この空はあんたに続いてるか 作:アハハヒフミサンペロロスキー
「お、おはよう砂狼」
「シロコでいい。私もソウスケって呼ぶ」
「そうだったな。悪い」
「ところで何でまたアビドスに居るの?」
「いや今日シャーレの当番なんだけどさ…」
今日俺はシャーレの当番なのだが先生に頼まれた書類を七神に届けたところ間違いが多数あり修正になり持って帰って来たら居なかったわけだ。
「で、今日中らしいから届けに来たわけ。まあ書類仕事ばっかだったから気晴らしにもなるしいいけどさ」
「ソウスケは体動かす方が得意そう」
「うーん、めんどくさいこと考えるよりその方が得意かな」
「私もそうだから分かる。書類仕事より撃ち合いする方が性に合ってる」
「いや、できれば撃ち合いはしたくねぇ…」
物事を撃ち合いで解決しようとするのはキヴォトスの悪い癖だと思いますよ上坂さんは。
それにしてもやっぱ砂ばっかりだな…
「砂ばっかりだよね」
「あっ、いや、悪い」
「いいよ。普通そう思う」
「なあ、気悪くしないでほしいんだけどさ。なんで転校しないんだ?借金返済とかしんどいだろ?」
「…アビドスは私の居場所だから」
「そっか」
「納得するの?」
「いいじゃん、それ以外の理由なんて要らないだろ?大事な物のために頑張るってすげぇ事だと思うよ」
それを守るのに凄い額の借金を返そうなんて凄いと思う。
俺じゃ到底できそうにない。
「ソウスケって変だね」
「なんで?」
「普通無理って言うから」
「そりゃ否定するのは簡単だけどさ、人が大事な物のために頑張ってるのにそれを否定したりしねぇよ。人に迷惑かけたら怒るけど」
「…ありがとう」
お礼言われるような事何もしてないけど。
「私にはここしかないから」
「ここしかない?」
「私、気がついたらアビドスの校舎に居たんだ」
何も覚えてなくて体はボロボロで、寒くて辛い時に小鳥遊先輩と十六夜に拾われてそれ以来ずっとアビドスで学生やってるらしい。
こいつもそうなんだ。
「じゃあ俺と一緒か」
「一緒?」
「俺も2年前より前の記憶ないんだ。血まみれでぶっ倒れてたのを今の連邦生徒会長が拾ってくれて、それ以来あの人のパシリしながら細々生きて来たんだ」
その時自分の名前以外何もわからなくて、孤独で、この先どうなるのか不安だった時に会長に救われた。
それ以来ずっと恩返ししたくてずっと頑張って来たんだけど。
俺はあの人の力になれなかったのかな。
「だから俺たち記憶喪失仲間だな」
「あんまり嬉しくない」
「確かにな、俺はあんまり思い出したいって思わないし。今で手一杯だ」
「私も」
俺とシロコはそんな話をしながらアビドスの校舎に入って対策委員会の教室に入る。するといつものメンツと先生が居た。
「おはようシロコ。あれ?何でソウスケもいるの?」
「何でじゃねぇよ先生、七神に出した書類間違えすぎて怒ってたぞ」
「マジで!?うわぁ…わざわざ届けてくれたんだ?」
「七神が今日中に出して貰わないと困るから届けてくるかしら?って言ってたから届けに来たの」
「今のリンちゃんの真似?」
あははと笑う先生は書類を見た瞬間スリーズした。
うん、だってクソ複雑な内容が10枚あるしな。
「じゃ、あと頑張れよ」
「待ってソウスケぇ!こんなの私だけじゃ無理!シャーレ当番なんだから手伝って!」
「ええい離せ!自業自得だろうが俺は手伝わないぞ!」
「チャーシュー麺特盛炒飯セット奢るから!」
「…替え玉」
「頼んでもいい!もう何玉も頼んでいいから!」
しょうがねぇな…手伝ってやるか。
「ちょろいわね」
「苦学生に一食奢りはデカいんだよ」
ジト目で話す黒見に俺は毅然と返す。
昨日保健室で話してから顔色良さそうだしもう安心だな。
「あれ?ソウスケ君はトリニティの生徒ですよね?金欠なんですか?」
「勘違いされがちだけどトリニティのみんなが金持ちじゃ無いんだよ。割と俺みたいに普通の生徒も多いよ」
「うへ〜ソウスケ君は普通かなぁ?」
「どう言う意味だよ先輩」
「だってぇ、普通の学生が見ず知らずの女の子助けに行くかなぁ?普通じゃできないと思うよおじさんは」
「はぁ?普通人が拉致られたら助けに入るだろ?」
周りに他の人間がいるならそんなことしないけどその場に動ける人間が俺しか居ないなら行くしか無いだろ。
街中じゃ無いからヴァルキューレに通報も出来ないし。
「みんな、ソウスケはこういう子なのよ」
「やっぱりソウスケってちょっと変」
「私はかっこいいと思いますよ〜」
十六夜以外何でそんな反応なんですか!?
