「――私のミスでした」
いつかとどこかを繋ぐ場所。
ここではないどこか。
今ではない彼方。
廻り続ける環状線で、彼女たちは向かい合っていた。
水平線と地平線。
黄昏と朝焼けが世界を包み、座席に腰掛ける少女の姿を照らし出している。
「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況――」
血に塗れ、死んでいなければおかしいような傷を負いながら。
「あと少しだけ足りないと、確信出来ました。足りないのはあと少しだけだと、確信出来たんです」
少女は語る、自らの選択を。
そしてそれが、どのような結末を生み出したのかということを。
「発見は偶然だったんです。先も見えない世界を信じ続けるには、溜め込んだものを吐き出す必要だってありました」
原因と結果、因果と応報。
物語の始まりというたった一度の奇跡は、彼女自身も予想していない出来事からだった。
「おいしいものをいっぱい食べたり、友達と遊んだり。私だって年頃の女の子ですから、それでもよかったんです」
懐かしむように、かみ締めるように……大切なものを、握り締めるかのように。
零れ落ちてしまったナニカを両手で掬いながら、悲しげな表情を隠すことなく感傷に浸る。
「でも、その、魔が差したと言いますか、むしろなんでやっちゃったんだろうと今でも思ってますけど……」
言い辛そうに視線を逸らしながら、それでも少女は言葉を紡ぐ。
「――服を脱いで、歩いてみたんです」
なんか変なほうに話が動いた。
「変化は劇的でした。文字通りの意味で、世界が変わったんです。……あ、引かないでくださいちゃんと説明しますから」
百歩譲って露出癖に目覚めた経緯を語られるのだとしても、初対面の見知らぬ相手に暴露するのは中々に覚悟がいるだろう。
「キヴォトスは学園都市。そこに暮らすのは学園に通う生徒たち。ジャンルで言うなら、学園モノとでも言いましょうか」
確かに学園モノには奇抜なキャラクターは多数登場する。
妙に人を見下す天才や、人の話を聞かずに振り回す先輩や後輩。
なんか脱いでるのに捕まってない全裸の変態も、割とよくいるキャラクターであることは否定できる要素ではない。
「物語のジャンルは変えられない。――けれど私が、全ての生徒たちの代表者が行ってしまったことで、ジャンルはそのままに、対象年齢が変わりました。全年齢向けから
年齢制限で変わるのは性的な要素だけではない。
R18Gなどという言葉あるように、許容されるえげつなさの敷居も大きく変わる。
「取れる手段は飛躍的に増え、同時に発生する問題も拡張されました。その中で見つけ出したのは、
拡張されてしまった問題について、彼女は触れない。
ただひとつ言えるのは、そこにどれほどの残酷さが秘められていたのかを直視しても、歩むことをやめなかったということ。
「それでも、あの子だけでは足りなかったんです。生徒である彼女だけでは、ほんの僅かな相手に、内側から変化を与えることしか出来ませんでした」
正道ではなく、さりとて邪道という言葉にも当て嵌まらない。
あまりにも常識から外れた異形の手段は、それでもなおと言い続けた彼女の選択のありようだった。
「だから、神秘を持たず、神秘に縛られず、生徒たちを外側から導いてくれる、味方をしてくれる……そんな大人が、私たちには必要だったんです」
少女の視線が、こちらを射抜く。
真摯に、必死に、祈るように、力を込めて。
「無茶なことを言っている自覚はあります。きっとあなたにとってキヴォトスは危険な世界でしょう。私たちとは違い、神秘に護られていない大人は、銃弾ひとつが命に関わるのですから」
それもまた世界のルールだ。
大人は神秘を持たないという、キヴォトスの常識であり、前提条件。
「こちらも可能な限りのサポートは行いますが、本来であればあなたにとって何も関係のない話ですらあります」
いくら繰り返そうとも、子供たちだけでは辿り着けなかったのだ。
大人でなければ、大人から向けられる悪意には立ち向かえない。
例え子供が大人のやり方を学ぼうとも、そこには子供であるが故の限界がある。
「だけど、それでも」
学園都市キヴォトス。
銃を持たない人は裸で歩いてる人より少ない世界。
そして彼女は、
たとえ全てが失われ、
彼女は銃を取り落とすことなく抗い続けた。
「どうか、私たちを助けてください。"先生"」
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“私にまかせて“
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“大人としての責任を果たすよ“
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“――よく頑張ったね“