これはひどいパワプロクンポケット   作:ブロx

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黎明編 その6

 

 

 

今日は何をしようかな。

 

「まだ手が痛いでやんす・・・オイラ一応キャッチャーなのに。昨日は散々な目にあったでやんす。でも今日はさっそく!テニス部に行くでやんす、パワポケくん!」

 

「ああ。ピッチャーは何人もいた方がいいからね、当然だよね」

 

「?何を言ってるでやんす?」

 

「こっちのことだよ。さあ行こうか、スマホは持った?」

 

「スマ、ホ? キャプテン何じゃいそれは」

 

「あハハハ、何でもないよ。記憶力と動体視力だけが今までもこれからも頼りって意味さ」

 

「ほお?」

 

「とにかくテニス部の三鷹くんっていうのが、野球やってたらしいのでやんす!さあ到着したところで先手必勝!たのもーッでやんす!!」

 

「元気だなあ、あのバカ」

 

「キャプテン正直過ぎネー」

 

 俺の本音にボブ君はナイスガイ、満面の笑顔だ。しかし次の瞬間それを上回るイケメンが俺達の前に現れていた。

 

「・・・・ん?君は誰だい?」

 

 他と違って綺麗なテニス部部室の扉を開けて現れたのは、これまた懐かしい彼。だから我慢する。油断すると涙が滲んでくるので。

 

「野球部の亀田でやんす!三鷹くんはどこでやんす!」

 

「三鷹?三鷹だって? おいおい勘弁してくれよ。彼の名前、ちゃんとフルネームで呼んでくれなきゃ困るな」

 

「?フルネーム、でやんすか?」

 

「そう、コートの貴公子。――三鷹光一とは・・・僕のことさ!」

 

「は、はあ・・・」

 

 キラーンと光る。それは歯かもしれないし、眼光かもしれないしオーラかもしれないし全身かもしれない。つまりは・・・・・すごい漢だ。

 

「どきなよ亀田くん。あの三鷹くんの相手は君じゃ無理だ。一目見て分かるだろ?」

 

「そ、そのようでやんすねパワポケくん」

 

「パワポケ?――ああ、君があの噂のパワポケって野郎かい」

 

「そうだけど。流石に噂が一人歩きしてきてるみたいだね、俺達野球部は」

 

「野球をやらない野球部だって有名になってるよ」

 

「あ。そう・・・・」

 

キャッチボールとかやったのに。けどこれも原作通りだ。

 

「―――で?その天下の野球部が僕に何の用だい?」

 

 三鷹君の眼光が俺を射抜く。腰が抜けそうだぜだって相手はパワポケ1において最高のピッチャーの一人。ていうか彼がいないと勝てねえよ。なんたる光栄だ!

 

「中学時代、エースで四番!名を馳せた三鷹光一くん。もちろん君に用があってここに来たんだよ。 野球部に入らないか?」

 

「断る。って言っても変わらないか?」

 

「ああ。何度でもここに来るだけだ、三鷹くん」

 

「気持ち悪いなあ、まるで女の子みたいじゃないか。野郎がそんなキラキラした眼をするもんじゃないぜ」

 

「知らないのかい?ヘッドハンティングする側ってのは皆こんな眼をしてるんだよ」

 

「そりゃ知らなかった。じゃあ一昨日来るんだね」

 

 バタンと強く扉が閉まる。こじ開けるか?と村上くんの拳が尋ねたが俺は首を横に振って意思を示した。

 

「必ず戻ってくるぞ!三鷹くん!!」

 

今日の前半戦はとにかくこれまでだ。

 

 

 

 

 

 

「あのキザ野郎生意気でやんすッ!!」

 

亀田はいきなりキレた。

 

「そうだなぁ」

 

「カメダはフューリータイムですネー。くわばらくわバーバラ」

 

「キャプテン。今日はこれで仕舞いか?」

 

「まさか。今から後半戦のスタートさ」

 

 イライラする亀田を見てるとなんだか初見プレイヤーだった自分を見てるみたいでワクワクしてくるなぁ。

 まあこれがやがてテメエ(亀田)の顔を見るたびに殺意沸くようになったりするんだけども。パワポケあるある。

 

「そうでやんす!」

 

「あ?」

 

「ちょっ、怖い顔やめるでやんす急に」

 

「あ、ごめんごめん本音が」

 

「キャプテンやっぱファニーデース」

 

雑談しながら校舎の階段を上がる。俺は只、音がするだろう方向へ。

 

「とにかく今は放課後、暇そうなヤツを探して頭数を揃える仕事をしようか。誰か野球部に入ってくんないかなあー」

 

「?手分けするのか?」

 

「ん-・・・・それなんだけど。 おや?なんだこの音色は?」

 

「何かわざとらしいでやんすね・・・」

 

 無視。しかしてヴァイオリンの音が聴こえてくる。素晴らしすぎて涙物だ。いや本気で、いや勇気で。

 

「音楽か。わしにはとんと無縁じゃが、この音、身体の芯に響くの。一体誰じゃい、音の主は?」

 

「ああ、水原くんでやんすね。成績は学年トップで天才、放課後はいつも暇なのか音楽室でヴァイオリンを弾いてるのでやんす」

 

「へえ? じゃあ早速勧誘しにいこうか。スポーツは苦手そうな感じはするけど」

 

「そうでやんすね。インドアなインテリでも貴重な部員はいないより居た方が良いでやんすよ」

 

 黙ってろや金ぶんどるぞテメエ。テメエみてえに。 我慢しながら俺は音楽室の扉を開けた。

 

「失礼する。水原勇気くんはいるかい?」

 