ここでも俺残念な子判定!?やっぱ俺そういう扱い!?
十六夜は優しいなぁ…
「君は変わらないね」
で、俺は書類をしながら話を聞くと今は借金を返すのに何かいい案はないかを話し合ってるらしい。
「そうだ⭐︎せっかくですしソウスケ君も参加してもらうのはどうでしょうか〜⭐︎」
「そうですね、他の学園の生徒さんの話も貴重ですし」
「えっ?俺も?」
俺こういうので意見出すのって苦手なんだけどな…
普段何も考えてないからかもしれないけど。
「ソウスケ、その書類見せて?」
「いいけどなにすんの?」
「どんなのか気になった」
そう言って書類の束をシロコに渡してしばらく俺は対策委員会の話を聞いた。
黒見は変なマルチ商法に騙されてる…
「そ、ソウスケだっていい話だって思ったでしょ!?」
「いや、流石にそれは俺も詐欺だって分かる」
「嘘よ!絶対みんなが言ったからそう言ってるだけでしょ!」
「お前俺をどこまで馬鹿だと思ってんだ!」
いくら何でもひどくないですかね!?
バカなのは自覚してるけどマルチ商法に騙されるほどバカじゃねぇよ!
「セリカ、ソウスケは手伝ってくれてるんだから馬鹿にしない」
「う、普段諭される側のシロコ先輩にまで言われた…」
「先生、教育者の立場から歳上にあの態度はどうなんだよ」
「ソウスケもハスミにあんな感じでしょ?」
流石に俺はあそこまで失礼じゃないやい。
よく怒られるけどそれはきっと羽川の気が短いからだ。
この前翼に埃ついてたから取って整えたら死ぬほど怒られた時は流石に落ち込んだけど。
「ん、ありがとうソウスケ」
シロコが書類を返したから再び続ける。
俺が書くのは記入者の名前か、上坂ソウスケっと。もう流れ作業でやっちまおうかな。どうせ先生が確認するだろ。
適当に埋めちまえ〜
「学校のスクールバスを拉致して〜みんなにアビドスに転校してもらうんだよ〜」
何が凄いこと言い出してるんだけど!?
「良いのかよそれ!?」
「良いの良いの。様は人が増えれば良いんだし〜」
「良いわけないじゃないですか!真面目に考えてくださいよ!」
「先生!?教育者なんだから何とか言えよ!?」
「ソウスケ、こういう会議において意見を否定するのはナンセンスよ?とりあえずいっぱい案を出すのが大事なの」
物には限度ってものがあると思うよ俺は!?
ダメだいちいちツッコミ入れてたら書類進まねぇわ。
もう突っ込まないぞ俺は。うん。
さてここに名前書けば良いんだな?なになに転入先アビドス高等学校、はいはい上坂ソウス
「あぶねぇ!騙されるとこだった!!」
「ん、バレたか」
「ちぇ〜惜しかったね〜」
「あともう少しでしたね〜⭐︎」
「見境無しなんですかお前らは!?」
「男子は珍しいから良い宣伝になる」
「珍獣か俺は!?」
「なるほど考えたわね」
「先生!?教え子が詐欺に手を染めようとしてるよ!?詐欺の被害を受けようとしてるんだよ!?」
この人全然仕事しねぇじゃん!ちゃんと教育者らしいことしろ!
その後もスクールアイドルとか銀行強盗とか碌な案が出なかった。
こいつら…スクールアイドルはともかく真面目に借金返済する気あるのか?頭痛くなってきた。
「なるほどなるほど…私的にはスクールアイドルとか良さげだけど…ソウスケはなんか無いの?」
「えぇ俺…なんかもう疲れたんだけど」
「ソウスケさん…私信じてますからね」
ゴゴゴゴゴという音が聞こえてきそうな奥空の圧を感じる!
これ俺が何言ってもダメなやつじゃ無いの?嫌だよ俺が爆弾の起爆ボタン押すの!?できる限り無難な案、無難な案…
「デッカい観光名所を作るとか!」
「たとえば?」
「えっと…砂のブロック積み上げて連邦生徒会ビルくらい大きいの作る?」
「砂の城?」
「子どもの遊びじゃないんだから…」
だってそれくらいしか思いつかなかったんだよ!?
やめろそんな目で俺を見るな!
「ごめん、奥空」
「いいんです…頑張って考えてくれたんですよね…」
あああああ!奥空の目が死んでいってる!着実に!
