明くる日。ついにきましたこの時が。
「よし、ちょっと気が引けるが他の学校のチームを弱くするぞ!」
「待ってました!」
当然!妨害作戦だッ。古より続く作戦!それが流儀ィ!
しかもテンションの高い智美さんを見ると、なんかこうワクワクするよね。そんな楽しい楽しい作戦の始まりだ。
「でもすまないが、次のことは絶対に守ってくれ皆。まず、誰にもケガさせない。物を、無闇に壊さない。無関係な人に、迷惑をかけない。葉月さんと彩さんのランダムイベントを全部見る」
「(手ぬるいわねえ)」
「最後はよく分かんないでやんすけど、他はOKでやんす。でも具体的にどうやればいいんでやんす?」
「心配するな。こういうときの為のノウハウが、ウチの部にはたっぷりあるんや。ホレ、作戦コスチューム」
「わぁ、すごいでやんす!」
「じゃあ、用意ができたわね。コレ、今回の学校の場所と学校の中の地図よ」
流石だあ。ていうか外藤さんと智美さんが揃ってる今って怖いものないな。
「って、あれ?俺の分は?」
「あら、パワポケくんはダメよ。この二人ならともかく、あなたが捕まったら野球部全体の責任になっちゃうでしょ?」
「・・・そうかな?」
行きてぇ。行きてえよマイスィートハニー作戦とか特に。
「そうや。キャプテンは、どっしり構えとったらええ」
「じゃあ行ってくるでやんす!」
てなかんじで、作戦開始!
「あかとんぼ高校とやまのみや高校に行ってきたでやんす。マウンドの高さと部室のモノの場所を変えておいたでやんす」
「結構気になるもんやで」
「うーん…。あんまり効果なさそうね」
「まあ、いいじゃないか。二人とも無事だったんだし」
「んー……」
あごに指を当てて考え込む智美さんマジグッド。・・・こいつら、てんでダメだって考えてるな?
下っぱは楽じゃありませんなあ。まあ今はこうやって当てにならないアピールをさせてくださいよ。智美さん、貴女の野望の為にもね。
「ちょっと時間ができたでやんすね。オイラちょっくら素振りしてくるでやんす!」
「付き合うよ、亀田くん」
亀田の野郎の練習に付き合いつつ今日の部活は終了。その後、俺はコンビニに入っていった。
「牛肉コロッケとかないかな」
「おういらっしゃい。何を買うんだ? え!」
「・・・・!」
「何も買わないんなら帰んな!」
「これくーださい」
「?おう、まいど」
おっさんだあ。てめえじゃねえよって当時は毎回キレてましたよおっさん。いや、竹村さん。ていうか初対面の客に対してマジですげえ態度で笑っちゃう。けど堪えるんだ。し、しかし。
「・・・ん?これは?」
コンビニ前での立ち食いは至福である。そのコンビニの影、薄暗い場所に何かが落ちていた。
「免許証っぽいぞ。―――あ!これバスト90!」
免許証にそんな個人情報書いてあったらビックリだよ。なので俺がビックリしたのはそこに書いてある名前である。
「みなこさんのだ。うわあ、すっげー。あ、店員さーん、これそこに落ちてましたー」
「なにか買わねえなら失せな!」
「さっき買ったんでもう失せまーす」
「もう来なくていいぞ!」
懐かしすぎてやべーよこれ。怒る気すらならないね。なのでテンションが上がったところで神社で自主練タイムだ。
素振りをする。ときにはダッシュも行う。投球練習も勿論するが、野球はタフが始まりで全てである。
「勝負。したいなあ、やっぱり」
極亜久高校2年。とくれば進さんの交通事故イベントだが。
「あ、パワポケくん!」
「あれ?どうしたんだい、進くん。野球道具がないようだけど」
「練習試合の申し込みにきたんだよ。今日はね」
「え?でもこの間は・・・」
「うん。うちの勝ちだったね。けど今度は兄さんもひどいことを言わないと思うよ」
「・・・・何かワケがありそうだね進くん」
「まあ・・・・ね。実は、今回の試合には大きな意味があるんだよ。極亜久高校野球部じゃなく、うちの野球部にとってね。
ぶっちゃけて言ってしまうと、パワポケくん達の相手は1年生達なんだ。うちのね」
「なるほど。それは俺達にひどいことを言うまでもないね。 日程は?」
「明後日を希望してるんだけど・・・」
「是非やろう。あ、守さんに伝えてくれるかい。俺達はどこで誰が何が相手だろうと常に勝ちに行くってね」
「ありがとう。兄さんにしっかりと伝えておくよ。・・・すまない、パワポケくん」
「試合経験が足りないのはうちの方だからね。願ってもない申し出だったよ、進くん。明後日グラウンドで会おう」
「・・・。ああ!」
そう言って進くんは去っていった。・・・ここで貴方に忠告すらしない俺を恨んでいいよ進くん。いや、野球マスク。俺はパワポケに魂を燃やされそして、売った男だ。
