女好きべレス先生の覇道   作:カバー

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風花雪月の生徒の食の好みって育ちやこだわりが見えて面白いですよね


女好きベレス先生の覇道 束の間の平穏

 

 

 

 

べレス視点

 

 

 

 

 

 

ソティスが赤の谷の盗賊の件の話を聞いて苛立っているのを抑えながらも、私は教師としての仕事を本格的に開始した。

 

 

まずは書庫で魔道などの自分が扱えない分野の教本を片っ端から理論化し、街で買った紙の束に書き込んでいく。

 

 

本というものは人件費の塊である。

紙自体はフォドラでは流通しており、別にそこまで貴重ではないが、本となると話は別だ。

基本的には手書きの写本か、木版で作ることとなる。どちらもそれなりに手間暇がかかるので、値段は高い。

 

 

そんな本がずらりと並んでいるのは、流石はフォドラで一番大きな修道院と言えるだろう。

 

 

それから授業に入る。

まだ基本的に得意分野以外は皆んな初歩の初歩なので、教えるのが大変楽で助かる。

 

 

ヒューベルトからそれなりに高度な魔道の教えを請われたときは流石に焦ったが、何とか満足させられたようだ。

 

 

だが皆流石に学習速度が速い。特にエーデルガルトは実戦でも机上でも飲み込みの速さがかなりのものだ。

 

 

「先生は本から要点を抜き取って教えるのが上手いわね。もっと貴女の力を見せてちょうだい?」

 

 

そんな風に煽られたら、もう頑張るしかないだろう。

 

後はまあそれぞれの生徒の身につける職…というか戦闘での戦い方を見定めていくのも必要だ。

 

例えばカスパルなんかは分かりやすく近接格闘型だ。

魔法が向いている生徒も全体的にはっきりしていて分かりやすい。

 

だが、私が一番悩んでいるのはフェルディナントのことだった。

 

 

 

 

 

「貴族である私は当然!優雅に馬上で戦うのが相応しいといえるだろう!そうだろう?先生!」

 

 

「うーん…そうだね…いや、どうだろう?」

 

 

「何だねその気のない反応は!先生からは何か他の案があると!?」

 

 

「いや、フェルディナントは以前も言ったけど回避行動に優れているからね。それならがっしりと攻撃を受け止める馬より、飛行系の職の方が…」

 

 

「む…そうか。分かった。少し考えてみる。」

 

 

そう言うとフェルディナントは考え込んで未だ答えは出せていないようだ。

 

 

当人の希望する職と、向いている職が必ずしも同じとは限らない。どちらを取るべきか…私はそれに悩んでいた。

 

 

「なんじゃ、おぬしも案外教師らしくなったのう。まあ、元は割と真面目じゃからなあ、おぬし。」

 

「うーん…なんか生徒のことを見てると応援したくなるというか…なんというか…」

 

「ほほ。教師が天職なのではないか?」

 

 

 

そんな風にソティスと話しながら大広間を歩いていると、可愛い女の子の生徒3人と会話している見慣れた顔が居た。

その赤髪の軽薄を絵にして描いたような男は、こちらを見ると親しげに話しかけてきた。

 

 

「あ!先生じゃないですか。いやあ、お久しぶりですね。」

 

「シルヴァン…君とは一度何年か前に会ったばかりなのに、よく覚えてるね。」

 

「そりゃあ…あんな経験したら嫌でも覚えてますよ…」

 

「え!?先生とシルヴァンくん、知り合いなの!?」

 

「もしかして付き合ってたりしないわよね!」

 

 

 

そんな風に騒ぐ女の子達に、私とシルヴァンは苦い顔をして応じる。

 

「いやあ、それはないよ。ただ何というか…痛い目を一緒に見た仲間というか…」

 

「…グェンダル卿の件はあまり思い出したくないね…」

 

そう二人して苦い顔をするのは、王国領の騎士、グェンダル卿の娘である箱入りの女の子を、私たちが口説いていた思い出があるからだ。

 

