銃を持たない人は裸で歩いてる人より少ない世界   作:こまつな

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026 陸八魔アル

 陸八魔アル率いる便利屋68のメンバーはアビドス学園自治区の外縁、正確にはカイザーコーポレーションの私有地を訪れていた。

 

 理由はもちろん、依頼された仕事をこなすため。

 

 彼女達は社名の示す通りどんな仕事でもこなす便利屋だ。

 今回受けた依頼の内容は――私有地に出没する不審者の撃退。

 

 金額に上限はあるものの使用した弾薬は経費で支給。

 取り壊し予定の廃墟地帯なので建造物の破壊も指定区域の中であれば許容する。

 更に監視カメラから割り出された不審者の出没予測まで資料として添えられていた。

 

 アルは感動していた。

 まともだ。ものっすごくまともな仕事だと。

 その上、裏通りに潜む悪を更なる悪が打倒するというストーリーは、彼女の愛するアウトローの生き方としてもベストマッチだった。

 成功報酬も悪くなかったので意気揚々と契約書にサインをした。

 

 なお課長の鬼方カヨコ、室長の浅黄ムツキの両名はとっくに気付いていた。

 企業が私兵を動員しても倒せなかった上に周辺被害を容認するレベルのヤベー奴が相手だと。

 それでも自分達が負けるとは考えなかったし、最悪負けたとしても離脱できるだけの自負はあった。

 

 平社員、伊草ハルカはアルをヨイショしていた。

 

 

 初日はまだ良かった。

 依頼主から受け取った監視カメラの映像に映っていたのは不審者というか変質者。

 みんな顔を赤くしながら確認していたし、いきなり遭遇するには心の準備も出来ていなかったので。

 

 三日目にはダレてきた。

 というか日中に探索しても見つからないのでは、と意見が割れた。些細なことだ。

 もういっそ全部更地にしようかしらと呟いたらビルが吹っ飛んだ。些細なことだ。

 

 ――そして一週間が経過した。

 砂に足と体力を奪われながら廃墟を駆け回る日々が続く。

 

 

 気分転換のためにご飯でも食べようと言い出したのは誰だったのか。

 

 過疎地のアビドス外縁では数少ない飲食店に便利屋一同は訪れていた。

 

「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンへようこそ! 四名様ですね、席にご案内します!」

 

 アルバイトらしい活発なネコミミの生徒に案内され、促されるままにオススメの柴関ラーメンを人数分注文する。

 

「で、どうするの?」

 

 ラーメンが茹で上がるまでの微妙な時間に、カヨコが問題を提起した。

 

 依頼に期限について明記されていなかったことが判明したのは今朝のことだ。

 それに関しては彼女もアルを責めようとは思わない。

 

 実際問題、依頼人は解決に向けて協力的であり、彼女達が依頼を受けてからも出没している不審者の情報は逐一渡されている。

 ただ、カイザーの私有地は学園自治区に匹敵する程に広く、件の連中だって開放的な野外活動を毎日行っているわけではない。

 遭遇できていないのは単純に運が悪かったという範囲の話でしかないのだ。

 

 とはいえ、既に私有地で破壊活動を行ってしまった以上は依頼を完遂して依頼人の言う許容範囲に納めなければならなくなったのもまた事実。

 ハルカはいつも通りごめんなさいしていたが、それもいつものことと言えばいつものこと。

 

 責任を取るのが上司の仕事だとアルが格好付けたまではいいものの、それで探し人が見つかるわけでもない。

 

「お待たせしました! 柴関ラーメンよっつ、お持ちしました! 熱いのでお気をつけください!」

 

 元気よくラーメンを運んできた生徒に視線を向けたムツキは何かを思いついたのか、にこやかに彼女に声をかけ始めた。

 

「ねえバイトちゃん、貴女って地元の生徒だよね? この辺で不審者の噂とかって何か知らない?」

「……え、あいつまた何かやらかしたの?」

 

 バイトの少女が思わず零した言葉に便利屋の面々に笑みが走る。

 詰め寄られたネコミミが若干引いているが、そこで引っ込むようではゲヘナで生きていられない。

 

「私たちは便利屋68。仕事で不審者の撃退を依頼されたの。何か知ってることがあれば教えてくれるかしら?」

 

 よく通る社長の声が店内に響く。

 

 隣の席でスープを飲み干した白髪の生徒が端末を弄るのを見咎める者は、残念ながらこの場には居なかった。

 

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