これはひどいパワプロクンポケット   作:ブロx

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飛翔編 その5

 

 

 

今日も今日とて作戦開始だ。

 

「よし、妨害作戦だ!!」

 

「…あたし、や~めた」

 

「え?」

 

え?

 

「もう効果は充分よ。これ以上は、無意味よ。こんなことするぐらいなら野球の練習をするべきじゃない?」

 

「ぐう、正論中の正論だ」

 

「う~ん・・・どうするでやんす?」

 

「むむむ・・・・」

 

「練習練習!ってね。そういうわけだから、あたし、今日は用事があるからもう帰るわね」

 

「あ、ああ。おつかれ」

 

帰る智美さんに反して、俺はワクワクしてきていた。

 

「ふむ。そういえばキャプテン、大東亜学園だけは全然行ってないで」

 

「そういえばそうでやんすね」

 

「!」

 

きたあ。ついに来ましたよこの時が。

 

「―――よし!妨害作戦、最後の1回は俺が行こう!」

 

アンソンとドナルドに会えるかもだし。そして鋼くんも。

 

「え!パワポケンくん、(頭)大丈夫でやんすか?」

 

「ああそれなりに。そのかわり、大東亜学園について教えてくれ」

 

やったぜ作戦開始ィ!!

 

「・・・ここが大東亜学園か。プロペラ団の高校野球制圧作戦の本拠地ってね。綺麗なもんだ」

 

外面はな。

 

「さてと、こちらズネーク。奈桜、大神とジャジメント並みのヤベー秘密結社に侵入した。これが俺の記録に残る高校生史上初のスニーキングミッションになる。さらと幸せになってこい!

 茶番(本音)はともかく、部室はここかな? うわ、すごい。コンピューターやら何やら設備がいっぱい。この時代にオーパーツだろこれ」

 

「? わーっ!あ、あやしいお化けだあ!!!」

 

「!?」

 

頭にプロペラを付けた一般通過工作員が、ちゃかっと何かを取り出し。

 

パン!パン!

 

「死ね!」

 

「死ね?死ねだと?何言ってんだお前。パワポケを全てプレイした人間に一言死ねだと?随分と有情じゃない?茜バッドと桜空バッドとメロンパンとロマンを見せ続けてやるって言うもんだろこういう時は」

 

個人的には貴子さんの方がヤバいと思うけどね。・・・何も見たくねえ。

 

「死ね死ね!!」

 

パンパン! しかし弾丸は明後日の方向に着弾した。

 

「ていうかテメエそれしまえ。嫌いなんだよそれ美千代(智美)さんとヘルガと紫杏に当ててみろ、ジオットよりも無惨に生かすぞ」

 

 ・・・まあ何か余裕ぶっこいて言ってるけど、現在絶賛逃走中です。だってマジモンのチャカじゃんね!

 

「待てえ!」

 

「まあ、もう遅いけど」

 

バチバチバチ。どかーん!

 

「うわああー!!き、機械があ!!」

 

「よかったな。選手のデータおよび練習メニューのデータ全壊、バックアップも込みで。良い腕だ、将来はCCRに入ったらどうだい?楽に死ねるかも」

 

「うわああーー!!!」

 

 それはそれとしてダッシュ。 アンソンとドナルドと鋼くんはどこだ?チクショウ!どこにもいねえぞ!

 

「あ。……パワポケくんね?」

 

「・・・どうしてわかるのか訊いてもいい?」

 

「そんなことよりこっちよ!」

 

智美さんのビックリ顔プラス呆れ顔発見。しかし完璧な変装の筈なんだが何故バレた。

 

「――ここまでくれば、まあ大丈夫ね。・・・それにしても、あはははは。ものすごい妨害作戦もあったものよね。コンピュータシステムが全壊ですって」

 

「ピストルの弾が何かに当たったんだろうね。いい気味だ。・・・ところでそろそろ訊いてもいいかい?」

 

「え?何?」

 

「同じ質問さ。貴女は何者?」

 

「………」

 

・・・・・。

 

「そうね、言っちゃおうか。――私ね、プロペラ団の工作員なんだ」

 

「あの怪しいプロモーター共のかい」

 

「そうよ。プロスポーツのチームと選手の、契約を扱う組織」

 