グェンダル卿から任務を依頼された私とジェラルトは、そこで初めてそのお嬢さんに出会った。

夢見がちで、騎士や傭兵に憧れていたその女の子を、私はまあ辿々しく口説いた。

 

すると、

 

「ごめんなさい…私にはシルヴァンという心に決めた方がいるのです。」

 

そこで私は、そのシルヴァンとやらと女の子を巡って夜中にその女の子とシルヴァンと会うこととなった。

 

グェンダル卿の邸宅付近の広間で待っていると、その男は現れた。

明らかに軽薄そうな男…それがシルヴァンへの私の第一印象だった。

 

案の定、

 

 

「いやあ、まさか恋敵がこんな綺麗な女の人だったとは。どうです?なんなら二人一緒に俺の恋人に…」

 

「…生憎だけど断るよ。私にそのつもりはない。」

 

「それは残念。そうだ。よかったら二人でお茶でも…」

 

 

女の子を待っている間ずっと私を口説いてきた。

面倒になって途中からはかなり雑にあしらったが、それでも特にめげる様子はなかった。

 

 

「おい、貴様ら…」

 

 

「「!?」」

 

 

そんな中、突然目の前に現れた馬上に乗る完全武装のグェルダル卿。

 

二人して呆然としながら後退り、恐る恐る問いかける。

 

「あのう…グェンダル卿。いったい何をしにここへ…」

 

 

「そんなこと決まっておろうが。我が娘に手を出そうとする不埒な者どもを…八つ裂きにするためだ!!!!」

 

「う、うわああ!!」

 

「逃げるしかないか…!」

 

私とシルヴァンは全力で街を逃げ回り、グェンダル卿に何度も殺されかけた。

後日に、ジェラルトとシルヴァンの幼馴染だという、金髪長髪の真面目そうな貴族の女の子が謝りに行ったらしい…

 

 

 

「あの時のことは死んでも忘れないと思いますよ。」

 

「そうだね…」

 

 

 

そんな風に染み染みと言い合うと、シルヴァンが気を取り直して話しかけてきた。

 

「そうだ、先生。実は折り入ってお願いがあるんですよ。」

 

「なに?付き合ってくれってお願いならお断りだけど…」

 

「ああいえ。そういうのじゃなくてですね。俺を先生の学級に入れてくれないかなって。」

 

そう問いかけるシルヴァンに私は少々驚く。

普通他の学級に移るのは最低でも二つは節が経ってからの生徒がほとんどだと聞いていたからだ。

 

「なぜ?」

 

「あーいや…俺も真面目に学び直さなきゃなって。それで。」

 

「本当は?」

 

「……殿下とイングリットが居ると、女遊びしづらくて…」

 

「…そんなことだろうと思った。」

 

私は軽くため息をつく。でもまあいいか。こんな男でも生徒は生徒だ。うちで学びたいと言われるのは素直に嬉しい。

 

「別にいいけど、きっちり学んでもらうからね。」

 

「ありがとうございます!あ、先生この後時間あります?もし良かったら…」

 

「いや、悪いが予定がある。」

 

「そうですか。何の予定で?俺もついていきますよ。暇なんで。」

 

そんな風に周りの女の子3人を気にもせずに言う。…こういうところが好きになれない。

 

「ジェラルトが居るけどいい?」

 

「あ、それなら結構です。お二人で何のようで?」

 

「釣りに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

この広大な大修道院では、どうやら釣りすらできるらしい。近くの水場から水を集め、様々な魚を入れた釣り場を作った。

食事の際にはそこから釣るのだそうだ。

…まあ、貴族や修道士は血の滴るような肉は好みではなく、魚を好む者が多い。

そこに配慮して作られたのだろう。

 

 

 

「よう、遅かったなベレス。もう始めてるぞ。」

 

 

「あ、先生。師匠もう8匹は釣っちゃったよ。時間は厳守が傭兵の基本じゃないのか?」

 

 

そんな風にジェラルトとオレンジ髪をざっくりと切った活発そうな女の子…レオニーが釣りをしながらこちらに話しかけてくる。

 

