策略Ⅰ 5年ぶりの再会
──────────怖い
海は広いが太陽の日には当たらない。
暗くて、冷たくて、怖くて…そんな海の中をクジラはただ彷徨う。ここで君に問題だ。
クジラは何が目的だ?
考えてもみなかったよな。さてなんだろう?
餌?安らぎ?安息の地?
クジラはただ生きている。
たった一匹だけで暗い海の中を彷徨っている。
適当に、潮の流れに乗りながら生きている。
そして最後は海の底で、または人や他の魚の餌となって死ぬ。
本当にただそれだけ。クジラには夢もない。希望もない。
クジラはそんな空虚な人生をずっと送るだけ。
だとしたら、クジラが生きること自体に、意味はあるのかな?
俺も似たようなものだった。
常にその場の流れ乗って生きているだけだった。
夢も希望も望みもない。
だが、今の俺はもう違う。
私はナビゲーターのツムリ。
今私は新しいデザイアロワイヤルのシーズン開催に向けて仮面ライダーたちにドライバーとIDコアが入っているミッションボックスと招待状のカードをセットで渡している。
一人一人手渡しじゃないといけないからこれは結構大変なの。それにこの格好だと人目につくからジロジロ見られる。
しかも今回のエントリー人数、51人もいる!!
普通なら最大でも25人くらいなのに…
それもこれもあの
さっさと終わらせてメロンパンでも食べよう。
・・・・・・・あ、いた。
「えーっと、まずはドーベルね」
仮面ライダードーベル
今バイトの帰りってところかしら?
彼の前に回ってまずはいつもの挨拶をする。
「おめでとう!柳澤快斗くん?」
「・・・・・・えっと、なんですか?」
「厳正なる審査の結果あなたは選ばれたわ。
今日からあなたは、仮面ライダーよ!」
柳澤快斗は困惑しながらミッションボックスを受け取る。
さ、用は済んだし次に行こ。
「え、ちょっと─────」
こんな調子で、私はどんどんミッションボックスを渡していった。一人一人、手渡しで。
「おめでとう!
「
「今日から、あなたは仮面ライダーよ」
「今日からあなたは、仮面ライダーよ」
「今日からあなたは仮面ライダーよ!!」
こうして、ミッションボックスをどんどん渡していった。
発送だと本物だと信じて貰えないだろうから手渡しでないといけない。だからプレイヤー一人一人の元に出向き招待状を渡す。時々その中には前にも参加していた仮面ライダーもいる。
さて、いよいよアイツで最後ね…
「おめでとう海界メグル。ほら今日からまたあなたは仮面ライダーよ」
「なんだよツムリ、その適当な挨拶」
「あなたのせいでこっちは仕事が増えちゃったのよ。
ねぇ?あなた何か目的があるの?なんであんな世界叶えたのよ?」
「秘密だ。別にいいだろ、誰が何を叶えるのかは勝者の特権だ」
ホントやな奴…。あんたなんかさっさと退場すればいいのよ。
「はぁ…。じゃ、いつも通り明日の12時に集合だからね」
仕事を終えた私はすぐに
「あのさ!デザロワの参加者ってどうやって決めてるの?」
ボエールが私の隣に走ってきた。かなり不気味な男ね。
「だから厳正な審査で─────」
「審査って誰がやってるの?」
「そんなの知ってどうするの。もういい?早く帰らなきゃいけないの」
そう言ってボエールを後にして私は帰還した。
次にやることはゲームマスターとデザイアロワイヤルで行うゲームの打ち合わせ。
翌日。正午になり昼食を早めに済ませた
「お、メグル!」
そこには既に俺以外にも大勢のメンバーが揃っていた。
以前参加していた紅葉・桜・和也・八雲・雄星、他にも大勢のプレイヤーが揃っていた。
ここにいる全員、俺の中学時代の同級生たちだ。
数年ぶりの再会にみんな胸を踊らせている。
「はーい!ようこそ、みんなーー!!」
いつの間にかツムリが中央にある台の上に立っていた。
いつも通りだからもう驚きもしない。
「よく集まってくれたね?ようこそ、デザイアロワイヤルへ!!」
そして、ツムリからデザイアロワイヤルについてのルール説明が始まる。もう何度も聞いてるから正直飽きた。
さ、ようやくデザイアカードが参加者に配られた。
「じゃあ、お手元のデザイアカードに願いを書いて?」
みんなが続々とデザイアカードに記入を始める。
中には話し合ったり見せ合ったり、そして笑い合いながら記入する者もいた。
「メグル」
「ん?和也か」
突然和也が俺に話し掛けてきた。