 その目的はあらゆる娯楽スポーツを支配する事。征服が終わり、支配の段階にまで至った所謂悪の組織。

 

 当時、球遊びが得意なガキ共に与える年俸が高くなりすぎた為、たくさんのチームが経営に苦しんでいた。モグラーズも含め。

 

あ、モグラーズは今もこれからもだった。

 

 しかしながら上がってしまった年俸は簡単に下げられない。なのでプロになる前の段階で、プロペラ団は有望選手に介入する。

 

 新人のほとんどをプロペラ団が供給することになれば、どこのチームも選手もプロペラ団のいいなり。そしてプロになりたければプロペラ団の決めた給料で満足するしかない。

 結果、選手に払うお金は大いに減らせる。選手はハイと言わざるをえない。だから経営者側は、プロペラ団に成功してもらいたいのだ。

 

「・・・えげつねえな。やっぱり」

 

「そう?まぁ大丈夫よ。そのうち私がプロペラ団の幹部になったら、パワポケくん一人ぐらい簡単に――」

 

「プロにしてくれるって言うんだったらお断りだよ」

 

「――え。………へ?」

 

キョトンとする智美さん。そんな貴女も素敵だ。だがしかし。

 

「昔さ、俺の憧れの男が言ってたんだ。そいつはホント数奇な人生で、何度も何度も勇気をもらったもんだよ。そして彼はこう言ってたんだ。

 正しくないやり方で手に入れたものからは、満足は、得られない」

 

「………」

 

「バレる、バレないとか、誰かがケガするとかは関係なかったんだ。妨害作戦は、やるべきじゃなかった。今からでも、甲子園には真正面からチャレンジするよ」

 

「…………」

 

――このセリフ。甘いとか何とか反論しかないよね。でもそれ以前に、

 

「その方がカッコイイじゃん? やっぱ男の子としてはさ」

 

「――なあにそれ。同意してほしいの?それとも、否定してほしいの?」

 

「両方!りょう~ほう~~」

 

どっちでもいいけどね。明日香と貴女が生きてくれてさえいれば。

 

「ま、いいでしょ!全力でやりなさいよ。私も、応援ぐらいはしてあげるわ!!」

 

「ありがとう!」

 

そう。1の主人公はそうこなくてはならないのだ。

 

 

 

 

 

 

明くる日。

 

「パワポケくん。もうじき、夏の大会ね。練習試合を組んできたわよ」

 

「本当ですか、ようこ先生。相手はどこです?」

 

「パワフル高校よ」

 

きたきたあ。

 

「きたあ!」

 

「流石せんぱい。パワフル高校があかつき高校と並んで、地区の優勝候補だってことを知っていたんですね?」

 

「勿論だよユキちゃん。あそこには松倉くんがいるからね」

 

「・・・パワフル高校の松倉(まつくら)。スタミナ抜群の右腕でカーブ、フォーク、シュートを使い分けるエースピッチャーだね」

 

「エース!? 本当なのかい水原くんっ」

 

「うん。しかも走力もピカイチで、バッターとしても優れてるみたいだよ佐藤くん」

 

「ふぅん、面白い。だからこそ打ち勝ってみせようじゃないか!そうだろ皆!!」

 

「おう!!!」

 

―――そして、練習試合当日。

 

「ありゃ? この前、怪しい勧誘に引っかかりかけてたヤツじゃねーか」

 

「ああ。また会えたね、今日はよろしく」

 

手を差し出す。

 

「フン。今日は、弁当は用意してねぇみたいだな。でも、どうせ何か汚い作戦でも用意してんだろ?」

 

「ないよ。まだ信じられないかもだけど、正々堂々と勝負しにきた。極亜久高校は生まれ変わったんだ!」

 

妨害作戦の事は申し訳なかったけども。全部智美さん以外のプロペラ団が悪い。

 

「正々堂々だあ? あぁなるほど、俺を笑い殺す作戦で来たってわけか。だったら俺らはテメエらを泣いたり笑ったり出来なくしてやるぜ。極亜久高校!!」

 

―――そして8回裏 2-1。パワフル高校のリード。

 

「流石はパワフル高校。たしかに強い!だがまだ終わったわけじゃないぞ!」

 

「相手にも疲れが見えてきたわね」

 

「パワポケくん、皆。タコ焼きを作ってきたんだけど、一口どう?」

 

「!食べる」

 

「食べるでやんすぅ!」

 

うっひょわう。明日香の手作り!

