銃を持たない人は裸で歩いてる人より少ない世界   作:こまつな

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068 明星ヒマリ

「うわ~んモモイ! 助けてくださいモモイ! 光属性吸収ですか!? 無効化ですか!? 光の剣が全然効いてません!」

「うへ~、大丈夫、結構効いてる、効いてるよ~? あと100発くらい当たったら気絶しちゃうかもね~?」

「あぁ! ミドリがやられた! このひとでなし!」

 

 超音速で飛来する光の帯をライオットシールドで上空に弾き飛ばしながら、ピンクの悪魔が疾走する。

 

 場所は砂漠の一角。

 状況は死屍累々。

 

 縦横無尽に暴れまわるアビドス廃校対策委員会と、もはや風前の灯であるゲーム開発部御一行。

 

 私有地での騒動に慌てて駆けつけたカイザーPMCの傭兵部隊は、しかしそれを黙って見ていることしかできない。

 

 軍用のパワードスーツは単独ではなく複数での運用を前提としている。

 つまりは相互連携のためのシステムが搭載されており、それによって高度な連携を可能としているのだ。

 しかしながら、外部との通信を行う機能が存在するのならば、それは超天才美少女ハッカーにとってセキュリティホールに他ならない。

 

 全知を冠するミレニアムサイエンススクールの最高位。

 ドローン越しでさえキヴォトス最高の電子戦能力を誇るハッカーに掌握されたパワードスーツは傭兵たちを閉じ込める檻と化し、逆に情報まで提供してしまっている。

 

 軍用ということもあり当然ながら強固なセキュリティも構築しているだろう。

 だが、行動ログの調査も含め、入念に事前準備をしてきた超天才病弱美少女の前には無力という他ない。

 

 本来は生徒たちが協力してPMCに立ち向かうという図が出来たのかもしれない。

 だが電子制御の鎧を身に纏った兵隊たちは秒で無力化され、残っているのは現地民と侵入者(仮)。

 

『やはりこの基地の地下で発掘作業をしているようですね。発掘自体はまだ完了していないようですが、行動ログを見る限り対象は大型の建造物……エイミ、トキを連れて現場を確認して来てください』

「了解。トキ、行くよ」

「かしこまりました」

 

 指示を受けて痴女とメイドが疾走を開始する。

 

 休憩中だったのか生身で迎撃の為に飛び出してきた者も居ないことはないのだが、その程度の相手にやられるほどアビドスの大地で生きてきた少女たちは柔ではない。

 

「ん、戦車は大体片付けてきた。動いてなければ壊すのも簡単」

『だ、大丈夫なんでしょうか、PMC相手にここまでやっちゃって……』

『問題ありません。暴れたのは私達、貴女達はそれを止める為に交戦しているだけ。何もない砂漠で戦っていたら、見知らぬ建造物に辿り着いてしまった。それだけのことです』

「建前は大事ですからね♣」

 

「光よっ!!!」

「はい、はっずれ~」

 

 廃校対策委員長は涙目になってレールガンを振り回すアリスの射線を誘導して駐機している武装ヘリを的確に打ち抜いていく。

 先ほど弾いた一発も頭上にある通信設備を見事に貫いていた。

 

「キサマら……こんなことをしてタダで済むと思っているのか……!?」

 

 そしてようやく、この施設の責任者が重い腰を上げた。

 若干すすけた巨体を揺らしながら、カイザーPMC理事を名乗るロボット市民が一行の前に姿を現す。

 

「私有地への不法侵入に施設の破壊! 被害総額がどれだけになるのか……正式に訴えさせてもらうぞ」

『どうぞ、出来るものなら』

 

 こんな僻地でも電波の途切れないミレニアム製のドローンから超天才清楚系病弱美少女の不敵な笑みが浮かび上がる。

 

『このような場所はデータ上どこにも存在していません。無論、オフラインで管理されている書類には記載されているのでしょうが……一体どこからそんなお金が湧き出していたのか、何故作ったのか。公に出来るのならやってみてください』

