女好きべレス先生の覇道   作:カバー

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女好きベレス先生の覇道 大司教引き継ぎの儀

 

 

 

ベレス視点

 

 

 

いよいよ大司教引き継ぎの儀当日。

本来は枢機卿の面々と大司教と次期大司教のみで行われる厳粛な儀式…まあ、実質はレアがセイロス聖教会成立から今まで大司教の地位に君臨し続けていたので、形だけの儀式なのだが。

 

しかし、今回の目的としては大々的に行うのが望ましい。各領主達に新たな大司教としての権威を誇示するのはもちろん、帝都訪問の前に王国や同盟の領主達と繋がりを持っておいた方が不平不満は少ないだろうという判断だ。

 

流石に私も少し緊張しているようだ。予定より早く目が覚めてしまった。

ソティスが穏やかに私に声をかけてくる。

 

「なに。女神と共にあるお主なら、どう転ぼうが失敗などないわ。安心するが良い。」

 

私はソティスにあまりの愛しさから口付けすると、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

部屋から出ると、今日の私の警護担当の騎士団長である、ジェラルトと、精鋭騎士のシャミアが声をかけてきた。

 

「お、なんだベレス。随分早い目覚めだな。…眠れなかったか。」

 

そんなジェラルトの気さくな挨拶と見慣れた父としての顔に、少し緊張が緩む。

 

「いや、寝れはしたんだけど昨日早く寝過ぎたみたいだ。どうも落ち着かなくて。」

 

 

 

「まあ、今日からフォドラで一番尊敬される人物の一人になるんだからな。無理もないさ。」

 

シャミアはいつも通りの淡々とした声音だがどこか優しさを感じる。

 

「それならどうだ?傭兵時代みたいに稽古でもするか?良い感じに体がほぐれるぜ。」

 

「そうしようかな。」

 

 

 

私とジェラルトは軽く微笑みあって騎士の間の訓練場まで向かう。道すがらちらほらと、見知らぬ貴族らしき高価な絹の服を着た人物とすれ違った。

 

何人かと軽く挨拶を済ませ、訓練の間でジェラルトと訓練用の木製の剣を手に取る。早朝なので人は少ないが、騎士の数名は気になるようで私たちの周りに集まり始めた。

 

 

 

「それじゃあ…いくぜ!」

 

「ああ、いつでも。」

 

 

 

互いに剣を振りかぶり、一心不乱に攻め、守り、撹乱する。数分ほどやり合った末に、私の横凪の一撃がジェラルトの胴に入った。

 

ジェラルトは軽く呻くと苦笑いして参った参ったと両手を上げた。

 

 

 

「ふう、やれやれ。俺の負けだな。剣じゃすっかりお前には敵わなくなっちまった。」

 

「…私はまだジェラルトに槍では敵わないけどね。」

 

 

 

そう言葉を返すと、ジェラルトはそりゃそうだと声を上げて豪快に笑った。

 

「俺の本分はそっちだからな。そりゃまだお前にも負けられねえよ。…年老いたとはいえ、腐っても元騎士団長よ。」

 

 

 

ジェラルトはにやりと笑うと、腰につけていた立派な銀細工の剣を徐に手に取り、私に柄の方を向けて放り投げた。

 

私が利き手でその銀の剣を掴み取ると、ジェラルトは頭を掻いて呟いた。

 

「そりゃあ俺がセイロス騎士団長に就任した時に頂いた剣でな。見映えが良いだけじゃなく、造りもしっかりしててな。頑丈で、使い勝手がいい。」

 

「…知ってるよ。前に聞いた。これがどうしたの?」

 

私が軽く問いかけると、ジェラルトはぶっきらぼうに呟いた。

 

「お前にやる。大司教様になるってのに、ちんけな贈り物かもしれんが…。」

 

私は満面の笑みで答えた。本当に嬉しかった。

 

「いや、ありがとう。最高の贈り物だよ。」

 

 

****************

 

 

ベレス視点

 

 

 

大聖堂側の控室で私は顔料と香料で体を整え、豪勢なレアの大司教の服を模しているが、かなり動きやすくなっている。

金色の髪飾りに、豪勢な白の外套に、金色の襟。ニルヴァーナと呼ばれる職の衣装だ。

私のお気に入りの肉襦袢はそのままだ。

レアに比べて露出が多いので着心地が良くて助かる。

 

「…ちょっと露出多くないですか?」

 

「何?誘ってるの?」

 

「い、いえ!そんなことは…ただ、魅力的です。」

 

そして部屋から出ると、セテスがカトリーヌなどの聖騎士と待ち構えていた。

 

「うむ。衣装はよく似合っているよ。さて、ではいよいよ儀式だ。覚悟はいいな?」

 

「…ああ。できてるよ。」

 

セテスは私の答えに頷くと、私を先頭にして、騎士や修道士達と大聖堂への行列に入った。

今日は大聖堂は貴族達の訪問を多く受け入れている。

私が姿を現すと、割れるような歓声が左右から響いた。

 