なんかちょっと睨まれてるような気もする。
「お前この前はよくもやってくれたな?」
紅葉から聞いたんだろう。
でも利用してはいたが雄星に負けるかどうかは和也次第だった。
「悪かったよ。でもいい経験になったんじゃないの?」
「まぁな。それより、お前優勝したんだろ?何叶えた?」
「秘密」
「じゃあ今回は何叶えるんだ?」
「それも秘密だ。ていうか、俺の事より自分の心配したら?この前みたいに騙されたりライオンの餌食になるかもよ?」
と、一応釘を刺しておく。和也は少し悔しそうに怒っていた。
まぁでも、あいつもこの前のことで少しは敵を疑い
だが、俺としては別に和也がここで脱落しようがどうでもいい。どうせまた…
そんなことより改めて俺はデザイアカードに願いを記入する。書いた瞬間カードが手元から消える。
他のみんなはこれから始まるゲームに緊張しているようだ。
が、すぐツムリから命が掛かってると聞いた途端顔色を変えた。
まぁ最初は全員そうなる。俺もそうだった。
しょうがない、この恐怖で包まれた空気を変えてやるか。
「なぁツムリ!」
「なに?今説明中なんだけど」
「そんな命懸けのゲームを
その言葉を放った瞬間、ツムリの顔色も変わった。
目を開いて驚いたらすぐに細くなり睨みつけられる。
「どういう意味?」
「惚けるなよ。そもそも、これは『ゲーム』だろ?だったら誰かが観て楽しんでなきゃ逆におかしいだろ。
つまり、デザイアロワイヤルの正体は─────」
『──────────その通り』
「わぁっ!?」
「ビビった…」
「え、誰…?」
突然、ツムリの後ろに赤い鳥のような形をした仮面をつけて赤いフードを被った人物が現れた。
いきなり現れたからその近くにいた参加者たちも驚いた。
「ゲームマスター!?」
ツムリが思わずその人物の正体を口にした。
そう、奴こそがこのデザイアロワイヤルの全てを決める権力者・ゲームマスターだ。俺も会うのは初めてになる。
『よく気付いたな、ボエール。君の推理通りだ』
「待ってゲームマスター!!プレイヤーたちにその事を話すのは!」
『仕方ないだろうツムリ、バレてしまっては仕方がない。
それにオーディエンスたちもその方が喜ぶだろう。
さぁツムリ、プレイヤーたちにナビゲートを』
ゲームマスターはツムリに命令するとすぐにその場から消えてしまった。出来れば仮面の下も見てみたかったが。
ツムリは溜息をつくと「それじゃあ、改めて…」とナビゲートを再開した。
「ようこそ、リアリティエンターテインメントショー。
デザイアロワイヤルへ!!」
ツムリの宣言と同時にデザイア宮殿の周りに目の形をした巨大なカメラが大量に浮遊している。
カメラの先端が伸びたり縮んだりしている。
カメラの向こう側で誰かが見ているということだ。
「何あれ?」
「あれは『オーディエンスアイ』。オーディエンスたちはあれを通じて…ていうか
オーディエンスたちの歓声が向こうから聞こえてきた。
なんだかショーというより大会みたいになっている。
予定通りだ。デザイアロワイヤルの正体を暴きオーディエンスたちの存在をこいつら全員に明かした。
その方が、後で都合が良いのだ。
「──────────あはははっっ!!!」
いやぁ〜思わず笑っちゃったよ〜。
もう〜メグ君ってば焦っちゃって。
そんなに焦らなくても準備はもう整ってるのに。
画面を見るとデザイアロワイヤルについての説明が終わりプレイヤーたちはゲームエリアに移送される。
さて、僕たちオーディエンスにはプレイヤーたちにアイテム支援ができるんだ。
『それではオーディエンスの皆様。お手元のタブレットから、好みのライダーへ贈るアイテムを選んでください。』
僕はタブレットを手に取ってアイテム、あとシークレットミッションの用意をする。
ハズレバックルなら無料なんだけど、レアアイテムはお金掛かるんだよな〜。ま、お金あるからいいんだけど♪
「え〜っと、どれがいいかな〜?」
今回は
「ん。やっぱこれかな」
僕はアイテムを選び購入、メグ君へ転送した。
さぁ楽しもう!
さて、最初のゲームは何かな?
画面が切り替わりツムリが現れてナビゲートを始めた。
『それではデザイアロワイヤル 運命の第一回戦目。
最初のゲームは「
しっぽ?動物の尻尾?
『今回のゲームは何とゲームマスターが自ら敵役となって参加するよ!!
