女好きべレス先生の覇道   作:カバー

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女好きベレス先生の覇道 揺れ動く王国の余波

 

 

 

 

ベレス視点

 

 

課題当日の朝。私は事後処理に同行する聖騎士カトリーヌと共に、生徒を引き連れて馬車でマグドレド街道まで向かっていた。

 

カトリーヌは勝ち気そうな女騎士そのものだ。

日に焼けた肌に長めの金髪が映える。

魅力的に整った顔立ちには自信が見て取れる。

美人なだけでなく、かなりの強者だろう。

…お近づきになりたいが、なかなか難しそうだ。

先ほどから軽く口説き文句を織り交ぜて話しかけても、とりつく島がない。

 

 

霧がだんだんと濃くなってくる。

…こうも視界が悪いと厄介だな。

ソティスが目を細めて小さく呟いた。

 

 

 

「この霧、微かだが闇の魔道の力を感じるの…気をつけよ。もしや虫どもが関わっておるかもしれん。」

 

 

 

虫…とは、以前遭遇した未知の連中のことだろう。

ソティスが生きていた頃から残っている不穏分子…らしい。取り敢えず隣に座っているカトリーヌに忠告しておこう。 

 

 

 

「…カトリーヌ、この霧。闇の魔道で生み出されたものかもしれない。気配を感じるんだ。…どう思う?」

 

その一言を聞いたカトリーヌは、怪訝そうに答えた。

 

 

「…本当か?確かに、ロナート卿には怪しい連中から魔道を教わった、お抱えの魔道士が居るって話だったが…まだ戦場まで遠いぞ?気のせいじゃないのか。」

 

だが、それにヒューベルトが意を唱えた。

 

「…おや。先生も勘付かれましたか。どうも先程から私もそれらしい気配は感じていました。…にしても、よく闇の魔道をご存知で。ククク…どこで知ったのですかな?」

 

 

そんなヒューベルトの言葉を聞いて、カトリーヌは警戒するような顔に変わり、声を荒げた。

 

 

「おい!ならなんでもっと早く言わなかった!」

 

 

「…申し訳ありませんな。あまりにも微かな気配だったので、確証が持てませんでした。下手に場を乱すのもよくないでしょう?」

 

 

「…そうか。分かった。…クソ。なら前線が素通りされてる可能性もあるな。この霧じゃあロナート卿の本隊を見落としちまうかもしれない。」

 

 

 

そうカトリーヌは一人忌々しそうに呟くと、私とエーデルガルトに指示を出す。

 

 

「あんたらで生徒連中に伝えといてくれ。流れ次第じゃ実戦もあり得るってな。」

 

 

それからしばらく霧の中を警戒しながら馬車は進み、ある程度霧が深くなり視界が悪くなると、警戒して徒歩で移動し始めた。

 

 

ひとまず無事に待機場所まで移動し、警戒しながら前線での戦闘が終わるまで待機することとなった。

 

 

ヒューベルトがそういえばと言葉を漏らした。

 

 

「先生は勿論、英雄の遺産を扱える、雷霆のカトリーヌ殿とご同行とあらば、どんな強敵が現れようと安心ですな。」

 

 

雷霆、という言葉でカトリーヌが自慢げに歪な形の刀を取り出した。…それを見てソティスが舌打ちをして忌々しそうに呟く。

 

 

「わしの息子を辱めよって…何が英雄の遺産じゃ。セイロスの手下で無ければ八つ裂きにするところだったわ。」

 

 

そう。レアから聞いたが、英雄の遺産とはナバテアの遺体を加工して作られたもの…らしい。

紋章とはナバテアの血から奪われた力である…とも。それはソティスとしては心中穏やかではいられないだろう。

 

私はそんなソティスをなんとか抑えつつも、冷静にカトリーヌに言葉を呟いた。

 

 

「雷霆…それが英雄の遺産か。実物は初めて見たよ。」

 

 

カトリーヌはふんと鼻を鳴らすと、自慢げに言葉を続けた。

 

 

「そりゃそうだろうな。遥か昔、女神より力を与えられた十傑のみに与えられた特別な力だ。そうお目にかかれるものじゃない。…にしても、そんなあたしと同等に頼りにされるとはね。あんた、強いんだって?」