 

「あの、…私はハチミツレモンを作ってきました」

 

「!!食べる!ありがとうユキちゃん!」

 

「もちろん頂くでやんす!」

 

「ほら佐藤くんも」

 

「そうだね、これ食ってもいいかな?石田さん」

 

「はい!」

 

きゃ~、佐藤センパイかっこいいです!

 

「? なに気持ち悪い顔してるでやんす?」

 

「え?やっと鏡見れたのかい?」

 

「・・・さっさと応援するでやんすよッ!!」

 

いてえ。なんだこの野郎、亀田のくせに。

 

「ボブくん!!頼んだ!!」

 

「任せるネ!!」

 

しかし俺達は松倉くんを攻略できず、極亜久高校は負けてしまったのだった・・・・。

 

「負けた・・・・。やっぱりダメか・・・」

 

「気にしちゃだめですよ。大会の時に勝てばいいんですから」

 

「そうだな。よし、次に戦う時には絶対に勝つぞ!!」

 

「よぉ。俺達の相手じゃないな。

・・・・と言いたいとこだが、一つ前言を撤回するぜ。試合前は色々言って悪かったな。今日は良い試合だった」

 

「いや、気にしてないよ」

 

「前の極亜久高校には下剤入りの弁当をはじめ、わざとボールをぶつけられたり色々ひどいことをされてたんだ。だからもう一度言わせてもらうぜ、今日は本当にまともな試合だった」

 

「・・・次は負けないからな。松倉くん」

 

「次は夏の大会で逢おうぜ。いいか、ウチとやるまでは、よその学校に負けんなよ!」

 

「ああ!」

 

 パワフル高校のスタメンが去っていく中、俺は悔しさによって生まれる感情を我慢する為、空を見上げた。

 

「くやしいな」

 

・・・・・。

 

「くやしいなぁ」

 

・・・・・。

 

「武美ぃ・・・」

 

涙がこぼれる。彼女の分まで。

 

「女の名か?それは。女々しいのうキャプテン」

 

「・・・村上、くん」

 

「それらは全部、本当の最期までとっておけ。そしてこれまで、わしはボールにバットを当てることばかり考えちょったが、今日、わしなりの打ち方を見つけたけん。今後は、任せとき」

 

「改善点がいくつも見つかったよ。次からは絶対に勝とう、キャプテン」

 

「む~~~ん。次は勝つんだな~~」

 

「む~~~ん。勝った後の三食パンは美味しいんだな~~」

 

「む~~~ん。悔しいからボクもっと練習するんだな~~」

 

「きっと、僕は一人前の男になってみせるよ。だから勝とう!パワポケくん!」

 

佐藤くん達・・・!

 

「ああ!もう負けないぞ!俺達極亜久高校野球部は!!」

 

「おおおお!!!!!」

 

「……明日香センパイ、私達もあっちに行った方が」

 

「いいのよ今は。…今だけは」

 

「さあ皆!片付けを終えて、帰って練習よ!!それと反省会も!」

 

「はい!!」

 

野球に懸ける熱を生み出し、俺たちは野球の練習を夜遅くまで続けた。

 

 

 

◆◆

 

 

 

「・・・む!あれはあかつき高校キャプテンの猪狩守!」

 

ある日の、それは何の変哲もない夕方だった。

 

「ここはバナナの皮大作戦やな。コスチュームチェンジ!」

 

 練習帰りの野球部員・外藤侠二は自分達が勝つ為の努力を怠らない。そう、日々行っていた妨害作戦のように。

 

「このバナナの皮で、すべってころんで!頭でもうって野球ルールを忘れてしまえ! まあ、そんな上手くいくわけないんやけどな」

 

 軽いイタズラで済むだろう。それがいつものことだろう。もし万が一が起これば、それこそ御の字だ。そう考えて、滑るバナナの皮を歩道に置いた。

 

「進。はやく行くぞ」

 

「兄さん、待ってよ。・・・?危ないなあ、こんな所にバナナの皮か。誰が踏むってんだこんな分かりやすいものを」

 

「ありゃ。・・・ちっ、まあ現実なんてこんなもんやな。ずらかりずらかり」

 

しかし、現実における万が一はここで起こった。

 

