パワポケ最高!!
黎明編 その1
存在しない記憶が溢れだす。気付くと、俺は名乗っていた。
「では自己紹介をお願いします」
「パ、パワポケです。よろしくお願いします」
「―――パワポケ?」
パワポケ、パワポケ、パワポケ?
「もう、変な子ね。ちゃんとしっかり自己紹介しないと!転校生の〇〇くん!」
パワプロクンポケット!
「先生~、それじゃ自己紹介の意味ないで~す」
「名前言っちゃってるじゃないですか~~」
「あ、あら? ごめんね?パワポケくん」
「い、いえ、あはは・・・」
―――何だこれは。まるで昔プレイしたゲームのワンシーンじゃないか。
「もうあだ名ついちゃったね~」
「流石先生~」
「と、とにかく亀田くんの隣りの席に座ってね」
「・・・はい」
そう、亀田亀田・・・・亀田?
「よろしく。オイラ亀田でやんす」
「・・・・」
・・・・・。
『空気清浄機がほしいのでやんす!』
「オラァア!!!!!」
「きゅ、急に何するでやんす!?」
「俺はなあ、テメエの顔を見る度になあ、ぶん殴ってやりたかったんだよ!!!!」
もういい。この際ここが夢でもいい。そう、もしも眼の前にあの亀田の顔があったらどうする?
『壺が安いのでやんす!!』『英会話セットが安かったのでやんす!!』『クラゲ飼育セットが欲しいのでやんす!!』『ネオプロペラ団の運用資金をもらっていくでやんす!!』『お金をもらっていくのでやんす!!!』
「殴るだろうが!!金返せ!!!!」
「頭の中に基地が5つある系の人でやんすぅー!初対面の人に金返せとか意味不明でやんすぅー!!!」
「いいぞいいぞヤレやれ!!」
「転校生いいぞー!それでこそ極亜久高校の一員だぜ!!」
「ケジメつけようじゃねえかあああア!!!!!!!」
「もう止めなさあああい!!!!!」
先生が体を張って止めに来るまで、俺は亀田を殴り続けていた。
◇
「すいませんでした。・・・ようこ先生」
「いいのよ。君くらいの歳の子はやんちゃな位が丁度いいんだから」
夢であるように。何度も願った憧れのようこ先生がすぐそこに。
あの頃は貴女のルートを探しまくってましたよ。永遠と同じくなかったけど。最低15個ある俺の青春の1ページです。
「じゃあ先生もう行くけど、ちゃあんと授業には出るのよ?パワポケくん」
「は、はい。先生」
一人で保健室にいると、だんだんと色々思い出してきた。そうだ、俺は死んだ。そして前世でこのゲームをプレイしていた事がある。だがしかし、何故今になってその記憶が?
――とにかく状況を整理しよう。分からないなら現状を単純化して考えるんだ。
ここは極亜久高校。俺はそこの高校1年生。本名は〇〇だが聞きなれない。パワポケというあだ名がついさっき付いた。こっちはしっくりくる。
特技は野球。父親とのキャッチボールが楽しかったから。高校野球界を席巻し、プロ野球選手になる事を夢見ている。
この世の華の高校生活 好きで選んだ荊の路は 想い通らぬ野球道 む~ん む~ん♪
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「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「ど、どうかしたの〇〇くん!? 発作?アレルギーなの!?!」
腐るほど見たゲームオーバーの画面が!不意に!目を閉じても脳内にありありと浮かんでくる!!
ここは、まさか、この世界はッ・・・・・本当にパワプロクンポケット!?
「すいません保健室の先生。ちょっと頬っぺたをつねってくれませんか?」
「わ、わたしの?」
「いえ俺のです」
「…いいのね?」
「いいです!!」
ぎゅ~う。みたいな擬音が聞こえるほど、痛い。
「ありがとうございます。ゲームオーバーから目が覚めました」
「そう……。悩み事があったら遠慮なく私や担任の先生に言うのよ?」
「ありがとうございます・・・、今は大丈夫なので授業に出ます」
「お大事にね」
とりあえず教室に戻ろう。見極めなくてはならない。
◇
「いようでやんす。大事ないでやんすか?頭の方は」
「ああ、大丈夫だよ。えっと、亀田くん」
「パワポケくん。さっきはお互い初対面だったわけでやんすし、水に流すでやんす。この学校に転校なんて頭がおかしくなっても仕方ないでやんすからね」
「・・・ありがとう」
何で俺がコイツに感謝を述べなきゃならないんだ?このゴミクズが。
俺(プレイヤー)から幾ら巻き上げたと思ってやがる未来で。つまりはパワポケ3で。
おっと。
「授業そっちのけで悪いでやんすけど、誰も気にしないし、改めて自己紹介するでやんす。オイラ亀田でやんす」
「・・・・よろしく。俺はパワポケって呼んでくれ」
「気に入ったんでやんすかそのあだ名・・・。もとい、趣味は何でやんす?」
「趣味っていう程でもないけど、野球はずっとやってるよ。だからこの学校でも野球部に入るつもり」
――これはある種の賭けである。本当にここがパワプロクンポケット(パワポケ)『1』の世界であれば野球をしていれば分かる筈だ。
違ければそれでヨシ。しかしその通りならば・・・・。
「野球部!?悪い事は言わないから止めておくでやんす!」
「え?何で?」
「この学校の部活は全部が全部タチが悪いのでやんすっ。
サッカーボールをろくに蹴ったことない奴にサッカー部員総がかりで向かっていってスライディングかけたり、テニスに全く関係ないゲームでテニス部員に負けたら『負け犬』とか『くそむし』とか『ボケさく』とかいうあだ名を全校生徒に呼ばせてガチいじめをしたり、素手でコンクリを割る最強空手部員の攻撃を素人に連続で躱させたり終いには袋叩きにしたり―――。枚挙に暇がないでやんす!!
その中でも野球部は札付きの札付き!ワルの掃き溜めでやんす!!!」
「なるほどね」
そう言うテメエはうんこマンってあだ名を付けやがるけどな。まあいいや。
「流石は極亜久高校。名前に見劣りなしってわけだ」
「分かったでやんすか?だから特に野球部は―――」
「だから気に入った」
「正気(ガチ)でやんすか?!」
「正気も正気だよ。もしも百人が百人俺と同じ境遇になったら同じ事をするって思うね」
「イカレてるでやんす・・・ぅ」
それこそまさかだろ。確信しかかってるけど、だってここパワポケだよ?
「俺は甲子園で優勝してプロになる!」
「ムリだと思うでやんす・・・・」
生きる為に野球をする。今はそう信じ始める事にする。