 

 

そう挑発的にカトリーヌは言葉を続ける。

 

 

「にしては訓練でやりあってくれないしな。…まあ、所作でそれなりの傭兵なのは分かるが。」

 

その問いに私は答える。

 

「…もし私と君が本気でやり合ったら、訓練用の武器とはいえ、どちらかはただではすまない、と思ったんだよ。」

 

カトリーヌは目を細めて呟く。

 

「へえ。…言うじゃないか。でもまあ、そうかもな。なら、実戦であんたの実力が見れるのを楽しみにしておくよ。」

 

エーデルガルトがその言葉にため息をついて話し始めた。

 

「今日は実戦無しの方がありがたいですが。…にしても、ロナート卿は本当に無謀な挙兵でしたね。聖騎士である貴女が事後処理に回ってもいい程度には教団には余裕がある。」

 

 

ヒューベルトがその言葉に頷く。

 

「本当に、無謀な挙兵ですな…なぜロナート卿がそのようなことをしでかしたのか、カトリーヌ殿には心当たりは?」

 

カトリーヌはその質問にため息をつき、先ほどとは打って変わって物憂げに問いかけた。

 

 

「あんたら、ダスカーの悲劇を知ってるか?」

 

 

ダスカーの悲劇。確かシルヴァンから、ドゥドゥーの嫌な噂が広まった時に軽く説明された記憶がある。

 

…アッシュとシルヴァンにもこの話は聞かせた方がいい気がする。

 

 

アッシュは今回の挙兵に関しての事情を知れるし、シルヴァンは王国貴族の内部事情を話してくれるかもしれない。

 

 

「ファーガスの前王がダスカー人に殺された事件…だったね。シルヴァンが詳しかったはずだ。シルヴァン、アッシュ、ちょっといい?」

 

 

そう少し遠くで、アッシュに絡んで励ましているシルヴァンに声をかける。

 

 

二人は声に気づいて近づいてきた。

 

 

 

「なんです?これからアッシュとドロテアちゃんに食事のお誘いをしようと…」

 

「しませんよそんなこと!…それで、なんですか先生?ロナート卿に何か…」

 

 

そう顔を曇らせて不安げに呟くアッシュには申し訳ないが、彼らから話は聞いておきたい。

 

 

「ダスカーの悲劇とロナート卿って何か関連があった?」

 

 

そう問いかけると、シルヴァンは割と真面目な顔で考え始めて、やがて呟いた。

 

 

「…そりゃあ、あの事件の余波を受けてない奴なんて王国には居ませんよ。王の居なくなったファーガスはもう傾きまくってますから。でも、ロナート卿か…なんかあった気がするなあ。アッシュ?知ってるか?」

 

 

「…すみません。分かりません。ただ、その時期にロナート様の一人息子が亡くなっているとは聞きました。」

 

 

 

その言葉に、カトリーヌはため息を零して頷いた。

 

「それが原因だよ。ダスカーの悲劇は王国内部の人間も加担した事件だった。そのうちの一人が、ロナート卿の息子、クリストフでね。その件で教団に捕まって、処刑されたんだ。」

 

シルヴァンはその言葉に思い出したかのように頷いた。

 

 

「あー…そういえばそうでしたね。確か、あの時の王国は荒れまくってたから罪人の処断もままならなくて…」

 

「そうだ。だから教団が代わりに処刑したんだ。」

 

 

 

「にしても、ダスカーの悲劇ってのは狡い言い方ですねえ。王国連中の陰謀の方が王を殺した確率は高そうなもんなのに。ダスカー人全てが悪いみたいだ。…実際、ダスカー人だけで王様の精鋭部隊を皆殺しになんてできるわけがない。関与してたかも怪しいもんだ。」

 

 

 

そう言葉を続けるシルヴァンに、エーデルガルトが意外そうに呟いた。

 

 

「貴方…そういうことにも頭が回るのね。女絡み以外大して頭を使ってないのかと思ってたわ。」

 

「ククク…貴殿を勧誘した判断を、ようやく少しだけ見直せましたよ。」

 

 

「…ははは。酷え言われようだな。まあ俺の素行が悪いのは事実だから何もいえないが。それを言うならベレス先生だってそうだぜ?」

 

