女好きべレス先生の覇道   作:カバー

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女好きベレス先生の覇道 強者

 

 

 

 

ベレス視点

 

 

 

いよいよ女神再誕の儀当日。普段の倍以上の警備の騎士が目を光らせる中、聖セイロスの棺に祈りを捧げんと、多くの市民や貴族が修道院を出入りしている。

体感では普段の倍以上の人だかりだ。

 

 

そんな中、私たち黒鷲の学級は聖廟の監視を実行に移そうとしていた。そのために、聖廟近くの大聖堂に皆が集まった。

 

 

ユーリスが整った顔を物憂げにして、不満そうに呟く。

 

 

「ったく。こんなおめでたい日は、厳かに女神様に祈りてえもんだけどなあ。とんだ災難だぜ。」

 

 

それにバルタザールが笑って答える。

 

「ま、それは来年に持ち越しだな。俺は是非大修道院に来る美女達を相手に祭りにでも回りたかったがねえ。」

 

シルヴァンもその答えに笑って同意した。

エーデルガルトがそんな三人を見てため息をついた。

 

 

 

 

「全く…呑気ね、貴方達は。でも意外だわ、ユーリス。貴方、女神に祈るような人だったのね。」

 

 

 

その直接的な言い方に、ユーリスは軽く眉を顰めると、嘆くようにして言った。

 

 

「おいおい、俺様はこう見えて敬虔なセイロス教徒だぜ。なあ、バルタザール。」

 

「おうよ。女神様といやあ絶世の美女だろうからなあ。俺も当然信徒だぜ。」

 

 

私はその会話に入って、雑談に混ざる。

 

 

「女神様は間違いなく美人だよ。私が保証する。」

 

 

そんな私の答えに、私の隣のソティスは顔を赤くして華やかに笑い、バルタザールはしたり顔で頷く。

エーデルガルトが少し不満げにして私に聞いた。

 

 

 

「あら。なら、師は私と女神様、どちらが好きなの?」

 

「…そういう反応に困る質問はやめてほしいな‥」

 

 

そうやって軽く雑談しながら聖廟への道を歩いていると、目の前からセテスと、緑色の長い髪を縦ロールにして耳を隠している可憐な少女、フレンが歩いてきた。こちらを見つめて、厳格な顔で重く咳払いをする。

 

 

 

「君たち、緊張感が足りないようだが?まもなく女神再誕の儀だ。…ベレス、君もだ。レアの身が危ないかもしれないのだ。注意してくれ。」

 

 

 

そこで私はセテスにも一応話しておくかと判断し、声をあげる。

 

「セテス、もしかしたら敵の狙いは聖廟にある例のものかもしれない。私たちはそこの監視をするよ。」

 

 

その言葉に、セテスは僅かに驚きの顔になり、少し考えた後、確かになと呟いた。

 

「…なるほど。確かに、女神再誕の儀で解放される機会であれば、狙われる可能性はあるな。分かった。…だが、レアの警護は疎かにできない。もし何かあれば、生徒を一人、騎士達を呼ぶために送ってくれ。」

 

 

 

そんな重々しい会話の中で、唐突にフレンが私に話しかけてきた。

 

「先生、聞いてくれます?お兄様ったら酷いのです。心配だからお前は棺の中にでも隠れていたらどうか、なんて仰いますのよ?」

 

 

確かフレンは聖セスリーンだったはずだ。つまり本来は兄と妹ではなく父と娘なのだが…

 

…フレンはネメシスとの戦闘において、力を使いすぎて棺の中で長く眠っていたらしい。それを考えると、なかなかの黒い冗談だ。

 

 

 

 

二人はそんな調子で話を終えると、レアの元へと歩き去っていった。

ヒューベルトがその冗談で笑っていた。…悪趣味な冗談が好きなんだな、やはり。

 

その後、私たちは隠れて聖廟への道を監視する。…しばらく待っていると、黒い鳥のような特徴的な仮面を被った、修道士の姿の怪しい魔導士が、密かに武装した連中を引き連れて聖廟へと潜っていった。

 

 

 

最後の一人が行ったのを確認すると、私たちも聖廟へと侵入し、退路を断つ。

 

 

謎の魔道士は、私たちの姿を見て忌々しそうに叫んだ。

 

 

「もう中央の奴らに勘付かれたか!わしが棺の封印を解くまで、時を稼ぐのだ!」

 

…どうやら、セイロスの棺が目当てらしい。だが。

 

 

 

「アガルタの連中じゃないね。ソティス。」

 

「…うむ。とんだ小粒どもじゃ。全く。心配して損したわい。」

 

 

 

そうソティスと取り敢えず当てが外れたことを確認し合う。が、胸を撫で下ろして安心できるわけでもない。…彼らが聖廟に入る前から待機していたのだろう。一人、厄介そうな奴がいるな。

 

 

 

「あれと生徒を戦わせるわけにはいかないな‥」

 

