これはひどいパワプロクンポケット   作:ブロx

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飛翔編 その1

 

 

 

「へ~、じゃあ9人集まったのかい。パワポケくん」

 

「ああ。やっと入口だよ進くん」

 

パシンと。硬球がグラブに収まると、俺は進君を見た。

 

「けど野球部存続の危機だなんて。僕に教えてよかったのかい?手加減はしないよ?」

 

「間に合ってるから大丈夫だよ」

 

「ふふ、そいつはよかった。けどなんだっけ、顧問の先生ってたしか野球未経験なんだろ?」

 

「ああ。そこなんだけどね・・・」

 

こちらを油断なく見るキャッチボール相手がすぐそこに。という所で回想タイムだ!

 

 

 

 

「やっと来たでやんすねパワポケくん。遅いと思ったら顧問の先生を見つけたんでやんすか。・・・ってようこ先生でやんす!?!」

 

「今日からよろしくね、みんな!」

 

「キャプテンも隅に置けないな。いつの間にこんな上玉をひっかけてくるなんてね」

 

「ははは」

 

そうこなくっちゃね三鷹くん。

 

「三鷹くんは後で職員室ね」

 

「すいません、先生。つい本音が」

 

「ユニフォームも、似合ってますよ」

 

「おだてたって何も出ないわよ?

あとついでと言ったらなんなんだけど、先生、いまいち野球のルールがわかってないのよね……。そんな先生でも大丈夫?」

 

「ダイジョーブです!!むしろそうこなくては勝てませんから! さあ!練習練習!!」

 

極亜久高校野球部の未来はこれからだ。

 

「って何言っとんねんパワポケ!!!」

 

「・・・え。外藤さんじゃないですか、どうしてここに?」

 

と言いつつ、待ってましたあ!外藤さぁん!

 

「アホウ!もう次の大会に向けて戦いは始まっとるんや!ボヤボヤしとるヒマがあったら早速グラウンド50周するで!!」

 

「お付き合いしますよ外藤さあん!!!」

 

 ほらやっぱり外藤さんってこういう人なんだよ。最高じゃんね。

そんなこんなでハードになった極亜久高校野球部の練習は日を追うごとに熱を帯びるのだった。

 

 

 

 

 回想が終わってそんなある日の夜。俺は神社で進君と自主練をしているのである。

 

「・・・・って、あれ?進くんそれってスライダー?」

 

「うん。中学の時に練習してたんだ。一応、僕の決め球かな。・・・兄さんのには負けるけど」

 

「俺もやってみたいんだけど上手く曲がらないんだ。ちょっとコツを教えてくれないか。あと投球フォームも変えたいんだけども」

 

「お安い御用だけど投球フォームまで? 大丈夫かい?結構なリスクがあるよ?」

 

「リスクはバネ!!でなけりゃ俺はお終いだからね!」

 

「オッケー。ちなみにどんなフォームをお望みだい?」

 

「トルネード!」

 

「ト、トルネード? そんな、僕ですらまだ開発途中なのに」

 

ほほう?

 

「やはり眼を付けていたんだね進くん。俺だってそうさ。この投球フォームをモノにしたとき、とてつもないレベルアップがおこりそうな気がするんだ!絶対に、誰にも、触れさせない程の武器になるってね!!」

 

「重ねてオッケイ、パワポケくん。一緒に頑張ろうじゃないか!!」

 

 こうして俺はスライダーとはがね投法(トルネード投法)を手に入れ、1年目が終わったのだった。

 

 

 

 

 ――2年目突入。高校2年生となった俺はついに初試合、じゃなかった初練習試合イベントを迎えることになった。

 

「相手はあかつき高校でやんすか。オイラたちがどこまでやれるか、楽しみでやんすね」

 

「ああ」

 

「パワポケくん。今日は試合だね」

 

「あ、進くん。お互い頑張ろう!」

 

「うん。勿論だとも」

 

「さてと・・・、みんな!新しい野球部の力をみせるんだ!」

 

「ぅおおおおお!!!!」

 

「やったるでやーんす!」

 

 

試合終了。35-0、あかつき高校の勝ち。

 

 

