RIDDLE JOKER 投影使いの学院生活   作:izuki

10 / 10





第九話 護衛任務

「『何言ってくれちゃってんのよ、お前』」

「…………すみません……自分でも何言ってるんだろうって思いました。申し訳ありません」

「…………はぁ」

『予想外すぎてどう言ったものか……頭の中を整理したい。悪いがもう一度報告を頼む』

 

 あのとんでもない発言に呆気にとられた後、急いで指示を出して暁がステルスを起動したのを確認して撤退。

 七海を部屋に送り届けた後、さすがに今回は私も同伴するべきだと思い暁の部屋で共に報告をしていた。

 暁が言うには、私に不審者が取り押さえられているのを報告した後、離れた場所で三司さんが襲撃者に襲われている現場に遭遇。

 彼女の命の危機と感じて守るために襲撃者を鎮圧した。

 その後は、私が見ていた光景に繋がるわけだ。

 

『その独断行動の結果、顔を見られたんだな?その上ステルス機能まで』

「はい……本当に申し訳ありません」

『……はぁぁ……』

「申し訳ありません。私の不行き届きの結果です」

『いや、起きてしまったことはもう仕方がない。それに……多分お前(四季)が同じ状況に遭ったとしても恐らく同じことをするだろうさ。違うか?』

「そうですね……多分、同じことをすると思います」

 

 そうだな、もし私も同じ状況に遭ったのならばきっと暁と同じ選択をするだろう。

 赤の他人だったとしてもそう言うのを見過ごすことはできない。

 

『……それに親としては、人を助けられる人間で嬉しく思ってはいる……が、任務の観点から見れば落第だわな』

「はい……」

『それで?彼女にどこまで打ち明けたんだ?まさか、バカ正直に“特班”の事をベラベラ喋ったわけじゃなかろうな?』

 

 そう、問題はそこだ。

 私は指示を出した後、通信を切ってすぐに離脱したためどういう風に三司さんに言ったのかはわからない。

 暁のことだからないとは思うが、もし特班のことを話していたのならそれ相応の処理をする必要がある。

 

「まだ何も、ただ――三司さんには、自分で撃退したことにしてほしいと頼みました」

 

 強引に頼んだ後、すぐに警備員と同伴していた先生が来たためステルスを用いて木の陰に身を隠して様子を見たらしい。

 現場を見た警備員と先生に何があったのか聞かれた三司さんは一瞬の逡巡の後、自分が撃退したと報告してくれたらしい。

 

『今のところ、彼女は秘密を守ってくれているということだな?』

「はい、あくまで今のところは、だと思いますが」

 

 恐らくだが三司さんは俺達のことを測りかねているんだろう。

 信用していいのか、それとも報告すべきなのか。

 

『ステルスを解除した時、カメラは?』

「カメラの死角でした。俺の姿も、彼女が襲撃を受けたところも映ってないはずです」

「恐らくですが、最初からカメラの死角であることを把握して襲撃したのかと。最初の不審者も囮の可能性が高いです」

『突発的ではなく、計画的な犯行だな。そっちも気になるが、今はお前たちの話だ。ともかく、最悪の事態は避けられてるんだな?』

「私と七海は誰にも姿を見られていません」

「俺も少なくとも先生からの呼び出しはありません」

 

 部屋に送り届けた七海からも何の連絡もないため問題ないんだろう。

 であれば、問題はここからだ。

 

『では、三司あやせの信用をこのまま勝ち取ることができれば、被害は最小限にとどまるワケだ。とりあえず、自分で蒔いた種は自分で刈り取れ』

「それって……」

『キミを護る!って格好良く言ったんだろ?その責任は取るしかないだろう』

「……じゃあ、俺の処分は?」

『偽札の件もまだ片付いていない。こんな状況で、処分と言われても……とりあえず減給は確定な。四季もな』

「……了解です」

 

 くそう。予約してある限定プラモや今度出るゲームの新作を買う予定があるのに、ここで減給は痛い。

 

『その上で在原暁には任務を与える。三司あやせを護れ。在原四季もそのサポートに当たること』

「「了解」」

 

 まあ、こうなるだろうと予測はできていた。

 学院に疑われずに潜入できる私たちを任務から外すことはできない以上これが落としどころとしては無難だろう。

 それに、暁のことだここで放っておくと勝手に動く。

 

