これはひどいパワプロクンポケット   作:ブロx

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(ミニゲームは)原作通りです。





黎明編 その5

 

 

 

亀田が心配そうな顔で声をかけてくる。

 

「本当に大丈夫でやんすか?」

 

「あ?何が」

 

 それに比べ村上くんは両腕を油断なく下げ、俺とサッカーゴールを見ている。マジかっけー。

 

「勝算でやんすよ。サッカーの経験、あるんでやんすか?」

 

「ねえよ。俺野球一筋だから」

 

「サッカーは11人でやるスポーツでやんす。これから少なくとも11人がパワポケくんに向かって突っ込んできてはスライディングをかましてくる。

 正気の沙汰じゃないでやんすよ」

 

「俺に向かってじゃねえよ、このサッカーボールに向かってだ。そういったルールは絶対守るって話だよ」

 

「そんな口約束・・・!」

 

「亀田くん。大丈夫だって。勝算はあるから」

 

「・・・・。本当でやんすね?」

 

「ああ。まあ見てなって」

 

「村上くんは何かないでやんすか? キャプテンに」

 

「いざとなればわしも出るけえの。きばれよ、キャプテン」

 

「ありがとう、村上くん。いざとなったらお願いするよ」

 

「この扱いの差はなんなんでやんすか?え?もしかしてオイラ嫌われて」

 

 かくして。ボールは友達だと信じ込んだ俺は広い広いピッチへと躍り出た。勝算は只一つ、後ろ向きにドリブルだ。

 

 

「さあキックオフ!!!大一番が今はじまりました!」

 

 

 

 

 

 

「あら?……あれは」

 

 帰り際、校庭に眼を向ける。そこには見知った顔の彼がサッカーボールを蹴っていた。

 

「大一番が今はじまりました!」

 

「解説の喜多田和です。よろしくお願いします」

 

…野球部なのに。

 

「空は綺麗に晴れ上がりましたねえ、喜多田和さん。そんな中で野球部からの挑戦状あるいは挑発状。我らがボブ選手には是非ともゴールをしっかりキープしてほしいところ!さぁ野球部は一体どんな勝ち筋を目論んでいるのか、目が離せません!」

 

「それなりの緊張感がピッチにはあるみたいですね。シロウト一人に寄ってたかってなんていうのは少し見目が悪いですが。 まあ気持ちは分かるんですけどね」

 

「…すいません」

 

「?はいどうぞ、隣りのクラスの進藤明日香さん!」

 

――恐る恐る声をかける。心臓が、今にも悲鳴を上げるのを抑えて。

 

「あの人、野球部の人ですよね。サッカーのグラウンドで一体何を?」

 

「見ての通りサッカーですよ。ボールを相手のゴールにシュゥゥート!」

 

「え。何のために?」

 

「野球部って人手が足りないらしいんですよね。それで彼、命知らずにもサッカー部にヘッドハンティングしにきたんですよ。

 それにつけてもボブくんとは、いや目の付け所がいいですよね」

 

「さぁそんなこんなで野球部が華麗にドリブルを繰り出していくぅ!時に右に、左に斜めにそして後ろに・・・・後ろに?」

 

「あ~イイ感じです!」

 

「え?あの人ほんとに野球部なんですか?その辺のサッカー部よりもドリブル・・・ていうか今の見ました?右斜めからボール取りに突っ込んできたサッカー部員を横でも前でもなく思いっきり後ろにドリブルしてかわしましたよ。あれって後ろ通しってやつでしょうか。あ、いやでもなんか違・・・彼ってペンギンだったんですか?」

 

「ドリブルバックとか何とか言われてるやつですね。流石ですね」

 

「・・・・取り乱しましたが今回、サッカー部には実りのある時間となりそうです。さあテクニカルなぶっちゃけありえない野球部がついにゴールへと迫ってきたあ!ボブくんという名の鉄壁の守りとサッカー部のスライディング、そして攻撃をしのっげるかあ!! アっとここでシュートオオオオオ!!!?」

 

「おっとど真ん中狙いましたねえ」

 

「ボブくん左に寄りすぎていたあ!!横っ飛び、しかし時すでにチラシ寿司ィ!!!!失礼、遅しぃいいい!!!!

 入った決まった!!!これでどうだあああああ!!!!」

 

「お~、いや~今のは手ごたえありって感じでしょうね。ん~~素晴らしい!」

 

「見事に決勝ゴールを叩っき込んだ!!!サッカー部のディフェンダー陣を見事に躱しきり、ダメ押し追加のサッカー部員すら追いつけないほどのスピードでシュートオオオ! 終わってみればサッカー部はちょっと為す術ないようでしたね」

 

「そうですねえ、(ホームという事で)気のゆるみもあったのかもしれませんね。しかも更に付け加えると、最後誰も中にいませんでしたからね。誰か中にいればよかったんですけどねー」

 

「パワポケくん…」

 

「試合終了ーーー!!!!」

 

 ―――ガッツポーズをする彼から、目を離さない。

それはかっこいいからじゃない。彼が変だからでもない。なんの理由もなく、私は彼を見つめ続ける。

 そしてふと、気づく。それしかできないのがお前の今までとこれからなんだと。まるで、そう誰かに言われているようで。

 

踵を返す。彼より遠く。心臓はもう、痛くなかった。

 

 

 

 

 

 

「オウシット!ゴールされてしまいマシタ?!」

 

「俺の勝ちだな、ボブくん!!」

 

「アンビリーバブルなルーズね、ミーの負けデース。ユーはベリーベリーカミカゼスピリットでした・・・、ちなみに一体どこでサッカーを学んだんデース?」

 

「ああ、ゲームで」

 

「アイシー、ユーアーゲームボーイ。・・・アンド、正にキャプテンと呼ぶに相応シイね!」

 

