これはひどいパワプロクンポケット   作:ブロx

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※今更ですが作者は野球とか野球部のことをパワポケでしか知りませんのであしからず。





飛翔編 その2

 

 

 

「キャプテン。今日は作戦会議(ミーティング)をしたいんだけど、いいかい?」

 

「?」

 

放課後、水原くんがカバンを手に持ち俺の前に。やべえかっけー。

 

「・・・今日はタフのために皆で走り込み、その次は素振りをしようと考えてたけど。・・・作戦会議って?」

 

「ボクたちが先日の試合で負けた理由についてだよ」

 

「!」

 

なにっ。

 

「いいかい。ボクらは戦略が足りなかったんだ。キャプテン、ボクらは各々多少の力こそあるが、それをどう活かしていくか伸ばしていくか?・・・それをまず初めに決めていなかったんだよ」

 

 ――知っていたのに、ボクとしたことが、マヌケだった。

水原くんはそう言って眉間にシワを寄せた。

 

「よしてくれ、全てはキャプテンである俺の責任さ。だから次は負けない。

では今日は皆でミーティングをしてから走り込みをしようかな」

 

「ああ、すまない」

 

 水原くんと俺は静かに深呼吸をした。つまり議論の開始だ。

―――今、君はどう思っているんだい?少しでもそれを聞きたいだろうから。

 

「ちなみにだけど、俺は皆の長所を伸ばすような練習をしていきたいと考えてる」

 

「短所を減らす練習の方がいいんじゃないか。長所はあえて何もしなくても勝手に伸びるだろう?」

 

「伸びるスピードをこそ考えてくれ。長所を爆発的に伸ばせばその分、武器が強くなる」

 

「それは正論だが、短所が弱点であることに変わりはない。

隠せるものなら隠し、減らせるなら減らすべきだ。相手に狙われるからね」

 

「その通りだけど、うちのチームは弱点だらけだ。今からやるんならどちらか一方に絞って練習するべきで、俺達も含め個人の能力を底上げしていきたい」

 

・・・・・。

 

「・・・つまりはマネジメント力が問われるね。面白いが、それを出来る人間がうちの部にはいないな」

 

「だからってわけじゃないけどマネージャーは欲しいところだなあ。人手不足もいいところだよ」

 

「マネジメントと野球。どっちもプロ並みに出来る奴がいれば最強かもね」

 

「目指してみたらどうだい?案外向いてるかも」

 

「考えておくよ」

 

 そんなこんなでフライング話し合いをしていると、あっという間に野球部の部室前。扉を開けると、おや?・・・亀田の野郎なにしてやがんだ。

 

「うーん・・・。野球部は再建できたけど何か足りないでやんす。うーん・・・・」

 

「亀田くんも考えてくれてるんだね。流石じゃないか?キャプテン」

 

「そんなことはないと思うけど、野球部に足りないものか。 マネージャーとか?」

 

すると亀田の野郎は突然眼鏡を輝かせた。うわっ。

 

「そうでやんす!!マネージャーがいないでやんす!

高校野球といえばかわいい女の子のマネージャーがいるのが当たり前でやんすよ!」

 

 キリちゃんとかユイちゃんとか冴花とか?まあたしかに。

本当に悔しいがその通りだった。という事はこの流れは・・・!

 

「うーん、そういえばそうかな。あすかにでも頼もうか?でも体がきびしいから無理か・・・」

 

 ついに満を持してガチャっと、部室の扉が開く音がする。 よっしゃ待ってた出番だぜ!ユキちゃあん!

 

ウキウキして俺は後輩を出迎えた。

 

「――忙しいところすみません。パワポケくん、いる?」

 

「へ?」

 

「へ?」

 

 亀田と一緒に声を出す。だってあすかがそこにいる。あれ?ユキちゃんは?

