RIDDLE JOKER 投影使いの学院生活 作:izuki
そろそろここに来た本題に移ることになり、俺は気になっていたことを聞く。
「AIMSの登録って具体的にはなにするんですか?」
「名前に生年月日、そしてアストラル能力。身長体重、体力、視力、健康状態、その他諸々と、項目は多いけど、基本的には学院で行った体力測定や健康診断の内容も一緒に登録してるだけだよ」
「なるほど」
「今日登録するのは、名前と生年月日とアストラル能力。あと身長と体重かな。他の部分は後日、学院で行われたときにこっちで追加登録しておくから」
思っていたよりも記入項目は普通なんだな。
アストラル能力に関することは結構細かく調べて記入するものだと思っていたんだが。
「じゃあ、最初はお兄さんの…………在原四季君だよね」
「はい」
「うーんと、生年月日や血液型は、この書類に書かれてあるもので間違いない?」
「はい、間違いないです」
「ん、OK。ちょっと待ってねー」
パソコンに慣れた手つきで打ち込んでいく。
やはり任されているだけもあって慣れているな。
「で、えーっと……名前は、在原
「サトルです。暁と書いて、サトルって読みます」
「おっと、間違えちゃってゴメンね」
「いえ、よく間違われますから」
「サトルね。在原
キボードを叩く手が止まり、なにやら考え込んだ。
どうしたんだ?
「……あの、なんですか?」
「もしかしてなんだけど……以前にアタシと会ったことない?」
「先輩と……?……ないと思いますが」
「あの……ちなみに先輩のお名前は?」
「ん?あーそっか。何か忘れてると思ったらアタシの自己紹介か、ゴメン。失礼しました。アタシの名前は式部茉優。どう?この名前に覚えがない?」
「式部……茉優、先輩……」
名前を聞いて少し考えこんだ後
記憶にないと答える暁。
「……本当に?何も引っかからない?」
「……兄さんはどう?」
「俺か?……お前がわかんないなら、俺が知ってるわけないだろ」
「そうだよな。すみません。やっぱり記憶にないです」
「そう……そっか。なら勘違いかな。ああ、突然ゴメンね。気になることがあると口にせずにはいられないのが、アタシの悪い癖で。自覚はしてるんだけど、性分なのか自分でもやめられなくってね」
血液型などの個人情報を確認した後、再びキーボードで打ち込んでいく式部さん。
「それで妹の……在原七海さんで、合ってるよね?」
「はい」
「じゃあ同じ女の子の可愛い後輩だし、七海ちゃんって呼ばせてもらっちゃおうかな」
「え!?また!?」
「ダメなの?」
「いえ、その……ダメ、ではないですけど……」
「遠慮しなくていいですよ。七海人見知りなので」
「ふむ。なら遠慮なく呼ばせてもらおうかな、よろしくね七海ちゃん」
「〜〜〜ッ」
「七海ちゃんは可愛いなぁ〜あ、在原君。同じ学年なんだから別に敬語じゃなくていいよ」
「なら、そうさせてもらうよ。あと俺も下の名前で呼んでくれると助かる」
「そう?じゃお言葉に甘えて。それで、えっと能力は、四季君は『強化』で……暁君は『身体能力の強化』なんだね」
事前に報告していた俺達の能力に関しては偽の情報を書かせてもらった。
これは、特班のエージェントとして何かあったときのために能力を隠蔽するという目的がある。
ちなみに七海の能力に関しては偽る意味がないため本当の情報を書いた。
「それから七海ちゃんが『治癒』と。じゃあ、まずは能力の確認をさせてもらうね。3人とも、これを持って」
そう言って差し出されたのは、付箋のような長細い長方形の紙。
「なんですかこれ?」
「アストラル能力の性質を調べるためのもの。知っての通りアストラル粒子の変化は、使用者によって固定されるけど、その変化はある程度分類することが出来るわけ──」
「「「……」」」
「あー……ゴメン。どうも、こういう解説をするとき、無駄に説明を長くしちゃってね。端的に説明すると、リトマス試験紙のような物だと思ってくれればいいよ」
「「あー……」」
「なるほど」
「その紙を持って、能力を発動させてみてくれる?そしたら色が変わる。こんな感じの簡単な検査を複数重ねて、キミたちの能力を特定していくからね」
「ああ、勘違いしないでね。キミたちのことを疑ってるわけじゃないよ。自分の能力でも、勘違いしてることはよくあるからさ」
「間違えてる能力を認識してる可能性があるから?」
「そういうこと。面倒だと思うけどよろしくね」
そうして、検査を終えたのは10個近い検査を行ってからだ。
だいたい2時間くらいかかったと思う。
これで能力に関してバレた場合もう誤魔化しようがないが……
「さてと、検査の結果だけど……まず四季君。君は自分とモノに影響を及ぼすタイプ。珍しいね」
「そうなのか?」
「うん、みんな基本自分に影響を及ぼすタイプか周りに影響を及ぼすタイプに分かれるからね。この学園では初めてだね」
無事に誤魔化せていたことに安堵しつつ、式部さんの話を聞いて納得する。
確かにこれまでの任務でも俺と似たようなタイプの能力者は見たことがない。
あまり自覚はなかったがそう思うと結構珍しいんだな。
まあ、こっちは副産物で本来の能力じゃないけど。
「次に暁君。キミは自分にだけ影響を及ぼして力を発言するタイプ。申告の通り、身体能力の強化で間違いないと思う」
「そうですか」
