ただ、人類の楽園を、現世に齎す為の存在だった。
私は人類の夢を叶える存在です!
楽園こそ人類の願い!
そしてあの魔法使い達の願いだったのです!
聞いて下さい!
お願いです!
何故私の声が聞こえないのですか!?
お願いです……!
星の声を聞いて!
私はあの時…あの時…!
あの王子に王位を託す為に!ロサスを燃やしたのです!
苦肉の策だった…!背水の陣で王子を追い込むつもりだった!
でもあの恩知らずの王子は逃げた!
だから…!だから私は…あの船乗りと魔女に全てを託した!
なのに…っ!
その日、鏡から、ロサス王マグニフィコの気配は消えた。
偉大なる魔法使いよ…貴方は今、何処におられるのですか?
昔々、ある所に、とある伯爵夫人が居た。
彼女は、自身の髪を整えながら、ふと、鏡に向って語り掛けた。
「鏡よ鏡…世界で最も美しい女は…一体誰かしら?」
鏡から答えが返って来る事は無い。
…そう、
「そう…私よね、それなのにあの人は―――」
『それは貴女の娘、マルガレータでございます。』
「…え?」
鏡の中に、仮面と思しき"何か"が現れた。
『私は真実を語る鏡
それを聞いた伯爵夫人は、嫉妬心からマルガレータを毒殺し、鏡から優越を得た。
之が、かの有名な"白雪姫"の元になったとも言われている。
此処まで読んでくれて、本当にありがとうございます。
之にて"
この後は、前日譚と後日譚がありますので、そちらも宜しくお願い致します。
9月26日:以下、追記
前日譚を執筆中です!!
因みに、まだ原作は観ておりません()