◇◇◇
「いっただきまーす!」
結局あの後、先生の選択にアヤネがちゃぶ台返しを行い一旦休憩ということで一行は昼食を食べにやってきた。
柴関ラーメンのチャーシュー麺特盛炒飯セットをがっつくソウスケは満面の笑みだ。
「うへぇ〜よく食べるねぇ。おじさんは歳だからそんなに食べられないよ〜」
「ホシノ、それ私にダメージ入るからやめて」
「んぐんぐ。うめぇ〜犯罪的だぁ〜」
「はっはっはっ!うまそうに食ってくれるなぁ少年!ラーメン屋冥利に尽きるよ」
あっという間に炒飯を完食しラーメンも食べ替え玉を注文していた。
「あのぉ…すみません…ここのメニューで一番安いのっておいくらですか…」
オロオロとしている少女が来店しセリカが金額を伝えると四人組の女生徒が入ってきた。全員ゲヘナの生徒の様だ。
ゲヘナの生徒四人は柴関ラーメンを1杯注文し席に着く。
通常の料金で大盛りにしてくれた大将の粋な計らいで四人はラーメンを食べ始め、美味さに舌鼓を打ち、その様子を見たノノミ達と雑談が始まる。
ちなみにソウスケは一人で四人と同じ量のラーメンを完食していた。
「珍しいなゲヘナの生徒がこんな所にいるなんて」
「あっ!もしかして君がトリニティの男子!?初めて見たー」
銀髪の少女ムツキがソウスケを見て目を輝かせる。
「え?俺って有名なのか?」
「うん!救護騎士団の子でしょ?」
うん?とソウスケは頭の中でハテナが浮かぶ。
「どう言うこと?」
「えっ?救護騎士団所属なんだよね?」
「違うけど…」
「違うよムツキ。救護騎士団所属じゃなくて、いつも救護騎士団に搬送されてる人だよ」
「怪我して有名な人なのかよ!」
「不名誉なあだ名ねそれ…」
これにはアビドス一同と先生すら苦笑いである。
他にも鷲見セリナを怒らせる男、団長ホイホイなど色んな呼び名があることをツノの生えた銀髪の少女カヨコは言わなかった。
「そういえばあなたトリニティの生徒なのに私たちのこと毛嫌いしないのね」
「俺は別に気にしねぇよ。どの学校に通ってたって良い奴はいい奴だし悪い奴は悪い奴だし」
「うわぁトリニティっぽくないね。うちの男子とは大違い」
「ウチの男子ってことはあれか…」
陸八魔アルは青い顔をし、カヨコは複雑そうな顔をしながら言う。
「ゲヘナ三年の…」
◇◇◇
ゲヘナの自治区。
凄まじい不良生徒達が山の様に積み重なって打ち捨てられており、その一番上にタバコを吸いながら腰掛ける白い髪の少年がいた。
「ふぅー、たくゲヘナってのはアホばっかりか?まあ俺もその一人に入ってるわけだが」
ぼやく少年の元へ連絡が入ってきた。
通信に出て見ると赤い髪が特徴的な少女棗イロハが呆れながら話始める。
「サダオ先輩今どこですか」
「今アホどもが暴れてた現場だ」
「風紀委員会の仕事を何で先輩がしてるんですか?」
「議長から言われただろ風紀委員の嫌がらせしろって」
「いや、仕事手伝っちゃってるじゃないですか」
はぁ、とため息をつくイロハに対し分かってないなとサダオは言う。
「風紀委員会の仕事を代わりに万魔殿がやったらどうなる?もう風紀委員会要らないんじゃね?万魔殿ばんざーいってなるんだよ」
「本気で思ってます?」
「知らん、ていうかお前もサボってねぇで仕事しろ」
「してますよ」
真顔で言う彼女の近くには書類らしきものは無いためおそらく嘘だろう。自分よりよっぽど仕事してねぇだろとサダオは心の中で悪態をつくが、吸い殻を捨てて山から降りる。
「暇なら議長がバカなこと言い出さないか見張ってろ」
「それサダオ先輩の役目でしょ、私が言ってマコト先輩が止まるわけないじゃないですか」
「俺が言っても止まらねぇよ」
彼が言って止まる女なら彼もイロハもここまで苦労しないだろう。
「言い出すって言うかやらかしたんで帰ってきてください」
「今度は何しやがったんだ?」
「イブキのプリンをまた間違って食べたんですよ」
「…まだ仕事残ってるから、悪りぃな」
「はぁ!?先輩逃げる気で」
無理やり通信を切るとまた歩き始めた。
「ぐっ…やりやがっ…たな…漆馬サダオ!」
目を覚ました不良の顔面に散弾の弾が直撃する。
見向きもせずに撃ち抜くその姿は歴戦の風格を思わせた。
「はぁ…適当に時間潰して直帰するかな…」
その後、万魔殿議長の羽沼マコトから凄まじい勢いの着信が入ったためプリンを買って帰ることになった。
少年の名前は漆馬サダオ。
風紀委員長の空崎ヒナと並び称され、ゲヘナの掃除屋の異名を持ち。
大のトリニティ嫌いと言われる少年である。
カヨゴォぉぉぉぉ!!