RIDDLE JOKER 投影使いの学院生活   作:izuki

5 / 10





第四話 学生?

「理事長、三司です」

「入りたまえ」

 

 中から返事が聞こえ、三司さんに続いて中へ入ると、厳しい目つきの大人の男性がいた。

 学園のホームページで見たことがある。

 たしかこの人が理事長。

 

「転入生をお連れしました」

「ご苦労だった。三司君は下がってくれていい。この後は他の者に頼んである」

「わかりました。それでは私はここで失礼します」

「ありがとう」

「ありがとう、三司さん」

「ありがとうございました」

 

 ニコリと笑って、彼女は部屋を出た。

 それを見送ってから俺らは理事長に向き直る。

 

「これから橘花学院でお世話になる、在原四季と弟と妹の在原暁と在原七海です。よろしくお願いします」

「伊勢篤紀だ。君たちの事情は聞いている。アストラル使いであることが露見して、この学院に編入することになったそうだな」

「はい」

「外では色々な思いもしただろうが、コンプレックスを感じる必要はない。安心してくれ。そして、アストラル能力を受け入れ、有益に活用することを含めて、前向きに生きる方法を見つけてくれ。ここは君たちのような、これから先を生きる若者のために設立したのだから」

「はい。お気遣いありがとうございます」

 

 理事長は軽くうなずいた後、机に備え付けられた受話器を取り、どこかに連絡を取り始める。

 

「私だ。理事長室まで来て欲しい。そうだ。伝えていた通り、新しく編入する学生が3名いる。いつもの登録を頼む。ああ、待っている」

 

 誰かとやり取りした後受話器を置き、こちらに向き直る。

 

「すまないが、君たちには編入に関する最後の手続きをしてもらう」

「あれですよね?AIMSの登録でしたっけ?」

「あぁ、鷲頭研究都市の住人はAIMSに登録してもらう必要がある」

「もらった資料に書いてありました。けどあまり詳しいことは分かりませんでした」

 

 まあ、本当は知っているんだが。

 俺たちがこの橘花学院に転入することになった目的の1つ。

 「AIMS(エイムス)

 Ability(アビリティ) Information(インフォメーション) Management(マネジメント) System(システム)

 の略称。

 アストラル使いとその能力者に関する情報をまとめたデータベース。

 理事長は都市の住人と言ったが、都市外でもアストラル能力者にたいして登録の協力は呼びかけられる。

 他にも病院で診察してもらう時などその他いろんな機会にチラシなどの配布があり、そして登録対象の中には逮捕されたアストラル犯罪者も登録対象になる。

 

「知っての通り、鷲頭研究都市ではアストラルの研究が行われている。研究の内容によっては、君たちアストラル能力者の協力を仰ぐこともある」

「その際、必要な能力者とスムーズに連絡が取れるよう、データベースを構築し、アストラル能力者には登録をしてもらう」

 

 聞いているだけだとまっとうな理由だが、それだけじゃない。

 これはアストラル能力者を集めることに反対した人たちに対して「管理している」というアピールでもある。

 そしてAIMS(エイムス)は、必要な手続きさえしてしまえば警察もアクセスすることが可能だ。

 

「勿論、登録した個人情報の扱いに関しては適切な管理を行う。そこは安心してほしい」

「わかりました」

 

 ちょうど話終えたタイミングで、ノック音が聞こえた。

 入ってきた女性は制服の上から白衣を纏っていた。

 見た感じだが、俺と同じ歳だろうか……?

 

「この子たちが編入性だ。後の事はよろしく頼む」

「分かりました。それでは失礼します。君たちはアタシについてきてね」

「はい。失礼します」

「失礼します」

「失礼します」

「あぁ、よい学園生活を」

 

 俺たちは理事長室を出て白衣の女性の案内についていく。

 

「こっち。最上階にアタシの研究室があるから、わざわざ離れた研究棟まで行かずに登録できるよ」

「……あの、先生」

「ぐはっ!?」

「な、なんですか?どうしたんですか?」

「暁…お前、マジか……」

「え?」

「暁君、暁君。この人……先生じゃなくて、学生じゃないかな?」

「そうなのか?自分の研究室を持ってるぐらいだから、てっきり先生なのかと……」

「先生にしては若すぎる。それに、よく見ろ制服来てるだろ?」

「え?……あ、ほんとだ」

「判断基準、そこなんだ……まあ仕方ないか……自分でもわかってるよ。年甲斐もなくこんな服を着るのは恥ずかしい、ってことくらい。若いキミらから見れば、アタシが制服なんて無理があるよね……AVとかデリヘルとか特殊なお店感があるよね……ぅぅっ……」

