028 才羽モモイ
才羽モモイは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐のセミナーの会計を除かなければならぬと決意した。
モモイには政治がわからぬ。
モモイは、ゲーム開発部の部員である。
ゲームを嗜み、ゲームを作って暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明モモイは部室を出発し、野を越え山越え、大分はなれた此の廃墟にやって来た。
そしたら全裸の先客が居た。
「大歓迎されてるねー!」
「イッチひとりで突っ込ませるだけでだいぶ楽になるな」
「突破力はありますが射程が短いので打ち漏らしも目立ちますわね。そちらの処理はわたくしたちの役目かと」
「ツヨイ……シュゴイ……」
オートマタを蹴散らしている全裸一行を瓦礫の影から顔を真っ赤にして覗き見ているゲーム開発部一同はどうしてこうなったと頭を抱えていた。
G.Bible。
手にしたものは至高のゲームを創り上げられるとされる、ゲーム開発者が求めてやまない聖書。
それを探しにいこうと提案したのは双子の片割れ、モモイだった。
妹の反対を押し切り、強引に同行させ、オートマタに追われながらも、彼女達は廃墟で眠っていた人工少女、アリスを発見した。
実績不足、部員不足という極めて真っ当な理由で廃部を言い渡されていたゲーム開発部はアリスを部員として加入させ、どうにか後者の問題を解決。
次いで実績不足も解消する為に、探索メンバーを増やして廃墟への第二次遠征へと出向いた矢先。
こんな場所で変質者と遭遇するなんて誰一人として予想すらしてなかったのだ。
「……………………??????」
あまりの異常事態に目を点に、顔を真っ赤にしたまま思考を停止させる部長。
「ど、どうしようお姉ちゃん……本当にどうしよう……!?」
予想外過ぎる自体に目をぐるぐるさせて姉に縋りつく妹。
「どうしようって言われても……裸の人がいるなんて聞いてないよ……っ!!」
あんなん誰が予想できるかと真っ当過ぎる文句しか出てこない姉。
「……? モモイ、あの人たちは服を着ていますよ?」
「どこが!? 誰がどう見ても裸だよね!?」
最後にモモイには見えていない何かを視認しているロボ娘。
「!!! アリスは分かりました! モモイはバカです! だからあれはバカには見えない服です! 意志力が大幅にアップする装備品です!」
「誰がバカじゃい!? いや確かに意志が強くないとあんな格好できないけどさぁ!」
隠れているだけならいざ知らず、小気味よく騒いでいれば当然注目を集めることになる。
ミレニアム郊外の廃墟は立ち入り禁止にも指定されている危険地帯。
オートマタが、ドローンが、そして何故か居る全裸の変質者たちの視線が、彼女達を隠している瓦礫に向けられた。
「お嬢! 誰か居る! 巻き込んだら流石に寝覚め悪いんだが!?」
「ピッ! ミラレタ……ミラレタァ……」
「一旦引きますわよ! イッチは突っ込んで撹乱を! 合流地点は覚えてますわね?」
「だいじょーぶ! ほいさー!」
銃声ひとつ響かせずに走り抜けるだけでオートマタが崩れ落ちていく。
どう考えても異様な光景だが、肌色重視の視覚情報はそれを遥かに凌駕する。
「そこの貴女達! 入り口まで引きますわ! 手伝っていただけると助かります!」
服装以外は割と真っ当なことを言っている翼の生えた全裸と羽根の生えた全裸。
やたら強い白髪の全裸に、震えながらも端末でドローンを動かしているらしい全裸。
なんだこれは、全裸のバーゲンセールだな。
そんな言葉が頭に浮かぶほどの全裸率である。
無駄に有能な全裸たちに引率されながら廃墟から脱出する。
先行する全裸。左右を固める全裸と全裸。殿に着く全裸。
前後左右どちらに視線を向けても肌色が脳に叩きつけられる。
半ば呆然としながらも背後から響き続ける銃声と破壊音が身体を動かし続け、気が付いたときにはオートマタたちの警戒範囲を抜けていた。
全裸たちが各々ドローンから服を取り出して羽織っているのを視界に納めながら、やはりモモイはこう思うのだ。
どうしてこうなったと。