『襲撃犯は素人では無かったんだな。であれば一度の襲撃で終わったという保証もない。警戒しておくように』

「はい」

『こちらでも出来る限りはサポートする。とにかく三司あやせと話を済ませろ。いいな?』

「了解」

『偽札の件はこちらの連絡を待て。お仕置きについては裏付けを取ってからだ。以上、通信終了』

 

 室長との通信を終了して体の力を抜き一息つく。

 そして、今日起こったことを思い返して思わず深く、重いため息をつく。

 

「……はぁ。全く、頭を痛めるわ。このバカが」

「ごめん、でもあそこで助けなかったらどうなってたか……」

「わかっている……過ぎたことをこれ以上言う気はない」

 

 だが、三司あやせの護衛任務か……

 

「それに、三司あやせに何かがあれば、アストラル使いの今後にも影響を及ぼすかもしれん」

「三司さんって世間一般でそんなに大きな存在になってるのか?」

「いや、そこまでじゃない。問題なのは彼女がアストラル使いという点だ」

 

 ネットで有名と言っても所詮は一学生に過ぎない。

 もし、彼女個人に何かあったとしてもそこまで大きくはならないだろう。

 だが、これは彼女が「アストラル使い」でない場合だ。

 

「仮にだ、今回のことで彼女が殺害されてたとする。では、なぜ殺害されたのか?その理由は「アストラル使いだから」ということになるかもしれない」

「それは……」

「否定はできないだろう?」

 

 社会全体がそうなる可能性は低いだろう。

 だが、一部の人間がそう思い込み騒ぎ出す可能性はとても高い。

 そうなれば、アストラル使いと世間一般との間にある隔たりはさらに大きくなる。

 

「やがては軋轢を生み、日本はアストラルに関する研究で諸外国から後れを取る。そうすれば国益を損なうことにもつながる……かもしれん」

「結構強引な解釈だな」

「まあ、これはあくまで可能性として語っただけだ。実際どうなるかはわからん」

 

 だが、実際にアストラル使いと世間との間にある隔たりは依然大きい。

 可能性としてはないわけじゃない。

 

「それに、そうならないための護衛任務でもある。暁、お前は明日三司さんとちゃんと話をしておけ。まずはそこからだ」

「わかってる」

 

 分かっているならいい。

 そう思って、自分の部屋に戻ろうと思い立ち上がった時だった、それのことを思い出したのは。

 

「ああ、そうだった」

 

 私はポケットからそれを取り出して暁へ投げ渡した。

 受け取った暁は、手の中の物体を不思議そうに眺める。

 渡したそれは、飾り気のない15センチほどの無機質な鉄の棒。

 

「鉄の棒……?」

「違う。軽く振って刃を出してみろ」

 

 疑問を顔に浮かべながら、暁は言われたとおりにそれを振る。

 すると、パチン、と硬質な音と共に、10センチほどの銀色の刃が飛び出した。

 

「飛び出しナイフか……」

「お前、任務の時にナイフの一本も持っていなかっただろう」

 

 私たち特班は任務の時に特別に武器の所有が許可されている。

 にもかかわらず、何故か暁は任務の時に自衛用の獲物を持ち歩かない。

 今回のように、戦闘になることがほとんどだというのに素手で突っ込んでいく。

 銃やナイフを使った戦闘訓練は特班で受けているし、私からも教えているというのにだ。

 今回のことでさすがに見かねてそれを渡した。

 それなら持ち運びも簡単なはずだ。

 

「いい加減、獲物を持っている相手に対して丸腰で突っ込んでいくのはやめろ。今度からはそれ持っておけ」

「わかった、そうする。ありがとう心配してくれて」

 

 暁は少しだけ照れくさそうに笑い、刃を収めてポケットへと滑り込ませた。

 

「……ゆっくり休めよ。おやすみ」

 

 さて、これからどうなるのやら。





とりあえず一旦ここまでになります。
続きが書かれるかどうかは私の気分次第です。
出来ればここまでの感想をくれると嬉しいです。

暁に渡したナイフは、月姫リメイク版の志貴のナイフを思い浮かべてください。

それと、原作では次の日の早朝に報告していますが。
今回そこを変更し、その日の夜にしています。
変更した理由?
……これ書いてる時、その日の夜だと思ってたんですよね。

ちなみになんですけど、ヒロイン誰が好きです?

  • 三司あやせ
  • 在原七海
  • 式部茉優
  • 二条院羽月
  • 壬生千咲
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。