「だから。ケリは甲子園といこうぜ最強」
次に会う時はきっと野球に魂を売った男が現れるだろう。
武者震いが起こり、俺はそれを消すために更に練習に熱が入るのだった。
◇
―――そして練習試合。
「げえっ!向こうは1年ばっかりだぁ!!」
「新人のテストをするつもり。…ってところでしょうね」
「ようこ先生!オイラ達バカにされてるでやんす!!!」
「俺は頭にきたぜ亀田!こうなったら、この前の連中を引きずり出すまで!やってやる!!」
よし。皆気合が入ったな。問題は俺がしっかりと自分の役割を果たせるか否かだが。
「いくぜ皆ア!!!」
「おう!!!!!!」
そんなこんなで8回裏 3-2。
「・・・もう8回だぜ。リードしてるとはいえ1年にしちゃ、あいつら強すぎだよー」
「う~ん、流石はあかつきだ・・・。だが!」
「このまま押し切るでやんす!」
「おい!見てみい!きゃつらタイムをかけよったで!!」
「これはッッ!でやんす!」
「バッテリーが変わるぞ!!」
「――ふ~ん、この前に比べて少しはマシになってるじゃないか。
進!!マスクをつけろ。あかつき高校の本当の実力を見せるぞ!」
「―――了解だよ。兄さん」
「選手の入れ替えや!」
「ワ~イ!目的達成でやんすね!」
「あほかいっ!!ここまで来たら、この試合に勝つんや!!」
「そうだ!!省略するけど子供を質に入れても勝て!たとえ負けても、勝つんだぁあ!!!!」
「大丈夫かこのキャプテン」
「パワポケくん!皆!頑張って」
「ファイトです!皆さん!」
「マネージャーが応援してくれておるのだから、力出すしかないのう。男としてはのう!」
「つまり一人前の男!?その称号カテゴリーエースは僕のものだあああ!!!!」
「ネクストバッターの佐藤くん!頼んだ!!」
「ふああああああんん!!!」
ヒット!やるぜやっぱり掛け声はともかく。
「続け続け!!」
「やったでやんす!4-2で最終回でやんす!」
「キャプテン!頼んだ!!」
「まかせとけ!!ばっちこい!!」
我ながらナイスな投球だぜ。あっという間にツーアウトだ。
「・・・やるね、パワポケくん。でも勝ちに行かせてもらうよ!」
「おらア!!」
ついに三番の進くんがバッターだが知ったことか。三振でしとめてみせる!
「ストライク!」
「ナイスピッチでやんす!」
「ねえ、トルネードの弱点を知ってるかな?キャッチャーくん」
「・・・(ささやきでやんす?)」
二球目。しかしコンっと、乾いた音は俺達の意表をついた。上手いバントで進くんは一塁へ。マジかよ今ツーアウトだぜ?
「・・・ドンマイでやんす!」
「・・・くそ!!」
「それはね――」
進くんが何か喋っている。が、次で決めてやる。振りかぶり、俺は球を投げようとして―――
「! 盗塁でやんす!!!」
「?!」
「体を捻る事で、盗塁を阻止しづらいってことさ!」
・・・二塁セーフ。まずいなこれは。だって今は四番の、
「よくがんばったと言いたいがそろそろ終わりにしようじゃないか。極亜久高校!」
守さん。ピッチャーとしてもバッターとしても有名なあの守さんである。
「・・・ふぅー・・・」
亀田のサインは。
歩かせるなんて選択肢はねえぞ。なので外角いっぱいのスライダー。よし、これで決める。
「しゃいッやおらあ!!!!」
「フンッ!!!」
バットが素早く振るわれる。俺の球をとらえる。いやしかし決まってくれ俺のコントロール!
「ッ!?」
「曲がれえええ!!」
更なる変化を見せる俺の球を、守さんは打ち上げていた。
「キャッチャー!!!!」
「オーライでやんす!」
亀田がしっかりと捕球する。これにてゲームセットだ。
「やったー!勝ったぞ!!この調子でガンバルぞお!」
「よっしゃワーイ!何だか自信がわいてきたぞ!!」
「ヘイ!ミーも、ちょっとベースボールわかってきたネ!」
「うん、僕も何だか野球が上手くなった気がする」
「あかつき高校に勝ったでやんす!これで甲子園もユメじゃないでやんす、」
「アホ!いい気になるな!向こうは途中まで1年だけやったこと、忘れたらあかんで!」
「外藤さんの言う通りだ。次は最初からレギュラーが来ても勝つぞ!!」
「おう!!!」
それにこれ練習試合だから野球部の存続はまだ決まってないし。
「・・・なるほど、少し舐めすぎてたようだ。
進!イチからやり直しだ。この程度の連中にこんな試合内容じゃ、ダメだ!」
「分かったよ兄さん。
――――それにしても、いい球だったよパワポケくん。なんだろう、この楽しくなってくる感じ。次に会う時が本当に待ち遠しいよ」
あかつき高校野球部が球場から去っていく。しかしその意気は軒昂で、厄介な相手が更に厄介になったのだった。