 

「え?」

 

 

そんなシルヴァンの何気ない呟きに、エーデルガルトの可愛らしい顔が引き攣った。

私は慌てて話に入る。

 

 

「…シルヴァン。巻き込むのはやめてくれ。」

 

 

「でも、事実でしょう?ドロテアちゃんにもう手を回したって聞きましたよ。流石だなあ、先生は。俺にもちょっとその手練手管を教えてくださいよ。」

 

 

「…師?」

 

 

私をじっとりと見つめてくるエーデルガルト…可愛い。薄い紫色の瞳が細められて、まつ毛が強調されている。

 

 

しかし、心なしかヒューベルトの眼光も普段より鋭くなっている気がする。

 

問い詰められている状況。

でも、私とてそれなりに修羅場は経験している。

 

 

 

私はエーデルガルトの雪のように白く、柔らかなお嬢様特有の美しい手を取り、繊細な白い髪を優しくかきあげ、顔を近づけて、綺麗な耳元で甘く囁く。

 

 

「もしかして、嫉妬しちゃった?可愛いね。」

 

「…んっ!!」

 

 

エーデルガルトはそう短く声をあげ、白い顔を赤らめて慌てて飛び退く。…本当に可愛らしい。

 

 

 

それを見てシルヴァンは口笛を吹き、ヒューベルトはさらに目つきを鋭くしている。

 

後ろから凄い視線を感じて振り向くと、モニカが真顔で立っていた。

…なんだか、凄い圧を感じる。

 

彼女はエーデルガルトが好きなのだろうか?

…それなら彼女も是非私のハーレムに…

 

 

 

私たちがそんなやり取りをしている横で、アッシュが声を震わせてカトリーヌに呟いた。

 

「それが原因で、ロナート様は教団を恨んで…」

 

カトリーヌは小さな声でそれに呟いた。

 

 

「…正確に言えば、恨んでるのは教団と、息子を教団に突き出した…」

 

 

その瞬間、見張りをしていた付き添いの騎士が慌てて走り込んできた。

 

 

「報告!敵が接近中です!霧で目視が遅れました!包囲をすり抜けて向かってきます!」

 

「…やはり闇の魔道による霧だったか。ベレス!エーデルガルト!早速実戦だ!腕を振るってくれよ!!」

 

 

…嫌だった予感が的中してしまった。

霧の中での戦闘。まず生徒が被害を被らないように動くのが最優先だな。

 

「…近いの。闇の魔道の発生源がぼんやりじゃが見える。ベレスよ。わしがそこまで案内してやろうか?」

 

そんなソティスの有難い申し出に、私は安堵しながら頷いた。

 

「皆、一塊になってくれ。霧の発生源がぼんやりだが感知できた。とにかく逸れないように。」

 

そんな私の指示を聞いて、ヒューベルトが心底警戒したような声音で、短く呟いた。

 

「…何者なのですかな、貴殿は。やはり、危険すぎる…」

 

 

 

 

 

そこからは早かった。

私とカトリーヌで立ち塞がる民兵を速やかに掃除し、残った民兵を生徒たちに任せつつ、魔道士を排除。

霧が晴れた途端、カトリーヌがロナート卿まで一気に突っ込み、見事に討伐してみせた。

 

 

…被害はなし。理想的な勝利だ。だが、皆の雰囲気は暗い。

その中でも特に暗いのは、アッシュだ。

目の前で育ての親を失ったのだから当然だ。

さらに、街の知り合いまで民兵として駆り出されたのだ。

 

 

シルヴァンがそんな彼を心配そうに見つめている。

 

「アッシュ。」

 

「…先生。僕なら大丈夫です。すみません、心配をかけてしまって。」

 

「なんで謝るの。君は何も悪くない。辛い時は辛いって言って良いんだよ。」

 

 

「………………」

 

 

 

無言で押し黙るアッシュ。どう声をかければいいのか分からない私。そこに、シルヴァンが声をかけた。

 

「なあ、アッシュ。お前、騎士になるのが夢だったよな。」

 

「………はい。」

 

「それって、ロナート卿の影響か?」

 

「そうです。ロナート様は本当に高潔で、優しくて、孤児だった僕たちまで面倒を見てくれるような…どうして、彼がこんな…」

 