 

 急に自虐し始めた……大丈夫だろうかこの人。

 まあわからなかった暁が悪いんだけれども。

 というか年齢の話で言えば俺とあなたはそこまで変わらないのでは……

 

「すみません。失礼な間いをしてしまって……まさか学生が自分の研究室を持ってるなんて思ってもなかったので」

「まぁ、そうだよね。普通は無いよね、一学生が校舎に自分の部屋を持つなんて。でも良く分かったねアタシが学生だって」

「あの……あやせ先輩とスカートのチェックやネクタイが同じだったので」

「あ、そうなんだ。理事長室まで案内したのは、三司さんだったのか」

「学生なのに研究室をもってるんですね」

「まぁ、自分で言うのもアレだけど……アタシはちょっと特別な学生でね」

「やっぱり成績が優秀なんですか?」

「いやー、実は留年してるんだよ」

「……そういう意味で?」

「しかも2回目。2回ダブって、最高学年3回目ってわけ。他にいないでしょこんな学生」

「それは確かになかなか見かけませんね」

「ということは俺と3学年生ってことか」

 

 それは何ともまあ……触れずらい話題だな。

 …………先輩って呼んだ方がいいのだろうか。

 

「おかげで周りと比べると、肌の張りが……水の弾き方が、如実に……ぅぅっ……辛いっ」

 

 ……さっきから少しコメントしずらい内容だな……下手に何か言ってさっきの暁みたいになるのもなぁ。

 

「あ、ゴメンね。自虐モード入って気まずい思いをさせちゃって。留年こそしてはいるんだけれど、成績が問題ってわけじゃなく、単位の問題なんだよね。必要な単位を取れば卒業できる。なので、不必要な授業には出なくてもいい身分ってわけさ」

「単位を取りたくない理由があるってことですか?」

「ん?んーー……ナイショ♪」

 

 怪しげな微笑みを浮かべて唇に指を添える先輩。

 さすがに、初めて会った人間に気安く打ち明けはしないか。

 だが普通、学生に部屋が与えられることなんてないはず。

 それだけ彼女が優秀なのだろう。

 

「そんなわけで『時間を余らせても仕方ない。暇ならここで研究しろ』ってこの部屋をね。他にもたまに、研究棟にも顔を出したりしてるよ。さて」

 

 先輩はドアの隣に取り付けられたセンサーに手の平をかざす。

 すると、ドアのロックが外れて開いた。

 これは、指紋認証……?いや、違うな。

 まさか、アストラルに反応しているのか……?

 

「ここがお姉さんの研究室。さあ、どうぞ」

「「「失礼します」」」

「どうぞ、楽にして。そうだ、飲み物を淹れよう。コーヒーと緑茶があるけど、どっちがいい?」

「どうかお気を遣わず」

「遠慮しない。どうせ自分の分を淹れるつもりだったからね。アタシはコーヒーにするけど?」

「それならコーヒーをお願いしてもいいですか?」

「じゃあ俺もヒーコーでお願いします」

「え?あっ、じゃあわたしもコーヒーを」

「オッケー。少々お待ちを」

 

 そうして準備をする先輩。

 インスタントじゃなくてドリップのようだ。

 俺も気が向いたときにたまにやるが、ここ最近はインスタントばかりだったな。

 少し楽しみだ。

 

「お前、コーヒー飲めたっけ?初対面の相手だからって尻込みしないで、素直に緑茶の方をお願いした方がよかったんじゃないか?」

「子供扱いしすぎだよ暁君。コーヒーぐらい飲めるよ。苦手ではあるけど……………多分」

「…………素直に緑茶をお願いすればよかったのに」

「チャレンジすることは大事だしいいんじゃないか。飲めなかったら俺か暁に渡せばいい」

「四季君まで……飲めるもん」

 

