「外藤!!お前がちゃんとやらないから負けたじゃないか!!!」
「そ、そんな!ちゃあんと弁当に下剤をタップリ入れときましたがな!」
15-9。負け試合後の反省ミーティング、と言えば聞こえは良いが、紛う事なき暴力が俺と外藤さんを襲っていた。しかも先輩たちが怒っている理屈はもっとひどい内容である。
「じゃあ何で相手が勝って俺らが負けてんだ?
負けるわけねえだろうがテメエがやってれば!!めんどくせえ、もっと殴れ!!!」
「骨の2、3本はへし折ってやるから覚悟しとけよ、オイ!!!新入りテメエも同罪だこっちへ来ォい!!!」
「外藤さん!!一体どういう事ですかこれは!何で訳も分からず殴られてるんです俺達・・・?!」
いってえ。・・・痛み。この痛みだ。全て本物だ、嘘じゃない。
「・・・・、対戦相手の弁当に一服盛るねん。それを食べた相手は大きく弱体化、ウチらはヤスヤス勝利できるっちゅうわけや。今回は上手くいかんかったが。ほかにも相手のピッチャーをケガさせといたり」
「!?」
そう。これが我が極悪久高校伝統の『作戦』である。
ろくに練習もしてないチームが格上に勝つ方法・作戦としてはこれ以上なく合理的かつ原作通りだ。相手方の力を削り、弱体化させる。聞く人が聞けば王道であると同情するに違いない。
しかし、
「そんなの共感はできない!! だって卑怯な手で勝っても、嬉しくもなんともないじゃないですか!!先輩方!アンタたちは間違ってる!!」
「んなぁにぃ?ほざきやがったな1年坊が!!オイッ!コイツも二度と野球が出来ねえ体にしてやれェッ!!!」
瞬間。その言葉を聞いた俺の血の気はMAXになった。
「もう我慢出来ねえこのクズ先輩共返り討ちにしてやらあっ!!!血が騒ぐ!!何故ならこの程度の苦境(のりかとかノリカとか荒井とか紀香とか)、苦境の内にも入らねえよ俺はパワポケくんだぞ!!!」
「しゃらくせえ!!!テメエ如きに何が出来るってんだゴラ!!」
「こうする!」
「おい新入り!こんなん真っ当に相手なんかすんな逃げるで!!!」
外藤さんが走る。しかし俺はペタンと両手を地面に付いていた。
「怪我したくなかったらさっさと逃げな。だって、ほら・・・今の俺は地球を持ってんだぞ!!!茨木和那直伝の流儀みせたるわボケエ!!!!」
「何を訳の分からん事言ってんだこのダボが!!」
「土下座で怪我させられるもんならしてみろや!」
「まったく何やってんねんパワポケ!」
「待てや新入り、外藤オ!!!」
「待てと言われて待つアホが何処におんねん!!」
バタン! 外藤さんが扉を強く閉めた。この建物はひどく歪んでる為、そう簡単に開く事はなさそうだ。ちなみにファーレンどころか何も出来なかった俺はズルズル首根っこを引きずられて共に退避。これも原作通りだ。
「ふぅー、とりあえずはこれで大丈夫やろ。・・・しっかしお前もキレるとおっかないヤツやな。あそこで3年の先輩に啖呵きるなんて普通でけへんで。ていうか誰やイバラキカズナって」
「昔の女ですよ。それ以上でもそれ以下でも・・・・、やっぱり前言撤回。かけがえのない女の一人です」
「言うやんけ、この状況で。やっぱ猫かぶってたんかお前――、」
ピシ。
「ん?――なんや?なんか聞こえへんかったか?パワポケ」
「聞こえました。たぶんこの音、建物に亀裂が」
メリメリ。
「メリメリって・・・・。あ、あかん!外に出るで!!」
「先輩達!それ以上やったら建物がぶっこわれます!!!やめて下さい!」
俺は一応静止の声を出したが、それでも先輩達は暴れるのを止めず、すると大きな破壊音が後方で発生した。
まるでMOGERAがビルに突っ込んだような音。先程まで俺達が居た建物は跡形も無く壊れ、3年の先輩達は全員が全員入院となってしまったのだった。
◇
「死ぬかと思った」
「よお、パワポケ。お互い災難やったな」
「外藤さん。怪我はしましたか?」
「カスリ傷も負ってへんわい。それよりどうするんや、これからお前は。先輩らは全員全治半年やで」
「勿論野球を続けます」
「・・・そうなるか」
外藤さんは半ば諦めた風な顔をして言った。そう、俺は知っている。眼の前の先輩がとても後輩想いで野球に未練があることを。
今強く押せば、こちらの味方になってくれるだろう事も俺は知っている。・・・・だが、
「ほーっほっほっほ」
甲高くて気持ちの悪いオカマ声が聞こえてきた。これがいわゆる原作通りの声っていうのかな?タイミングを見計らったかのように、その声の主はここに現れた。
「―――。これは教頭先生、何か御用ですか?」
「へえ、流石に知っとったかパワポケ」
極悪久高校ベストオブクズの一人・教頭先生である。ようこ先生をいじめるコイツは死刑。ファンの間でそれは共通認識だと個人的に思っている。だから俺は極めて冷徹に声を出していた。
「廃部よ、廃部。決定事項を伝えるわ。野球部は、廃部よ」
「ちょっと待って下さい」
「部員がいないんじゃ仕方がないでしょう?しかもアンタたちの素行の悪さと実績。ハンドボール部の邪魔だしイヤだったし、さっさと部室と学校のグラウンドから出てって頂戴。文句は言わせないわ」
「部員は俺が集めます。だから廃部は少し待ってくれませんか」
「アラ、活きのイイ1年が居るじゃない。 でも駄目よ、怨むなら半年入院になった先輩を怨みなさあい?」
「――その半年以内です」
「・・・・何ですって?」
「半年以内に、試合可能な部員数と顧問を確保します。更に1年以内に公式戦での勝利も約束します。生徒からのお願い、手心を加えて頂けませんか。教頭先生」
「・・・・・」
「パワポケ・・・お前、そこまで」
原作通りの言葉を言ってみる。ハンドボール部顧問でもあるこの教頭は、野球部の存在をずっと眼の敵にしていた。
しかしアホなわけではない。生徒の弱みと自分の利益と互いの立場をしっかり計算できる大人だ。
こんな奴が学校の教頭してるのがまずもって駄目なのでは?なんて何度も何度もプレイ中に思ったものだが、だからこそ今この場で1年・生徒(俺)のお願いを聞いて表向き即否定など出来る筈がない。
――帽子を取って、頭を下げる。現役の高校生らしく。どうだろう、見えるだろうか?
「・・・いいわ~あ。やってごらんなさい? けど、約束は守りなさいね」
「勿論です。ありがとうございます」
ヨシ。ま、当然だが。あなたの事は何でも知っている。
だからさっさと眼の前から失せろよ外藤さんの仇(パワポケ5裏・忍者戦国編より)。このクソおやじ。
「外藤さん。という事ですので是非ご協力を、」
「悪いな、ワシはパスや。ここらが引き際やからな。お前はテキトーに頑張れや」
「・・・はい」
しおらしくしゃべる。つまりは大丈夫である。外藤さんは良い人だから。いつも最後には何とかしてくれるんだ。
「さあ!!部員と顧問集め頑張るぞー!!」
なので空に元気を言い放つ。それが主人公の役割だから。