 

死神のような不気味な仮面を被り、黒い鎧で身を包み、馬に跨っている騎士。

…死神騎士とでも言おうか。纏う殺気の質が周りの雑魚とは桁違いだ。

 

無骨なまでの殺気を飛ばしながら、一部の隙も感じ取れない。

纏っている鎧も、手に携えている鎌もかなりの上物だ。

 

 

「戦闘を避けられるのなら、それで良いが…」

 

「棺が開けられる前に殲滅したいわね。師。指示を…!?」

 

 

 

そうエーデルガルトが私に言いかけた途端、死神騎士が私めがけて馬で突っ込んでくる。

 

 

「…生徒はともかく、貴様とは愉しめそうだ…!俺を満たしてみろ…!」

 

「ッ!皆、離れて!」

 

 

私が生徒達の前に立ち、鉄の剣で相手の鎌の振り下ろしを逸らして受ける。

 

「ひ、ひええ…!!」

 

ベルナデッタがそう思わず悲鳴をあげ、バルタザールが小さく呻く。

 

「こいつ、強え…!それに、何つう業を背負ってやがる…!何人殺したんだ…?」

 

私は動揺する生徒達を庇いながら、死神騎士と相対し、短く生徒達に指示を出す。

 

「二手に分かれてこの騎士を避けながら棺まで敵を殲滅しつつ前進!エーデルガルト!ユーリス!指示は任せた!」

 

「ッ!分かったわ!」

 

「任せろ!死ぬなよ先生!」

 

エーデルガルトとユーリスは即座に生徒を二手にわけ、棺まで前進していく。

 

死神騎士はじっとその動きを見つめていたが、生徒が居なくなったのを見て私に殺気を向け、静かに武器を構えた。

 

「…これで邪魔はない。さあ、死合うぞ…!」

 

「やれやれ。面倒な相手だね…!」

 

そして、死闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

エーデルガルト視点

 

 

 

私は小さく舌打ちして目の前の重装兵を斧で屠る。

…確かに師の腕前を見定めるという仕事を彼に任せはした。だが、まさか死神の状態であそこまで猛るとは…私も初めて見た。

あれでは本当にどちらかが死にかねない。

 

 

 

フェルディナントが後方で敵の弓兵を始末した後、こちらに駆け寄って慌てた様子で私に話しかけてくる。

 

「エーデルガルト!せめて騎士の応援を呼ぶため一人送ってはどうだ!?あの死神のような騎士は危険すぎる!先生とはいえ…」

 

かなり焦っているようだ。無理もないか。死神の本気の殺気を間近で見たのだから。

 

「…無理よ、フェルディナント。師とあの騎士の戦闘があまりに激しすぎて、入り口付近にはもう誰も近づけないわ。」

 

「落ち着いて、今は目の前のやるべきことに集中しましょう。」

 

そう諭すと、フェルディナントは冷静さを取り戻した様子で、頷き目の前の敵へと剣を振り上げた。

 

…全く。もし死神か先生が死にかけたのなら、私が制止しないとね。

ため息を小さくついて、私も目の前の敵を見据えた。

 

 

 

 

ベレス視点

 

 

 

一呼吸の間に十数の斬撃の応酬を続ける。

受け流し、切りつける。その繰り返しだ。

 

 

 

死神は鎌を持ち上げ、凄まじい速さで振り下ろしてくる。それを横に地面を転がって躱し、剣を横薙に振るって死神の馬を斬ろうとする。が、死神騎士の馬は信じられないほど高く跳び、その斬撃を回避した。

 

互いに距離を取り、武器を携えて睨み合う。

 

 

 

「…あの女があれほど褒めるだけはある。いいぞ、貴様。…だが、武器があまりにもお粗末だな。」

 

そんなこと言われなくても分かってるよ…!

そう軽く舌打ちをして心の中で呟く。

 

 

 

あの騎士の持っている鎌は、かなりの上物だ。見たこともない素材で作られているが、鋼のように頑強で、信じられないほど切れ味が良い。

 

名匠ゾルタンの業物にも匹敵するだろう。

 

一方私の剣は市販のなんて事はない鉄の剣。

…こんな事ならジェラルトに言って武器を何かしら譲って貰えば良かったな。

 

直接鎌の一撃を受けるのではなく、いなして流すように剣で受けているが、それでも鉄の剣は悲鳴をあげている。

 

…もってあと数撃かな。

それでこの刀は壊れて使い物にならなくなる。

 

 

 

「どうする?わしが出るか。」

 

ソティスとの入れ替わりも視野に入れ始めた瞬間、死神がまた突っ込んでくる。

 

「ッ!」

 

 

 

死神は鎌を槍のように扱い、真っ直ぐに突撃して私を突き刺そうとしてくる。

 

私は横に躱そうとするが、点の一撃な分、先ほどまでの斬撃よりも数段速い!!