「まさか3回コールドなんて・・・・」

 

「全然だめでやんす・・・」

 

「ちぇ・・・」

 

「むう、野球は難しいのう」

 

「つかれたね・・・」

 

「ミー、全然ダメね・・・」

 

「ふがいないッス。だめッス」

 

「・・・・・フン」

 

「恐怖心・・・僕の心に、恐怖心・・・」

 

「おい!」

 

「あ、あかつき高校のキャプテンのまもるさん」

 

 アフロじゃないのか。まあいいや。こんな所にあの最強デビルスターズのピッチャーが一人いたらチビっちゃうよ。いやマジマジ。

 

「こんなに弱いんじゃあ練習にもならないよ。このてん、さい!!猪狩守の時間を無駄にするなんてどういうつもりだい」

 

「なんやと!」

 

「よしなさい、外藤くん。くやしいけど…基礎からやりなおしよ」

 

「・・・・・くそ」

 

学校に帰ったらチソ訓練だな。キャプテンとして俺は皆にそう言った。

 

「チソってなんだ?」

 

「さあ?どっちにしても笑えないけど」

 

「噛むなよキャプテン頼むから」

 

 とにかく。ピッチャーとして結構なダメージを負った俺はすぐさま帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

「こんなところにいたのかい。兄さん、反省ミーティングが始まるよ?」

 

「進」

 

「流石に歯ごたえある練習にはならなかったけど、今回対戦相手だった極亜久高校だっけ。中々いいセンスをもっている選手が多かったんじゃないかな、特にあの四番バッターとか」

 

「進」

 

 兄が弟を竦めさせる。大投手の威圧感である。

――いつかは持ちたいと思っている。彼にとっては、密かな野心にも似た炎のような。

 

「お前。教えたな?」

 

「あの四番バッターに? ないない。それはないよ接点ないし」

 

「違う。極亜久高校のピッチャーにだ」

 

「・・・」

 

・・・・・。

 

「あのピッチャーの投球フォームはトルネードだった。しかも決め球はスライダー。まるで昔見たことのあるどこかの天才の弟にそっくりだ」

 

「ふーんそいつはすごいね。どこかの正キャッチャーにきかせてあげたいよ」

 

「進」

 

「なんだい?兄さん」

 

「お前は僕の弟だ。けどそれ以上に野球人だ。キャッチャーだろうがピッチャーだろうが、どっちだろうとそれは変わらない。忘れるな」

 

「・・・、忘れたことなんて一度もないけど。まあ、肝に銘じておくよ」

 

「敵に塩をやれるのは限られた野球人だけだ。いくぞ、ミーティングだ。本来ならもっと点をとれたんだからな」

 

「了解だよ」

 

兄と弟が行く。交わることのない影は二人分の平行線。今はまだ、まだ平行線。

 

 

 

 

 

 

明くる日の放課後。

 

「どうするでやんす?オイラ達むちゃくちゃ弱スギでやんすよ」

 

「うーん・・・」

 

 一日経っても俺は凹んでいた。知っていたとはいえ、ここまでとは思わなかった。ピッチャーとして35点も取られるとか、これマジでムカつくな。

 

「おいパワポケ」

 

「・・・あ。外藤さん」

 

「・・・・ちょっとこいや」

 

「はい」

 

自主練の指示を皆に出して。俺と外藤さんは学校の裏手に向かった。

 

「話っちゅうのは他でもない、野球部の事なんやけどな。オレに考えがあるんや」

 

「?考え?」

 

「うちの部が、すぐに強くなれるとは思えん。お前も分かっとるはずや。それやったら相手を弱くするしかないってこともな」

 

「それってまさか・・・!」

 

「そうや。相手の高校に妨害工作を、しかけるんや。さいわい、オレはやり方を知っとる」

 

「それじゃあ、あの先輩(クズ)共と同じになっちゃうじゃないですか!

嫌ですよそんなの!!」

 

「アホ、よく考えろ!試合に勝てんかったら、廃部や!!