 

私は釣り竿と餌を取ってジェラルトの隣に座り、釣り糸を垂らす。

 

 

「悪いね。どうにも途中でシルヴァンに捕まってしまって。」

 

その一言にレオニーが反応する。

 

「ああ!あの女好き、先生にも声かけてたのか。ったく。暇なやつだよな。」

 

「女好きだぁ?…まるでどっかの誰かさんみたいだな?」

 

そう言ってジェラルトはニヤリと笑うと、こちらに悪戯っぽく笑って揶揄ってくる。

 

「まあね。でも今回は違ってさ。私の学級に入れてくれってさ。」

 

「ほう。お前そんなに教師として評判になってんのか?」

 

そうジェラルトが驚いた様子で問いかける。

私はそれなら良かったけどねと言い、魚を一匹釣り上げると、笑って首を横に振った。

 

 

 

「いや。何でも、今の学級だと女遊びし辛いんだって。」

 

「はあ?そんな理由でころころ学級変えるのかよ。ホントふざけてるな、あいつ。」

 

 

 

レオニーの言う通りだねと答えて、でもと私は言葉を続けた。

 

 

 

「でも、どんな理由だろうと私の学級に来てくれるのは嬉しいよ。きっちりやることはやってもらうしね。」

 

そんな私を見て、ジェラルトは小さく微笑んで、独り言をぽつりと呟いた。

 

「ったく。こんなに元気に張り切ってるなら、最初からここで教師やっても良かったかもな…」

 

 

「何か言いましたか?師匠?」

 

「何でもねえよ。」

 

それからは各自が無言で竿を振り、魚を淡々と釣りあげていった。

 

無言の落ち着く空間。それは突然のあの騎士の大声で切り裂かれた。

 

 

 

「おおっ!!ジェラルト殿ではありませんか!!釣りですかな!?実は私も釣りに…」

 

 

「うるせえよ!魚が逃げるだろうがアロイス!!」

 

「やめてくれよアロイスさん!魚が逃げたじゃないか!」

 

「アロイス…大声はやめてほしいな。」

 

 

私たち3人に一斉に怒られたアロイスは、肩を落として項垂れた。

 

「むう…すまぬ。」

 

その隣には緑髪の厳格そうな、見知った顔が立っていた。聖キッホル…セテスだ。

 

「ほう。今日の釣り場は人が多いな。どれ。私も釣るとするか。」

 

少し距離をとって座ったセテスは、餌をつけずに竿を振るった。それを不思議そうに見ていたレオニーが問いかける。

 

「あれ?セテスさん。餌つけないんですか?」

 

「ああ。私は魚を求めて釣りをしているわけではないんだ。想いに耽るためにやっている。」

 

 

 

その一言にレオニーが驚いて言葉を返した。

 

「そんな人も居るんですねえ。うちの村だと1匹釣れるかが死活問題ですからね。そんな余裕なかったですよ。」

 

「ま、俺ら傭兵も同じようなもんだな。食うために釣る。釣った魚を焼いて齧り付き、酒で流す。それが最高の時間だ。」

 

 

 

そんなジェラルトの言葉に私は頷く。

そしてジェラルトはアロイスを見て呆れたような声を出して言った。

 

「ま、こいつは1匹も釣ったことないがなあ。存在がうるせえんじゃねえか?」

 

「さ、流石にそれは酷いですぞジェラルト殿!!」

 

「だから大声出さないでくださいって!」

 

「むう…すまぬ…」

 

またもやレオニーにアロイスが怒られる。

 

「たまにはこういう賑やかな釣り場も悪くないな。」

 

そんな光景を見て、セテスはポツリと独りごちた。

平和な時間。それがどれほど貴重かは、彼は身に染みて分かっていた。

 

 

その後レオニーに勧められて餌をつけたセテスも凄まじい量を釣り、一人何も釣れなかったアロイスは項垂れていたという。

今日の食堂は、魚尽くしだ。

 

 

 

 

 

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