「次期大司教猊下、ベレス様!前へ!」

 

大聖堂に入ると、黒鷲の学級を始め、全学級の生徒や高名な修道士、そして騎士達が周りに控えている。

贅沢な紅と白銀の絨毯を正面の素天燈硝子から刺す色とりどりな光が照らしている。

 

厳粛に静まり返った大聖堂の中央を、私は歩んで正面のレアの元へと向かう。

 

光に照らされたレアは、いつもよりも幻想的で、きめ細やかな緑の髪の毛一本一本に身惚れそうになった。

 

私はレアの前まで歩み出て、跪く。

堂々としたレアは、セイロスの剣を掲げ、私の肩に突きつけた。

 

「汝、女神ソティスの第一の僕として、このフォドラに遍く光となることを、ここに誓うか?」

 

 

 

「誓います。」

 

レアはセイロスの剣を私に手渡すと、ゆっくりと私を立ち上がらせた。

 

「天上に居られる女神ソティスの御名において、炎の紋章をその身に宿す汝を、セイロス聖教会の大司教とする!!」

 

次の瞬間、割れるような歓声が大聖堂に響いた。ここに、私はセイロス聖教会の頂点に立ったのである。

…ここからだ、私の夢は。ハーレムを作るという、確固たる夢は…!

 

その後は私とレアで城下町まで連れ歩き、盛大な祝祭を開いた。街中が割れんばかりの歓声を上げた。

 

「…これが、私たちが背負う人々の数です。忘れないでくださいね。」

 

 

 

そのレアの言葉には、数百年の重みがあった。

 

大修道院に戻ると、すっかり様変わりして今度は祝宴の雰囲気だ。私が玄関に入ると、貴族達が我先にと話しかけてきたが、レアがうまくあしらってくれた。

 

少し休憩した後、私は昼食をレアの自室で取ることとなった。

 

「…今食堂で食べると落ち着かないでしょうから。少し休憩といきましょう。」

 

「そうだね。…にしても、凄いなレアは。あれだけの人の波でも動じない。」

 

そう私が疲れ気味に言葉を返すと、レアは微笑んで答えた。

 

「まあ、慣れですよ。貴女もしっかりしていましたよ。その特製の服もよく似合っていますし…」

 

「それは良かった。動きやすくて好きだよ、この服。レアの服に似てるのも良い…。」

 

「…そうですね。その。肉襦袢は随分と扇情的な気もしますが…。」

 

私は微笑んでレアの頬にそっと手を当てて顔を近づけて、レアの緑の綺麗な瞳を覗き込んだ。

 

「…嬉しいよ。私を見て欲情してくれたの?レア。」

 

「い、いえ。そのような…。」

 

私は笑顔でレアの赤くなった耳元で囁いた。

 

「ほんとう?」

 

「………………」

 

レアは無言で首を横に振り、そっと柔らかな唇を私と重ねた。

そして、寝具へと二人でそっと絹でできた上質な服を脱がせ合いながら入り込んだ。

 

 

 

それから1時間後、私とレアはいそいそと寝床から出て服を着た。口付けの跡がないか身体中を見たが、見える場所にはなかったので取り敢えず安堵した。

 

「大司教就任からここまで早く寝たのはお主らが初めてだと思うぞ…。」

 

そんなソティスの呆れ声に苦笑いしながら、慌てて私たちは大広間へと向かう。その入り口の前ではセテスが既に待機していた。

 

「…遅いぞ、二人とも。既に貴族達との祝宴は始まっている。さあ、早く入りたまえ。」

 

そして私とレアが大広間に入ると、拍手で出迎えられた。

私とレアは微笑んで感謝の言葉を伝えると、それぞれ別の机に向かった。

 

上質な果実酒が注がれている。私がその味を楽しんでいると、見知った顔の親子二人がまず近づいてきた。こうして並ぶとやはりよく似ている。

父親は暗い青い髪を軽く横に流しているが、息子の方は後ろで団子風にまとめている。

 

父親はにこにこ笑顔だが、息子の方はムッスリとして明らかに無理やり連れてこられたという様子だ。

 

 

「これはこれは大司教猊下!覚えておられますかな、この倅の父のロドリグ・アシル・フラルダリウスです。いや〜…驚きましたよ。さすがジェラルト殿のご息女といったところですかな!」

 

そのロドリグの言葉に、フェリクスは軽く舌打ちして呟いた。

 

「一応、祝いを言っておこう。だが、勝負にはまだ付き合って貰うぞ。勝ち逃げは許さんからな。」

 

「フェリクス!…すみませんな、大司教猊下。…どうも、倅は言葉遣いを知らん。」

 

私はにこやかにロドリグに微笑んで答えた。

 

「いや、構わないよ。フェリクスはこれで良いんだ。」

 

「そう言って貰えると助かります。大司教猊下は器が大きい。是非気楽にフラルダリウス領を訪れください。」

 