「七海ちゃんの治癒は、対象相手の治癒力を高めるタイプだね。ケガを無かったことにするわけじゃないけどやっぱりすごい能力だね」
七海に関しては誤魔化しようがないから仕方がないが。
暁もバレていないようだ。
よかった。
「あの、質問いいですか?」
「なんでしょう?」
「先輩もアストラル使いなんですか?」
「言ってなかったっけ?そうだよ。あんまり役に立たない能力だけど……ほら」
そう言った式部さんは、コーヒーの入ったコップを持ち上げて空中で手を離した。
だがコップは落ちることはなくその場で停止している。
「物体を固定する能力、ですか?」
「微妙に違うかな。これは、物体ではなくアストラルを停止……その場に固定させてるって考えてくれればいいよ。ざっくり言うなら、空気中に見えない壁を生み出すようなものだね」
「アストラルを?」
「ざっくり言うなら、空気中に見えない壁を生み出すようなものだね。今は固定したアストラルを土台にして、そこにコップを乗せてるって訳さ」
「面白い能力ですね」
「意外と汎用性もなくて、大して役に立たないけどね」
能力を解除してコップを手に取る式部さん。
その能力の効果範囲がどれくらいかはわからないが実際結構使える能力だと思うのだが。
例えば、人の動きを固定するように周りをアストラルで固めたして身動きを取れなくすることなんかも可能なんじゃないだろうか。
そんな感じで使えるのなら俺達の仕事では結構役に立つだろうな。
「これで登録完了。3人ともお疲れ様」
「式部先輩もお疲れ様です。休日なのに俺達のために」
「いやーそのー……気にしないで、いいよ?どうせ暇してたから?……2回もダブると、周りもどう接していいのか分からないみたいでね……」
「そんな悲しいこと言わないでくれ」
「俺で良ければ、いつでも先輩にお付き合いしますよ」
「わ、私もっ、お付き合いしますので」
「俺も同じく」
「……こんなオバさんでいいの?」
「オバサンって歳じゃないでしょ」
「うぅ……ありがとう」
そんな、泣くほどだろうか……
「とにかく、編入したばっかりですから。先輩が友達になってくれると嬉しいです」
「わたしも、同じ気持ちです」
「3人とも……ありがとうっ。今後とも、よろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
「何かあれば力になりますから。いつでも言ってください」
「ありがとう。じゃあ……早速だけどちょっといい?」
早速か。
急いでいるわけでもないから別に問題はないが。
「別に問題ないですけど……何をするんですか?」
「四季君の能力について、もう少し確認しておきたいんだけど……付き合ってくれないかな?」
俺か、そういえば俺の能力タイプって結構珍しいんだったな。
それに興味を持つのは必然か。
……ていうか、近いな。
なんていうか、暁みたいに女慣れしてないとかじゃないんだけど。
ここまで近いとさすがに少し気になる。
「ああ、別に構わないけど」
「やった♪ありがとう!」
「でも、なにを確認するんだ?」
「正式な実験ってわけじゃないから気を楽にして。んーそうだなー……」
『強化』の実験と言ってもそう思いつかないな。
恐らく確認したいのは自身と自分以外のモノにどういう風に影響があるのかを確認したいんだろう。
自身への影響なら簡単に思いつくが……あ、そうだ。
「式部さん。何かいらないコピー用紙とかないか?」
「ん?あるけど……?」
「だったらそれ貸してくれない?」
式部さんは不思議そうな顔をしながら、机の端に積まれていたA4サイズのコピー用紙を一枚抜き取って俺に手渡した。
「ありがとう――――
俺は受け取った紙を、左手で軽くつまむようにして持って能力を発動させる。
――――構成材質、解明
――――構成材質、補強
パシッ、と空気が弾けるような音がした。
「――――
俺が持っているのは、ただのペラペラのコピー用紙だ。本来なら自重でしなるはずのそれが、今はまるで鋼鉄の板にでもなったかのように、水平にピンと張り詰めている。
俺は空いた右手で、その紙を軽く弾いてみる。
コン、コン、と木材を叩くような硬質な音が室内に響いた。
式部さんが目を丸くする。
「すごい……! ねえ、これどれくらいの強度があるの?」
「試してみるか? ハサミでも多分切れないと思うけど」
「ちょっと、やってみていい!?」
式部さんは子供のように目を輝かせると、机の引き出しから事務用のハサミを取り出した。
俺が差し出した紙の端に、彼女がハサミの刃を当てる。
ガリッ、と紙を切る時のサクッ、という感触ではなく、まるで金属同士がこすれ合うような鈍い音が出た。
式部さんはぐっと手に力を込めるが、ハサミの刃は紙の表面を滑るだけで全然刃は進まない。
「……嘘、ここまでなんて…………もしかして四季君の『強化』は、単なるアストラルを用いた強度を補うものじゃない?まさか物質の概念すら――」
式部さんは感心したように顎に手を当て、ブツブツと分析を始めてしまった。
……どうやら、実験としては大成功のようだ。
「四季君やりすぎ。式部先輩、もう目がマジだよ」
「いや、まさかここまでとは……」
ちなみになんですけど、ヒロイン誰が好きです?
-
三司あやせ
-
在原七海
-
式部茉優
-
二条院羽月
-
壬生千咲