女好きべレス先生の覇道   作:カバー

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女好きべレス先生の覇道 スタートライン

 

 

 

 

べレス視点

 

 

 

 

父であるジェラルト・アイスナー曰く、私は非常に珍しい赤子だったそうだ。

 

何でも、ピクリとも笑顔を浮かべず不気味なほど静かで、心臓すら動いていなかったとか。

 

…まあ、依頼をこなした後酔っ払いながら零した話だ。十中八九でまかせだろう。

 

そんな私は、子供の頃も感情が極めて薄かったらしい。

そう。あの時までは。

私はジェラルトの影響で年齢を気にしたことがないので、詳しい時期は分からないが、まあようやく言葉が喋れるか喋れないか程度の時期だと思って貰えばいい。

 

私は父の傭兵団で育てられたので、自然彼らと行動を共にしていた。

 

その日の任務は、大修道院付近の小さな村から依頼された簡単な盗賊退治だった。が、彼らはあろうことか、聖地である赤き谷ザナドに逃げ込んだのだった。

 

 

「あそこに逃げ込んだとなると、面倒なことになるな…大修道院の連中に出くわすのはさけてえ。」

 

 

そう言うとジェラルトは小さくうめいて頭を掻いた。…ジェラルトが任務でこうも面倒そうにしているのは、かなり珍しかった。

 

 

「ですが団長…依頼を放棄するわけには…前金も貰ってるわけですし。」

 

 

そうジェラルト傭兵団の団員はもっともな指摘をした。

彼はジェラルトが面倒臭くて投げっぱなしにする書類や金銭管理の仕事担当の男で、実質的には彼が副長とも言える立場だった。

 

 

「分かってるよんなことは。…仕方ない。さっさと片付けてさっさと出ていこう。幸い盗賊連中も小規模だ。ささっとやりゃ教団の奴らにもバレねえだろ。」

 

「それしかありませんね。うちの連中にも伝えときます。」

 

「ああ、頼む。」

 

会議を終えると、ジェラルトは団員の一人が面倒を見ていた私の元に歩み寄ってきた。

 

「じぇらると、またしごと?」

 

そう子供らしからぬ無表情に聞く私の頭を撫でながら、ジェラルトは笑顔で答えた。

 

「おう。まあ軽いもんだがな。ただ、ちょっと速く移動しなきゃならない。明日の早朝にはここを立つ。今日は早く寝ろよ?」

 

「うん。わかった。」

 

「いい子だ。」

 

ジェラルトは私の額にキスをして寝床に入っていった。

髭が痛かったけど、ジェラルトのキスはあったかい気持ちになって好きだった。

 

 

翌日私は目を擦りながら皆んなと一緒に移動していた。ジェラルトは私を片腕で抱きながら乗馬していた。

彼の乗馬の腕は見事なものなのは昔からだった。今でもジェラルトには乗馬では敵う気がしない。

 

「着きましたね。」

 

まだ日が辛うじて昇っているかいないかの時間

一団は古い遺跡がところどころに立ち並ぶ谷の前で止まった。

団員がそう呟くと、ジェラルトは無言で頷いた。

 

「おう。それじゃあこれからは戦闘員だけで盗賊連中の捜索と排除。残りの連中は少数の護衛とここで待機だ。」

 

そう指示を出すとジェラルトは私の顔を覗き込んだ。

 

「と、いうわけだ。悪いがここでちょっと待っててくれ。すぐに済む。」

 

私を安心させようとする声。だが、私にその声は届かない。

私はその遺跡の光景に何故か釘付けになっていた。

 

「…おい?べレス?」

 

「じぇらると…やだ…なんだかここ…いやだ…」

 

そう震えて顔を歪ませる私に、ジェラルトは顔を険しくして語りかけてくる。

 

「おい…どうした?お前そんな顔初めて…」

 

 

視界一面に景色が広がる。

頭が痛い。ヒビが入ったかのようだ。

遺跡となったこの地の以前の光景が見える。

 

 

あかい。

あかい。

 

 

見事な建築物が、子供が、男が、女が、殺されていく。壊されていく。

 

 

あかい。

あかい。

 

ここは…あかい。

 

 

 

「ああああああああ…ああああああ…!!!」

 

 

悲鳴を上げて頭を抱える私に、ジェラルトが酷く焦燥した顔で呼びかけてくる。

 

 

「おい!?大丈夫か!?クソ!!!だから大修道院に近づくのは嫌だったんだ!!」

 

「お嬢!?おい!早く医療担当のやつこい!!!お嬢が!」

 

 

そんな周りの叫び声を聞きながら、私の意識はプツリと絶えた。

 

