RIDDLE JOKER 投影使いの学院生活 作:izuki
誤字や文章でおかしいところがあったりしたら教えてくれると嬉しいです。
その日、俺がたまたま見つけた廃墟で休んでいると一人の男が入ってきた。
「……君がここら辺をうろついてるっていうアストラル使いか」
埃の舞う廃墟。差し込む月光の中に、その男は立っていた。
俺は剥き出しの警戒心を込めて、男を睨みつける。
「…………誰」
男は歩みを止めない。
こいつも、俺を捕まえに来た人間か。
あるいは物珍しさに見に来たクズか。
「俺は君と話をしに来た」
そいつはそう言うが信じない。
どうせまた俺を捕まえに来たんだ…………俺がアストラル使いだから。
「――――
もはや一種のルーティーンとなりつつある言葉を呟き能力を使用する。
右手に、かつて博物館で一目惚れした古刀を呼び起こす。
虚空から現れた白刃を、男へ突きつけた。
「落ち着いてくれ、俺は君に何かしに来たわけじゃない。本当に話をしに来ただけなんだ。」
「嘘だ、どうせ俺を捕まえに来たんだろ!」
確かにこいつからは敵意がない、だけど信用はしない。
みんなそうやって近づいてくる。
「そうやって俺を騙そうとする」
「だましてなんかいない。本当に君を迎えに来たんだ」
「大人なんてみんな同じだ……! 俺を拾って、珍しがって、飽きたら化け物扱いして捨てるんだろ!」
その叫びは、自分でも驚くほど震えていた。
血の繋がった親戚ですら、俺がアストラル使いだと分かった途端、その瞳から温かさが消えた。
あの冷たい拒絶が、今も胸の奥で疼いている。
「俺はそんなことは絶対にしない!」
男は真剣な眼差しでこちらを見ながら、こちらに向かってゆっくり歩いてくる。
その手には武器などは何も持っていない。
「俺は、絶対にそんなことはしない」
その男は、武器すら持たぬ両手を広げ、ゆっくりと間を詰めてくる。
その瞳には、憐れみではなく、確かな熱が宿っていた。
「だから俺と一緒に来てくれないか?」
差し出された無骨な手。
それが、俺の――紅四季の止まっていた時間が動き出した瞬間だった。
意識が覚醒する。
8月の熱を含んだ容赦ない日差しカーテンの隙間から差し込んでいた。
ベッドから体を起こし、軽く伸びをする。
その後ベットから降りて時計を見る普段より早く起きてしまったようだ。
「…………懐かしい夢を見たな」
とりあえず寝間着から着替えてリビングへの階段を降りる。
今は夏休みなので学校はないがうちの家は基本この時間にみんな起きるようにしている。
リビングの方から食欲をそそるいい匂いがしてくる。
確か今日の当番は七海だったな。
「おはよう、四季くん。今日は早起きだね」
エプロン姿で菜箸を操るのは、義妹の
俺の2つ下で、この家の家事全般を完璧にこなすよくできた妹だ。
「おはよう。ふと目が覚めてな。手伝うことはあるか?」
「大丈夫、もう終わるから。顔洗って先に食べてて。私は暁君起こしてくるから」
「わかった。そうするよ」
朝食を作り終えて弟を起こしに行った七海を見送った後、洗面所に行き顔を洗い目を覚ます。
リビングに戻って七海が用意してくれた朝食を一足先に食べる。
うん、相変わらず美味い。
そう思いながら食べ進めていると七海が戻ってきた。
その後少ししてリビングに弟が入ってきた。
「おはよう。
「おはよう。兄さん」
少し困ったところのある弟だ。
「そういえば暁、今日補修なんだって」
「……なんで兄さんが知ってんの」
「七海から聞いた」
暁が七海を恨めしそうな顔で見ているがこれに関しては自業自得だ。
親父がいない今、兄として知っておく義務がある。
「別に補修自体はどうでもいい……いや、良くはないが。いい加減自分で起きれるようにならなきゃダメだぞ。いつまでも七海に起こされてばかりじゃ」
今言ったように暁は基本だらしない。
今日のように朝は七海に起こしてもらわなければ起きれず。
勉強も今日のように補習があることもしばしば。
決して頭が悪いとか、勉強ができないわけじゃないんだがそれをしようとしない。
まさにやればできる子の代表だ。
「わかってるよ」
「ほんとかなぁ…」
七海があきれた声で言う。
「ご馳走様。」
食器を台所にもっていく。洗うのくらいは自分たちでするようにしている。
「七海、俺も昼過ぎまで出かけてくる。昼飯は外で済ませるから、何かあったら連絡してくれ」
「うん、わかった。ほら、暁君も急がないと遅刻しちゃうよ」
