突然現れた彼女は、得意気な顔をして種明かしをする。
「数日前、私はこの部屋に新しく住人が来ることを知った。引っ越してくる人は私と同年代。それを聞いてすぐにこのドッキリを思いついたの」
彼女曰く、僕がここに来ると知ってすぐに大家さんに協力を取り付けたらしい。そして次はこのアパートの住人に。だから昨日は殆ど誰も人がいなかったのだと。
無茶苦茶すぎる。僕はそう思った。
遠くから人が来ると知っただけでここまでするのか?理解出来ない。
混乱していると、彼女はくすくすと小さく笑う。
「改めまして、私は昼ヶ峰有沙。今日からよろしくね、萩一くん」
「······知っているようだけど、改めて僕から言わせてほしい。僕は夕谷萩一。よろしく、昼ヶ峰さん」
僕はそう言って、軽く頭を下げた。
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今日から学校が始まる。と言っても、特別なことではない。まずは入学式があって、次にHRがある。それだけでこの日は終わりだ。
入学式は、とても人が少なかった。
上の学年の人は全員で五十人ちょっとしかいなかったし、教師もそこまで多くない。なんなら、新入生ですら三十ちょっとしかいなかった。
田舎の高校とはどこもこのようなものなのだろうか。あまりにも少ないと廃校、または分校になると聞いたが。
入学式はすぐに終わった。次はそれぞれの教室に分かれてHRだ。
田舎の学校で人が少ないと言っても、やっていることは普通の学校とそう変わっていないだろう。最初のHRでは、やはりと言うべきか自己紹介が始まった。
このクラスには十六人しか人がいない。出席番号順に自己紹介をしていて、出席番号が名前の「あ行」が最初とはいえ、人が少ない分自分の番が早く回ってくる。
自分の番が近くなっていて、何を話そうかと考えていると、見知った顔の順番が回っていた。
「昼ヶ峰有沙です。早く皆さんと仲良くなりたいので、何かなされる時は是非お誘いください」
笑顔でそう言うと、お辞儀をして席に着く。見た目はかなり良くて、こんなにも慎ましやかな雰囲気なのに、初対面でドッキリを仕掛けてきた。恐らく、誰かにその話をしても信じてもらえないだろう。
そんなことを考えていると、自分の番が回ってきた。
「夕谷秋一です。この地域に来て日が浅いので色々教えてくれると嬉しいです。これからよろしくお願いします」
僕はそう言って頭を下げて席に着く。まぁこんなものだろう。自己紹介で悪い印象を持たれさえしなければ後は上手いように進んでいくだろう。
全員の自己紹介が終わると、学校だよりなどのプリント類が配られる。書かれていることはこれからの予定とか校長先生の言葉とかそんな感じのものだ。
とりあえず、そんな感じで一日目は終わった。
僕は放課になると荷物をまとめてそのまま帰ろうとした。その時。
「少し待ってください」
後ろから昼ヶ峰さんから声をかけられた。なんだろうか。僕と違って昼ヶ峰さんの周りには結構人が集まっていたはずだが。
「何か用ですか」
「いえ、帰るのでしたら一緒に帰りませんか?同じところに住んでいるのですから」
昼ヶ峰さんがそう言った瞬間、空気が凍ったような感じがした。男女問わず僕に向けて敵意やら殺意やらの感情を向けられているように感じる。
これはまずい。そう直感した僕は、すぐにその言葉を訂正する。
「同じところって言ってもアパートが同じだけでしょう?」
「まぁ、そうですね」
彼女はそう言うと、僕に背を向けて一人で帰ってしまった。
よし、僕に向けられていた嫌な感情は少しだが和らいだ、気がする。これで実際に僕に殴りかかるとか、そんな行動に起こすようなやつは現れないだろう。
······だが、僕は気づいてしまった。僕が「同じアパートに住んでいるだけ」と言った時、彼女は「そうですね」と答えた。その顔が、とても悲しそうな顔をしていたのを僕は見逃さなかった。彼女は僕の方を向いていた。後ろには誰もいなかった。だから、その顔を見ているのは僕だけだ。
何故、あのような顔をしたのだろうか。まあ、あまり深く考えることでもないのかもしれない。一人で歩いている彼女の背中は、先程の顔を見たからかとても寂しげに見えた。
今になって思う。ここで僕は
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学校二日目······ではなく、今日は休みだ。祝日とかじゃなくて普通に土曜日の休みだ。
荷解きも既に終えたし、何をすればいいのだろうか。
そんなことを考えていると、玄関の扉がノックされる。
「はーい」
そう言いながら扉に近づき、その扉を開けると、そこには白いワンピースを着た昼ヶ峰さんがいた。その金髪に白いワンビースはとても似合っていた。何となく、昼ヶ峰さんらしいと思った。
「何か用ですか」
「この辺りを案内してあげようと思ってね。ほら、昨日言ってたでしょ?この辺りのことを教えてくれると嬉しいって」
確かに言った。だが、次の日に行動に移してくるやつがどこにいるのか。······ここにいた。
というか、学校の時の話し方と違う。学校ではあくまでも慎ましやかな少女ということで通すらしい。
「ええ、確かに言いましたね」
「だから、今から遊びに行きましょうよ。こんな田舎だからこそできる遊びをしに行きましょう」
そう言う彼女の碧眼はとても輝いていた。そんな目を見ていると断ろうにも断りきれず、結局ついて行くことになった。
「ありがとう!じゃあ、外で待ってるから早く着替えてきてね。あ、できるだけ動きやすい服装でね」
そう言うと彼女は扉を閉めて走っていった。
さて、さっさと支度をしなければ。女性を待たせるというのは、あまり良いことではないだろうし。
僕は服を動きやすい服に着替え、頭でピンと跳ねていた寝癖を直して昼ヶ峰さんの元に向かった。
「待たせちゃったかな」
「ううん、全然待ってないよ。······なんだかこの会話、デートの待ち合わせをしてたカップルみたいね。立場が逆だけれど」
何なのだろうか。彼女は周りが誤解するような言い回しをするのが好きなのだろうか。
僕だったから良かったものの、僕以外の男がそれを聞いていれば一瞬で勘違いしていたことだろう。
「じゃあ、行きましょうか」
「行くって、結局どこに?」
僕が訊くと、彼女はいつか見せた得意げな笑みを浮かべて言った。
「山よ」
ストックはこれを除いて後二話分しかありません。
結末は確定していますが、上手くそこに着地できる道筋を書いていきたいですね。