気がつくと、私は暗闇に立っていた。ほのかな緑色の光が灯りを照らしている。

 

 

 

目の前には、ぽつんと一つの古めかしい玉座。

そして…そこには一人の少女が座っていた。

緑色の長髪を見事な金色の髪飾りで飾っており、少女に似合わない胸元の空いた、非常にセクシーな衣装を着てその玉座で眠っている。

やがて少女は静かに目を開き、こちらに気付いたようだ。

 

「わしの寝顔を盗み見るとはの…」

 

そう言うと少女は尊大に座り直し、こちらを見つめて語りかけてくる。

 

「童か。お主、何者じゃ?」

 

「だれ…?ここ、どこ?」

 

そう私が問うと、ムッとした顔で少女は捲し立てる。

 

 

「質問に質問で返すでないわ!名前を尋ねるなら先に名乗るのが礼儀というものであろ?」

 

 

「わたしのなまえ…べれす。」

 

「…ほう。べレスと言うのか。耳慣れん名じゃの。人の子か?」

 

「ひと…うん。だと思う。」

 

「はっきりせんのう…まあ、童とはそのようなものか。」

 

 

 

そう言うと、鼻でフンと笑い、少女は相も変わらず尊大に彼女の名を告げた。

 

 

「わしの名はソティス。"はじまりのもの"と呼ばれておる。」

 

 

「そてぃす?それで…ここは?」

 

「…ふっ。童とは質問が多いものじゃの。それはの…」

 

そう言ってキメ顔で彼女は勿体ぶると、堂々と答えた。

 

 

「わしにも詳しくは分からん!!」

 

「えぇ〜…」

 

 

そんな呆れ混じりの視線を無視し、ソティスはブツブツと呟き始める。

 

 

「ソティス…ソティス。確かにわしは、ソティスじゃ。」

 

「それに、始まりのものか…いったい誰にそう呼ばれておったのか。」

 

「なに、わしは今まで名前すら思い出せなんだのじゃ。それが先程はするりと口をついた。おかしなこともあるものじゃ。」

 

 

その様子と独り言の内容から、幼い私は幼いなりに現場の混沌さを悟り、呟いた。

 

「きおく…ないの?」

 

すると、ソティスはムッとした顔で私に噛みついてきた。

 

 

 

「おぬし、わしを己が名前すら知らぬ童と思うたか!お主と一緒にするでないわ!」

 

そうぷりぷりと怒る彼女を見つめていると、段々と視界がぼやけてくる。

 

 

「ああ。詳しくは分からんと言うたが、これはお主の夢のようなものじゃろう。それだけはなんとなく分かる。」

 

「これ…ゆめなの?」

 

「厳密には違うと思うがの。まあ、おぬしが目を覚ませば色々と分かることもあるじゃろ。はよ起きよ。」

 

 

 

そんな声が遠のき始めて、やがて私は静かに目を開いた。目の前には、狼狽えているジェラルトの顔。

 

「う、あ…ここは。」

 

「!!良かった!目が覚めたんだな!」

 

そう言うとジェラルトは私を抱きしめて涙を流し始めた。

私が困っていると、聞こえないはずの少女の声が聞こえてきた。

 

「おぬし、父親から愛されておるのじゃの。そういう絆は大事にするんじゃぞ?」

 

私の目の前には、夢の中で見た少女…ソティスが浮かんでいた。

 

 

 

「え!?なんで、ゆめなら…」

 

「わしはおぬしの夢だけの矮小な存在ではないわ。その証拠にほれ、見えるじゃろ?」

 

「おい!どうした?べレス。何を見てる?」

 

そうジェラルトが心配そうに私を見つめながら問いかけてくる。

 

「ジェラルト、みえないの!?」

 

そう私が驚くと、ジェラルトは深刻そうな顔で私を見つめてつぶやいた。

 

 

「くそッ。幻覚の症状か。熱は…ない。おい、べレス、何が見えるんだ!?」

 

 

「そこに…そてぃすがいるよ!!」

 

瞬間、ジェラルトが驚愕の顔になって叫んだ。

 

 

「なぜ女神の名を!?お前には聖教会の存在すら…」

 

「女神とな?わしは女神なのか?」

 

 

 

その場で私はジェラルトから1時間ほど質問責めにあった。

そして辿々しく説明する私の話を聞き終えると、ジェラルトは無言で私の肩に手を置き、震えながら私に言った。

 

 

「…いいか、お前の見ているそれは、単なる幻覚だ。話しかけてきても、無視しろ。いいな?」

 

「なんじゃと!?わしは幻覚などではないわ!」

 

いつになく何かに怯えた様子のジェラルトと怒って叫ぶソティスに、私の頭は混乱して限界だった。

 

「でも…」

 

「…頼む。約束してくれ。」

 

「…分かった。」

 

私は納得できないなりに、ジェラルトの頼みを断れず了承した。

 

 

 

 

 

それから多分…あー…10年ぐらいかな?