「ぐっ……」

 

 それはこの施設の明確な欠点だった。

 ブラックマーケットを経由してまで情報が隠蔽されている資金の流れは、企業にとって公に出来るものではない。

 

 襲撃者がアビドスの生徒だけであれば如何様にも誤魔化しが効いただろう。

 だがこの場には借金返済に追われて勉学が疎かになってしまった少女たちだけではなく、キヴォトス有数の天才が集う学園の生徒も居る。

 

 裁判沙汰になった時点でこの施設の存在を、古代兵器の発掘計画をキヴォトス全土に公開するようなものなのだ。

 カイザーグループの最高権力者ではなく、あくまでも重役のひとりに過ぎない彼にそのような判断を下せる決定権があるはずもない。

 

『それに社用の端末にこのような写真を隠していらっしゃるとは……中々良い趣味をお持ちのようで』

「…………は?」

 

 ホログラムとして新たに表示されたのは、裸の生徒が映し出された画像だった。

 

 気が付けば戦闘音は聞こえなくなっており、少女たちから向けられていた敵意の質も変わる。

 視線に温度があるのならば、昼間の砂漠にも関わらずこの地には極寒の嵐が吹き荒れていただろう。

 

「……最っ低!」

 

 皆の思いを代弁するかのように、感情的なネコミミ少女はゴミでも見るかのように吐き捨てる。

 

「ふざけるなっ! 私の名誉のためにも断固として否定させてもらう! というか貴様ら知っているだろう!? アビドスに現れた変質者の手配写真だ! それ以上の意図など――」

 

 最後まで言い切ることなく、彼の言葉は銃声に遮られた。

 

 キヴォトスの住人は総じて生存能力が高い。

 生徒たちは神秘に護られ、動物の姿をした大人たちは危険の察知と逃げ足が速く、ロボット市民には物理的な耐久力がある。

 

 その頑丈なはずの鋼鉄製の肉体が、抉り取られたように消失していた。

 

「――あの子に何したの」

 

 虚空に白い髪の生徒の裸体が映し出されたとき、小鳥遊ホシノの空気が変わった。

 明らかにヤバイ雰囲気に化けたのを察したゲーム開発部は速やかに逃亡し、フリーとなった彼女はざくざくと足跡を残しながら歩を進めている。

 

「答えてよ――あの子に、何をしたの」

「濡れ衣だと言っとるだろうが! そいつらは裸でうろついていた変質者だ! 何故全裸徘徊していたのかなど、むしろこっちが聞きたいくらいだ!」

 

 光を一切反射しないドス黒い感情に染められた二色の瞳。

 魂の奥まで射抜くような視線にさらされながらも、カイザー理事は図太く正論を返す。

 

「何言ってるの? あの子はそんな子じゃないよ。やっぱり大人は嘘つきだ。ねえ、答えてよ。私の友達に――チエちゃんに、何をしたああぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!」

「だから、濡れ衣だと、言っとるだろうがああぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!!」

 

 聞く耳を一切持たないぶちギレたキヴォトス最高の神秘と戦闘用ではない会社員のロボが激突すればどうなるのか。

 

 結果は火を見るより明らかである。

 




補足
・全裸一同を目にしたのはセリカのみ
 他のメンバーはお嬢様としか面識がなく、シロコも言葉で伝えただけで画像はありません
 なのでホシノおじが画像で認識したのは今回が初めてです

 シロコ(二年生)セリカ(一年生)も全裸のことを知らなかった以上(11話、14話参照)、知り合いの可能性があるのはホシノ(三年生)だけです
 また、イッチが露出に目覚めたのはアビドスを出てから(25話参照)なのでホシノは露出趣味について知りません

・チエちゃん
 ホシノの友達 監視カメラに全裸で映ってた白髪の生徒
 いったい何ッチなんだ……
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