この空はあんたに続いてるか 作:アハハヒフミサンペロロスキー
ソウスケたちが現場に急行すると傭兵達を指揮しているのはラーメン屋にいたゲヘナの生徒達だった。
おそらく主犯であろうライフルを持った少女、陸八魔アルは何やら複雑な表情をしている。
「あんた達!せっかくラーメン特盛にしてあげたのに!」
「それはそれ、これはこれだよー」
せっかくラーメンを特盛にしてもらったのに恩を仇で返すようなことをしているからかセリカは当然のように憤慨するが、仕事は仕事とムツキは言う。
「学生ならもっと健全なアルバイトがあるでしょう!便利屋だなんて!」
さっきまで銀行強盗とか誘拐とか提案してたのお前らは健全って言って良いのだろうか?とソウスケはノノミの発言に疑問を持ったが何も言わなかった。
そう思っているうちにアルの薄い会社紹介が終わっていた。
「一応聞くけど引く気はないのよね?」
「仕事は仕事だから。ごめんね先生」
先生が聞いてみるものの表情崩さずカヨコは言う。
「敵なら容赦しない」
「シロコ待って!」
シロコが発砲しながら走り出すとそこにはクレイモアが隠されており、それが爆発して連鎖的に爆発が起こる。
この周辺にはすでにいくつもの爆発物が仕掛けられているようだ。
先生の指揮のもと対策委員会の面々は戦闘を継続するも便利屋達も絶妙なコンビネーションでジリジリと追い詰めてくる。
「頭取っちまえば!」
「させないよ」
爆風の中ソウスケが盾を構えて走り込むがカヨコが立ち塞がった。
ハンドガンでの射撃を盾で受けながら肉薄し、盾を振りかぶるがカヨコは必要最低限の動きでそれを避け逆にソウスケの銃を蹴り飛ばした。
「マジかよ!こんのぉ!」
「元気だね。でも当たらないよ」
インファイトに持ち込み拳を振るがカヨコには当たらずカウンターで蹴りをもらい銃撃をくらってしまう。
「シロコ!ソウスケのカバー!ホシノは前進しながら前線を上げて!ノノミは制圧射撃!セリカ、相手のスナイパーからノノミを守って!」
「くふふ〜させないよ〜」
ノノミの制圧射撃に対しムツキもそれに応戦、土煙が立ち込める。
「前が見えません!」
「ご、ごめんなさい!これもお仕事なので!」
土煙の中からハルカがいつの間にか接近していた。
狙いは制圧射撃を行っているノノミ、すでにショットガンの射程に入られていた。
「十六夜!」
ノノミに対しショットガンが放たれると言ったところで間一髪ハルカにソウスケの盾が直撃する。
この土煙の中先生の指示でホシノとソウスケのポジションを入れ替えておいたためギリギリ駆けつけることができた様だ。
「あっぶねぇ、大丈夫か!?」
「大丈夫です!ありがとうございますソウスケ君」
お互い一歩も引かない攻防が続く。
先生の指示があっても中々陣形が崩れない便利屋達、だが時間が経つにつれてどちらにも疲労の色が見えてくる。
そんな時だった。
突然便利屋が雇った日雇い傭兵たちがバタバタと撃ち抜かれていく。
お互いが何が起きているのか把握する前に屋根から誰かが降りてきた。
黒と赤を基調とした万魔殿の制服を着た白髪の少年だった。
「他校の自治区で何してやがる」
「うううう、漆馬サダオ!?」
突如現れたサダオに狼狽する便利屋一行と状況を飲み込めない対策委員会達を置いて日雇いの傭兵たちは彼を見た瞬間慌て始める。
「ゲヘナの掃除屋いるとか聞いてないよ!」
「あんなの無理無理!私抜けた!」
「ちょっと!まだ定時にすらなってないわよ!」
アルの言葉も虚しく日雇いの傭兵たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ触っていく。その場には対策委員会たちと便利屋、ゲヘナの掃除屋と呼ばれタバコを吸う彼のみが残された。
「ひっさしぶりじゃんサダオくーん」
「ホルスか、2年ぶりだな」
「ホシノ先輩、知り合いなの?」
「若い頃熱く殴り合った仲なんだよね〜」
そう言うホシノの目だけは笑っていなかった、同じくサダオも面倒そうな顔を隠そうともせずにタバコを吹かす。
「……あんたがシャーレの先生か、こんなところまでご苦労なこった」