そうにこやかに微笑む姿は、実に精悍だ。やはりかなりの美形だな、彼は。だから何だという話でもあるが、完璧な好人物だ。

 

…彼と将来的に敵対するかもしれないと思うと、心が痛むが。

 

「…ありがとう。最初は帝都に赴くつもりだが、その後に是非。」

 

ロドリグは納得したといわんばかりに頷くと、にこやかに答えた。

 

「ああ!それで帝国の貴族方はあまり居られないのですな。…でしたら、ファーガスの王都にある、カムロスの教会も訪ねてみられると良いでしょう。あの教会も、ここほどでは無いが実に立派だ。」

 

そう会話を楽しんでいると、横からまた見知った顔が現れた。

短髪の燈色の髪に、どこかマイクランに似ている顔つき。彼も息子を連れ立ってやってきたのだ。

 

「…お久しぶりです、大司教猊下。我が領土の賊退治の際は、ろくな挨拶もできなかったこと、ご容赦願いたい。ロドリグ、お前も居たのか。」

 

「マティアス!それはそうだとも。おお!そちらはシルヴァン殿か!随分と大きくなられたな。」

 

シルヴァンは丁寧にロドリグに挨拶を返して、私に言葉を続けた。

 

「これはこれはロドリグ殿。シルヴァン・ジョゼ・ゴーティエです。お久しぶりにお目にかかります。…それに先生。化粧されるとすっごいお美しいですねえ!どうです?俺とお茶でも…」

 

そう言いかけたシルヴァンだが、ゴーティエ辺境伯が凄まじい圧でシルヴァンを睨んだので、たまらず黙った。

 

そんな風に話していると、私の視界の端で何やらイングリットが父親らしき男性と軽く言い争っているのが見えた。最後にはイングリットが折れた様だが、しょぼしょぼとした様子でこちらに歩いてきた。

 

「おいおい、イングリット。何をそんな落ち込んでるんだ?先生に失礼だろ。」

 

シルヴァンのそんな軽口に、少し苛ついた様子のイングリットだったが、その通りだと認めたのか淡々と答えた。

 

「…それは、…そうね。申し訳ありません、大司教猊下。ご挨拶が遅れました。改めまして、イングリットです。今までの不遜な言葉遣い、どうかお許し頂けたらと…」

 

 

 

そんな言葉遣いに、思わず私とシルヴァンが軽口を叩く。

 

「…別にそこまで畏まらなくていいよ。今まで通りで構わないさ。」

 

「おいおい、イングリット。お前の言葉遣いで不遜だったらフェリクスなんて何回処されれば良いんだよ。」

 

 

 

そのシルヴァンの言葉にフェリクスが苛立った様子で怒鳴った。

 

「おい!そこで何故俺が出てくる!?」

 

「…ああ、もう!貴方達良い加減にしなさいよ!」

 

 

 

そんな風に三人でいつも通りわちゃわちゃとし始めたので、私はロドリグとゴーティエ辺境伯に挨拶をして、そっとその場を離れた。

 

ちらほらと周りに声をかけながら歩いていると、今度は気取った感じの声が聞こえてきた。

 

「ああ、先生。…失敬。大司教猊下。ここに居られたのですか。探しましたよ。」

 

そこには同じ紫の髪色に同じ髪型をした、一組の親子が立っていた。

父親の方は皺が少し目立つが、髪は息子同様滑らかな色艶で美しく整っている。

 

「貴女がベレス大司教猊下ですな?お初にお目にかかります。エルヴィン・フリッツ・グロスタールです。…いや。息子が言った通り実にお美しい。お手を失礼しても?」

 

私が首を傾げて手を差し出すと、彼は軽く私の手の甲に口づけをした。

…流石にやり手だな。即座にこの様な手段で周りに自身がセイロス教の敬虔な信徒だと見せつけた。

 

そして、この人が…私が、説得せねばならない相手。

エーデルガルトの野望のために、無駄な血を流すのは避けたい。

彼をこちら側につければ…実質的に、同盟はエーデルガルトの元に降ることとなる。

 

「同盟屈指の領主であると聞いているよ、グロスタール伯。これからもセイロス聖教会としてよろしく頼むよ。」

 

「ええ、勿論です。敬虔なセイロス教徒の一人として、お力になれることがあれば是非。」

 

私はその言葉に内心ほくそ笑んで丁寧に言葉を返した。

 

 

「…実はまだ大司教になったばかりなのでね。少し敬虔な信徒である貴方に相談したいことがあるんだが、この後お時間良いかな?」

 

 

「ええ!勿論。光栄ですよ。では、後ほどお伺いします。」

 

そうして私は目的を達成したことを喜びながら軽い雑談をしてグロスタール伯と別れた。

すると、一人の魅力的なおっぱ…豊満な胸をした女性が歩み寄ってきた。

 

「まあ!大司教猊下。会えて嬉しいですわ。私、コルネリアと申すものです。こちらには、リュファス大公の代理人として参りましたの。」

 

 

その女性…コルネリアは、不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

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