銃を持たない人は裸で歩いてる人より少ない世界   作:こまつな

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前話感想にて砂漠で露出はマズイとのご意見を頂きました。
作者のにわか露出知識が露見してしまい汗顔の至りです。

なお、アビドス勢は全然日焼けをしていないのでキヴォトス民なら平気なのだろうという独自解釈としてそのまま進めさせて頂きます。
ご指摘ありがとう御座いました。




砂漠で全裸になる話
011 砂狼シロコ


 砂狼シロコの趣味は二つある。

 

 ひとつはサイクリング。

 単純に通学にもロードバイクを使用しているし、暇が出来たときにはあちこち走り回るのも珍しくない。

 みんなでまとまって動く対策委員会としての仕事のときには、乗ることはあまりないのだけれど。

 

 もうひとつは銀行強盗襲撃計画。

 別に実際に行動に移すわけではない。

 学校にテロリストが襲撃してくるのを想定して防衛計画を練ったり、悪徳銀行の警備情報を入手して綿密な計画を立てたりしてみるのも、彼女くらいの年頃であれば一度や二度くらいはきっとあることだろう。

 

 そして彼女の通う学園では、騒乱の多いキヴォトスとしても珍しく、テロが現実的な問題として頻発していた。

 

 テロリストの名前はカタカタヘルメット団。

 キヴォトス各地に生息している不良集団、ヘルメット団の分派のひとつ。

 

 生徒達が引き起こす内乱や不良生徒が暴れて被害が出るのは、この世界ではそれほど珍しいことではない。

 別の学園に視線を移せば、温泉を掘るためにそこら中を発破する生徒だって、美食のために気に入らない飲食店を爆破する生徒だっている。

 

 しかし、小競り合いならともかく、学園自治区に外部勢力が攻撃を加えるというのは稀なことだ。

 

 学園都市キヴォトスは数千からなる学園、そして学園間の調停を行う連邦生徒会から成っている。

 言うならば学園とはこの世界における国家の単位なのだ。

 そう考えれば、どれほどの異常なのかは分かりやすいだろう。

 

 

 その日もシロコは愛用の自転車に乗って、閑散とした市街地を駆け抜けていた。

 

 彼女の通う学園は、地域の砂漠化により過疎化が進んだ地域にある。

 周囲の状況はお世辞にも良いとは言いがたい。

 

 中心であるはずの学園周辺は空き家だらけ、まともな店舗も展開しておらず、むしろ郊外――他の学園自治区との境界に近い地域のが栄えているほどだ。

 

 けれど、ここが彼女の故郷と呼ぶべき土地で、大切な場所であることに変わりはない。

 

 全校生徒は僅かに五人。

 誰もが顔見知りで、友人で、アビドス廃校対策委員会として共に活動する仲間達。

 

 ――だから、見慣れない誰かがそこに居れば、それは部外者だということになる。

 

 曲がり角の向こうに見えたヘイローに、思わずブレーキをかけた。

 

 視界の端だから顔は見えなかった。髪の色は白っぽい感じだった気がする。

 少し考えた後、モモトークでみんなに知らない人を見かけたから調べてくると連絡を送り、追い駆けるように再び車輪を転がした。

 

 そして、閑散とした住宅地の只中に、絵画のような光景を見た。

 

 人気のない、かつて人の暮らした残滓すら砂に埋もれた街路の先。

 切り取られたように一条の光が差し降ろす中に、頭上にヘイローを浮かべた長い白髪の少女の背中。

 

 息を呑む。

 

 無意識のうちに、シロコはいつも持ち歩いている鞄の中から撮影用のドローンを取り出し、電源を入れていた。

 プロペラが空気を攪拌する音は彼女が思っていた以上に大きく響き、視線の先の少女がこちらに振り向く。

 

 目元を隠す白磁の糸を跨いで、互いの視線が交わった。

 

 そして。

 

 ――シロコは容赦なくミサイルをぶっ放した。

 

「わああぁっ!?」

 

 ドローンから無数の誘導弾が射出され、謎の少女からは妙に明るい悲鳴が上がる。

 

「ん」

 

 逃走経路を塞ぐように、目の前の変質者に向けて追撃のアサルトライフルを掃射。

 足を止めてしまった少女にミサイルが殺到し、美術の授業で見たような、美術品の絵画の中にしか見ないような、()()()()()姿()()()()が砂煙の奥に消える。

 

 直後、砂埃は断ち切られ、射線を切るように塀を乗り越え屋根へと駆け上がる白い髪が流星のように軌跡を描く。

 

「ごっめーん!驚かせるつもりじゃなかったの!」

 

 屋根の上で一度立ち止まり両手を合わせて謝罪を述べる姿は、どこからどう見ても全裸だった。

 

 直撃したにも関わらずほとんどダメージがない。

 というか惜しげもなく晒し出された白い肌に傷ひとつ見られない。

 

「……誰?」

 

 シロコは自分の戦力を結構強いものだと認識している。

 そんじょそこらのチンピラに負けるはずもなく、数多の賞金首だって打ち倒してきた。

 

 とはいえ物量という限界も知っているし、身近な先輩みたいに上には上がいることだって分かっている。

 

 だがしかし、なんかよく分からない野生の変質者に軽くあしらわれるのは、なんかこう、もやっとする。

 

「知らない方がいいよ! 全裸徘徊する変態とお友達なんて褒められたものじゃないからね!」

 

 じゃあねーと屋根伝いに遠ざかっていく背中に、もうワンマガジン分、掃射する。

 ぷりっとしたお尻に銃弾が弾かれるのは腹が立つほど不条理だと、改めて心に刻むことになった。

 

 

 銃の引き金は罵詈雑言並に軽く、その程度なら痛いで済む世界。

 銃を持たない人は裸で歩いてる人より珍しい。

 そう言われる程に治安が終わってるのがキヴォトスである。

 

 アビドス廃校対策委員会二年生、砂狼シロコはその日。

 

 ――銃を持たない人よりは珍しくない人を見かけたのだった。

 

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