「初めまして、私はヒメノ。あなたは万魔殿の漆場サダオくん?」
「…改めて、万魔殿副議長、漆場サダオだ」
副議長という肩書を聞いてホシノと便利屋68の面々以外は少し動揺する。
「そんな奴が何の用よ…」
「セリカちゃん」
いつも柔らかい雰囲気を崩さないノノミが真剣な表情で、いつ何が起きても動ける様に緊張を崩さない。
「で?次はお前らなわけだが?」
「うっ!?」
鋭い眼光がアルを射抜き、サダオが拳銃を向けるとハルカとムツキが臨戦態勢に入るが、その時カヨコが前に出て行く。彼女を見たサダオの表情はどんどん険しく、まるで射抜く様な視線をカヨコにぶつけた。
「久しぶり」
「まだ生きてたのか、忌々しい女だ」
「なんでモモトーク返さないの」
「返すわけねぇだろうが」
「カヨコちゃん、掃除屋くんと知り合いなのー?」
ムツキが面白そうにカヨコの隣にやってくるが、カヨコはとサダオは睨み合ったままだ。
「このままてめぇらはゲヘナに連行する。風紀委員が追いかけてる馬鹿野郎どもを連れていけば、万魔殿の評価も上がるってもんだ」
「そんな事に興味無いくせに」
「黙れ」
ショットガンを彼女に向けて睨みつける。明らかに2人の間には何かあったと誰の目から見ても明らかだろう。
「待ってサダオ、彼女たちには聞きたいことがあるの」
「悪いが後でゲヘナ風紀委員に問い合わせてもらおうか」
「社長、逃げるよ。ムツキっ」
「ま、待ちなさいカヨコーー」
ムツキの爆弾が炸裂し土煙がその場を覆う。
「これで終わったと思わないことねー!」
アルと情けない捨て台詞が遠くから聞こえ、便利屋たちは撤退して行く。
「ちっ、めんどくせぇ」
サダオがソウスケをギロリと一瞥する。
「トリカスがこんなところで何してやがる」
「トリカス?」
「トリニティの蔑称だよ。俺は上坂ソウスケ、初めましてか?」
「てめぇか、トリカスの2年ってのは。別の学校の揉め事にまで首突っ込みやがって、鬱陶しい」
「サダオ、ソウスケは今回トリニティとしてじゃなくてシャーレの当番として来てくれたの。責めるなら私を責めて」
ヒメノがソウスケの前に出ると、サダオはふんっ、と鼻を鳴らしてホシノに一枚の紙を手渡す。
「ほぼ指名手配とはいえうちの生徒に代わり無い、ここに被害と金額を書いて万魔殿に送れ。賠償してやる」
「お〜さっすがサダオ君、優しいねぇ〜」
「本当によろしいんですか?」
「構わん」
それだけ言うとサダオは歩いて行く。
その姿を見てヒメノは素直じゃ無いだけで優しい子なのだと彼を認識する。
「なぁホシノ先輩、漆場とあのカヨコって奴なんか色々ありそうだったけど、なんか知ってるのか?
「うへぇ〜人のプライベートをとやかく言うのはあれなんだけどねぇ…あの2人元恋人なんだってさ〜」
「「「「元恋人!?」」」」
ホシノ以外の全員の声がハモった。
あの掃除屋と便利屋68の課長が何があったら恋人になって別れるのだろうか。
「風の噂だけどねぇ、あのカヨコって子はサダオ君の先輩だったらしくて、付き合ったんだってさ〜若いって良いよねぇ」
「元恋人で今は敵同士ですか〜ロマンチックですね⭐︎」
「嫌なんだけどそんなの…」
何やら向こうは向こうで大変なのだなと漆場に同情するソウスケなのだった。
◇◇◇
何とか逃げおおせた便利屋たち、そうすれば当然カヨコとサダオの関係を聞かれてしまうわけで、カヨコは今他三人からの視線を一点に受けていた。
「さてカヨコ課長、話してもらおうかしら」
「言わなきゃダメ…?」
「くふふ、流石にあの雰囲気はねぇー?」
「す、すいませんすいません!!」
「仕事に差し支える様なことは事前に言いなさいっ、さぁ包み隠さず全部よ!」
ビシッという音が聞こえてくるかの様な指さしと視線を受け、カヨコは顔を赤くしながらぽつりぽつりと話した。
「……後輩で…彼氏」
全員固まった。
「なななななななんですってぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」
陸八魔アル、人生で1、2を争う声が出たらしい。