 あ、そっか俺は眼をあけたまま夢を見てるのか、そっかそっか。

 

「ああよかった。1年の子を連れてきたんだけど、今大丈夫かしら?」

 

「あの……野球部のマネージャーになりにきました。ダメ…でしょうか?」

 

「! いいでやんすいいでやんすよ!むしろここでダメって言う野郎の気持ちが理解できないでやんすガチで!!」

 

俺はお前の存在がガチでダメだけどな。あ、ということはここ現実だ。

 

「わざわざ連れてきてくれたのか、ありがとう。あすか」

 

「ええ。といってもそれだけじゃないんだけどね…」

 

「?」

 

??

 

「あらためて私、石田由紀(ユキ)といいます。マネージャー希望です。よろしくお願いします」

 

「同じくマネージャー希望の進藤明日香です。よろしくお願いします」

 

「!!??」

 

!!??

 

「やったでやんす!マネージャーが二人も加入でやんす!さあ甲子園目指して、極亜久高校野球部の活躍はこれからでやんすぅ~!」

 

・・・どういうことなの。

 

「あ、あすか。ちょっと待ってくれ大丈夫なのか?体の方は・・・・」

 

「大丈夫よ。無理せず頑張るつもりだから」

 

「しかし嬉しいけど一体どういう風の吹き回し、って訊いてもいいかい?」

 

「ええ。私も、自分なりにパワポケくんみたいに頑張ってみたいって思ったのよ」

 

 貴女が生きてること自体が頑張りの化身だろうに。言っていいのかそのセリフ。いいのかあすかエンド。

 

「・・・分かった。でも健康を最優先にしてくれよ?」

 

「もちろんよ」

 

「お邪魔しま~す。 あら?女の子の割合が高くなってきたじゃない。どうしたのよ急に」

 

「智美さん。二人ともマネージャーとして野球部に入ってくれたんだよ」

 

「あらそうなの?良かったわねパワポケくん」

 

 すると他のメンバーも続々集まってきた。皆女の子が部室にいてくれてテンションが上がっている。まあ俺は最初からこんな感じだけどね。ただし亀田は除く。

 

「マネージャーが一気に二人も加入。やはりそういうことかっ」

 

「佐藤くん早足のままでいいからこっちに帰ってきてくれ。みんな!これからミーティングを行うぞ!全員集合!!」

 

「おーー!!!」

 

 

 

 

 何だかんだと話し合いは進み、現段階のスタメンと今後のトレーニング方針が決まったのだった。

 

「一番セカンドのボブくんは俊足が持ち味だ。それをもっと活かそう。野球でも鉄壁の守備を魅せてくれ」

 

「オッケーね」

 

「二番キャッチャーの亀田くんはもっともっともっと肩を鍛えてくれ。きっと、チームの力になる」

 

「了解でやんす!」

 

「三番ショートの水原くんはミート力が持ち味だ。もっと付けてくれ。意図的に誰もいない場所へボールを打てれば絶対にヒットになる。どうだい、面白いだろ?」

 

「ああ。面白いからやってみよう」

 

「四番サードの村上くんはパワーがひとしおだ。知っての通り。だからそれをもっと念入りに上昇させようか」

 

「おう」

 

「五番ファーストの外藤さんはミートとパワーを上げに上げましょう。もっともっと、がっぽがっぽ」

 

「ああ。しかしいや待てがっぽって。まあええがな、キャプテン」

 

「六番七番八番の荒井ーズ、かねおくんとぎんじくんとぱるおくんは外野だけあって走力が流石だ。もっとほしい、もっとちょうだいもっとちょうだいもっと!」

 

「むーん、適材適所なんだな~」

 

「む~~ん、僕たち一応捕手も内野もできるんだな~」

 

「む~~~ん、でもショートは無理なんだな~」

 

「む~~~~ん、頑張るんだな~♪」

 

「九番であるピッチャー陣。俺と三鷹くんと武田くんとヒラヤマくんは、何につけてもスタミナとコントロールをもっとつけよう」

 

「男、武田は既にタフッス。だからスタミナよりも球速を上げたいッス!」

 

「タフって言葉は武田くんの為にあるかもな。だからこそもっと欲しいって思うんだよ。突き抜けた先をさ。あ、無理かい?」

 

「全然!燃えてきたッス!」

 

しゃあっ。

 