私は父親や団のみんなから修行を受けたり実践で戦ったりしながら、メキメキと傭兵として成長していった。

それと同時に、私はどんどん表情が豊かになっていった…らしい。

 

宴では酒場で皆と談笑しながら酒を飲み

 

「いっき!いっき!」

 

「団長とべレスには酒じゃ勝てねえよ…」

 

「はっはっは!!どうした!べレスに負けてちゃ男が立たねえぞ!」

 

「私はまだ10杯はいけるけど?」

 

「勘弁してくださいよ二人とも…」

 

 

団員が戦で死ねば皆んなと涙を流し弔う。

 

「…いい奴だったな。大丈夫か。べレス。」

 

「うん。…また飲み比べ、したかったな。」

 

 

そんな風に人間らしくなっていった私に皆んなも自然と仲良く振る舞ってくれた。

 

 

 

巷で壊刃のジェラルトの娘の凄腕の傭兵、灰色の戦乙女と言われ始めた。

…まあ、団内では別の呼び名で呼ばれてもいるけど。

 

 

 

 

「灰色の戦乙女…か。ふふふ。それなりに有名になったのう。」

 

「そうだね、ソティスほどではないけど。」

 

「うむ。まさかわしがフォドラの女神だったとはのう。てんで記憶は戻らんが。」

 

 

 

…そんな私だが、周りが見ていない間に密かにソティスと話は続けていた。

というより、四六時中話しかけてくるので、無視するのも気持ち的に憚られた。

 

ソティスについて密かに調べた結果、彼女はこのフォドラにおいて絶大な信仰を誇るセイロス正教会の唯一の女神であることが分かった。

 

…そして、ジェラルトが何故か意図的に私をセイロス教に触れさせないようにしていることも。

 

あの様子からすると理由を素直に聞いても答えてくれないだろう。

 

「気長に色々フォドラ中を見て回ればソティスの記憶も戻るかも。」

 

その一言に、呆れたかのように私の前に浮いているソティスはため息をつく。

 

「呑気じゃのう。ま、わしもそれ以上の案は出せぬが。お主の父親がいる以上、わしを崇めている殊勝な連中に接触するのも難しかろう。」

 

「…そうじゃ!独立してみるのはどうじゃ!お主もそろそろ自分の傭兵団を持っても良かろう。」

 

「独立…独立か。うーん…考えてなかったわけではないけど。でも、まだジェラルトから学べることはまだ沢山あるからね。学べるだけ学んでおきたい。」

 

 

 

そういうと、ソティスは不貞腐れたように顔を背けてぷかぷかと浮いている。ソティスは相変わらず少女の姿のままだ。成長することはなかった。

それが何を意味するのかは私にはわからない。

 

 

「ふん。お主もまだまだ童よな。いい加減父離れしてもよいのではないか?」

 

「童のままなのはソティスもだろう?…まあ。」

 

 

そう言うと、私は小さく舌なめずりをした後、私に向けられているソティスの剥き出しの背中を指でつー…っと撫でる。

 

「ひゃうっ!?だ、だからそれはやめよ!」

 

「ふふふ。ごめんごめん。ただ…私はそんな君を抱きたいと思うけどな、ソティス。」

 

「おぬし…相変わらずよな…」

 

団内で呼ばれている私の別名。それは…女好きのべレス

 

私は同盟、王国、帝国を回る中で、依頼人の貴族の娘から酒場の女将、団の女団員にまで手を出してきた。

私はどうやら顔が良い、と言う部類に入るらしい。スタイルも良いそうだ。

そんな私がその気になれば、堕ちる女の子は割と多かった。

 

ジェラルトは半ば呆れながらも

 

「俺は酒癖が悪いが、お前は女癖か…どこが似たんやら。刺されんなよ。」

 

と笑っていた。

 

感情が芽生えた私はどこかタガが外れたのかもしれない。

でも今の私はそれを受け入れた。

 

 

そして一つの野望を抱きもした。

それは…私の美女たちのハーレムを作ること。

 

 

その為には地位がいる。

傭兵団を自分で立ち上げるのがまずはスタートラインだろう。

まあ、長い道のりになるだろうが。

 

そう思っていた私にとんでもない機会が転がり込んできたのは、意外と早かったのだった。

 

 

 

 

 

 

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