 話しながら軽く部屋の様子を見渡す。

 研究室自体は特に変わったものが無いように見える。

 気になるとしたらあのPCくらいなものだが。

 

「じゃっじゃーん、ほい、お待ちどう」

「ありがとうございます……いい香りですね」

「ふふ、ありがとう。ミルクと砂糖はご自由にどうぞ」

「「「いただきます」」」

 

 淹れてもらったコーヒーを1口飲む。

 やっぱりインスタントなんかとは全然違うな。

 程用苦みと酸味が俺好みだ。

 

「どう?ダイジョーブ?」

「美味しいです。苦味と酸味のバランスがよくてすっきりする感じで」

「行き詰った時、気持ちよく頭をリフレッシュする目的でブレンドしたものだからね」

「俺は、この味好きですね」

「そう言ってもらえると嬉しいね」

「……んっ……んぅ……そ、そうですね。この苦味がたまらな、感じですね……っ」

「涙目じゃん」

「あー、ゴメンね。アタシ好みにしてるから、ちょっと口に合わなかったかもしれないね。すぐに緑茶を淹れ直すよ。もう少しだけ待っててくれる?」

「……すみません」

「謝らなくていいから。お湯もまだ残ってるしね。すぐに淹れるよ」

 

 先輩が代わりの緑茶を入れにいってくれる。

 

「「…………」」

「だって……わたしも成長してるし。そろそろコーヒーぐらい飲めるかなって」

「俺らは何も言ってないぞ」

「そうだぞ」

「二人が、何考えてるか分かる。妹なんだから」

 

 そんなにわかりやすいか?

 暁ほどじゃないと思っているんだが。

 

「なら俺も七海の考えていることがわかるぞ。もう飲めないんだろ?いらないならもらうぞ」

 

 そう言って暁が飲みかけのコーヒーを取り上げて代わりに飲む。

 ……成長したなぁ……昔はこういう時もっとツンケンしてたのに。

 

「うん……ありがと、お兄ちゃん」

「いつもお世話になってるからな」

「……ジー……」

「……?な、なんですか?」

「仲がいいなー、と思ってさ」

「……昔はもう少しツンツンしてたんですけどねえ……いやぁ、成長したなぁ……」

「兄さんはいつの話してるんだよ……まあ、妹ですし。それより質問していいですか」

「どうぞー?」

「この部屋の鍵ですけど、生体認証が取り入られてるんですか?厳重で驚きました」

「こんな部屋に入っても盗むものなんてないんだけどね。これもアストラル技術の実用実験なんだよ」

 

 アストラル技術の実用実……あのライトレールと同じようなものか。

 この学園、いや都市ではアストラルに関することは積極的に取り組まれているようだし不思議なことではないか。

 

「認証してるのは指紋でも掌紋でもなく、アストラルなのさ。アストラルはその使用者によって大きく異なって、全く同じ変化はないと言われてるのは?」

「聞いたことがあります」

「つまりアストラルで個人の特定が可能であり、そのシステムを組み込んだセキュリティの実験品がアレってこと」

「でもちょっと待ってください。それはアストラル使いしか使えないシステムになりませんか?」

 

 七海の言う通りだ。

 その理論だと一般人は使うことはできないという問題が出てくる。

 

「ところがどっこい、そうじゃないんだよ。能力を発動出来なくても、アストラル自体は誰しも干渉してるもので──まあ、ここら辺は授業でその内やると思うよ。とにかくアストラル使い以外にも反応するように設計されてるのさ。じゃないと、ニッチな商品過ぎる」

 

 なるほど……だが、この研究室に関して言えば反応するのはこの研究室を任されているこの人と、おそらく理事長なんかの一部のお偉いさん達も入れるんじゃないだろうか。

 まあ、あくまで推測でしかないが。

 

「こんなシステムが、この学院には沢山あるんですか?」

「まさか、ここ以外だと水や電気の管理をしてる機械室ぐらいじゃないかな?あくまでまだ実験段階だからね。はい、緑茶お待ちどおさま」

「あ、ありがとうございます」

「さて、そろそろ本題に入ろうか」

ちなみになんですけど、ヒロイン誰が好きです?

  • 三司あやせ
  • 在原七海
  • 式部茉優
  • 二条院羽月
  • 壬生千咲
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。