「僕はもっと球種を追求しておくよ。正ピッチャーは華麗に変化球を投げてこそってね」

 

「三鷹くん、負けないからな!」

 

「俺はもっと全体的に力量を上げておくよキャプテン」

 

「そんなふわっとしてちゃ駄目だ。ヒラヤマくん、君はもっとカーブという武器を極めてくれ。更に言わせてもらうと俺のカーブがナンバーワンだって言えるくらいに」

 

「きっつー・・・。けど、やったろうじゃんか」

 

ヒラヤマはこれだから好き。

 

「佐藤くんはファーストもセカンドもサードもできるし、走力とミート力がいい。その力をもっとほしい」

 

「!じゃあ極亜久高校野球部エースという称号が、実力次第では僕のものに!?」

 

「ああ。たぶん」

 

「任せておくれよう!」

 

「田中くんは走力とパワーがいい。だからホームランも打つけどヒットも打つよ、そんなスペシャリストを目指してくれ」

 

「分かった」

 

「鈴木くんはミート力をもっと鍛えてくれ。君に打席が回ってくれば確実に点が入る。そんなカテゴリーエースが必要だ」

 

「了解だ」

 

「!?」

 

「よし!ではこれより練習開始といこうか!!」

 

「おおおおーーー!!!」

 

そうして。

 

「ふん!ふん!」

 

 バットを振る。空を切るように。

ランニングを終えた俺達は素振り練習を開始していた。ちなみにコーチングは水原くんと武田くん。

 

「トロいッス!トロすぎッス!」

 

「そんな事言われても・・・・、でやんす」

 

「バッティングで重要なのはスイングスピードだ。つまり今の課題はもっと速く、もっと速く。バットを振る時に肋骨が勝手に動けば尚いい」

 

「つまり我がバットは天地とひとつってわけか」

 

「我が・・・・なに?」

 

「ごめん水原くん。何でもないよ」

 

ブンッ。ズキン。素振りすると、背骨周辺が少し痛んだ。

 

「体をグルンと捻るんじゃなくて、ここ背骨と胸骨を繋いでいる肋骨が全部勝手に動けば速く振れるんだ。ピッチングもそうだね、理論的には」

 

「人体の構造的にはという事かな」

 

「ああ。といっても極論だし理想論に近いから意識しては絶対にダメだけどね。

 意識したら余計な神経が働いて、余計な神経が働けば余計な筋肉が動く。余計な筋肉が動けば余計な骨が動く。結果、体はズキンと痛む」

 

「・・・難しいな」

 

「出来れば御の字さ。その程度に思っておけばいいかもしれない」

 

「ふーん」

 

 時には何もかもを忘れて何もしない事も体には必要かもなあ。

水原くん達に教わりながら、俺達は素振りを続けた。

 

「よし。今日の練習は以上だ!」

 

「なんか足りないからランニングしてくるでやんす!」

 

「ミーも行キまーす。走ると嫌でも大きく呼吸するから、胸まわりが柔らかくなる気がするネ」

 

「奥に肺があるから胸と背中がギュッと縮こまってしまうと肺活量が落ちるってわけかのう。わしも行くぞ」

 

「ボクもいくよ。肋骨を少しほぐしたい」

 

「俺達は先に上がるぜー」

 

「皆おつかれさま」

 

 今日は帰って早く風呂に入って体を温めるのもアリかもしれない。

そう思った俺は長くなってきた夕暮れを背に帰宅した。

 

が、

 

「――〇〇くん。ちょっといいかい?」

 

 まだ聞きなれない名前と共に現れた一人の男性。ひょろりとした、一見薄気味悪い雰囲気なその人は無表情でも笑顔でもなく丁度いい顔で俺に声をかけてきた。

 

「・・・え、俺ですか?」

 

 54号。いや、小林(こばやし)さんだ。時期的にもう来ないと思っていたが。

 

「ああ。君の野球センスを見込んで良い話があるんだがね」

 

「・・・もしやおじさん、プロ野球のスカウトです?」

 

「はははは。いや、スカウトには違いないんだが、プロ野球じゃなくて高校のスカウトさ」

 