「…だったら、ここで立ち止まって居られないだろ。お前、このままで納得できるのかよ。」

 

「……シルヴァン。」

 

 

 

「ロナート卿が死んでもなお、残せたものがあるとしたら、それはお前だろうが。そんなお前がいつまでも悲しんでちゃ、報われるもんも報われないだろ。」

 

「ロナート卿の養子が、立派な騎士になる。それがお前の夢なんだろ。それは多分…ロナート卿の夢でもあったはずだ。夢、叶えてやれよ。」

 

 

 

そう言い終わると、シルヴァンは真剣な顔からいつもの笑顔になり、アッシュの肩を叩いた。

アッシュは奮起した顔になり、立ち上がった。

 

「そうだ…そうだね!僕が立派な騎士になる。それがロナート卿への恩返しだ!なら悲しんでなんていられない…!!」

 

 

 

 

そんな二人を見て、私は静かに立ち去る。

…凄いな、シルヴァンは。

アッシュも強い子だ。

 

 

「友情、というやつか。いいものじゃの。」

 

そう微笑んで呟くソティスに、私は笑顔で頷いた。

 

 

「…民にまで血を流させるとは。貴族に相応しくない男だったな。」

 

「泣いてる人も居たってのに…!なんでこんな…!」

 

 

 

やはり皆かなり辛そうだ。

大丈夫そうなのは…エーデルガルトとヒューベルトとモニカ、あとはペトラか。

他の皆は、大なり小なり民兵との戦闘に耐えきれて居ない。

その中でも深刻なのは。

 

 

 

「ドロテア、大丈夫?」

 

「…先生。」

 

ドロテアは無言で立ち尽くして居た。

彼女がそんな姿を晒すのはかなり珍しい。

 

「なんか、疲れちゃいますね。こういうのって。先生は傭兵業で慣れちゃいました?」

 

「……そうだね。少し慣れてしまった。でも、最初はかなり疲れたよ、私も。」

 

 

 

その私の言葉に、ドロテアが力なく微笑んでぽつぽつと呟いた。

 

 

 

「貴族の代わりに死ぬのは、いつだって平民です。今回だって、無謀な挙兵に付き合わされて…先生。こんな世の中、変わるんでしょうか。」

 

「……どうだろう。でも、私は変えていきたいと思ってる。力を持って、きっと。」

 

 

 

その宣言に、ドロテアは僅かに元気を取り戻したようだ。緑色の瞳で私を覗き込んで、嬉しそうに呟いた。

 

「不思議。先生がそう言うと、本当にそうなっちゃう気がするもの。私、信じてますよ?」

 

 

 

そう言うと、ドロテアは無言で私に抱きついた。

彼女は、私の胸に顔を埋めて目を瞑っている。

私はドロテアの頭を静かに撫でて、抱きしめる。

暫くすると、彼女は離れて、顔を赤くして去っていった。

 

 

 

 

「…やれやれ。また大きく出たの。世を変える、か。まあ、わしとおぬしならできぬことなどないがの。」

 

そうソティスは呆れたように笑い、私の周りをぷかぷかと浮いている。

私はソティスを抱き寄せ、彼女のすべすべの肌に頬擦りをして感謝の言葉を伝える。

 

「ありがとう、ソティス。」

 

「何を今更。わしとおぬしは一心同体。いつでも頼るが良い。」

 

 

 

 

 

そうしてまた生徒の見回りを再開すると、ハピが面倒そうに一人草原に座り込み、遠くを眺めていた。

 

「やあ、ハピ。大丈夫?」

 

そう声をかけると、ハピは胡乱げにこちらを振り向いた。

 

 

 

「何?それってハピがため息つかないか心配ってこと?」

 

 

そう苛立った顔でこちらに問いかける。

…そういえば、ハピはため息をつくと、魔物が寄ってくるという体質だと聞いて居た。

それで、地下のアビスに閉じ込められて居たとも。

 

 

 

「いや?単に無理してないかなって。民兵が相手だったから。生徒の見回り中なんだ。」

 

「へえ?面倒見いいんだね。そりゃあ、民兵相手はハピからしたら嫌だったけど。それよりも…教団に苛ついた、かなあ。」

 