 極亜久高校に吹奏楽部はないのか偶々か。ゴールド金賞を獲る為の練習にはもってこいの広い部屋の中に独り、ヴァイオリンを肩に当てている漢がそこにいた。

 

「―――なんだい」

 

「俺は野球部のキャプテン、パワポケだ。早速本題だが野球部に入らないかい?太陽の下で、一緒に甲子園を目指そう!」

 

「――数を揃える為なら、お断りだね」

 

「Oh,聞こえてたネ・・・」

 

「良い耳じゃの。結構な距離があった筈じゃが」

 

「まったく――失礼だね。それに勉強ができるからスポーツは苦手、というのも偏見だ。今から証明してあげよう。表に出るんだね」

 

「・・・・、ああ」

 

 やっべえマジでかっこいいそしてごめん。勧誘する為とはいえ悪口言っちゃって。代わりに亀田は後で煮るなり焼くなりどうとでもしてくれていいから。

 

 そう、彼こそ極亜久高校野球部エースの水原勇気。彼が打つ=得点で有名なあの水原くんである。

 

「ほら、投げてみなよ。文字通りここは君達のホームグラウンドだ、いつでもどうぞ」

 

「・・・・じゃ、いくよ」

 

 俺ピッチャー、彼バッター。一対一の勝負が今始まる。

・・・なんだけど俺本格的な投球なんてこの体になってから初めてだが? とりあえず投げてみっか。

 

「それっ!!!」

 

 オーバースロー。そして右投左打、それが今も昔も俺のジャスティス!だって今はまだトルネード(はがね投法)出てねーもん。

 

 それを、水原くんは華麗にカッキーン。ガッツだー!キミとボクとのじゃなかったホームランだ。

 

「な、すごい!!」

 

「すごいでやんす!」

 

「ストロング、ストロング!!」

 

「・・・すまない水原くん。君の力を知らなかったのは謝るよ。そこで、改めて頼む!是非とも野球部に来てくれ!!!」

 

そして俺達に野球を教えてください。貴方がコーチだ。

 

「まぁ、考えないでもないけど。・・・君の実力を見せてもらって、決める事にするよ」

 

「よーし、任せとけ!ノックだろうが、遠投だろうが何でも――」

 

「ああ、野球じゃないよ」

 

「え?」

 

やっぱり?

 

「ボクがキミの得意分野で実力を見せたんだ。キミにも、ボクの得意分野で実力を見せてもらおうか」

 

「得意分野ってことは――」

 

「音楽さ」

 

水原くんはニコリともせずに言った。

 

 

 

 

「これが楽譜だ。 いいかい?よく聞くんだぞ。これからボクが一番気に入っている曲が流れる。特定の音が来たら、タイミングよくピアノの鍵盤を叩くんだ。

 この白いのがドで、右隣りから順にレ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ。ピアノってのは基本的にこの七つの音だ。ただし黒鍵が五つあるから、正確には十二の音色だけどね」

 

「なるほど」

 

なるほど?

 

「流石にキリがないから和音とかその他諸々は省くが、要は今回、キミにやってもらいたいのはタイミングとリズム感よくボクが指定する音だけをピアノで弾けばいいってことだ。その証拠にほら、この楽譜を」

 

「これは・・・・音符に赤いマーク?」

 

「そうだ。それを弾いてみせてくれ。ついでに言っとくと、全部でド・レ・ファ・ソ・ラの五音しかなくて、ラだけは♯で黒鍵だ。今からボクがヴァイオリンで曲を頭から弾くから、それに合わせて音を出してくれ。説明は以上だ。

 ―――さあ、始めるぞ!準備はいいかな?」

 

「ああ」

 

「え?もう? え?マジでやんすか?」

 

「・・・説明だったかの?今のは」

 

「キャプテンってファニーじゃなくてクレイジーネ」

 

「よーい、はじめ!」

 

「・・・」

 

 ―――ヴァイオリンから美しい音色が聴こえてくる。

まるで白球のような白色。投球のような緩急。水原くんマジ水原くん。そう関心していると、彼の視線が俺とかち合う。

 

見せてみろ。そう言っているようだった。 

 

 まあ小難しい説明してもらって悪いが水原くん。今回俺が出すべき音符の数は全部で71個で、最初の音符はレで次の音もレだってこと、俺知ってるんだよ。

 

――だって俺、その曲腐るほど聴いてたんだから。

 

 なのでピアノを叩く。たまに来る休符を忘れず、連弾はきっちりとタイミングよく。彼の音に俺の音を合わせて、二人で楽曲を創り出す。音楽を遂行する。そうこうしている内にレドラ♯の三連星が三連続。

 曲のラストスパート!つまりこれで決まりだ!ドレミファ・ポン!!

 

「や、やったでやんすか?!」

 

「・・・っ」

 

「どうだい!演奏しきってやったぞ水原くん!」

 

「へえ、大したもんだ。マジか、キミ」

 

「当然だ。極亜久高校野球部をなめてもらっちゃこまるぜ!」

 

そして俺はこのミニゲームが大大大大大好きなので。

 

「・・・うん、そうだな。ヒマつぶしに野球をやるのも、面白いかもしれないな。今からボクも極亜久高校野球部だ」

 

 よろしく、キャプテン。そして演奏、素晴らしかった。

そう言って水原くんはヴァイオリンから利き手を離し、俺に向ける。一時とはいえ音楽もしくは合奏という名の虹を創り出せた者同士の視線と手が重なり、敬意となる。

 

握手だ。あの水原くんと。

 

「よろしくう!!」

 

のちのパワフル高校野球部監督。そんな彼を俺はいつだって尊敬しているのだ。

 

 

 

 

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