「! おい進!危ない!」

 

「――え?」

 

キキーッ、ドーン。

 

「進ー!!!!!!!」

 

「わ、わ、ワイは知らん!!」

 

 ありえない、なんてことはありえない。例えばトラックが急にこちらに向かって突っ込んでくる等々。それがこの世の常である。

 

 

 

◆◆

 

 

 

――朝練の日。

 

「いっちに!さんっし!」

 

 絶好の練習日なので、俺は元気に学校に来ていた。そしてあえて、進くんのことは考えないようにしていた。

 

「・・・いよいよ明日は待ちに待った夏の大会の1回戦だ。皆!この試合に野球部の運命がかかってるんだ!」

 

「でも、相手はあかつき高校でやんすよ・・・」

 

「全力で!ぶつかるだけだ!!」

 

「そうだよなあ。・・・いっちょやってやろうかッ」

 

頼むぜヒラヤマあ!

 

「進くんとの勝負。楽しみだなあ」

 

まだ無理だけどね。

 

「!あ、猪狩進なら・・・」

 

「はい?どうしました?外藤さん?」

 

「あ、いや、何でもない」

 

やっぱりな。そしてその夜。

 

「父さん。明日、俺、試合なんだ」

 

「ふ~ん、そうなのか」

 

「見に来てくれないかな。相手は、去年甲子園にいった学校なんだ」

 

「・・・・・。まぁ、明日なら」

 

明るい表情。俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

「やったー!」

 

 1のお父さんにも、いっちょカッコイイ所を見せてやるぜ。――そんなこんなで地方大会の1回戦だ!

 

「流石はあかつき高校の正メンバー。そうそうたる顔ぶれだね」

 

「?でもキャッチャーが違うでやんす」

 

「誰が相手だろうと勝つ。全力で。それだけだろう?」

 

「ああ!」

 

「無論じゃのう」

 

「??」

 

「最初から正メンバーか。面白い!」

 

「??」

 

「プレイボール!!!」

 

??あ、あれ? イベントは?

 

「ボブー!!先頭打者ホームランぶちかませー!!!」

 

「ぶちこんでやるネ!!」

 

 あれー、試合始まっちゃったんだけどおかしいな?たしかあのクソ教頭の策略が発動する筈なんだが。

 

「まあいっか!どうせ無視するだけだったし」

 

「キャプテン!攻守交替でやんす!」

 

「ああ!!」

 

とにかく今は、油断せずに行こう!

 

 

 

◆ 

 

 

 

―――時は少し戻って。極亜久高校の試合直前。

 

trrrrrr、

 

「――はい。こちらは極亜久高校控え室ですが。………え?〇〇くんのお父さんが、クルマにはねられた?それは確かですか?」

 

『ぇえそうよ、ゴホン、もとい、その通りです。現在患者は△△病院に救急搬送されました』

 

「分かりました、すぐに伝えます。ところで確認なのですが、お母さんの方は大丈夫でしたか?」

 

『ぇ?ええ、ええ。そちらの方は無傷で問題ありませんので、お早く病院の方まで――』

 

「………」

 

ガチャン。

 

「あれ? センパイ、何か連絡でもありましたか?」

 

「ううん、何も。間違い電話みたいだったわ」

 

「そうなんですか?困っちゃいますよね、こんな大事な試合の直前にだなんて!」

 

「その通りね」

 

「今日はパワポケせんぱいのお父さんが球場に来るんですよね。せんぱい、気合充分な顔してましたよっ」

 

「ふふ、そうみたい」

 

「…。あの、パワポケせんぱいのお母さんってもしかして……」

 

「ええ。亡くなってるわ。遠い昔に、産まれてくる筈だった弟さんと一緒に」

 

「そんな……」

 

「それ以来、親子関係もギクシャクしてしまって。だから今回の試合は是が非でも良い所を見せたいみたいよ?パワポケくんは」

 

「よくご存じですね、流石は幼馴染です。明日香センパイ!」

 

――後輩がこちらを見ている。

 

「それほどでもないって。さあ、私達も行きましょうか。ベンチへ」

 

ちゃんと上手く顔を作れているだろうか。心臓が、早鐘を打ち続けていても。

 

「はい!!」

 

私は進藤明日香なのだから。

 

 

 




疾風怒涛編に続く。


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