 

「ぐあっ!!」

 

 

 

私は剣の腹でその一撃を受け止めるが、鈍い音と共に鉄の剣が砕け散った。

…くそっ。

 

「終わりだな。」

 

そう死神騎士がつまらなそうに鎌を私の目の前で持ち上げる。

 

ソティスが私と入れ替わろうとした瞬間、謎の魔導士のその声が響き渡った。

 

「手遅れよ!封印は既に解かれ…な!?この剣は!」

 

棺が開かれたようだ!敵の魔導士が呆然と天帝の剣を持って立ち尽くしている。

エーデルガルトが敵の魔導士の目前まで迫っているが、間に合わなかったらしい。が、…今はその状況が好都合!

私はそちらに向かって全力で走る。死神騎士も意図を察したのか馬で追いかけてくる。

 

「エーデルガルト!その剣を私に!」

 

そう叫ぶと、エーデルガルトは状況を把握したようで、こちらに素早く頷き、敵の魔導士に斧を振り上げた。

 

 

 

「な!?く…まだだ!」

 

敵の魔導士は防御結界を魔法で張り、その斧の一撃を防ぐ。が、

 

 

「ぐああっ!!?」

 

「ぴえっ!当たった!当たったよ!」

 

 

ベルナデッタの弓の曲射が、頭上から謎の魔導士の脳天を貫いた。

 

「良い働きよ!ベルナデッタ!」

 

 

エーデルガルトはそう叫ぶと、天帝の剣を死体から持ち上げる。瞬間、剣がほのかに燈色に光った。

ソティスがそれを見て驚きに目を開く。が、私は今それどころではない!

 

 

 

「先生!受け取って!」

 

 

エーデルガルトはその剣を私に放り投げる。私は走りながらその剣を掴むと、今まさに私に追いついて、振り下ろされる死神の鎌を天帝の剣で弾いた。

 

剣が先ほどよりも眩く燈色に光る。

それを見て死神騎士は驚きの声を漏らした。

 

 

 

「…貴様、何者だ…!…いや!そんな事は構わん!愉悦だ!」

 

 

私と死神はそこから一瞬で無数の斬撃を浴びせ合う。死神の鎌が私の肩を貫き、私の剣は死神の腹に斬撃を浴びせた。

 

互いに血を流し、私が少しずつ優勢に動きながらも、死神はさらに興奮した様子で叫んだ。

 

「貴様こそ我が逸楽!我が愉悦よ!さあ!俺をもっと愉しませろ…!!」

 

「狂ってるか‥面倒だな。」

 

この手の手合いはどちらかが死ぬまで止まらない。

私もそれなりの覚悟をして天帝の剣を構える。

 

が、次の瞬間、入り口から頼もしい叫びが聞こえた。

 

「狼藉はそこまでだよ!この雷霆のカトリーヌが来たんだ!大人しくお縄につきな!!」

 

聖騎士カトリーヌだ。二人の精鋭騎士も連れ添っている。

 

その姿を見て、死神騎士は忌々しそうに呟いた。

 

「雷霆か…上物だが、今はただ邪魔なだけだ。…だが、ここで退くにはあまりにも貴様が逸楽すぎる…!」

 

そう興奮した様子の死神騎士に、横から黒魔法のドーラが浴びせられた。それを軽く回避した死神騎士は、忌々しそうにそちらを見つめる。

 

すると、魔法を放った先のヒューベルトが呆れたように呟いた。

 

 

 

「やれやれ。見て分からないのですかな?もう貴殿の遊びは終わりですよ。戦局も見定められない駒など、雇い主も苦労しますな。」

 

 

「…………………」

 

無言で死神騎士はヒューベルトを睨むと、転移魔法を起動した。

 

「今は、退く…我が逸楽よ。俺が殺すまで、死ぬのは許さんぞ。」

 

そう捨て台詞を残し、死神騎士は魔法の光と共に消え去った。

…何か残っているな。

地面に落ちているそれを拾い上げると、…どうやら闇の魔道士になるための試験パスのようだ。

 

…何でだろうか。

そんな風に思いながらも、私は安堵と共に座り込んだ。

 

生徒達が私の周りを取り囲んでくる。

 

「…天帝の剣を使った?紋章石もなしに?師。貴女は一体…。」

 

そんな風に呆然と呟くエーデルガルトだが、ドロテアがそれを遮って叫ぶ。

 

 

 

「そんなことより、今は先生の傷の手当てよ!…結構深いわね、これ。リンハルトくん。白魔法手伝って。」

 

ドロテアとリンハルトが白魔法で私の肩の傷の応急処置を始める。

 

カトリーヌが近づいてきて笑顔で言った。

 

「…どうやら、あんた達のおかげで何とかなったようだね。…レア様に代わって、感謝するよ。」

 

こうして、聖廟での騒動は終わりを迎えたのだった。去った死神の、謎を残して。

 

 

 

 

 

 

 

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