 

 

そう空を見てハピは呟く。

 

「だって、あの人たちがあんなに怒ってたのをさ、教団はずっと無視してきたんじゃん。それでいざ蜂起したら、殺してめでたしめでたしってさ。」

 

「…でも、そうしないと近隣の村が被害を。」

 

そう私が反論すると、ハピは心底嫌そうにこちらを見てきた。

 

 

 

「教団の人っていっつもそれだよね。やれ、大勢のためなら少数の犠牲だって。自分達が正しいって思ってるからさ。」

 

「……………」

 

 

 

私が言葉に窮していると、ハピが謝罪の言葉をかけてきた。

 

 

 

「あ、ごめんね。別に先生を責めてるんじゃないよ。ただ、それが私にはどうしても受け入れられないってだけ。先生も教団のお偉いさんなんでしょ?だったら怒っちゃうか。」

 

「…申し訳なかった、ハピ。君の言う通りだ。私たちの怠慢の結果とも言えるね、これは。…特に君のことは。」

 

私は頭を下げてハピに礼をする。

すると、ハピは鳩が風魔法を喰らったような顔をして、驚きの声を上げた。

 

「…いいの?先生が勝手に謝っちゃって。教団から怒られない?」

 

「怒られても良いよ。そんなことより、君に謝ることの方が大事だ。」

 

その一言に、ハピは困惑した様子で答える。

 

「先生に謝られたってねえ。ハピの待遇は変わりそうもないし。ため息吐きたくなるよ、ほんとに。」

 

「なら、私と二人きりの時は思いっきりため息吐いてもいいよ。」

 

そう私が宣言すると、ハピは更に困惑した様子で疑問の声を上げる。

 

「どういうこと?」

 

「自分で言うのもなんだけど、腕に覚えがあってね。魔物の群れ程度ならなんとか切り抜けられると思う。…その程度なら、やらせてくれ。」

 

「…………本気?」

 

「本気だ。」

 

そう言うと、ハピは初めて笑って言った。

 

「…教団のお偉いさんが、皆キミみたいだったら良いのに。…ありがとう、嬉しい。」

 

「それじゃ、ハピ、みんなの所に戻るし。先生も戻ったら?そろそろ出発の時間じゃない?」

 

そう言うと、ハピは立ち上がって去っていった。

 

…しまったな、口説くのを忘れた。

 

 

 

 

 

私も行くかと元来た道を戻ろうとすると、エーデルガルトが立っているのに気づいた。

こちらを真剣な瞳で見つめている。

 

 

 

「……師。不躾だけど、ドロテアとハピとの話は聞かせてもらったわ。貴女はセイロス聖教会で、かなりの地位を持っているのね。」

 

「聞いてたの?そうだよ。あまり知られたくはなかったんだけどな。」

 

そう答えると、エーデルガルトはさらに真剣な声音で問いかけてくる。

 

「なぜ?」

 

「そうだな…レアが困るから、かな。」

 

 

 

「…大司教殿を呼び捨てにするのね、貴女は。そこまでの地位。…なのに貴女は、教団の現状に不満を持っている。違う?」

 

そう改めて問いかけられると困るな。

…別にそこまでのものではないんだが。

 

「…そこまでではないかな。ただ、変わるところは変わっても良いとは思っているよ。」

 

「………そう。」

 

エーデルガルトは頷くと、少し考え込んだ。そして呟いた。

 

「もしかしたら、貴女が教団を変えるのなら、私の夢は、もっと楽に叶うのかもしれない。」

 

「…どういう意味?」

 

そう私が問いかけると、エーデルガルトは微笑んで私の耳元に近づき、顔を赤くしながらも囁いた。

 

「今は秘密よ、師。貴女の秘密を教えてくれるなら、私も教えるかもしれないわね。」

 

「………可愛い。」

 

そう私が呟くと、エーデルガルトは飛び上がって後退りした。

 

「…な、なんてことを言うのかしら。私は次期皇帝だというのに。…本当、そんなこと言うのは師だけよ?」

 

そうして私たちの予想外の実戦課題は終わりを迎えた。

 

 

 

…が、更なる陰謀が霧の中から現れた。

ロナート卿が持っていた書類、大司教レアの暗殺計画ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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