これよりプレイヤーたちの腰にモチーフ動物をイメージした尻尾を付けてもらうわ。ゲームマスターが運営ライダー二人と一緒にその尻尾を奪いにかかるから奪われないように気を付けてね♪
ゲームは前後半で30分ずつ行って奪われたら即脱落。
勝ち残ったプレイヤーは一回戦勝ち抜けよ!』
ゲームマスターが参加?たまにそういうこともあるけど…
なるほど、運営もメグ君を怪し始めたか。
「アハハハハっっっ!!!バカだねゲームマスター。
──────────罠だとも知らずに♪」
今回のゲームエリアは街中で行うようだ。
中身はモンスターバックルだった。
更に俺の後ろ腰にクジラをイメージした『尻尾』がいつの間にか着いている。
ちなみに俺はクジラだから尻尾というより
ゲームマスターと運営ライダーが現れる場所はランダムらしい。つまり、今俺のところにゲームマスターが現れても─────
「・・・・・・え」
『仮面ライダーボエールだな。こうして会うのは初めてだな』
この通りおかしくはないってことだ。
第1回戦で最初に戦う敵がゲームマスターってなんか怖。
ましてやゲームマスターの格好は赤い仮面に赤いフードを着ている。声は変声機を使ってるのか低い声になっている。
と、思ったら。ゲームマスターが顔の仮面に手を当てる。
ロックが解除されたような音がすると仮面を自ら取ったのだ。
「取っちゃうのか…?」
次に頭に被ったフードを脱いだ。すると両手でフードに隠してある
そう、ゲームマスターの正体は女だった。
立場と変声された声のせいで男だと思いがちだが。
年齢は20代くらい、綺麗な顔立ちでエメラルドのような瞳をしている。
「あんたがゲームマスター?」
「そうよ、私はウィンク。メグルちゃん初めまして♡」
「ゲームマスターが初っ端からターゲットにするってことは。俺の事警戒してるのか?だからこのゲームで脱落させることにしたわけだ」
ウィンクはふふふと笑っている。図星かな。
だが、『ゲームマスターはゲームの勝敗を操作してはならない』とデザイアロワイヤルのルールにはあるはずだ。
俺はそれをウィンクに指摘すると、
「あら。操作なんてしてないわ。ゲームマスターと戦うっていうゲームなんだから」
なるほど。ルール上ゲームマスターは干渉出来ないが、ゲームとしてならセーフってわけだ。
俺を狙う理由は俺が不審な行動をしているからと言ったところだろう。
「メグルちゃん、あなたどんなイケナイことを企んでるのかしら?」
「何も。って言っても信じないでしょ?早くゲームを始めましょうよ」
「あら…いいわ。ここで脱落すれば一緒だもの。
さぁ、お姉さんと遊びましょう?」
ウィンクは懐からデザイア・・・・・・ではなく。
デザイアドライバーとは全く別のドライバーを取り出した。
ウィンクはそのベルトを腰に当てると帯が腰に巻き付いた。
『ヴィジョンドライバー』
ウィンクは右手を顔まで上げると親指にキスをした。
その姿が少し美しかった。
親指でヴィジョンドライバーの上部についてあるボタンに触れた。それに反応してドライバーも起動する。
『
ベルトから待機音が鳴る。ウィンクは次にベルト帯の右側にあるホルダーから手の平サイズくらいのカードを取り出す。
「へ・ん・し・ん♡」
カードをベルトの右側に上からスライドさせる。
『
仮面ライダーグレア
顔は紫色で
だが注目すべきは身体付いているパーツだ。
更に両肩、両膝、胸に運営ライダーの仮面が付いている。
運営ライダーたちの
「それがゲームマスター専用の仮面ライダーか」
観察している場合では無さそうだ。モンスターバックルを自身のベルトの右側にセットする。
『
「変身っ!!」
バックルの頭部を叩いて眠ってるモンスターを叩き起す。
『
仮面ライダーボエール モンスターフォーム
まずは俺が仕掛ける。
ウィンクの身体、肩と胸を殴るがまるで効いてない。
戦法を変えキックにする。回し蹴りで顔面を蹴ろうとするが避けられる。胸に蹴りを入れるが効いてない。
今俺が使ってるのはレアアイテムの中で一番攻撃力の高いバックルだ。それが効いてないとなると…
「あら終わり?それじゃ。お姉さんの番、ねっ!!」
胸・両肩・両膝の仮面パーツが外れたと思ったら浮遊しながらこっちに向かってくる。それぞれバラバラに違う動きをしながら俺に向かってビームを放ってくる。
まるでパーツが生きているかのように。
逃げようとしてもパーツが追いかけてしてビームを放ったり体当たりしてきたりする。
「クソッ!」
こうなったら…
俺はビームをあえて受けながらウィンクに向かって走る。殴り掛かろうとするが、
「っ!?」
ウィンクを守るように五つの仮面が前に立ちはだかると一斉にビームを放ってきた。
俺は後方に少し吹き飛ばされ地面に転がった。
「さぁて、他のプレイヤーのみんなも待たせてるから。
終わりにしましょ。メグルちゃん、ごめんね?」
ウィンクはカードを再度右側にスライドすると右足にエネルギーを溜める。回し蹴りで俺にキックをキメる。
俺は吹き飛ばさると変身が解除された。
「メグルちゃん!あなたはゲームオーバーよ」
ウィンクの右手には俺の『尻尾』が握られている。
俺の身体がデータの
どうやら最初の脱落者となってしまったようだな。
「バイバーイ♡」
ウィンクは仮面の下では笑っているようだ。
あーあ。バカだなぁ。協力ありがとう、ゲームマスター?
俺は最期にニヤリと笑みを浮かべて消えていった。
『
海界メグル 仮面ライダーボエール 脱落 残り50人
ゲームの
次回 甘い誘惑