「よろしくな、ボブくん!!」

 

「イエス。やるからにはフルパワーつくしマース。その代わりいい加減なこと、ミーがゆるしマセーン。オーケー?」

 

「オッケイ!!」

 

がっちりと握手をかわし、俺は部員をまた一人ゲットした。

 

「やったでやんすね、パワポケくん」

 

「ああ。これであと5人で9人集まるな」

 

「OH、野球は9人で行うスポーツなんデスねー」

 

「そのようじゃな。ワシもよう分からんが」

 

「初心者に教えることも重要な役目でやんすね、その辺はどう思ってるでやんす?パワポケくん」

 

「懇切丁寧に、って言いたいところだが経験者がもっと要るだろうな。まあ任せとけって」

 

「その自信も前例を知ってるってやつでやんすか?聞いたことないでやんすよ、そんな奇跡みたいな前例」

 

「俺もそう思う」

 

シリーズ通してみてもパワポケ1と3の主人公が一番ヤベーよ。いやヤベーかもだよ。

 

「あ、ちなみにでやんすけどオイラ知ってるでやんす。テニス部の三鷹くんっていうのが野球やってたらしいのでやんすよ」

 

「なるほどね。でもまあとりあえずは人数も集まってきたことだし、明日はみんなで少し野球の練習といこうか」

 

「いいでやんすね!」

 

 楽しみにしている、とボブくんと村上くんも言ったところで俺達は下校の途についたのだった。

 

 

 

 

10月3週。

 

「今日は何をしようかな」

 

「予定通り野球の練習とやらをしてみたいのう、キャプテン」

 

「バッティングでもするでやんすか?」

 

「キャッチボールというのをやってみたいデース!」

 

「オッケー。もともとキャッチボールをする予定だったから丁度いいや。ボブくん、一緒にやろうか」

 

「オーナイス!」

 

「じゃあオイラは村上くんとキャチボするでやんす」

 

「キャチボ?なんじゃそれは」

 

「キャッチボールでやんすよ。お互いにこの硬球を投げ合うのでやんす。ほい」

 

「ほう!これはなんとも石のような硬さのボールじゃのう」

 

「石でやんす」

 

「うん?」

 

「ようなじゃなく、硬球は石でやんす。軟球とかと違って。当たり所が悪ければお陀仏で、オイラたち球児はそんなのとお友達になる必要があるのでやんすよ」

 

「可能か?そんなことが」

 

「出来なきゃそれまででやんす。 と言った方が燃える方でやんすか?村上くんは」

 

「ああ、燃えてきたわい。では始めようかのう、亀田!」

 

「オッケーでやんす」

 

「あっち気合入ってんなあ・・・・」

 

 意外にも亀田の野郎はモノを教えるセンスがあるのかもしれない。いや、違うか?ただ単にうぜえだけか。

 

「オー、これがベースボールグローブ。キャプテン、ボールカモン!」

 

「ゆっくり投げるからね。まずは慣れる所からだよ」

 

「よろしくどーぞネ!」

 

 ヒョイっと投げて、しっかり取る。その繰り返しによって眼が慣れてきた事を感じ取れば、今度はほんの少しだけ速く投げてみる。

 

「オウ、コンセントレーション!サッカーとはまた違った集中力が要るネ」

 

「そうかい?」

 

「ソーナイス!そしてバイザウェイ!キャプテンはなぜ野球を?」

 

 あのパワポケ1のボブくんと会話という感動の最中、質問が飛び交う。これこそ正にキャッチボールだ。

 

「え?なぜって。これじゃなきゃ駄目だからだよ、俺って単純」

 

「野球以外にもスポーツはありマース。なので素朴な疑問デース」

 

キャッチの回数が上がっていく。段々、一球一球、確かめ合うように。

 

「だから言ってるだろう、これじゃなきゃ駄目なんだよ。この極亜久高校では」

 

「ホーホーホウ?」

 

「野望があるんだ。俺は野球のプロになる。そして」

 

「そして?」

 

「生き抜くのさ。たとえ超能力だサイボーグだ何だのがこれから蔓延ってきても」

 

「それがキャプテンのアンビション。ですカ?」

 

「ああ、俺(主人公)の道だ。誰にも譲れない系のな」

 

「・・・時にその道を選ばないという選択が、仮にあっても?」

 

「選ぶね。だから君にも言うのさ、俺はこれ(野球)じゃなきゃ駄目なんだってな」

 

「・・・」

 

 手慣れた速さのボールが胸元、グラブの中心に収まる。でも視線は互いに見合って、故郷が一緒の俺達はまたキャッチボールを続ける。

 

「それでいいのカイ?」

 

「さあ?まあいつか分かるんじゃないか?良かったのか悪かったのか」

 

「過去形ってやつだネ、全部」

 

「予知能力があればなー、楽なんだけどなー」

 

「――ははは!」

 

 談笑しながらボールを交わす。キャッチボールってこんなんだったっけ?そんな微かな疑問はボブくんの投球でかき消えていたのだった。

 

「ちょっと来てくれでやんすパワポケくん!!!」

 

「おっと。どうしたんだい、亀田くん?」

 

「村上くんの球がヤベーのでやんす!これ人殺せる球でやんす!!」

 

 硬球なんだから当たり前だろがボケ。俺は無視して村上くんを見た。見事なフォームだ。

 

「・・・ん?力加減間違えたかの? うわっははははは!!!」

 

「笑ってないで改めるでやんす!!」

 

「じゃあ交代してみるか。ボブくんごめん、次は亀田くんとキャッチボールしてみてくれ」

 

「オーケーイ!!任せるネ!」

 

世にも珍しい野球の時間はこうして平和に過ぎていった。

 

 

 

 

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