廃部になったら、お前のユメはどうするねん!」

 

「ユメ・・・・合言葉は甲子園優勝・・・・」

 

う、頭が。

 

「お前のユメへの気持ちはその程度か? ユメを叶える為やったら、アクマに、魂を売るぐらいの気は、ないんか!!!」

 

そんな俺の脳裏を鮮明にしてくれたのは、その時聞こえた綺麗な声だった。

 

「―――あたしも、その意見に賛成よ」

 

「!」

 

振り向く。もう二度と見たくなかった、忌まわしい記憶と共に。

 

「! 誰や!お前」

 

「今日、極亜久高校に転校してきた四路智美よ。よろしくね」

 

「・・・・」

 

『甲子園優勝―――おめでとう』

 

 裏表のない言葉と満面の笑みが、真っすぐに俺(プレイヤー)を射抜いていた。

 

「さっきの話、聞いとったんか?」

 

「ええ。あーんなに、大声で話すことじゃない、とは思うけど」

 

あのときに言えなかったから―――今言うね。

 

「・・・・・地味な色のベストだ」

 

「ところでさっきの話だけど、………ど?ベスト?」

 

「地味な色のベストをプレゼントするんだ。他は知らねえ、眼に入れるな必要ない」

 

「え?ちょっと、」

 

「美千代さァあん!!うぉおおおおおおおおお!!!!!」

 

「またこういった発作か!やかましいわパワポケ!!」

 

「美千代さんって。発作って。………どうしよう、声かけない方がよかったかな…」

 

「あ、ごめん。昔救えなかった女のこと考えてた。こういうのって、急にやってくるよね。ごめん驚かせちゃって」

 

「(驚くっていうかドン引きって感じだったわね)別にいいわよ、気にしないし」

 

「うぐう」

 

「なにダメージ受けてるんや今更」

 

「…とにかくさっきの話だけど、目的のために全力を尽くすのは別に悪い事じゃないよね?

 でもそれで誰かが傷ついたり不幸になったりするのがイヤなんでしょ?」

 

「うん。そんなところかな・・・」

 

貴女とか紫杏とかが傷ついたり不幸になったりするのがイヤなだけです。

 

「だったら、イタズラで済む程度にしておけばいいじゃない。

野球でもわざとボールをぶつけることは良くないけど、内角攻めでのけぞらせるのは『作戦』なんでしょ?」

 

「うーん、そういうものかな?」

 

「なんや。話の分かる姉さんやないか。それにいざとなったら、オレが一人責任とるで!」

 

「そんなわけにはいきませんよ。・・・でも、分かりました。ただし俺がやると決めた時以外は絶対にやらないで下さいよ、この妨害作戦は」

 

「ああ。キャプテンには従うがな」

 

「………」

 

計算してる智美さんやっぱ美人だなあと見惚れながら、次の日。

 

「パワポケくん!話は聞いたでやんす。野球部存続の為、オイラも一肌脱ぐでやんす!」

 

「え?誰から聞いたんだい?アレのこと」

 

「はーい、あたしが話したのー」

 

「四路さん・・・」

 

「あら、智美でけっこうよ?」

 

「え?ホント? ――ホントにホント?」

 

「え、ええ」

 

「っと、じゃなくて!巻き込む人を増やさないでくれないか!」

 

「何を水くさいことを言ってるでやんすか!オイラも野球部の部員として、ドロをかぶる覚悟はできているでやんす!」

 

かぶってもらっちゃ困るんだよ。テメエには、テメエだけは。

 

「・・・・まあ今更か」

 

「え?なんでやんす?」

 

「なんでもねえよ。無茶だけはすんなよ、亀田くん」

 

「微力ながら、私も協力するわ!」

 

「もしかして楽しんでない?」

 

「何言ってんのよ。面白半分だったら、まず教頭に告げ口したわよ」

 

「・・・それは、たしかに」

 

「とにかく、あたしは困ってる人を見るとほっとけないの。

さあ!みんなでこっそりがんばりましょー!」

 

「任せるでやんす!」

 

「・・・」

 

 今思うと亀田の野郎。この表情、アイツ一目惚れだったのか?

無理もないがそれにしても・・・智美さん。綺麗な外面だなあ全く。

 

とてもスパイだとは思えないね。そこが魅力的なんだけどね。

 

 

 

 

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