「わかってるよ」
家を出て暁と別れた後、俺は電車に揺られて隣町の墓地へと向かった。
今日は俺の両親の命日。
ここは俺を「普通の子」として愛してくれた二人が眠る場所だ。
「……今年も来たよ」
あの日、あの事故で俺一人が生き残ってしまったあの日から、俺の世界は一度壊れた。
一人残った俺は親戚を転々とさせられ、忌み嫌われ、暴力に晒された放浪の日々。
そして、一人で生きるようになり人を信じられなくなっていた。
それを救ってくれたのが、今の義父だった。
「さて、始めるか」
道具入れからバケツや雑巾などを取り出し、掃除を始める。
バケツの水を墓石にかけ、雑巾で丁寧に磨き上げる。
半年分の汚れを落として掃除を終え、静かに手を合わせる。
心の中で近況を報告した。
学校のこと、暁の不甲斐なさ、七海の頼もしさ。
そして、俺たちの「仕事」のこと。
しばらくして墓地を後にした俺は町の本屋を渡り歩いて新刊が無いか探したが特に収穫が無かったため電車に乗り自分の住んでる町の本屋で探すことにする。
最寄りの駅で降りた後、本屋のある商店街に向かう。
「四季君?」
背後から声をかけられ振り返ると、買い物袋を下げた七海が立っていた。
「七海、どうしたんだこんなところで」
「私は夕飯のお買い物。四季君は?」
「俺は今から本屋によろうかと思ってたところ。けど買い物に行くなら俺も付き合うよ」
「いいよ別にそんなに買うわけじゃないし」
「そうなのか。だけど、妹一人に重い荷物を持たせる兄はいないな。ほら」
そう言って袋を受け取って一緒商店街を歩きだす。
「今日はなにを作るんだ?」
「まだ決めてないんだよね。四季君は何食べたい?」
「七海のご飯は美味いからな、悩むな……」
「まだ四季君には及ばないよ」
どうだろうか、最近は忙しかったのと七海がほとんど家事全般を仕切るようになったのもあって料理をする機会は少なくなった。
それに七海の料理の腕は昔に比べて確実に上達している。
もしかしたらもう俺を抜いているかもしれない。
「あっ、暁君」
「ん?」
そんなことを考えていると向こうから力なく歩いてくる人影が見えた。
補修帰りの暁だ。
「七海?兄さんも。どうした、こんなところで?」
「夕飯のお買い物」
「そこであったから一緒に買い物に」
「暁君は?ちゃんと補修受けた?」
「起こしてくれた妹の優しさを無駄にせず、ちゃんと受けたよ」
「ならいいが……これ以上補修が続くなら親父に報告するからな」
「それだけは勘弁してください!」
暁が懇願してくる。
そんなことするくらいなら普段からちゃんとしてればいいのに。
少し呆れてしまう。
「補修どうだった?まさか出席しといて留年……なんてことはないよね?」
「安心しろ。”やればできる子”って褒められた。」
「それって完全に皮肉なのでは?」
「マジトーンで返すなよ。」
本当に皮肉だな。
まあ、けど事実そうなんだよな。
「……本当にやればできる子だからなぁ……」
「ほら、兄さんもそう言ってる」
「これは呆れてるんだよ、暁君」
七海が呆れてため息をつく。
妹にあきれられる兄とは……
「妹にここまで言われるってお前、兄としての威厳がないな」
俺がそう言うと隣で七海がうんうんと頷いている。
「何を言う、俺のどこが威厳のないっていうんだ」
「朝は妹に起こしてもらって、家事も妹と兄任せで、勉強もサボって成績も悪い」
「うっ……」
「もうちょっと四季お兄ちゃんを見習ったらどう?」
「そうします……」
暁がうなだれる。
ここまで七海に言われるとは、本当に威厳がないな。
その姿に少し同情しつつも、俺は話題を変えた。
「そうだ、話は変わるんだけど暁は今晩食べたいものってあるか?」
「なんでもいいよ」
「そういうのが一番困るんですけどー」
「そうだぞ」
「じゃあ…………チキン南蛮」
「チキン南蛮か…いいな」
「甘酢?タルタル?」
「両方で頼む」
「なら俺も同じので」
「了解」
今晩のメニューも決まり追加で少し食材を買って帰ろうと思っていると、俺のポケットの中で仕事用の端末が無機質な電子音を響かせた。
立ち止まって取り出し確認する。
「?…どうしたの?」
「なんかあった?」
俺は二人に向けて言う。
「買い物は中止だ…………任務が入った」
次話以降 毎日19:00投稿予定。
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