「「女の子が全裸で熟睡していた場所を探してる……!?」」
双子らしく声をぴたりと合わせて驚きの声を上げるモモイとミドリ。
ただでさえ情報過多な状況だというのに、全裸たちが廃墟を訪れた理由というのが更に混沌を加速させるものだったからだ。
常識的に考えれば何言ってんだこいつらという感想しか出てこないようなあまりにもアホな目標。
だがしかし、心当たりがないわけではない。
むしろ逆だ。二人には心当たりしかない。
彼女が目を覚ます前に予備の制服を着せたのだ。
おそらく自身が裸だったことも覚えていないだろう。
「ねえお姉ちゃん、あそこってどこにあったのか覚えてる……?」
「え、ミドリが覚えてるんじゃないの? 逃げるのに必死だったから全然……」
最初の探索は散々だった。
圧倒的な物量に押されるようにオートマタに追い回され、追って来なくなったかと気を抜いた矢先。
背後を確認しながら逃げていたのが悪かったのか、
その先にあった光の差し込む空間で休眠状態にあったのが、一人の少女――を模した機械。
AL-1Sという識別名の記された、ヘイローを持つ正体不明のロボット。
それが彼女達がアリスと呼んでいる少女なのだ。
「ねーアリス、アリスが寝てた場所って案内できたりする?」
「はい、アリスにお任せください! マッピングは勇者の嗜みです!」
「お姉ちゃん!?」
何も考えずに能天気に返事を返し、あろうことかアリスが噂の少女であることさえぶちまける姉の口を押さえようとしたところでもう遅い。
「動かないで!」
咄嗟に全裸たちに銃を向けてしまったけれど、どれだけ意味があるのかは分からない。
彼女達の強さはさっき散々見せ付けられた。
それでも、警戒を解くわけにはいかなった。
「どうして貴女達が知ってるの!? あの場所には私とお姉ちゃんしか居なかったのに!」
だっておかしいのだ。
アリスが裸で眠っていたことなんて、自分達
会ったことも話したこともない見ず知らずの変質者が知ってるだなんて、そんなのは絶対にありえない。
件の変質者集団は銃口を向けられたことをさほど気にしている様子もなく、むしろ困惑を浮かべたまま互いに顔を見合わせている。
「どうしてと言われましても……」
「イッチだしで流してたから別に聞いてないしなぁ」
そして、呆れ顔の視線を集めている全裸(他の三人は服を着た)はドヤ顔で宣言する。
「スレで見たよ!」
ミドリの眼前に端末の画面を突きつけられる。
ソコに映し出されているのは匿名掲示板のスレッドのひとつ。
【ミレニアム】裸の女の子拾ったんだけど!!?【廃墟】
信憑性も皆無。内容を信じているスレ民もほとんど居ない。
本来であればよくあるネタスレのひとつとして見向きもされるはずがない。
のだけど、ものすごく見覚えのある画像が>1に貼られていた。
神々しい感じに光の差し込む、椅子の据えられた廃墟の一室。
完っ全にあの場所だった。どう見てもアリスを発見したあの部屋だった。
「お・ね・え・ちゃ・ん!!?」
「しまってるしまってるミドリ待ってしまってるから!?」
同じ体格の姉をぐいんぐいん振り回すことになっても誰も責められはしないだろう。
というか何時だ、いつ立てたこんなスレ。
ヴェリタスに生徒情報の偽造を頼んでる合間にでも立てたのか!?
「でも結果的に助かってるよね!? どう考えても私たちだけじゃ戦力足りないよ!? この人たちにも協力頼んだ方がいいって!!」
「アリスも賛成です! きっと彼女達はニンジャです! ニンジャは脱ぐと強くなりますから!」
「ああぁぁぁぁツッコミ役が足りないっ!!」
部長の花岡ユズはいつもの人見知りを発症して一言も喋らない。喋れない。
陰の気を察したのか全裸のひとりが仲間になりたそうに視線を向けているが、押された分だけ引いている。
相手が変質者な分、普段以上にダメージが大きそうだ。
むしろ逃げ出していないことを褒めるべきだろう。
こんなことなら部室に篭ってちゃんとゲーム製作に着手していればよかったのではと考えてしまう
だけど波に乗り始めた姉が突き進むのを止められないのは経験則で分かってしまっている。
「案内するから私達の探し物も手伝ってよ! G.Bibleって言うんだけどさ……」
「へー、ゲームを作るのに役立つ道具……いいね! ゲーム作りにも安全な場所が必要なはず! きっとわたしたちの目的地は同じはずだよ!」
「「いえーい!」」
ゲーム開発部の光属性と全裸の陽キャがすごい勢いで共鳴する。
「ぱんぱかぱーん! ニンジャの皆さんが仲間になりました!」
そして楽しげなアリスの声を最後に、ミドリは深く考えるのをやめた。
これ終わった後にゲーム作るんだよなぁと、死んだ目で廃墟を見つめる他ないのであった。