「へえ?」

 

「うちの会社と契約すればプロに入る為のお膳立てをしてあげよう。という話だよ。まず、極亜久高校から設備のしっかりした大東亜学園に転校させてあげようじゃないか」

 

「ええ?でも・・・」

 

 小林さん今はまだ子供いませんよね?二人目のお子さん産まれたら心変わりしますよね?悲しいじゃん。憎めないんでもう草の任務与えるしかなくなっちゃったよ。

 

それはともかく。

 

「ささ、こんなとこで話もなんだから、どこか近くの――」

 

「おい」

 

「!?ああっ、こじゃなくてスカウトさん!」

 

 俺を勧誘することに夢中になっていた小林さんは、背後から近づいてくる一人の高校球児に気付かなかった。

 

ので、小脳付近を華麗にぶん殴られた彼は綺麗に失神した。

 

「まったく、見ちゃいられないな。お前、こいつに騙されるとこだったんだぞ」

 

「・・・。ありがとう、パワフル高校の松倉くん」

 

「っと、俺の事知ってたのか。まあ今それはいい。とにかくこいつらと契約したら、死ぬまでしぼり取られるぞ。そういう仕組みになってるんだ。だから今のうちにふんじばって、・・・あっ!アイツがいない」

 

「逃げやがったな。流石というか草というか」

 

「・・・、まあいいや。一人の人間を助けることができたからな。あらためてよろしくな、俺はパワフル高校の松倉ってもんだ。お前は?」

 

「俺は極亜久高校のパワポケだ。よろしく」

 

「・・・なに?極亜久高校? チッ、だったらほっときゃよかったな」

 

「へ?」

 

すまない。(俺んとこのクズな先輩が)すまない。

 

「知らないとは言わせねえぜ。この間の試合、弁当に何か入れただろ。

―――あの弁当は、きいたぜ。じゃあな」

 

 松倉くんはそう吐き捨て、去っていった。でも俺は感動していた。

勝負しようぜ、松倉くん。今度はゲーム上じゃなくて本当の野球場でな。

 

 柄にもなく燃えている俺はチラリと小林さんが逃げたであろう方向を見る。そこにいる支部長を。

 

智美さんの仇、絶対に取るからな。そう心に誓う俺であった。

 

 

 

 

 

 

「――やれやれ、ひどいめにあったな」

 

 路地裏に潜む小林は一人静かに、だが徐々に強く息を吸った。

筋肉である横隔膜が内臓を押し下げ、肋間筋の一部が収縮し肋骨をひろげる。すると肺は大きく膨らむことができ、やがて吐息を大きく手助けした。

 

 膨らむからしぼみ、しぼむから膨らむ。それは表裏であり、大人である彼が得た哲学であった。

 

 例えばちょっとばかり才能があるだけで自惚れて、何億という金を積まれてふんぞり返る若造がいる。であるなら、自分のようにそれを憎む人間もいる。世の中とはそういうものなのだ。

 

 ――だから獲物は逃がさない。それが今の自分の仕事だから。そんな暗い使命感を、小林は心に宿しなおした。

 

「しかし、あの〇〇は・・・」

 

「54号」

 

「わぁ、ボス!!」

 

「極亜久高校には別の計画がある。手出しは無用だ。そう言った筈だが?」

 

「はっ、申し訳ありません。しかしながら96号には、」

 

「三度は言わん。言わせたいのか?それとも、聞きたいのか?」

 

「! 重ねて、申し訳ありません。ひらにご容赦を。全てのスポーツを我らにッ」

 

 そう、例えば恵まれている奴がいるとする。

環境が良かったとか、やりたいことをやっても許される時勢の中で生まれた等々。

 

 であるならば、それを妬む奴もいる。 

それが道理で、世の中とはそういうものなのだ。だから誰もが正義なのだ。

 

 ボスと呼ばれた男は世の全てを見下すように、あえてゆっくりと立ち去る。その顔貌はときに睥睨し、ときに眩しいものから目を背ける仕草のように、正義の夜の中に消えていった。

 

 

 

 

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